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石田 健大(DeNA)投手のルーキー回顧







石田 健大(法大・4年)投手 180/80 左/左 (広島工出身) 
 




                   「あまり変わらなかった」





 ドラフト対象年度になった4年春のシーズンになっても、石田 健大 の投球に大きな変化は現れなかった。開幕戦となった早稲田戦では、ストライクを先行させポンポンとリズムよく心がける投球を試みるが、それによって成績が大きく変わることなく終っている。今シーズンの石田の成績は

7試合 3勝4敗 51回2/3イニング 45安打 39奪三振 9四死球 防御率 2.44

オフシーズンに、彼の成績を分析したが、その時の傾向と、それほど変わるもののない結果に終っている。


(投球内容)

ノーワインドアップから、足をゆっくりと高い位置まで引き上げてきます。

ストレート 常時140キロ台~140キロ中盤

 以前見た時は、常時145キロ前後~140キロ台後半を記録するパワーピッチに比べると、コントロール重視で幾分スピード・勢いが劣っていた気はします。しかし彼の場合、そういったことは大きな問題ではありません。ストレートは、外角にシッカリコントロールできており、制球は悪くありません。しかしボールにあまり伸びが感じられない球質・内角を厳しく突けない配球、強弱の付け方が下手な投球などに課題を残します。その分ストライクを先行させ、リズムよく相手を追い込んで有利に立とういう狙いだったかもしれませんが。

変化球 スライダー・フォーク

 この春の投球を見ていると、曲がりながら落ちるスライダーとのコンビネーションで、時々フォークを織り交ぜて来るといった配球でした。以前のように緩いカーブを投げたり、スクリュー系の球があまり観られなくなり、やや投球の幅が狭くなっているように思います。けして三振が取れない投手ではないのですが、フォークにはまだまだ絶対的なキレや信頼度はありません。相手を仕留めきるほどの球がないのが、どうしてもピンチになると汲々としてしまう要因ではないのでしょうか。

その他

 牽制に関しては、見極め難しく鋭いもので走者を威嚇。フィールディングやクィックなどの動作は可も不可もなしといったところでしょうか。この辺は、あまり昨年までと変わっていませんでした。

(投球のまとめ)

 淡々と投げていた印象の強いピッチングから、ポンポンとストライクを先行させ、有利な状況で相手と対峙することを意識したことは評価できるポイント。しかし相変わらず、投球の強弱の付け方、内角への攻めに欠ける配球、決め手に欠ける投球は改善できず、成績に大きな変化をもたらすまでには至りません。

 けして何が悪いという投手ではないのですが、不思議に心に響いて来るものがありません。その辺が、そのまま成績の物足りなさにもなっています。


(投球フォーム)

ではその原因がなんなのか? 今回は投球フォームの観点から考えてみましょう。

<広がる可能性> 
☆☆

 引き上げた足を地面に向けて伸ばしており、お尻は三塁側(左投手の場合は)に落とせません。そのため体を捻り出すスペースが確保できず、腕を捻り出して投げるカーブで緩急をつけたり、フォークのようなストンと落ちる球種には適さないフォームではあります。

 また「着地」までの粘りが作れないまま地面を捉えてしまうので、体を捻り出す時間が確保できません。これにより良い変化球を習得するのが難しく、中途半端な曲がりや精度の低さにつながっています。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆

 グラブは最後まで体の近くにあり、両サイドの投げ分けは安定。それだけに、もっと内角を活かすピッチングをしても良いのでは? また足の甲でも地面を捉えており、それほどボールが上吊りません。速球派左腕にしては、安定したコントロールがあるのは、彼の大いなる強味のはず。

<故障のリスク> 
☆☆☆

 お尻が落とせない割に、フォークを結構使って来るので、肘への負担は気になります。腕の送り出しには無理は感じないので、肩への負担は少ないのでは? それほど力投派でもないので、故障の危険性は悲観しなくても良いのではないのでしょうか。あとは、フォークをあまり多投しないことだと思います。

<実戦的な術> 
☆☆☆

 「着地」までの粘りの無さから、打者が苦になりにくいフォーム。それでも体の「開き」は早過ぎることはなく、コントロールミスも少ないタイプ。

 腕は身体に絡んで来るように、速球と変化球の見極めは困難。しかしボールに体重が乗り切る前にリリースしてしまっている感じで、打者の手元まで生きた球が行かないのが気になります。球速はあるのですが、自己主張に乏しいボールを投げ込んできます。


(フォームのまとめ)

