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島袋 洋奨(中央大・4年)投手 173/71 左/左 (興南出身) |
「元に戻せるのか?」 150キロ近い球を投げても、面白いようにはじき返されていた 島袋 洋奨 。ストライクを取るのにも四苦八苦していたその姿からは、興南高校時代・春・夏連覇した投手の面影は微塵も感じられない。無残なまでの投球で、一気に評価を落とした春のシーズン。しかし秋のシーズンも、復調の兆しすら見えないまま最後のシーズンを終えていった。果たして、プロの世界で復調は可能なのか? 考えてみた。 (投球内容) トルネードをしていても、けして打者からは合わし難いフォームではありません。 ストレート 常時140キロ前後~中盤 春jは、球速は出るものの、コントロールがめちゃくちゃ、面白いように打たれるような内容でした。この秋見た時は、春よりは若干まとまりを取り戻していたものの、球速は以前より落ち、コントロールも不安定で、まだまだ復活しているとは言いがたいものです。むしろボールに凄みを感じた春の方が、望みを抱ける内容だったと言えるでしょう。 変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップ・ツーシームなどなど 球種はひと通りありますが、これはという球は右打者外角に沈むチェンジアップだかツーシームのような球ぐらいでしょうか。投球の核になるものがなく、投球がしっかり組み立てられません。春の寸評に書いたのは、執拗に内角を突こうとして被弾していたので、外角でキッチリ投球を組み立てられるようにすること。しかしまだ、それが充分できているとは言いがたいものがあります。 その他 牽制は極軽いもので、走者を刺すためというよりは「間」を一息入れるため。クィックは、1.15~1.25秒ぐらいと平均的。元々は、1.0秒前後の高速クィックもやっていた選手なので、投げ急がないようにバランスを意識していたのかもしれません。フィールディングなども天性のものがあり、そういったセンスは元々並外れています。 (投球のまとめ) 高3~大学下級生時のピーク時に比べると、本当にどうしてこんなになってしまったのかと愕然とするしかありません。秋の内容をみても、本当にプロで立て直すことができるのか?という不安はあります。しかしながら5位指名というプレッシャーのかからない順位・結果をすぐに求める必要のないソフトバンクというチームに入ったことは、彼にとってこの上ないラッキーになったのではないのでしょうか。過去の実績・内容を加味すれば、この順位での指名は、非常に現実的であったように思います。 (成績から考える) 今年の成績は、 4年春 6試合 0勝2敗 14回2/3 17安打 17四死球 12三振 防御率 6.75 4年秋 5試合 2勝2敗 16回1/3 15安打 19四死球 11三振 防御率 4.41 数字だけ見ると、若干被安打が少なくなり、防御率が下がっているので、春よりは少し良かったかなと思える部分はある。しかしとても、復調の兆しがといえる内容ではなかったのは、実際の投球を見た感想と変わらなかった。 (最後に) 恐らくプロ入り後は、一からフォームを見直すことから始めることになるのではないのでしょうか。そういった過程を経て一線に戻って来るのには、最低1年ぐらいはかかりそう。即戦力という考えは球団も持っていないでしょうし、本人にも焦るような状況ではないことは、十分わかっていると思います。ここは一つ腰を据えて立て直しを図れば、大学の3年生ぐらいの投球を取り戻すことぐらいまでは、充分出来るのではないかと思います。問題はそれだけではプロで大活躍するのは厳しいので、その後のプラスαまで望めるかと言われると、懐疑的にならざるえません。あえて大学三年時の内容を基準として考えて、最終評価にしようと考えます。ことの問題が、私が春感じていた以上に深刻だと思えて、春よりもワンランク評価を下げたいと思います。 蔵の評価:☆☆ (2014年 秋季リーグ戦) |
島袋 洋奨(中央大・4年)投手 173/71 左/左 (興南出身) |
