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伊藤 諒介(法大)三塁&左翼 172/78 右/左(神港学園出身) |
(どんな選手?) 神港学園時代は、あの中田翔(日本ハム)の高校通算本塁打を塗り替え、94本もの本塁打を放った小さなスラッガーです。法大に進学した今春も、いきなり11試合に出場し、2本塁打・6打点・打率.300厘と言う好成績を残しました。次代の六大学のスター選手として、その成長が期待されます。 (打撃内容) 神港学園時代も言った通り、凄まじいスイングをする選手です。前足を軽く引いて、グリップを高く捕手側に強く引いて構えます。そのため構えから力みが感じられるのが、なんとも惜しいところ。もう少し力を抜いて、余裕を持って打席に入れると好いですね。 仕掛けは「遅めの仕掛け」に属するように、ギリギリまでボールを引きつけ、一気に叩く生粋のスラッガー。足をほんの少しだけ浮かし、ベースに離れた方向に踏み出すアウトステップ。踏み込んだ足元は、なんとかブレずにスイングできますが、その足が早く地面を離れるので、基本は引っ張って巻き込むタイプ。そのため外角低めへの対応は、かなりつらそうです。 トップを比較的早くつくるので、速い球にも立ち遅れません。振り出しの角度も悪くなくアッパースイングですが、大きな弧を描きながら、何よりフォロースルーを豪快に使ってきます。振り終わったあとに、グリップが高い位置まで引き上げられており、ボールを遠くに運ぶことができます。目線のブレは小さいのですが、腰の逃げは早く、身体が前に突っ込む傾向があります。すなわち前のカベが、早く開いてしまいがちです。 身体は小さいのですが、身体に非常に力がある上に、仕掛け・フォロースルーなどの動作が、生粋のスラッガーであります。この選手が、この体格でも高校通算本塁打を塗り替えたのには、天性のスラッガーとしての資質を持っているからです。 (守備・走塁面) 三塁手としては、キャッチング・フットワーク共に、危なっかしく見えます。打球への反応や肩はまずまず強くスローイングは好いので、もう少し安定してくれば三塁を任せられるかもしれません。 走塁も塁間4.35秒前後と、左打者の基準である4.2秒には、かなり劣ります。現状、守備・走力でのアピールには欠け、やはり打撃で勝負といったタイプです。 (今後は) 問題は、研究され外角中心の配球をされた時に、以下に結果を残せるかでしょう。ただ現時点では、左方向への打撃には課題を残すだけに、秋以降の成績が心配です。そういった欠点を一つ一つ乗り越えて行ける資質があったならば、素晴らしい記録を残すのではないのでしょうか。彼の長打力は本物だけに、安定して使ってもらえるだけの確実性・守備力・走力の向上を望みたいと思います。六大学の本塁打記録を、ぜひ塗り替えて欲しい逸材です。 (2011年 春季リーグ戦) |
伊藤 諒介(兵庫・神港学園)三塁 171/77 左/左 |
選抜までの通算本塁打は、61本。巨人を始め多くのスカウト達も注目していたスラッガー・それが、伊藤 諒介だ。伊藤は、選抜緒戦の高知高校戦でも、我々の度肝を抜く本塁打を放ち、その片鱗を示してくれた。 (プレースタイル) 上背こそ170センチソコソコだが、足がぶっとく下半身の筋力は図抜けている。またそのスイングは凄まじく、選抜組ではダントツのヘッドスピードと迫力のあるスイングの持ち主。このスイングをみれば、高校通算60本塁打以上放っていることは疑いようのない事実であり、球場の大きさ・金属バットの恩恵など無縁の打者であることがわかる。 (守備・走塁面) 一塁までの塁間は、4.4秒強と、左打者としては基準である4.2秒を大きく下回る脚力持ち主。実際秋の成績も、36試合で8盗塁と全く動けないわけではないが、足を売りにするタイプではない。 ただ収穫だったのは、三塁手としての最初の一歩目の判断力・打球への反応に優れていた点だ。三塁手にもっと必要な打球への反応のみならず、キャッチング・スローイングも悪くない。