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安楽 智大(楽天)投手のルーキー回顧へ







 安楽 智大(済美・3年)投手 187/85 右/左
 




                    「何の心配もいらない」





 故障のため調整が遅れていた最終学年の 安楽 智大 。夏の愛媛大会緒戦の三島高校戦では、MAX146キロを記録。その後の試合でも最速を1キロずつ増やして、破れた東温戦では148キロまで到達。投げ込まれるボールの勢い・角度・制球などをみると、怪我の心配は考えなくて良さそうなほど、外角低めに思わず唸るようなボールが投げ込んでいた。


(投球内容)

5月の宮崎招待試合で見た時の最速は、MAX143キロ。その頃に比べると、球速の面でもかなり回復していたと言える。

ストレート 常時140キロ台~MAX148キロ

 安楽のボールは、ビシッと決まる勢いだけでなく、球威も兼ね備えたボリュームのある球質。それでいて、外角低め膝元に決まる角度とコントロールがある。アウトローに安定してこれだけのボールを投げられる高校生は、全国でも彼しかいないはず。力を入れた本気モードのストレートは、高校では中々打ち返すのは難しい。またインコースにも、意図的に厳しい球を投げてきます。それほど空振りを取るというよりも球威で詰まらせるタイプだと思っていたのですが、宮崎招待試合の妻戦では、球速はさほど出ていなくても面白いように空振りを奪っていたのには驚きました。

変化球 カーブ・スライダー・ツーシームなど

 変化球は、曲がりながら落ちるスライダーとのコンビネーション。たまにアクセントで緩いカーブを投げてきます。またそのスライダーは、右打者の外角低めに集められます。その他ツーシーム的な球種もあるように見えますが、意図的に投げているのかはわかりません。

その他

 クィックは、0.95~1.05秒ぐらいと、極めて高速。牽制の技術・フィールディングの動きも基準以上。とくにとっさの反応、冷静な判断力には光るものがある。意識が高い選手なので、こういった投球以外の部分の鍛錬も怠らない。

 ランナーを背負ってからは、ボールをあえて長く持ち、走者や打者を焦らすような「間」も意識できている。瞬時にいろいろなことを行える冷静さと頭の回転の良さが、この投手にはある。

(投球のまとめ)

 行き詰まる接戦を演じた夏の三島戦では、ストレートを絶対に打ち返されないだぞという気迫溢れる投球が光りました。破れた東温戦では、スクイズで先行され渾身の148キロのストレートをはじき返されるなど、試合巧者の相手に苦しめられリズムが掴めませんでした。ただ肘を痛めていたことで、あまり投げ込みなど肩周辺の筋力を鍛えられなかったことは、大会がが進むにつれ、投球が辛くなっていたのではないかと推測します。

 昨年の良い時を10だとすると、9割ぐらいまでは夏の三島戦では回復していたように思います。むしろ内容だけだったら、破れた東温戦よりも、私は三島戦の方が良かったように見えました。安楽としては、このまま決勝まで勝ち上がることを逆算して、ベストまで引き上げるつもりだったのかもしれません。特にこの試合を観る限りは、肘の心配はないように感じました。


(投球フォーム)

 かなり特殊なフォームをしている選手で、そんな中気になる点が昨年は2つありました。一つは、重心が沈み過ぎて前に体重が乗らない傾向にあること。もう一つは、フォームが直線的で比較的合わせやすいフォームだということ。では最後の夏はどうだったのか、検証してみたいと思います。

<広がる可能性> 
☆☆☆☆

 昨年までは、引き上げた足をピン伸ばすことなく重心を沈める特殊なフォームでした。しかし今年は、高い位置でピンと足を伸ばせるようになり、お尻を一塁側に無理なく落とせるようになっています。このため体を捻り出すスペースが確保でき、カーブで緩急を効かせたり、フォークのような縦に鋭く落ちる球種を投げるのにも無理がありません。