「オレにもわからん」 ブルペンでは凄い球を投げているのに、試合になるとストライクが入らなくなる。あるいは150キロ近いストレートを、簡単に振りぬかれてしまう、そんな今シーズンの不調は、私には図りかねぬものがある。それは、今シーズンのフォームを分析したり、実際の試合を見ても、なおさら謎が深まるばかり。しかし私が観戦した試合は、おそらく今シーズンでは一番の出来だったのではないのだろうか。 (投球内容) ストレート 常時140キロ台~MAX94マイル(150.4キロ) コンスタントに140キロ台を刻んでくるし、勝負どころでは140キロ台後半~150キロ以上のボールを投げ込んできます。そういった時のボールは、凄みすら感じます。今シーズン凄みを感じるボールを投げたのは、島袋が力を入れた時のボールを見たときだけです。しかしその球を、スコンスコン簡単に打ち返されてしまうところに、深刻さを感じずにはいられません。 特に被安打が多いのは、右打者に対する攻め。それも右打者のインハイを突こうという球がことごとく痛打されていました。私がチェックした青学一回戦の投球において、ヒット6本のうち5本が右打者によるもの。これがこのときたまたまなのか、それともそういった傾向があるのかは、この試合だけではわかりません。しかし投球の課題をしていえるのは、右打者内角にクロスファイアーとして攻める球が甘くなり、この球を痛打されるわけです。ここに一つ、不調を脱する鍵があるかもしれません。 変化球 スライダー・スクリュー 主に見ていると、曲がりながら落ちるスライダーと、シュート系の逃げてゆく球(ここではスクリューと表現)。この2つの変化球中心に、投球を組み立てていることがわかります。この試合を観る限りは、それほど変化球のコントロールミスはなく、むしろストレートのバラツキに問題があるように思いました。被安打6本のうち、ストレートが4本、スライダー1本、スクリュー1本の割合でした。 その他 牽制もそれなりですし、何よりフィールディングは天性の上手さがあります。更にクィックも1.0秒前後で投げ込むなど超高速。しかしむしろセットポジションになると、体が突っ込んでコントロールを乱したり、着地が早くなり「開き」が早くなっているのではないかと心配になります。今シーズンは、フォームのバランスを崩すことが凄く多いように思います。 (投球のまとめ) 一つ気になるのは、セットポジションの際に早く投げようという意識が強くなり過ぎて、フォームのバランスを崩しているのではないかと。投球練習時でも、ノーワインドアップで投げているときはバランスを崩さないのですが、最後にセットポジションで投げるときに、フォームのバランスを崩していることが多いのが気になりました。 もう一つは、右打者への配球。それほどクロスに厳しい攻めができるタイプではないのに、無理に相手打者の胸元を突こうとして、そこを読まれて打ち込まれているのではないかということ。特に彼の場合、腕に角度をつけて投げているので、それほど左投手としての有難みのある球筋ではありません。そのため打者も苦にならないのに、待ってましたとばかりインハイにストレートが来るので、打者は思っきり開いて打ちに行くという山が張れます。すなわち内角への過度な投球は、避けるべきではないかと考えるわけです。 現状これだけのボールが投げられるのですから、何処か体調が悪いというわけではないのでしょう。また技術的な部分や精神的な部分ではないかと片付けることは簡単ですが、どうも要因はそういったことだけではないように思います。今一度、投球を見直すべきではないのでしょうか。 (投球フォーム) 今度はあえて、テクニカル部分ではどうなのか? 考察してみたいと思います。 <広がる可能性> ☆☆☆ 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻は三塁側(左投手の場合は)に落とせません。そういった意味では、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化にはあまり適さないフォームだと言えるでしょう。 「着地」までのタイミングを注意深く見ていたのですが、ノーワインドアップ時は特に早過ぎることはありません。すなわち体が突っ込んでバランスを崩すのは、セットポジションのときではないかと考えられます。