 投球の4大要素である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」「球持ち」「体重移動」と課題を抱えており、けして実戦的とはいえないのが気になります。

 制球を司る動作が悪くないのと、故障の危険性はさほど感じないのが救いではあるのですが。140キロ台中盤を連発するわりに図抜けた投球ができないのは、この辺のフォームレベルの低さにも大きな原因がありそうです。



(最後に)

 
リズムを意識して、現状を打破したいという意欲は感じられました。しかし投球フォームの課題の多さ・投球センスに根本的に欠ける部分があり、これだけの球速とコントロールを兼ね備えていながら、圧倒的な成績を残せません。

 現状としては、法政のエースとしてのネームバリューもあり2位指名ぐらいが有力ではないかと思います。しかし一年目から即戦力としての期待に応えられるかと言われると、疑問は残ります。特に左投手ではありますが、その有難みは薄いタイプと考えた方が良いのではないのでしょうか。

 そういった意味では、試合を作って行く先発よりも、リリーフの方が適しているのではないのでしょうか。特にコントロールで自滅することはないので、安心して起用できる強味はあります。ラストシーズンでは、ぜひ一皮むけたところを示して欲しいと思います。現状はまだ、物足りなさは否めませんでした。



蔵の評価:
☆☆


(2014年 春季リーグ戦)










石田 健大(法大・3年)投手 180/80 左/左 (広島工出身) 
 




                    「何かつかまないと」





左腕から繰り出される140キロ台後半の球をみると、今年の上位候補と言われるのはなるほど納得する。しかし広島工業時代から、何か大事なものが足りない気がするのだ。その何かを、今回は考えてみたい。

(投球内容)

ストレート 常時145キロ前後~後半

 特に打者の手元でグ~ンと伸びて来るとか、ピュッと切れる感じの球は投げてきません。それでもコンスタントに145キロ前後~140キロ台後半を勝負どころで投げ込んで来るスピードの能力は、2014年度の左腕候補の中でも屈指のものがあります。

 打者の外角中心にボールを集めて来るのですが、不思議と打者の空振りを奪うような球ではありません。あくまでもストレートを魅せておいて、変化球で勝負といった感じでしょうか。


変化球 カーブ・スライダー・スクリュー

 130キロ近いスライダーとスクリューに、115キロ強ぐらいのカーブとの3つの変化球で投球を組み立ててきます。スライダーは横滑りするもので、空振りを誘うタイプの球ではありません。むしろ相手を仕留めるという意味では、右打者外角に沈む、スクリュー系の球が一番良い球ではないのでしょうか。変化球は高めに甘く浮かず、打たれるのは甘く入ったストレートが多い印象があります。

その他

 牽制は、左腕らしく見極めの難しいものを混ぜてきます。クィックは、1.15~1.20秒ぐらいと平均的。フィールディングも、さほど上手い方には見えません。そういった運動神経・野球センスにはそれほど優れたものは感じません。

(投球のまとめ)

 ストーレートの球速、変化球のキレ・コントロールなど、大きな破綻はありません。特に何が悪いというものはありません。それでは、何故投球が圧倒的ではないのか?

 一つは、投球の抑揚が乏しく、淡々と投げ込んで来るだけという印象は否めません。微妙な出し入れがするような投球術もなければ、「間」を上手く使ったり、力の強弱の付け方もさほど上手いとはいえないでしょう。そのため投球が、実に平面的で単調なものに感じられます。

 この辺は、持って産まれたセンスもあるのですが、もう少し最終学年ではそういったものにまで、意識がゆくような余裕が欲しいところ。



(成績から考える)

 
有原 航平(早稲田大)のように、3年秋に最高のシーズンを過ごしたのと比べると、石田は1年秋以降コンスタントに似た成績を刻んできています。今回は、これまで5シーズンの通算成績から、考えて行きたいと思います。彼の六大学での通算成績は

30試合 15勝6敗 163回2/3 144安打 43四死球 145奪三振 防御率 2.64


1、被安打イニングの70%以下 ✕

 被安打率は、88.0%であり、基準の70%以下どころか、90%近いことがわかります。ただし3年秋のシーズンでは、70.6%も下がっているので、単調なピッチングにも改善の兆しが見えてきているのかもしれません。


2、四死球はイニングの1/3以下 ◎

 四死球率は、26.3%と、本格派左腕にしては制球が良いのが特徴。四死球で自滅するような、荒削りなタイプではけしてありません。


3、奪三振は、1イニングあたり0.8個以上 ◯

 けして奪三振をバシバシ奪うイメージはありませんが、1イニングあたり0.89個と先発としては十分に合格点。アウトの多くを、三振で奪えています。変化球が低めに集まり、スクリューを中心に変化球レベルが低くないのが大きいかと。