 また足をピンと伸ばすときに、幾分二塁側に送り込むことで上手くバランスを取れています。これにより「着地」のタイミングも、早く地面を捉えるのを防ぐことが出来ています。そういった意味では、「着地」までの粘りも適度作れており、身体を捻り出す時間も確保でき、変化球のキレ・曲がりも程よく投げられる、バランスの取れたフォームになっているのではないのでしょうか。将来的にも、球種を増やすことに無理を感じません。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆

 グラブは体の近くに最後まであり、両サイドの投げ分けも安定。足の甲の地面への押し付けも、深すぎることなく適度に地面を捉えています。そのため外角低めへのコントロールに優れ、「球持ち」も悪くなく指先の感覚もまずまずだと言えるでしょう。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆

 お尻を落とせるフォームになり、カーブやフォークのような球種を投げても、肘への負担は軽減したのではないのでしょうか。実際カーブは時々投げますが、フォークのような縦の変化は殆ど見られません。

 振り下ろす腕の角度にも無理はなく、肩への負担も少なそう。そういった意味では、今のフォームならばそれほど故障のリスクは高くないと考えます。

<実戦的な術> 
☆☆☆☆

 「着地」までの粘りも作れており、体の「開き」も以前ほど早くないように見え、問題はないと考えます。振り下ろした腕も身体に絡むように、速球と変化球の見極めも困難。ボールにも適度に体重が乗せられており、以前のような重心が後ろに残るような感じもなくなってきています。

(フォームのまとめ)

 昨年までは、かなり特殊なフォームをしており、これをいじると怖いなと思っていました。しかしこの一年で、見違えるほど課題を改善。この選手は問題意識を持ち、それを克服する努力とセンスを兼ね備えた選手だと関心致しました。

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」でも、極端に優れている部分はないのですが、欠点らしい欠点がなくなったことは素直に評価したいポイント。

 故障の危険性も減り、コントロールを司る動作にも優れます。実際の投球よりもフォームに不安があった選手ですが、その点が劇的に改善されたのには驚きます。故障で登板できないなか、フォームの欠点を地道に改善してきた意識の高さには頭が下がります。


(野球への意識)

 この選手を見ていて思ったのは、頭の良さに加え意識の高さ。これだけの体格をしながら、所作は投手らしく細かい。打席に入る時も、けしてラインを踏むことはありません。驚いたのは、打席を外すときに後ろ向きに下がるのですが、その時も絶対に踏まないのです。これは、普段から身体に染みこんでいて、無意識にそういうことが出来てしまう選手なんですね。打席に入るときに注意できる選手はたくさんいるのですが、打席を外すときまでラインを見ることなく踏まないことが自然と出来てしまう選手を初めてみました。

 また打者としてのフライも実に高く上がっていて、ボールが中々落ちてきません。このへんは、体幹の強さが他の選手とは全然違うことを深く実感します。投球内容云々よりも、そういった本質的な部分を生で観ることで強く感じます。この選手の持っている器が、他の野球人とは段違いに素晴らしいということです。


(最後に)

 野球に対する意識の高さ、人間的な器の大きさという意味では、私が見てきた選手の中でも、松井 秀喜 と双璧だと言えるでしょう。純粋に素材としての器の大きさと言う意味では、大谷 翔平(日ハム)の方が、若干大きいかもしれない。それでも器の大きさは、間違いなく 藤浪晋太郎(阪神)よりも大きいでしょうし、その丈夫さという意味では、不安定さ・リスクを感じる部分があった大谷と比べると、遥かに強固なものだと評価します。

 もう彼レベルになれば、アマで得るものは最初の一年もあれば充分吸収してしまうはず。プロでも歴史的な選手になるでしょうから、いずれはプロと考えるならば、一年も早くその世界に入るべき。怪我への対策や手術なども含めてのケアも、プロに勝る環境はないはず。自分の才能、進むべき世界に何も臆する必要はありません。 私が見てきた中でも、総合的には NO.1 の投手です!