その時の投球こそ、彼がいま一番の課題ではないのでしょうか。ノーワインドアップ時は、体を捻り出す時間は確保出来ているので、カーブやフォークといった球種以外は問題なく習得でき、ピッチングの幅を広げて行くことは可能だと考えます。 <ボールの支配> ☆☆☆☆ グラブは最後まで体の近くにあり、両サイドの投げ分けは安定。強いて言えば、少し抱えていたグラブが後ろに抜け気味で、シッカリ抱えられていない点が気になります。 足の甲での地面への押し付けもできているように見えますが、ボールは真ん中~高めに集まることが多いタイプ。特に「球持ち」が浅めで、ボールを押し込めないのが気になります。 その最大の要因は、「着地」してから腕が遅れて出てくるリリース。そのため腕が前に行く前に、もうボールを放さないといけなくなり、「球持ち」が早くなっているのが気になります。ようは着地とリリースの連動がおかしい、上半身と下半身の動きが合っていないという問題が生じています。この辺が、制球を乱す最大の要因ではないのでしょうか。 <故障のリスク> ☆☆☆ お尻は落とせないフォームですが、カーブやフォークといった球種は殆ど投げないので、肘への負担は少ないと考えられます。気になるのはここからで、無理に腕を上から振り下ろそうとしており、背中を後ろに傾けたり、腕の送り出しがスムーズではありません。前からそうだったと言えばそうなのかもしれませんが、もう少し腕の角度を緩和した方が、腕の送り出しだけでなく下半身との動きに合って来るのではないなかと考えます。腕を無理に縦に振り下ろそうとして腕を振り下ろすに時間がかかり、下半身との連動にズレが生じています。また今のままだと、肩を痛めてしまう危険性すら感じます。 <実戦的な術> ☆☆☆ ノーワインドアップ時の「着地」までの粘りや、体の「開き」はそれほど問題ないと思います。しかしセットポジションになると、「着地」が早くなり体も突っ込んでしまって、結果的に「開き」も早くなっていると考えられます。 また腕が振れず、身体に腕が絡んで来ていないように思います。これでは、速球と変化球の見極めがつきやすく、ストレートを狙い撃ちされている危険性も感じます。それほどボールへの体重の乗せが悪いとは思いませんが、セットになるとこの辺も怪しくなります。 (フォームのまとめ) 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、ノーワインドアップ時には「球持ち」以外は、それほど問題は感じません。しかしセットになると「着地」「開き」「体重移動」の部分も怪しくなります。 コントロールを司る動作も、上半身と下半身の動きがバラバラで制球を乱す要因に。無理な腕の振り下ろしが、フォームの狂いを生み故障の原因にもなりかねません。 (最後に) 彼の不調の原因を私なりに考えるには 1、右打者内角への攻めを少なくし、右打者への配球を考えなおす 2,セットポジションでの投球の狂いを改善する 3,腕を無理に高い位置から振り下ろそうとし過ぎで、下半身との連動がズレている。 と結論づけます。別の見方をすれば、シッカリした指導者の元フォームを改善できれば、少なくても下級生時までの投球・高校生時代の投球レベルまでは、取り戻すことは充分可能だと考えます。少なくても高校時代よりは、かなりパワーアップしているので、バランスを取り戻せばそれ以上のパフォーマンスも期待はできます。 しかしこの春の内容を魅せられると、各球団上位指名というのは非常にリスキーだと考えるでしょう。そういった意味では、修正ができるという自信を持っている球団が、3位前後での指名というのが現実的なのではないのでしょうか?かなり特殊なフォームのため、なかなか修正が難しい選手なのは確かです。しかしそれができないことにはこの先はないわけで、なんとか秋には、彼らしいピッチングが復活することを期待します。 高校時代、最後には ☆☆☆☆☆ をつけた選手。それだけに現在の情況が歯がゆくてなりません。しかしそれは、何よりチームの関係者、そして本人はなおさらでしょう。現状はそこまでの評価できませんが、私は修正は充分可能だとして一定の評価を下したいと思います。 蔵の評価:☆☆☆ (2014年 春季リーグ戦) |
