14kp-17
小野 郁(西日本短大附3年)投手 177/70 右/右 |
「甲子園組の方が上だろ」 甲子園に来られなかった地方敗退組の中でも、最も話題だったのが、小野 郁 。しかしその投球を見ていると、甲子園に出場した 飯塚 悟史(日本文理)の方が高度な投球をしていたし、岩下 大輝(星稜)の方が迫力を感じるし、同じ九州の 佐野 皓太(大分)の方が、将来性を感じずにはいられない。確かにコンスタントに145キロを越えて来るようなストレートの速さは破格だが、その将来性を考えると、私は彼が上位指名の器なのかには疑問が残る。 (投球内容) ストレート 常時140キロ台~MAX150キロ この投手のストレートは、手元で伸びるとかそういう感じはなく、指先から放たれるとズバーンとミットまで機械的に放たれるような球を投げます。何処かそのボールは平面的で、バッティングセンターのボールを見ているようなイメージ。すなわちボールの放たれるタイミングさえ掴めば、それほど打者は苦になく打ち返せます。 確かに今年生で見た高校生では、この投手が一番速い球を投げていました。コースにもボールが散りますし、けして球が棒球というわけでもありません。しかしボールに角度がなく、何か底の浅さを感じずにはいられません。 それでも破れた九州国際大附戦では、ドラフト上位候補である 清水 優心 捕手に投じた150キロの投球は、見応え充分でした。 変化球 カーブ・スライダー・チェンジアップ 曲がりながら落ちるスライダーとのコンビネーションが主で、他にブレーキの効いたカーブやチェンジアップも効果的で、けして変化球レベルが低い投手ではありません。むしろカーブやチェンジアップを、もっと多めに混ぜても好いのではないかと感じます。むしろ将来的には、ストレートを見せ球にして、変化球で仕留める配球を模索すべきタイプかと。どうも試合を観る限り、速球とスライダーの割合が多すぎて、非常に単調に感じます。 その他 あまり走者がいても、鋭い牽制は入れません。フィールディングも、野手としての才能も評価されている割に、機敏な動きは見られず。仮に野手として考えた場合は、外野手タイプなのでしょう。クィックは、1.05~1.10秒ぐらいにまとめられ、この点では下級生の頃よりも成長した部分。 (投球のまとめ) 確かにストレートは速いのですが、結構簡単に打ち返されます。プロの打者ならば、簡単に捉えて来るでしょう。その理由は、先にも述べた通りマシーンのような感じの球で、伸びや強弱の付け方にも欠け、ボールの魅せ方が下手だから。生で見た時はあまり思わなかったのですが、中継の映像を見ると、肘があまりしならないので伸びが生まれ難いのではないかと感じました。 けしてボールが甘いわけではないのですが、簡単に打ち返されてしまう底の浅いピッチング。何処か同じ福岡の 三嶋 一輝(法大-DeNA)投手のようなイメージとダブリます。今後大きく伸びるというよりは、ボールの活かし方など、投球術を磨くことで大成するしかないのではないのでしょうか。少なくても一年目から、プロで通用する投手ではないはず。 (投球フォーム) ノーワインドアップから投げ込んで来るフォームで、軸足一本で立った時に膝から上がピンと伸びきって、直立して立つのが気になります。こうなるとバランスよく立てないので、余計な力みが生じたり、着地が早くなりがちだったりと弊害が出ます。 <広がる可能性> ☆☆☆ 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻を一塁側に落とせません。したがって体を捻り出すスペースを確保できないので、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化には適しません。典型的な、スライダー・チェンジアップを武器にするフォームです。 それでもこの投手、地面に着きそうなところまで足を降ろしても、そこから前への一伸びがあるので、「着地」が早過ぎることがありません。そのため体を捻り出す時間は確保できるので、変化球の曲がり・キレはけして悪くないのが大きなアドバンテージ。カーブで緩急を利かしたり、フォークのような大きな縦の変化は望み難いですが、それ以外の変化球ならば、将来的に期待できる土台は持っています。 <ボールの支配> ☆☆☆ グラブは最後まで体の近くにはあるのですが、しっかり抱えられているわけではありません。そのためそれほど両サイドに、キッチリ投げ分ける程の精度は見られません。また足の甲での地面への押し付けも遅く、ボールも真ん中~高めに集まりやすい。「球持ち」もそれほど深くなく指先の感覚もイマイチなので、ノーコンではありませんが、かなり大雑把な印象は受けます。 <故障のリスク> ☆☆☆ お尻は落とせませんが、カーブやフォークといった球種は殆ど投げないので、肘への負担は少なそう。腕の角度にも無理はないのですが、結構アーム式で肩で投げている部分もあるので、将来的に肩を痛めないとは言い切れません。 <実戦的な術> ☆☆☆ 「着地」までの粘りも悪くなく、体の「開き」も早過ぎることはありません。スライダー系の投手の割に、ボールの出処は見やすくないというのは、彼の強味ではあります。 振り下ろした腕は強く振れますし、ボールにも適度に体重は乗せられています。もう少し足の甲を早めに地面に押し付けられると、もっとグッとボールに体重が乗って来るのではないのでしょうか。 (投球フォームのまとめ) 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の観点でいえば、「着地」「開き」「体重移動」は悪くありません。ただし「球持ち」は少し早いので、もう少しボールを長く持って押し込めるようになると、投球にも粘りが感じられるのではないのでしょうか。 コントロールを司る動作にも甘さが残りますし、故障のリスクも感じなくはありません。速球・スライダーのコンビネーション投手の割には、「開き」が抑えられているのと、将来的に好い変化球を習得できる可能性が高いのが、推せる材料でしょうか。 (意識づけ) 一年生の頃から、チームで突出した存在のせいか、典型的なお山の大将です。そのためか、小柄な投手の割に投球に繊細さがなく、プレーが雑なのが投手なだけに気になります。プロのレベルでは壁にぶち当たると思うので、そのときに彼がどう考え、対処できるかにかかっているのではないのでしょうか。 (最後に) 破格の球速の持ち主ではありますが、プロレベルの打者ならば充分対処できるボール。その割に、今後更にもうワンランク・ツーランクの上積みが素材として期待できるのかと言われると微妙です。それゆえに、変化球や投球術・コントロールなどキメ細やかさが求められる割に、性格やプレーが大雑把なので、その点で伸び悩むのではないかと危惧するところ。 ただし速球派にしては「開き」が早くないのと、変化球に活路を見出すことが期待できるフォームではあるので、彼に考える力があるのならば、壁を乗り越えて行ける可能性は残されています。甲子園で名前があがった投手に比べると、ワンランク落ちる気は致しますが、間違いなく高校からプロに入る素材であることは疑いようがありません。私の評価は高くありませんが、ドラフトでは2,3位ぐらいまでには消えるのではないのでしょうか。 蔵の評価:☆☆ (2014年夏 福岡予選) |
小野 郁(西日本短大付・2年)投手 176/70 右/右 |
「大学タイプの好投手に見えるが」 中背の体格と完成度の高い投球を見ていると、高校からプロに入るというよりは、有力大学や社会人に進んで、実績を残すことでプロ入りしそうな素材に見える 小野 郁 。それでも始めて見た1年夏に比べ、確実にその球速は伸びているようだ。 ストレート 常時135~140キロぐらい 私が見た1年夏の頃は、常時135~140キロぐらいで、ビシッと良い球を投げ込んでいた。更に2年秋の動画を見ると、コンスタントに140キロ台を記録しており、MAXで145キロに到達するなど、確実にこの一年でパワーアップに成功。 この選手の良さは、ストレートを両サイドにしっかり投げ分けることができ、意図的に内角を厳しく攻めることができる点にある。四死球で自滅するような荒々しさは感じないが、秋季九州大会では制球を乱したと訊いている。パワーアップを図ることで、投球が荒々しくなってしまったのだろうか・・・ 変化球 カーブ・スライダー・フォークだかチェンジアップ 緩いカーブで緩急をつけ、スライダーを低めに集め、更に縦に沈む球も持ち合わせている。