蔵の評価:
☆☆☆☆☆


(2014年夏 愛媛大会)










安楽 智大(済美・2年)投手 187/85 右/右 





                    「一皮むけていた」





選抜では決勝まで勝ち上がってしまい、2年春にピークが来てしまったのではないかと心配した 安楽 智大。その反動から、もう2年生の間には、選抜以上のパフォーマンスは期待できないかと思っていた。しかし夏の愛媛大会の投球を見ていると、選抜からまた一回り大きくなった彼の姿がそこにはあった。私の想像を越えて、この男は凄かった。





(投球内容)

 夏の甲子園、U-18のワールドカップと見てきたが、あえて打たれて敗れた夏の花巻東戦の模様を改めて見てみた。悪い時に、安楽がどのような投球をしているのか、もう一度確認してみたかったからだ。

ストレート 常時140キロ台~MAX152キロ

 夏の甲子園2戦目になった花巻東戦では、あえて球速にこだわらず相手を抑えにゆくことを試合前から宣言。実際この日の安楽は、140キロ台前半のボールが多く、要所で150キロ前後の力のあるボールを投げていた。丁寧に投げようと心がけていたが、思いの他花巻東打線は安楽のストレートを苦になくはじき返すことになる。

 安楽のストレートは、ズバーンとミットに突き刺さる爽快感抜群の球。しかし現状は、物凄く打者の手元でグ~ンと伸びるとか、ピュッと切れる空振りを取れるほどの球ではない。ただしこれだけの速球派でありながら、ボールがコーナーや低めに、要所でシッカリコントロールできる。だから思わず、うお~と叫びたくなるようなズバリ一杯のコースに投げ込み、手も足も出ない見逃しの三振が多い。

 ただ安楽のフォーム自体は、打者からすれば苦にならないフォームなのだろう。この試合では、左打者の外角高めに浮いたボールをことごとくはじき返される。緒戦の三重高校戦でも9回を11安打、この花巻東戦でも10回を11安打とイニングを上回る被安打を浴びている。

変化球 カーブ・スライダー・フォーク

 花巻東戦では、左打者が多かった。そのため速球とカーブとのコンビネーション中心に左打者に投げている。右打者に対しては、速球とスライダーのコンビネーション中心に投球を組み立て。左打者に対し、中間球であるスライダーを使えないことが、よりストレートに狙いを絞られる要因になったかもしれない。

 ひょっとするとこれだけの球速の投手なので、カーブの際に腕が緩んで球種が読まれていたのかもしれない。カーブのブレーキ・精度自体は悪くはない。スライダーは、曲がりながら落ちる代物も、花巻東戦ではコントロールに苦しんだ。U-18のワールドカップでは、フォークを結構使う場面が増えた。この球の精度が高まるかどうかが、今後変化球で相手を仕留められるかどうかの、大きな別れ目となるだろう。

その他

 クィックは、0.95~1.05秒ぐらいと、極めて高速で投げ込んで来る。牽制の技術・フィールディングの動きも基準以上。とくにとっさの反応、冷静な判断力には光るものがある。意識が高い選手なので、こういった投球以外の部分にまで追求できている。

 ランナーを背負ってからは、ボールをあえて長く持ち、走者や打者を焦らすようなことも出来ている。瞬時にいろいろなことを行える冷静さと頭の回転の良さが、この投手にはある。

(投球のまとめ)

 外角のストレートが狙い打たれるとみるや、左打者に対し内角を厳しく突く投球に切り替えてゆく。外角でピッチングを組み立てるという基本以外に、内角を厳しく突く投球もできるということが、この花巻東戦で明らかになった。

 選抜で記録した2年生最速152キロながら、夏には155キロという明確な目標を持って取り組んできた。そして夏の愛媛た大会では、MAX157キロを記録。見事その目標を、公式戦で達成して魅せた。スケールアップと技術の向上、その両方を並行して行ってこられた点が、この選手が並大抵の逸材ではない証だろう。



(投球フォーム)

1年の時も、2年選抜の時も細かくフォーム分析をしているので、要点だけに絞って今回は解説したい。

 彼のフォームで特徴的なのは、引き上げた足を抱えたまま重心を下げ、最後にピンと伸ばす非常に特殊な動きをしてきます。結果的にお尻は一塁側に深く落とせているのですが、この動作を遅らせるのに何の意味があるのかは不明。

