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中島 彰吾(ヤクルト)投手のルーキー回顧へ








中島 彰吾(福岡大)投手 178/72 右/右 (大牟田出身) 
 




                     「なんか投げていたよね」





 昨年の明治神宮大会で、神宮第二球場で彼が投げていた記憶がなんとなく覚えている。それほど体は大きくなく、オーソドックスなフォームから、140キロぐらいは出ていそうなボールを投げていたので、ぼんやりとその勇姿を覚えている。

(投球内容)

 残念ながら福岡大は全国大会に駒を進めても、中島の登板はなく最終学年は終わっている。そこで、昨年の神宮大会の動画を改めて見なおしてみた。

ストレート 常時140キロ前後ぐらい

 MAXで150キロぐらい出るという話だが、目測では140キロぐらいかなという感じで、実際にそこまで速いのか、あるいは速く感じられるかは微妙な感じ。特に体が大きくなく威圧感を感じられなかったり、ボールそのものに勢いは感じても、そこまで速く感じられない球なのかもしれない。僅かな投球を見る限りは、ストレートは外角にコントロールされていた。

変化球 スライダーなど

 動画で確認できたのは、スライダーぐらい。その他に、カーブやフォークなどもあるようだが、この動画には映っていなかった。そのスライダーは、曲がりながら落ちるスラーブ的な変化をする。けしてカウント・アクセントという意味では、悪い球ではなかった。

その他

 ランナーを背負っての場面だったが、走者への目配せ、注意力はそれなり。クィックは、1.2秒台を越えるものも少なくなかったが、これは走者がすでにセカンドにいたからだろう。早いものでは、1.07秒ぐらいで投げ込んでおり、基準以上の素早さ。そういった意味では、リーグ戦の実績に乏しい選手でも、それほどこういった動作に苦手意識は感じられない。登板の多くが、リリーフが多かったにも起因しているのかもしれない。

(投球のまとめ)

 4年春のリーグ戦では、どのカードにも登板。しかし単調に陥りやすいのか、結構打ち込まれることが多かった。全国大会での登板は、2年・3年秋の神宮大会での僅かな登板ぐらいだった。

 現状は、オーソドックスなフォームから、速い球を投げられる能力を買っての指名だろう。スピード能力はあるものの、実戦力に欠ける素材型であるのは間違いない。その辺が、どの辺に原因があるのかフォーム分析をして考えてみた。





(投球フォーム)

<広がる可能性> 
☆☆☆☆

 引き上げた足を高い位置でピンと伸ばせており、お尻は一塁側に落とせます。これによって体を捻り出すスペースが確保でき、カーブで緩急を利かしたり、フォークのような縦に鋭く落ちるボールを無理なく投げられます。

 「着地」までの粘りは平均的で、体を捻り出す時間も並。良い変化球を投げるためには、もう少し「着地」までの粘りを意識して、捻り出す時間を確保したい。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆

 グラブは最後まで体の近くにあり、両サイドの投げ分けは安定。足の甲でも地面を捉えており、ボールもそれほど上吊りません。あとはもう少し「球持ち」を長くして、指先の感覚を磨けば制球は安定しそう。

<故障のリスク> 
☆☆☆

 お尻を落とせるフォームなので、カーブやフォークを投げても、肘への負担は少ないはず。ただし腕を振り下ろす角度には多少無理が感じられ、肩への負担は気になるところ。体のケアには、充分気をつけて欲しい。

<実戦的な術> 
☆☆☆

 「着地」までの粘りが並なので、打者としては苦になるフォームではありません。それでも体の「開き」は我慢できており、球筋がいち早く見破られる心配はなし。そのためコースにしっかり投げていれば、それほど打ち込まれる心配はないのでは。

 腕はしっかり振れており、投げ終わったあと身体に絡みます。そのため、速球と変化球の見極めは困難。ボールに、もう少しシッカリ体重が乗せられれば、打者の手元まで球威・勢いの落ちないボールが投げられるようになるのではないのでしょうか。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」は並で「開き」は抑えられているものの「球持ち」と「体重移動」に課題を残します。この辺が、まだまだ素材型の域を脱していない原因なのでしょう。

 少し肩への負担は気になるフォームですが、故障のリスクはそれほどでも。思ったよりは、フォームの土台は悪くありませんでした。

(最後に)

 武器になる変化球の習得、それに「球持ち」と「体重移動」の改善など、まだまだ課題は少なくありません。恐らく今年確認出来たとしても、指名リストに載せるまでの完成度はまだなかったものと思われます。果たして今後、何処まで使える技術を身につけられるのか、注目してゆきたい。ぜひイースタンの試合で、今度はじっくりチェックを入れてみたいものです。


(2013年 神宮大会)