島袋 洋奨(中央大・3年)投手 173/71 左/左 (興南出身) |
「成績がもう一つ」 興南高校時代は、春・夏連覇の立役者として活躍。中央大進学後も、1年春からリーグ戦に登場し、いきなりリーグ2位の防御率 0.99 の成績を残し将来を嘱望された。その後もコンスタントにリーグ戦で活躍するも、通算成績は、11勝17敗 防御率 2.33 と思ったほどの数字は残せていない。そこで今回は、改めて現状の島袋のピッチングを考察してみたい。 (投球内容) 基本的に、投球フォーム・スタイル共に、高校時代と変わっていないと思います。 ストレート 常時140キロ台~MAX91マイル(145.6キロ) 特にボールの走りが悪くなったとかそういうことはなく、コンスタントに140キロ台を越え、勝負どころでは145キロを越えるようなボールで仕留めてきます。秋には、自己最高の150キロも記録するなど、高校時代以上にパワーアップしています。ボールにも適度なキレもありますし、球質がけして悪いわけでもありません。 それもそのストレートを、両サイドに投げ分けつつ、低めに決めることが出来るのですから、何故成績が伴わないのか訊きたいぐらい。しかしそういった投球が、いつも出来るわけではないということでしょうか。しかし秋は、殆どの試合で140キロ台後半を記録しています。 変化球 スライダー・ツーシーム・フォーク・カットボール 主な変化球は、スライダーとシュート回転して沈むスクリュー的なフォークだかツーシーム。この2つの変化球を中心に、投球を組み立てます。特にこのスクリュー的な球が、左打者の内角低めに上手くコントロールされます。 ただこれらの変化球で的を絞らせないことは出来るのですが、何か絶対的な球がある、仕留めきれるほどの球があるのかと言われると疑問です。この辺が、圧倒的な投球が出来ない大きな要因かもしれません。 その他 1.0秒台の高速クィック・抜群のフィールディングの上手さ、高校時代から培ってきたマウンド捌きの良さなどもあります。野球センスの高さだけでなく、運動神経も一級品だということでしょう。 (投球のまとめ) この3年間は、ドラフト対象外ということもあり、それほど真剣に見ていませんでした。そういった意味では、根本的な部分で、何が行けないのまでは正直わかりません。その辺の理由を見極め、改善可能な課題なのか見極めるのが、最終学年でのチェックポイントになります。 (データから考える) 実際の投球を見ているだけではよくわからないので、データに照らしあわせて考えてみましょう。ここまでの3年間の通算成績は 36試合 11勝17敗 216回2/3 157安打 67四死球 202奪三振 防御率 2.33 1,被安打はイニングの70%以下 △ 被安打率は、72.5% と、僅かにファクターは満たしていない。ただこのファクターはかなり厳しく設定しているので、80%以下なら十分合格点ではある。しかしプロの一軍で実績をあげようとするならば、このファクターを満たすぐらいの絶対的な投球を、最終学年では期待したい。 2,四死球は、イニングの1/3以下 ◯ 四死球率は、30.9%であり、基準である33.3%以下を達成している。左腕でありながら、コントロールの不安がないところは、この選手の持ち味。 3,奪三振は、1イニングあたり 0.8個以上 ◎ 奪三振率は、1イニングあたり0.93個 と先発のみならず、リリーフの基準も満たしています。特に決め手があるようには見えませんが、ボールの威力が東都でも上位だということなのでしょう。 4,防御率は、1点台以内 ✕ 3年春までの通算防御率は、1.99 で、なんとかこのファクターを満たしていました。しかし3年秋のシーズンが、3.44(リーグ9位)と安定感に欠けたため、2.33 に数字を悪化させてしまいました。やはりプロで活躍するためには、大学球界屈指のレベルにある東都でも、1点台は残したいところ。0点台のような絶対的な数字も最終学年では期待したいのですが、この数字は1年春にすでに達成しています。 (データからわかること) データからみても、何故ここまで防御率が物足りないかはよくわかりません。要所での踏ん張りに課題があるのか?