 春に比べると重心を深く沈めることができるようになり、足の甲で地面をしっかり押し付けられるようになりました。そのため、低めにズバッと決めるという特殊技能を身につけつつあります。その半面、重心が深く沈み込み過ぎているので、前に重心が映らずボールに充分体重が乗せられていません。こうなると、打者の手元まで生きた球が行かないわけです。これだけ非凡な球速を誇っていても、苦になくストレートがはじき返されてしまうのは、打者の手元までの勢いが物足りないからなのでしょう。

もうひとつは、フォームが直線的(前の肩と後ろの肩を結ぶラインが)で、打者からは常に正対してしまいボールが見やすいということ。選抜ではもう少し肩の開きが抑えられていた感じがしていましたが、夏は若干早くなっていました。体の「開き」が早いということは、いち早く打者に球筋が読まれてしまうということ。何処にどんな球種の・どんな球が来るのか、瞬時に読まれてしまう余裕を与えてしまうということです。

この2つのことが、極めて速いストレートを持っていながら、その有難味に乏しい最大の要因だと考えます。重心の沈み込み過ぎを緩和しつつも、着地の粘りは早すぎないように気をつける。球の出どころにを隠しつつも、球威・球速を維持し腕を強く振る。ある意味矛盾する動作をいかに両立させてゆくのかという、極めて難しい命題が彼を待ち受けています。一つ間違えれば、フォームを崩しかねないこの作業にあえて挑むのか? それとも今のフォームを維持しつつ、肉体の成長でこの問題を凌駕してしまうのか? 最後の夏までに、彼がどのような取り組みをするのか注目したいと思います。



(最後に)

 春よりも、球速・球質をワンランク向上させ、ボールを低めに集める頻度も増えてきました。更にカーブで緩急をつけたり、フォークで空振りを誘えるようになったり、はたまた内角でも投球を組み立てられるまでにピッチングの幅を広げています。この選手の意識の高さ・それを成し遂げるセンスの良さには、感嘆の声しか出ません。大谷翔平(日ハム)のスケールと藤浪晋太郎(阪神)の実戦力、その両方を兼ね備えた歴史的素材になるのではないかと期待しております。

 そしてこの男が改めて凄いなと思ったのは、選抜大会での一コマ。2年生ながら、選抜大会で準優勝。普通ならば、これだけの内容と結果を残せば、少しは満足するものです。しかし彼は、決勝で敗れたあと、ひと目も憚らず涙を流します。そして後に振り返ります、選抜には良い思い出はないと。この男の目標としているものが、他の選手とはあるいは常識的なものとは、明らかに違うところにあるのだと。この男が伝説になるのは、そう先のことではないはず。


(2013年夏・甲子園)









安楽 智大(済美2年)投手 186/87 右/左 
 




                   「ちょっと頑張り過ぎちゃったね」





新2年生ながら、大会屈指の投手として注目を浴びた 安楽 智大 。甲子園での活躍は予見できても、まさか決勝まで勝ち残り、ここまでの熱投をするとまでは予想できなかった。最後の夏ならいざ知らず、2年春の時点でここまでの投球をしてしまったことが、彼の将来にマイナスに作用しないかとむしろ心配になった。

(投球内容)

 選抜では、5試合に登板。緒戦に延長13回を投げきり、決勝の6回で途中交代するまでは、すべて一人で投げ抜いた。それもただ投げ抜いただけでなく、150キロを超えるようなスピードボールも投げていたわけだから、並の消耗度とは違う。それもまだ新2年生になったばかりの投手であり、体の消耗だけでなく、精神的な燃え尽きも心配になる。

ストレート 140~152キロ

 選抜緒戦の広陵戦から、150キロ前後の球速を連発。ただこの試合では、ボールこそ両サイドに散っていたものの、殆どのストレートが真ん中~高めのゾーンに集まっていた。秋季四国大会では、ここまでボールが上吊っていた記憶はない。