特に地肩も強く、上のレベルでも三塁を担って行ける素材だろう。そういった守備面で、足を引っ張ることがないのがわかったのは、この大会での大きな収穫だった。 (打撃内容) 物凄いスイングを実現できる筋力の持ち主で、このスイングで狙っているのはみんなライトスタンドではないかと言うスタンドプレーヤー。いつも、こういうスタイルで野球をやっているような選手なので、全くチームプレーや状況に応じた打撃などができなそうもないところが意見の別れるところだが、プロと言う世界は、圧倒的な資質が求められる世界。中途半端にチーム打撃に徹する高校生など、私はプロ向きではないと考える。体格・粗さに関係なく、高校生がこれだけのスイングができ、打球をかっ飛ばせるところを、あえて評価してみたい。 (打撃技術) 前足を引いて、グリップを高めに添えた強打者スタイルです。あらかじめ捕手側にグリップを引いて構えており、腰の据わりは好いのですが、かなり前の肩が内に入り込む癖のある構えです。グリップを揺らぐなどして、自分のリズムは刻めておりますが、明らかに肩に力の入り過ぎている構えには、疑問が残ります。 仕掛けは「平均的な仕掛け」を採用する、中距離・ポイントゲッタータイプと言うのが、この選手の本質なのかもしれません。足を軽くあげて、ベース側にインステップして踏み込んできます。外の球を強く叩ける一方、内角への捌きは窮屈なスタイルです。その足もとが、インパクトの際にブレないのは好いです。外の球にも、カベを作れる下地はあるので、何でも引っ張ってやろうと言う意識さえ捨てれば、幅広い打撃も期待できます。 あらかじめ捕手方向にグリップを引いているので、打撃の準備段階であるトップを作るのは遅くはならないはずです。しかしこの選手は、グリップを必要以上に内に引き込むので、動作が余計になり忙しいです。そのため速い球にも差し込まれやすいのでしょう。上から叩きつぶすようなスイングでありながら、最後は強烈なフォロースルーで、ボールを遠くに運びます。肉体の強さだけでなく、技術的にもボールを遠く運べる術を持っております。 ただボールを捉えるまでに余計な動きが多く、その対応力は低いです。無駄な動作を取り除くことと、センターから左方向への意識も持つことで、打撃の幅は広げて行けそうです。 余計な動きが多いので、頭の動きは大きいです。身体の開きは我慢出来ておりますし、軸足仁も強さを感じさせます。ボールを遠く運べる、肉体的な資質には恵まれていることは確かです。 (今後に向けて) 体格如何に関係なく、これだけのスイングができるのは才能です。またプロレベルでも通用しそうな、三塁手としての適正がある点も見逃せません。ただ技術的には癖が強く、まだまだ粗いです。また将来的には、プレーの意識を根本的に変えて行かないと行りそうです。 私が観る限り、確かに細かい部分を気にするタイプには見えません。しかしながら素振りの時には、身体を絶対に開かないように足下に注意を払っております。またアウトになるのがわかっていても、一塁まで勢いを緩めようとしない真摯な姿勢も垣間見られます。守備でもボールをきっちり丁寧に捕球する姿勢なども観られるなど、一見スタンドプレーヤーにも見えるタイプですが、これは今の環境で彼が求められているものを最大限に発揮する方法だからだと判断しました。プロと言う環境の中では、また彼の違う側面が期待できる人間的な幅や技術的な土台はあるのではないかと私は観ております。そのため上のレベルにまざれば、必要に応じた変化も期待できるのではないのでしょうか。 ただ個人的には、こういった選手こそ、アマではなくプロが育成すべき素材だと思います。下位指名から育成枠レベルの素材と言うのが現状の評価になりますが、夏まで追ってみたいと思わせてくれる選手でした。あえてこの時代に、中途半端に陥らない打撃ができる、これまた一つの個性であり、一部の許された者のみができる特権です。中途半端なレベルで、バランスの取れている選手などプロは入りません。まだまだ高校生ですし、あえて彼の個性を才能として評価したいと思います! 蔵の評価:追跡級! (2010年・選抜) |