それと高校時代の実績からしたら、もっと勝っていておかしくないかと思います。 澤村拓一(巨人)が、通算19勝ですから、それを越える20勝ぐらいは最終的に達成して欲しいなぁと思います。そのためには、やはりここまでの3年間の内容とは明らかに違う投球を魅せないと厳しいでしょう。その何かを掴むことが、彼の大学で残された最大の課題だと言えそうです。 (最後に) 実際に彼の投球を見ていても、特に何が悪いというわけではないのですが、勝てない・打たれるという場面を結構みます。その辺がやはり成績につながらない、何かインパクトに欠ける、そんな印象は否めません。 その原因が何なのか?私自身まだ掴めていないので、そこを把握することから今年は始めたいと思います。そこから何か見えてきた時に、彼の評価は定まって来るのではないのでしょうか。やっぱり高校からプロにゆけばよかったのに、そうは言わせないだけのピッチングを最後は期待します。 (2013年・秋季リーグ) |
島袋 洋奨(沖縄・興南)投手 173/65 左/左 |
「最後の夏!」 選抜では、大会前の調整が上手く行かず、ストレートのキレが悪いまま大会に突入。それでも天性の勝負強さで要所を締め、大会を制した。春・夏連覇を達成したこの夏の島袋の投球はどうだったのか?改めて考えてみたい。 (春との違い) 選抜では、投球の上手さ・勝負どころでの集中力の見事さには改めて驚かされたものの、球のキレがイマイチで、物足りない投球だったのは確か。しかしこの夏の島袋は、コンスタントに130キロ台後半~140キロ台中盤まで球速を叩き出し、選抜にはなかったキレを取り戻しただけではなく、球速面でも今までにない領域まで到達し、着実に成長していることを印象づけた。その証拠に、決勝戦の東海大相模戦以外は、すべてイニング数と同等、あるいはそれ以上の奪三振を、全国レベルの強豪校からも奪いとっている。そういった力強さは、選抜では見られなかった光景だ。 また2回戦での明徳義塾戦からは、一回戦では魅せなかったツーシームなどのシュート系の球やフォークなど縦の変化も織り交ぜるようになり、投球に幅を持たせてきた。これまでの島袋は、あくまでも速球とスライダーの二つの球種を巧みに操る投球術に終始していたが、最後の夏には、様々な引き出しがあることを証明して魅せた。 また一回戦での鳴門高校戦では、やや投球フォームのバランスを崩し、制球を乱す場面が垣間見られた。その辺は、2回戦以降も時々顔を覗かせる場面もあったのだが、それでも緒戦よりも着実にバランスが修正できており、以後の大会を勝ち上がって行く。そういった短期間で修正できるセンスは、高校生としては稀な能力だと言えよう。 (選抜以後) 大会期間中は、連日の登板で酷使酷使と騒ぐ輩もいたが、選抜大会以後の島袋は、ほとんど試合に登板せずに、夏に備えて地道にレベルアップを図っていた。それは、前年の夏に、連投によって投球フォームのバランスを崩して敗れた反省があったに違いない。そしてその地道な努力が稔り、甲子園ではすべての試合に先発し、チームを勝利に導いた。事前にしっかりとした体力UP・確かな目標を設定し準備を怠らなかったことが、この夏の島袋の快投につながったと言える。そういった計画性と目的意識を持って日々努力できる才能は、彼の天性の野球センス・ピンチになればなるほど能力が発揮される天性の勝負強さと共に、島袋 洋奨 と言う男を形作って行く。 (最後に) 島袋 洋奨の最後の夏は、こちらが求めるものを、すべて魅せてくれた気さえする。 大学・社会人・左右を問わず、これだけピッチングができる投手は他におらず、これだけ明確に目的意識を持って野球に取り組め、それを結果を持って証明できた人間も他にはいない。 高校生だからとか言う括りは必要なく、一野球人として素直に尊敬に値するし、彼に今後の伸びしろがあるかなどを論じることは意味を持たない。それは、日々進化していることを最後の夏でも実践してくれたし、彼の人となりが、それを証明してくれている。彼が原点である気持ちを失わない限り、これからも進化し輝き続けるはずだ。そして私は今思う、間違いなく2010年度NO.1投手は、島袋 洋奨 をおいて他にはいないと。 蔵の評価:☆☆☆☆☆ この記事が参考になったという方は、ぜひ! (2010年・夏) |