球種自体は多彩だが、どれか絶対的な球があるのか?と言われると疑問が残る。この選手は、変化球を見せつつも、最後はストレートでといったピッチングパターンの投手ではないのだろうか。 その他 1年生の時の投球を見るかぎり、それほど鋭い牽制は入れてきません。フィールディングも可も不可もなしといった感じで、クィックも1.2秒前後~1.2秒台と素早くはありません。もう少し野球センスに・運動神経に秀でたタイプなのかな?と思ったのですが、それほどでもないことがわかります。それでも秋は、打っても4番を任されています。 (投球のまとめ) 投球の細かい部分での成長はわかりませんが、ストレートは140キロ台を連発できるようになり、着実にパワーアップ。マウンド捌き、内角を厳しく突く投球術などを見ると、ポテンシャルよりも野球センスに秀でたタイプに見えます。 武器になるような変化球を身につけられたのか? 今後の伸び代はどのぐらい残されているのか、気になるところではあります。 (投球フォーム) 1年生の時のフォームですが、これを分析して考えてみましょう。2年秋の投球モーションも見ましたが、フォームとしてはそれほど変わっていないように思います。 <広がる可能性> ☆☆☆ 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻は一塁側に落とせません。そのためカーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化球に適さない投げ方。その割にカーブで緩急をつけたり、フォークのような沈む球も投げるのは気になります。 「着地」までには適度に前に足を逃し、タイミングを遅らせることが出来ています。粘りとしては並ですので、いろいろな球種は投げられると思いますが、武器にするほどのキレ・曲りの大きな変化球を身つけられるかは微妙でしょう。 <ボールの支配> ☆☆☆ グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分けは安定。ただし足の甲の地面への押し付けは浮きがちで、ボールが上吊りやすい要因を作ります。「球持ち」は悪くなく、指先の感覚も良さそうな印象はあります。元来は、安定した制球力の持ち主のように思います。 <故障のリスク> ☆☆ お尻が落とせない割に、カーブやフォークのような縦の変化球を投げるのが気になります。そういった意味では、肘への負担も気になります。 それ以上に気になるのが、背中を後ろに反りながら投げ下ろす腕の角度が気になります。腕の角度に無理があるだけでなく、テイクバックした時も肩が背中のラインよりも後ろまで入ってしまうので、肩を壊すのではないかと不安になります。唯一救われるのは、それほど力投派ではなく、消耗が激しいフォームではないということでしょうか。 <実戦的な術> ☆☆☆☆ 「着地」の粘りは平均的ですが、肩が後ろに入る分「開き」自体は隠れており、ボールの出処がわかりずらくなっています。そういった意味では、コースを突いていれば痛手は食い難いのではないのでしょうか。 腕をしっかり振れており、速球と変化球の見極めは困難。ボールへの体重の乗せも、発展途上ではありますが、悪くありません。 (フォームのまとめ) 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の観点では、「着地」「球持ち」「体重移動」は平均的も、「開き」には優れたフォームではないのでしょうか。しかしそれが、故障へつながる危険性もあるフォーム。 特に気になるのが、故障をしやすいフォームだということ。そしてボールが、高めに上吊りやすい要素があるということでしょうか。 (最後に) 現時点での能力、ボールの勢いに優れますが、今後への伸び代・スケールという意味では疑問が残ります。この冬の間に、もうひと回り、二回り身体が大きくなるようだと、ドラフト候補として考えても良いでしょう。 あとは、武器になる変化球の修得など、まだまだ課題は少なくありません。それでも2014年度の九州を代表する投手であるのは間違いないので、その活躍を期待して見守りたいと思います。ぜひ全国の舞台を、経験させてあげたい一人です。 (2012年夏・福岡大会) |