14dy-1



 
amanatu.com





中村 奨吾(ロッテ)内野手のルーキー回顧へ







 中村 奨吾(早稲田大・4年)二塁 180/75 右/右 (天理出身)
 




                「数字ほど悪くはないと思うが」





今シーズン期待の高かった 中村 奨吾 は、12試合 2本 6打点 3盗塁 .239厘 と、ドラフト上位候補としては寂しい成績で終っている。まして大学野球最大の舞台である 全日本大学選手権 に、最終学年出場できないということは、夏の甲子園に出場出来なかったようなものだから。しかし私が見る限り、中村の内容がそれほど悪いようには見えなかった。芯で捉えた打球でも野手の正面を突くことも多く、内容的にはそれほど悲観するほどのことはないと考えている。


(走塁面)

 一塁までの塁間は、3.95~4.15秒ぐらいで駆け抜けることが多い。これを左打者に換算すると3.9秒~3.7秒ぐらいであるから、プロに混ぜてもトップクラスの快速であることがわかる。しかしながら、彼の今シーズンの盗塁数は僅か3個。多いシーズンでも5個ぐらいと、際立つ数字ではない。

 彼ほどの走力があれば、7,8個~10個以上は記録して欲しいところだが、現状の彼のプレースタイル・意識・技術からして、そこまで突出した数字は期待できない。彼がプロで生き残る術として、足というものを明確に自覚できるまでは、走力でのアピールはあまり期待できないだろう。

(守備面)

 やや腰高なのと、スローイングが少し雑なところが気になります。それでも今シーズンの失策数は0であり、安定感は悪くありません。特にこの選手は、大型でも必要なときに素早く動けます。カバーリングやポジショニングなども悪くなく、二塁手としてゲームメイクできるディフェンス力があります。特に遊撃手としては厳しいのですが、二塁手に固定すれば充分な成果は期待できるでしょう。特に日本人の二塁手としては稀な強肩の持ち主でもあり、深いところからの送球やゲッツーを多く奪える今までの日本人プレーヤーには見られないスケールの大きな守備。

 まだまだ技術的には粗い部分はありますが、肩・足というポテンシャルの高さは、破格の選手だと言えます。

(打撃内容)

 個人的にはボールへの対応力にピンと来るものはないのですが、常に強烈な打球を放つように、肉体のポテンシャルの高さ・体の強さには目を惹くものがあります。今回は、オフシーズンに作成した際に行ったフォーム分析と比較して、今シーズンの打撃フォームを考えてみましょう。

<構え> 
☆☆☆

 両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップは高めに添えます。腰の据わり具合・両目で前を見据える姿勢・全体のバランスなどもそれなりで、昨秋から大きくは変わっていないように思います。やはり特に悪くはないのですが、少し固く感じさせる構え。まだ余計な力が、入っているのかもしれません。

<仕掛け> 平均的な仕掛け

 昨秋までは「遅めの仕掛け」を採用していましたが、今年は投手の重心が下がりきったあたりで始動する「平均的な仕掛け」を採用。これは、ある程度の対応力と長打力をバランスよく兼ね備えた、中距離打者やポイントゲッターが多く行う仕掛けです。しかし仕掛けは選手のタイミングの根本なので、この辺が打撃を狂わせた要因かもしれません。

<足の運び> 
☆☆☆

 昨秋に比べると、始動~着地までの時間に余裕があり、速球でも変化球でもスピードの変化に幅広く対応しやすくなったはず。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でも対応しやすいサイドへの対応もオールマイティーに。踏み込んだ足元もブレないで、外角の厳しい球や低めの球にもついて行けます。しかし元来は、引っ張って巻き込む打撃を得意としています。

<リストワーク> 
☆☆

 早めに打撃の準備である「トップ」の形をつくり、速い球に立ち後れないようにしています。しかしバットの振り出しは体から離れて振り出す傾向にあり、更にバットの先端でもあるヘッドも下がり相当遠回りなドアスイングになっていました。これは昨秋よりも悪くなっており、ヘッドスピードの速さでも補いません。スイングする際に、バットの先端であるヘッドを少し立てるような意識で振れると、もう少し綺麗に振り抜けるのではないのでしょうか。

<軸> 
☆☆☆

 足の上げ下げはあり、目線の動きは平均的。体の開きは我慢出来ていますが、多少軸足が前に崩れがちで、体がツッコム傾向にあるのかもしれません。体が突っ込むと、どうしても早く開いて打てる球が限られてしまいます。

(打撃のまとめ)

 よりいろいろな球を打てるようにと、始動を早めたりと意識的に心がけたのかもしれません。しかしこの選手は、元々甘い球を逃さず叩くような打撃を持ち味としており、なんでも捌きたいという器用さには向かないタイプ。またその打ちたい気持ちが優先したのか、体が前に突っ込んだりして開きの早いフォームになってしまってます。それが余計に、スイング軌道の悪化につながるなど、打撃の悪循環に陥ったのではないのでしょうか。