4、防御率は1点台以内 △

 これまでの4シーズンは、いずれも2点台もしくは3点台で、安定感としてはもうひとつでした。しかし3年秋のシーズンに入り、初の 1.93 をマークし、基準をクリアするようになりました。ただしドラフト上位を狙うとなると、0点台ぐらいの圧倒的な内容が欲しいところ。最終学年で、そういった投球ができるのか注目。


(データからわかること)

 やはり実際の投球を見ているのと同じで、単調で平面的な投球と絶対的な安定感がないというのは、数字の上からも明らかになりました。しかし被安打・防御率の内容は改善されつつあるので、最終学年でどのぐらいの内容を示せるのか注目したいと思います。

(最後に)

 現状の投球を見るかぎり、ドラフト上位24名ぐらいには入りそうなものの、まだプロで即戦力になりえるのか?と言われると、疑問を持たざる得ません。もう少し、投球に奥行きと絶対的なものを感じたいところ。

 同じ六大学の左腕でもある 山崎 福也(明大)あたりと比べると、ワンランク劣る感じ。それだけに最終学年では、石田の巻き返しを期待せずにはいられません。最終学年では、名実共にチームに顔になるでしょうから、そのプレッシャーを跳ね除ける活躍を、それができれば最高評価でのプロ入りも実現できるでしょう。



(2013年・秋季リーグ)









石田 健大(広島・広島工)投手 177/71 左/左 

昨年からプロから注目されてきた本格派左腕。今春の広島権大会では、ノーヒットノーランを記録。特に2010年度は、左腕の人材が枯渇していることからも、彼にかかる期待は大きい。そんな高校球界を代表する左腕 石田 健太 を、今回は取り上げてみたい。


(投球内容)

 ゆったりとしたモーションから繰り出す本格派左腕。球速は、常時135キロ前後で、MAX87マイル(139.2キロ)を記録した。その球質は、キレがあると言うよりは、球威があるタイプ。むしろ左腕ならば、もっと手元でボールが切れて欲しい。
 
変化球は、横滑りするスライダーと、チェンジアップ系の球もあるようだが、現時点ではスライダーとのコンビネーションピッチャーだと考えて好いだろう。両サイドにボールを投げ分けるコントロールはあるが、追い込んでからの決め手不足は否めない。

 牽制は、左腕らしく上手い。クィックも1.15秒前後とまずまず。制球力もそれなりなのだが、投球は一辺倒と言うか、バリエーション不足の感は否めない。けしてセンスがないとは思わないが、素材としての迫力や威圧感などに欠ける側面もあり、何処か物足りないものは感じさせる。特に投球のテンポのメリハリに欠け、勝負どころで決め手不足などもあり、まだまだ絶対的な存在ではないようだ。


動画:石田健大(広島工) 


(投球フォーム)

 足の横幅をしっかりとりながら、ノーワインドアップからゆったりと足を引き上げて来る。ただお尻が三塁側にしっかり落とせるフォームではないので、将来的に見分けの難しいカーブやフォークなどの縦系の球種の修得は厳しいタイプかと。

 グラブはしっかり最後まで抱えられており、両サイドの投げ分けは悪くありません。また足の甲での押し付けも悪くなさそう(陰になってはっきり見えず)。投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」は我慢できており、「球持ち」も悪くありません。ただ「着地」までの粘りに欠けるので、打者はタイミングが計りやすく、「体重移動」も不十分なので、ボールに勢いが乗ってきません。

 腕の角度は悪くないのですが、上体や腕の振りが鈍いので、どうしても球にキレがありません。前にも体重が乗ってこないので、ボールにも手元までの勢いが出てきません。バランス悪くないのですが、躍動感やメリハリに欠けて、物足りませんでした。


(今後に向けて)

 制球力・マウンド捌きなど、適度にまとまりのある左腕です。ただ高校からプロに行くような、圧倒的なポテンシャルや現時点での完成度は、それほど高いとは言えません。貴重な本格派左腕なので、下位指名~育成枠あたりでの指名も実際にはあるかもしれませんが、私は大学や社会人に進んでからでも遅くないと思います。まだまだプロ入りへの「旬」の時期だとは思えず、数年後に期待といった感じの投手でした。


(2010年・春季中国大会)