 それでも打ち込まれなかったのは、コースにコントロールされることが多かったのと、ボールがしっかり来ていたから。ただこの試合では、いつもよりは力みなのか、コントロールがアバウトだった気がする。広陵戦では、13イニング6四死球だったが、2試合目となった済々黌戦では9回を完投して3四死球と元に戻っていた。

変化球 スライダー・カーブ

 主な変化球は、縦に鋭く切れ込んで来るスライダーにある。この球の鋭さ・曲がりは確かなものがあるが、広陵戦では早く曲がりすぎてしまいカウントを稼いだり、空振りを誘うことが出来なかった。このスライダーを制御しきれないことは、秋の大会でも見られた傾向。

 カーブに関しては、よほど余裕がある時じゃないと使って来ない。秋にも書いたが、ここまで腕の振りが強すぎる投手はスライダーの曲がりが大きくなり過ぎてしまう。そういった意味では、カットボールなどの、もっと小さな変化でカウントを整えることを覚えるべきだろう。

その他

 昨秋に比べると、更に牽制が上手く鋭くなった気がします。特に二塁への牽制などは、かなり冬の間に練習を重ねたのではないのでしょうか。また秋は、1.0~1.2秒ぐらいだったクィックが、コンスタントに1.0秒以下で投球できるようになり、そういった部分を磨く意識の高さがあります。一見動きの鈍そうな体型ですが、フィールディングも上手くバッティングも良いので、野球センスの高さを感じます。

(投球のまとめ)

 あの上甲監督をして「志しが高くていうことがない」と言わしめるほどの意識の選手であり、その辺はクィックや牽制などにも努力のあとが伺えた点からも感じます。

 球種は少ないのですが、ストレートでもカウントや状況次第で強弱をつけ、しっかりカウントを整えることができます。秋~春の一冬の間にも、投球全体のパワーアップに成功したと評価できるのではないのでしょうか。





(投球フォーム)

 物凄く何か秋から変わったという感じはしなかったのですが、フォームの観点からどうだったのか考えてみたいと
思います。彼の場合、引き上げた足を軸足に絡めるような感じに動かし、中々空中でピンと伸ばしません。更にテイクバックも大きく広げ、かなり独特のフォームではあります。

<広がる可能性> 
☆☆☆

 引き上げた足を中々ピンと伸ばさないので、体を捻り出す時間に間に合っているのか疑問が残ります。何千という野球選手のフォームを分析してきましたが、あまり例のないフォームで私自身戸惑います。そのため見分けの難しいカーブで緩急をつけたり(投げていますが緩みます)、フォークのような縦の変化に適しているのかは疑問です。

 ただ「着地」までの時間は早すぎることはないので、カーブやフォーク以外の球種ならば、ものにできる可能性は十分あるでしょう。腕の振りが鋭すぎるので、ボールが早く大きく曲がり過ぎてしまい、その制御に苦労するかもしれませんが。この選手の場合は、カットやツーシーム・スピリットなど球速豊な小さな変化球が合うと思います。

<ボールの支配> 
☆☆☆

 グラブは最後まで体の近くにはあるので、両サイドへの投げ分けは安定。ただ足の甲での押し付けが深く出来ていないので、どうしても力を入れて投げてしまうと、真ん中~高めに浮いてしまいがち。「球持ち」自体は悪くないし、ボールに強弱つけられるように、指先の感覚はそれほど悪いようには思えません。

<故障のリスク> 
☆☆

 お尻の落としは出来ていますが、ひねり出しが遅いのがどう影響が出るのかわかりません。しかし現状は、カーブやフォークは殆ど投げないので、悲観する必要はないでしょう。

 問題は、腕振り下ろす角度に問題があります。テイクバックした時に、ボールを持っている肩が上がり、グラブを持っている肩が下がっているように、腕の振り下ろしに無理があります。秋はここまで無理な感じはしなかったのですが、選抜ではまるでバッティングマシーンみたいに縦に腕を振っていました。これだと、肩を痛める可能性は否定できません。