 元々私は、あまりこの選手のボールを捉える感覚は評価していません。しかし甘い球を逃さない集中力と打ち損じの少ないヘッドスピードの速さがあったので、打てる球は限られていても結果を残すことが出来ていました。しかし今シーズンは、その辺が狂ってしまったように思います。


(最後に)

 始動のタイミングは、合わないと思えば戻すことは難しくはありません。まして大きな怪我をしたわけでもないので、元々持っているポテンシャルが損なわれたわけではないでしょう。そういった意味では、素材としての魅力は薄れてはいません。

 入団すぐに、セカンドのポジションを空けて待っているような球団が、1位の枠を用意すべきかと思います。逆に彼に他のポジションを期待したり、競争を煽る意味で獲得すべき選手ではないように思います。

 一年目から即大活躍することはないと思いますが、経験を重ねるうちに何かを掴んで成績をあげて来るタイプだと考えます。持っている資質は破格のものがあるので、上手く才能が爆発すれば今までの日本人にはいないような新たなセカンド像が浮かび出てくるかもしれません。個人的には好みのタイプではないのですが、上位指名は揺るがないと評価します。

蔵の評価:
☆☆☆


(2014年 春季リーグ戦)










中村 奨吾(早稲田大・3年)二塁 180/75 右/右 (天理出身) 
 




                    「身体能力は破格」





天理時代から、バッティングにピンと来るものがなく、あまり真剣に見ることがなかった 中村 奨吾 。そんな中村が、ドラフトで野手の目玉的存在だと訊いて、何言っているんだと思っていた。パンチ力がある打撃と二塁手ができるということだけで持ち上げられているのかと思っていたが、今回じっくり見ていみて 快速・強肩 の身体能力の持ち主だとハッキリ認識した。確かにドラフト1位の可能性を秘めた、破格のポテンシャルの持ち主だった。


(守備・走塁面)

 一塁までの塁間は、右打者ながら3.95秒前後。これを左打者に換算すれば、3.7秒前後に匹敵する。通常3.8秒を切るような脚力があれば、プロでも足を売りにできる快速レベル。単純に塁間のタイムだけ見れば、プロでもトップランクであることがわかる。

 二年春に5盗塁・三年春に4盗塁と、その走力の片鱗を魅せる。しかし彼ほどの走力があれば、1シーズン10個近い数字も期待できるはず。3番という打順などもあるのかもしれないが、最終学年では遠慮なく走塁でアピールして欲しい。実際にプロで盗塁する技術・センスがあるのか、最終学年では見極めて行きたい。

 二塁手としては、やや腰高の捕球が気になります。それでも捕ってから素早く動いたり、余裕があるときは無理なく送球したりと、プレーに強弱をつけることができます。また日本人の二塁手としては稀なぐらい地肩が強いので、細かい動きはできなくてもノーステップからの送球や難しい体勢からアウトができたりと、ゲッツーを多く奪える二塁手。

 それでいてベースカバーなどポジションニングも悪くなく、安定感があるかはともかく、凄いプレーを魅せてくれる、そんな二塁手であるように思います。日本人で、こういったプレーで魅せるセカンドは中々いません。あとは、確実性など安定感がどのレベルなのか、この一年で見極めてみたいと思います。

 単純に走る・地肩 などの部分では、破格の二塁手だと言えます。あとは、技術・センス・安定感などを加味しながら、今後の位置づけを見極めて行きたいところ。守備・走塁におけるアピールは十分で、彼がドラフト上位候補と言われる理由はよくわかりました。


(打撃内容)

 ちょっとバットが下から出るのが気になるのですが、秋は4本塁打を放つなどパンチ力があるのが魅力。ただこれまで私が気にして来なかったのは、根本的にボールを捉える感覚にピンと来るものが感じられなかったから。それは、今でも変わりません。

<構え> 
☆☆☆

 前の足を軽く引いていますが、ほぼスクエアスタンス。グリップは高めに添えられていますが、バットは倒して構えています。腰の据わり、両目で前を見据える姿勢・全体のバランスと悪くはないのですが、体を揺らいではいるものの少し固く感じます。

<仕掛け> 遅すぎる仕掛け

 開いていた足を一度戻してつま先して、そこから再度リリース直前に動き出す「遅すぎる仕掛け」を採用。ここまで遅い仕掛けだと、プロレベルのキレ・球速には厳しい気が致しますが、国際大会でも実績を残しているだけに、一概にそうは言えないかもしれません。これだけ遅い仕掛けを使っても、それに負けない体の強さがあります。