島袋 洋奨(沖縄・興南)投手 171/62 左/左 |
新チーム結成以来、15試合で失点は僅か1。まさに完全な状態で、甲子園に乗り込んで来るはずだった。しかし大会前に体調を崩し、大阪に乗り込んでからの練習試合では調子が上がらずに打ち込まれた。それでも選抜大会では、天性のピッチングの上手さと勝負どころでの絶妙なコントロールを駆使し、悪いながらも要所を締め、チームを全国優勝に導いた。果たして島袋 洋奨は、単に調子が悪かっただけなのか?本当に成長していたのか?今回は、検証してみたいと思う。 (投球内容) 今大会の島袋は、緒戦の関西戦と智弁和歌山戦では、ヒットは打たれるが三振も奪う と言う試合を続け、その後の帝京・大垣日大・日大三戦では、ヒットは打たれないが三振も奪えない と言う2面性を魅せてくれた。これは、比較的余力のある大会序盤戦と、疲労が溜まってきた3回戦以降では、明らかにピッチングスタイルを変えてきたと考えられる。昨夏・連投で疲れが溜り、バランスを崩して後半戦に打ち込まれた明豊戦の反省から、スタミナ配分を意識したピッチングがなされた。ただそういった上手さで成長を感じさせてくれたものの、今大会の島袋は、大会を通じて状態は良くなかったように思える。 それは、球速こそ135~MAXで143キロを記録し昨夏と大きな差はなかったが、明らかに昨夏よりも、いや私が彼を生で見た、昨春の春季九州大会よりも、球の勢いキレは悪かった。実際にその感覚は、打者にも同様に感じられたのだろう。コース一杯に決め手カウントを整えようとする球を、並みの打者達に軽々打ち返される場面もしばしばしで、島袋にとっては大変苦しい投球が続いていたからだ。それでも勝負どこでは、最高のボールを低めに集められる技術・精神力はさすがで、本気モードになった時の一瞬の輝きは、さすが島袋を強く印象づけられた。そういった能力を、常に出せる状態にはなかったのが、今大会の島袋だったのではないのだろうか。 明らかに今大会では、筋力やフォームの変化による球質の変化ではなく、状態の悪さから来るキレの悪さが、大会序盤は特に目立っていた。常に高いところに目標を持っている彼が、このようなキレが悪い球で満足するはずがないからだ。変化球も、明らかにカーブ・スライダーを使い分けていた昨夏とは違い、115キロ前後の曲がりながら落ちるスライダーとのコンビネーションでカウントを稼ぐ投球パターンに変更。最大の変化は、今までなかったシュート系の球を使うようになったものの、まだその精度はあまり高いとは言えない。二桁安打を打ち込まれた関西・智弁和歌山戦でも、けしてコントロールが甘かったわけではなく、両サイドに球を集めていたものの、打力のある両校の打者達が、コースに投げてもキレのない力のない速球ならば打ち返すレベルにあったからだ。それでも勝負どころでは、徹底的に低めに集めると言う集中力で、彼らの攻撃をかわすことができた。 牽制・フィールディングなどは上手いものの、クィックは1.3~1.5秒ぐらいと遅い傾向は変わらず。ひねりを加えつつ、縦に腕を振り下ろす独特のフォームで幻惑しつつ、ゆったりとしたモーションで「間」を意識しながら投球を組み立ててくる。視覚で幻惑し間で狂わせて投球を組立てようとする左腕は、今年の大学・社会人も含めて彼にしか出来ない芸当だった。 (投球内容のまとめ) 彼が肉体的な部分で成長していていたかどうかは、この選抜では状態が状態だっただけに良くわからなかった。ただ昨夏の反省を活かし、スタミナ配分を考えたりする上手さに磨きがかかり、シュート系の球を覚え投球の幅を広げたいと言う、彼の学習能力と探究心があると言う部分での進歩は感じられた。現状に満足せずに常に上を目指す彼らしい姿は、未だ損なわれていない。 楽天 (投球フォーム) 独特のひねりを加えているだけでなく、かなり特殊なメカニズムのフォーム。非常にひねりを加えることで、球の出どころを長く隠すことができる反面、お尻は落とせません(三塁側に)。そのため将来的にも、緩急や縦の変化は望みにくいフォームです。今大会では、スライダーがカーブの変わりをなしていたのですが、ドロンとした曲がりになり、低めのボールゾーンに切れ込むキレを失って、あまり空振りが取れなくなっていたのは気がかりでした。