<実戦的な術> 
☆☆☆

 「着地」までの粘りは平均だったものの、以前は「開き」が早い傾向にありました。しかしこの選抜では、だいぶその辺は改善されつつあるように思います。より秋よりも、ストレートを速く効果的に見せることが出来ていたのではないかと評価します。

 腕を強く振ることができるので、変化球がシッカリコントロールできれば見極めは困難。ボールにも適度に体重が乗せられており、打者の手元まで生きた球が行きます。剛球タイプですが、下半身を使って投げることができるのは、この選手の大いなる強味です。

(投球フォームのまとめ)

 昨秋と比べると、目に見えて大きくはいじっていないように思います。ただ角度をつけすぎて肩への負担が大きくなったことがマイナス要素。その一方で、最大の課題である「開き」が、少し改善されていたのがプラスポイントでしょうか。

 ただいぜん足の甲の押し付けができず、ボールが上吊るフォームを改善できないでいる。こう考えると、トータルではプラス・マイナス0ではないかと思います。この辺のフォームの違いも、何処まで意識的に行われたのか、偶然なのかまではわかりませんでした。

(最後に)

 秋からの爆発的な成長は感じられなかったものの、着実な進化は感じられました。そういった意識・取り組みの問題は、この選手に限ってはなさそう。

 ただ選抜にあまりに頑張り過ぎてしまったので、その反動はしばらく出るだろうなといった気はしています。ここから最終学年に向けて、いかに投球の幅を広げつつ、さらなるレベルアップを試みて行くのか。大いに気にして、見守って行きたいとおもいます。2014年度の目玉的な存在になることは、ほぼ間違いないでしょう。

(2013年 選抜)









安楽 智大(済美1年)投手 186/87 右/左 





                        「まさに怪物」





 こういった言葉を安っぽく使うのは嫌いなのだけれども、186/87 の骨太の体格から、1年生ながら150キロを越えるストレート投げ込むその姿は、この言葉を使わざる得ない。この怪物、ただ球が速いわけではない。あの名将・上甲監督をして「志しが高くていうことがない」と言わしめるだけの選手であり、実際その投球でも頭の良さと意識の高さを感じさせる。こういった馬力型の投手で、そういったものを感じさせてくれる選手は、極めて稀だと言えよう。





(投球内容)

 ノーワインドアップながら、堂々とマウンドに足を広げて立ちはだかります。足を勢いよくグッと引き上げるのですが、軸足一本で立った時に膝から上が真上に伸びきることなく、適度に余裕があるので余計な力みが入らないのが素晴らしいところ。

ストレート 常時140~MAX151キロ

 投球の7割ぐらいは、ストレートで組み立ててきます。普段は、打者の外角にキッチリボールを集めて来る。またボールが先行すると、140キロ前半の球速で少し力を抜いてカウントを整えてきます。そのため四球で自滅するといった、そういった危うさはありません。

勝負どころになると、145~150キロ級の力を入れたボールを投げ込みます。思わずこの時の球がビシッと決まった時は「うぉ~」と声をあげてしまう代物。ただフォームとしては、「開き」が早く比較的合わせやすい特徴があります。それを球威と勢いで、圧倒しようとします。

変化球 スライダー・カーブ

 非常に上半身の腕の振りが強いので、スライダーの曲がりの幅が広いのが特徴。曲がりが大きく空振りは誘えますが、更に腕の振りが強くなると曲がり過ぎて見極められてしまう可能性があります。これは、腕の振りが強すぎる選手に見られる傾向で、こういった選手はカットボールなどを身につけた方がコントロールも、投球としても実戦的になります。一応カーブのような緩い球もありますが、余裕がない時は使いません。

その他

 牽制に関しては、平均~中の上ぐらい。クィックは、1.0~1.2秒ぐらいにまとめるなど、まずまず。フィールディングも上手く、総合的な野球センスの高さを伺わせます。

(投球のまとめ)