<足の運び>
 ☆☆☆

 始動~着地までの「間」が殆どないので、あらかじめ狙い球を絞り、その球を逃さないことが求められます。真っ直ぐ踏み出して来るように、内角でも外角でも打ちにはゆきます。しかし基本は、真ん中ならば低めや外角など、腕がしっかり伸びるポイントを得意にしています。踏み込んだ足元はインパクトの際にもブレないので、低めや外角に喰らいつくことができます。右方向への打球も可能ですが、やはり引っ張る打球の方が断然良い打球が飛びます。

<リストワーク> 
☆☆☆

 打撃の準備である「トップ」を作るのは、自然体で特に可も不可もなし。高校時代は、これが遅れることが多かったのですが以前よりは気にならなくなりました。特徴としては、非常に深くトップを作るので、弓矢の弓を引くがごとく、強い反発力が期待できます。

 気になるのは、振り出しの際に肘が下がって遠回りに軌道すること。高校時代もロスのあるスイングはしていたのですが、素早いヘッドスピードと金属バットの反発力で補っていました。そのためスイングの弧は大きめですが、ある程度腕を伸ばしてスイングできることが、この選手には不可欠。フォローするーも使えるので、体幹の強さだけでなくボールを運ぶこともできます。ある意味で、天性の長距離砲としての資質があるのかもしれません。

<軸> 
☆☆☆

 
足の上げ下げが小さいので、目線は上下に動きません。体の「開き」も我慢出来ていますが、軸足が前に倒れたりと体が突っ込む危険性があります。調子が悪くなった時に、自分からボールを追わないことが一つ条件ではないのでしょうか。

(打撃のまとめ)

 ボールを捉えるセンス・技術には相変わらず疑問を持ちますが、これでもある程度打ててしまうポテンシャルの高さと、ボールを遠くにかっ飛ばせる長打力には非凡なものを感じます。その見た目以上に、プロでは長打力を売りにしてゆくかもしれません。打撃では少し時間がかかるかもしれませんが、我慢して起用したくなるだけの魅力は、この選手にはあります。


(最後に)

 
走塁・肩だけでなく、長打力を含めたポテンシャルは、今年のアマ球界でも屈指の素材ではないのでしょうか。ただし根本的な対応力の無さ・粗さはあり、打撃で全然打てない、そういった可能性も否定できません。それでも二塁を守れる付加価値も加わると、上位指名は揺らがないでしょう。個人的にもこの一年間、その性格や意識も含めて、詳細を詰めて行きたいと思わせる選手でした。


(2013年・秋季リーグ戦)








中村 奨吾(奈良・天理)中堅 178/72 右/右 


(どんな選手?)

 強力打線である天理の3番打者を務める選手です。鋭いヘッドスピードの持ち主で、三拍子バランスの取れたプレーができます。

(守備・走塁面)

 新チーム結成以来の32試合で11盗塁は、チーム2位の成績。ただ一塁までの塁間を計測した時は、4.7秒ぐらい(左打者換算で4.4秒に相当)と基準レベル以下。実際もっと走り抜けることができるのかもしれないが、上のレベルで足を売りにするのは難しいかもしれない。

 残念ながら、この試合では守備面・地肩に関してもよくわからず。もし他の試合で見られる機会があったら、もう少しこの辺にも注目してみてみたい。

(打撃内容)

 鋭いスイングで、野手の間を抜けて行くのが、この選手の元来の持ち味なのだろう。実際気になるのは、構えた時に、少し猫背気味で力感が感じられない。もう少し背筋を伸ばし構えたい。

 仕掛けは、「平均的な仕掛け」を採用するなど、中距離・ポイントゲッタータイプ。彼のような野手の間を抜けてゆくのが持ち味ならば、更に始動を早めて余裕を持たせた方が良いのかもしれない。

 足を軽く引き上げ、真っ直ぐ踏み込むオーソドックスなスタイル。真っ直ぐ踏み込んだ足元がブレないのは良いのだが、打撃の準備段階である「トップ」を作るのが遅れ気味で、インパクトの瞬間にもバットの先端が下がってしまい、ボールを捉える面積が小さいので、ヒットの確率が低い。その辺の欠点を、鋭いヘッドスピードと金属バットの反発力で誤魔化すことはできるが、木製バットでは厳しいのではないのだろうか。

 ただ、頭の動きは小さく目線はブレないのは良い。体の開きも我慢でき、軸足もソコソコ安定するなど、波の少ない打撃は期待できそう。選抜で結果が残せなかったことを糧に、ぜひ夏に向けて取り組んで欲しい。

(今後は)

 これだけの打線の中軸を任されている実績からも、地元関西の大学などに進んで、野球を続けて行ける素材だとは思います。ただ、まだまだ技術的にも課題がありますし、守備・走塁などでもアピールできるレベルまで引き上げて欲しいですね。特にビシッとした体作りを行い「強さ」を磨いて欲しいと思います。

(2010年 選抜)