元々低めのボールゾーンに切れ込むスライダーを振らせるのが彼の持ち味だったのですが、今大会では低め一杯に決まる速球でのみで、見逃しの三振を奪うと言うパターンにとどまり、ボール球を振らせることができなかったのです。 グラブをしっかり内に抱えられますし、足の甲の押し付けも深くはないのですが、粘りは感じられます。ただリリースは早めの投手なので、指先でボールをコントロールするタイプではありません。いったんフォームのバランスを崩してしまうと、制球の乱れが修正しにくい側面があるのも、長く不調を引きづる可能性を感じさせます。 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」においては、「着地」までの時間を稼ぐことができ、中々ボールが出てこない「開き」の遅さがあります。ただ「球持ち」は、想像以上に早いので、意外にボールにバックスピンがつけられず、腕や状態の振りでキレを生み出すタイプです。体がキレない、腕がが振れないと、今大会のようにストレートの質が著しく低下致します。 またフォーム分析をしていて特に感じられたのが、腕が振れない、体重が前に乗ってこないことでした。変化球が簡単に見極められたり、ストレートにウエートが乗って行かないのは、腕の振りや「体重移動」に課題を抱えることが、大きな要因だったのではないかと思います。これでは、より上のレベルでは球が見極められ、苦しい投球を強いられる可能性を感じずにはいられませんでした。 (投球フォームのまとめ) 独特のメカニズムであるが故に、非常に良い面と悪い面があるように思えます。また体への負担も大きいことからも、長く厳しいプロの世界で、年間を通してこのフォームで好調を維持して行くことが本当に可能なのか?と言う不安も感じずにはいられません。 超高校級の投球をする彼のピッチングが、そのままプロの世界に持ち込める代物なのか?と言われると、フォーム分析を進めてゆくに従い、私には不安が募るようになりました。肉体の成長云々以前に、技術面でも不安になる部分が多く残ったのが、今大会の新たな印象です。 (今後に向けて) それでも投球の上手さ・制球力・勝負どころでの抜群の投球などを観ていると、高校・大学・社会人含めて2010年度のアマチュア球界において、彼ほどの「投球ができる左腕」はいないわけです。このことは、紛れもない事実であり、そういった部分は素直に評価したいです。 ただ生で見れば、恐らく強く実感したであろう球威・球速不足。それに球のキレの無さを痛感したスカウト達が、彼にどのような評価を下したのかは興味深いです。彼の投球を観ていると、連投連投で疲弊しきった青学時代の石川雅規(ヤクルト)の投球とダブります。そのため彼も普段は、球威・球速は際立つものはありませんでした。ただそれでも好調時の石川の球のキレと、昨春の島袋の球の勢いを知っていたものからすれば、プロでの活躍には確信が持てると思います。夏までに、今までの球のキレ・勢いを取り戻すことを証明できたならば、充分に高卒でプロに行ける投手だと思います。ただスクリューとスライダーを武器にしていた石川よりも、ピッチングスタイルや内容は、PL学園時代の野村弘樹(元ベイスターズ)の方が、投球スタイルは近い気が致しますね。いずれにしても、プロで大成した左腕達と比較できるレベルにある投手と言うことです。 今大会の内容如何に関係なく、そういった好い状態の彼を生で観ていれば、彼の持っている能力も充分把握済みのはず。心技体三つのバランスで考えても、「心」と「技」の部分は、すでにプロ級。特に現状に満足せずに上を目指す姿勢は、プロ向きです。あとは、大幅な球威・球速の成長を感じさせてくれなくても、昨年並みのキレを取り戻しそれを示すことできれば、スカウト達のGO!サインは充分もらえるでしょう。大学や社会人で得るものは殆どなく、ぜひプロで、その技術を磨き活かして欲しいと思います。ただ若干の不安は残りますが、順調に行けば、2年目ぐらいからプロのローテーションを担えるだけの投手ではないのでしょうか。 蔵の評価:☆☆☆ (2010年・選抜) |
島袋 洋奨(沖縄・興南)投手 171/62 左/左 |