 自分の身体の力の入れ加減を調整できるので、カウントを整えたり、メリハリがつけられます。特に「間」を意識するとか、微妙な駆け引きやコースの出し入れをするような投球術の巧みさはありませんが、投球を適度にまとめるセンスがあります。

 野球への意識も高そうですし、創意工夫も重ねて問題意識も改善して行けそうなタイプ。いったい3年夏までには、どのぐらいの投手になっているのでしょうか。今から、非常に末恐ろしい存在です。素材に頼りきらないところは、世代を引っ張って行ける資質をの高さ感じます。





(投球フォーム)

<広がる可能性> 
☆☆☆

 引き上げ足をかなり二塁側に送り込んで、中々ピンとまっすぐ伸ばしません。その分、身体を捻り出す時間が遅れてしまい、十分な捻り出す時間を確保できているのかは微妙です。それでもお尻が一塁側に落とせているのには、好感が持てます。そういった意味では、カーブで緩急をフォークで空振りをの可能性は感じられます。

 「着地」までの粘りは、捻り出しが遅れるために、十分かと言われると疑問です。現状、絶対的な変化球がないのも、ここが影響しているのかもしれません。方法としては、足をピンと伸ばす動作を、幾分早く明確にすべきではないのでしょうか。

<ボールの支配> 
☆☆☆

 グラブは最後まで内に抱えられているので、両サイドへの投げ分けは安定。ただ足の甲での地面の押しつけができず、膝小僧は地面についていても、スパイクが立ってしまいエッジが活かせていません。そのためストレートは、真ん中~高めに集まりやすいのではないのでしょうか。「球持ち」・「指先の感覚」といった意味では、平均的ではないかと思います。現状は、外角にはボールを集められますが、少しボールが高いことが多いですね。

<故障のリスク> 
☆☆☆

 お尻は一塁側に落とせるのですが、捻り出しが遅れるぶん、多少身体への負担はあるかもしれません。腕の角度も結構つけているのですが、それほど無理な投げ下ろしではないので、負担は大きくないように見えます。ただ上体を尋常じゃなく強く振るので、フォームに無理が少なくても疲労の蓄積は十分考えられます。アフターケアには、十分に注意して、取り組んでほしいとおもいます。

<実戦的な術> 
☆☆☆

 「着地」までの粘りは平均的ですが、やや「開き」が早くなっている影響で、球筋をいち早く読まれてしまいます。そのため、これだけの豪球の割りには、意外に空振りが奪えないで合わせられてしまうケースが目立ちます。

 腕の叩きつけは素晴らしく、中々ここまで腕が振れる選手はいません。これで好い変化球を身につけられたら、中々見分けるのは困難でしょう。逆に緩んでしまうと、余計に目立つ危険性もはらみます。

 ボールに体重を乗せるのは結構上手く、力を入れた時のボールの力感・勢いにはみるべきものがあります。けして上半身だけで投げているフォームではありません。あとは、指先の感覚を磨いてもっとボールにバックスピンがかけられるようになると、更に回転の好い球が期待できるのではないのでしょうか。

(投球フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「体重移動」「開き」の観点でいえば、「体重移動」こそ素晴らしいのですが、「球持ち」「着地」は平均的、「開き」に関しては課題を残しています。意識の高い選手なので、この辺の難しい問題も、改善して行こうときっとすることでしょう。

 「開き」を修正する場合は、無理に前の開きを抑えようとするのではなく、突き出すグラブを斜め前に差し出すなど、打者に対し身体がまっすぐになる時間を減らすことです。開きを無理に抑えようとすると、腕が振れなくなり、強い腕の振りが妨げられてしまうので注意が必要です。





(最後に)

 この投手は、ただ破格に球が速いとか、凄い投球をするという素材型ではけしてありません。非常に意識も高いので、これから大きな故障や方向性を間違わない限りは、かなりの確率で伸びて行けることでしょう。

 その成長を、段階を踏んで感じることができるタイプであり、世代を引っ張って行く存在になってくれるはず。多大な期待をかけても、きっとそれに応えてくれると思います。全国のみなさん、選抜を期待して待っていてください。


(2012年 秋)