(どんな選手?) 選抜から帰ってきた興南の試合を春季九州大会で見ましたが、沖縄で彼を攻略出来る学校が現れるのかなと思っておりましたが、夏もきっちり勝ち上がってきました。身体は小柄ですが、非常に投手としての総合力・センスに優れた投手で、フォームこそ違えど青学時代の石川雅規(ヤクルト)を彷彿させます。 (投球内容) 夏の沖縄大会・準決勝・決勝では、かなり疲労からバランスを崩していた印象があります。彼独特の捻りを加えたフォームは、かなり身体への負担も大きいのか、疲れが貯まって来ると下半身の粘りがなくなり、バランスを崩すケースが見られます。甲子園の明豊戦でも、後半戦にそういった傾向が見られました。 球速は、常時130キロ台後半~勝負どころではMAX145キロの速球を投げ込んで来ます。相変わらずスクリュー系の球種はないのですが、カーブ・スライダーを織り交ぜたピッチングで、要所を締めるところはさすがです。 右打者には、普段アウトコース高めの速球と低めにスライダーでカウントを整えますが、勝負どころでは、外角低めにズバッとコントロール出来るあたりは一級品です。左打者二もアウトコース高めに速球・カーブを織り交ぜつつ、低めにスライダーを集めます。変化球が浮かないのは好いのですが、変化球を振らせて空振りを取ることが少ないのが、速球のキレ・球速が鈍った後半戦に、踏ん張り切れない一つの要因なのかなと思います。 また左腕らしく牽制は上手いのですし、フィールディングも中々素早いです。ただクィックに関しては、あんまり上手くないように思えます。変化球の精度UP+クィックなど、まだまだ全国を制覇するには、磨かないと行けない技術も少なくありません。 (今後は) クレバーですし、勝負どころのメリハリもつきます。元々持っている野球センスみたいなものに加え、春よりもワンランク球威・球速も増してきました。更に課題を克服したりスクリュー系の球を覚え投球の幅を広げたら、沖縄どころか全国でも高校生では攻略困難な投手が完成するかもしれません。 今後爆発的に伸びるスケール感は感じませんが、限りなく高卒でプロでも即戦力になり得るような投手に育つ可能性も秘めていると思います。今後の更なる進化を期待しておりますし、それに応えられる程の器だと信じて疑いません。 (2009年・夏) |
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(どんな投手?) 小柄な体格ながら、ゆったりとしたモーションから、140キロ前後の速球とカーブ・スライダーを織り交ぜた投球スタイルで、新2年生としては破格の完成度と球の威力を持つ、この世代屈指の左腕投手です。 (投球スタイル) ゆったりしたモーションで、身体に捻りを入れることで、球の出所を隠すモーションになっております。それでいて、けして力むことなく自分のペースを崩さないで投げられる、落ち着いたマウンド捌きが魅力です。 球速も常時140キロ前後を記録し、ビシッと勢いのある球が、キャッチャーミットに突き刺さります。変化球は、110キロ台のカーブと、曲がりながら落ちる120キロ台のスライダーとのコンビネーション。速球・変化球・マウンド捌き・制球力と極めて高いレベルでまとまっております。 それほど鋭い牽制は入れないのですが、フィールディングも上手く、クィック1.1~1.5秒ぐらいと状況に応じて、ランナーがいても使って来る時と使ってこない時があります。かなり、いろいろ頭を使って投げているところが伺われます。 右打者に対しては、両サイドにしっかり投げ分けられることが出来、曲がりながら落ちるスライダーを低めに集めて、空振りを誘います。また左打者に対しては、アウトコース中心に球を集めて決まるが、内角のクロスにも球が集められます。ただ左打者の外角の速球を狙い打たれる傾向にあり、この辺が今後の課題になるのではないのでしょうか。 (今後は) 上背はともかく、更にからだが一まわり、二回り大きくなると良いですね。それに左投手に必須のシュート系の球を使いこなせるようになることが、大きな目標になると思います。今後爆発的に伸びるタイプとは思えませんが、更に総合力を引き上げ、志しを高く持って頑張ってもらいたいと思います。体格には恵まれておりませんが、意識次第では高卒でプロを意識出来る素材だと思います。 (2009年 センバツ) |