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金子 丈(中日)投手のルーキー回顧へ








金子 丈(大商大)投手 189/90 右/右 (大院大高出身) 
 




              「何故指名されたのかわからない」





 昨秋・神宮大会で見た時も、来年のドラフト候補としては微妙だと思っていました。しかしこの秋・関西まで遠征して見てきましたが、そのときよりも更に内容が悪く、一体何故指名されたのか全く理解できない選手でした。特に良かったのは、私が確認出来なかった4年春のシーズンだったようです。

(投球内容)

189/90 の巨体とそのフォームは、どことなく、かつての大魔神・佐々木主浩 に似た感じはします。

ストレート 常時130キロ台~MAX136キロ

 特にボールに角度があるとか、手元でピュッと切れるとかグ~ンと伸びてくる感じでもなく、何の変哲もない130キロ台のボールを投げ込んでいました。昨秋の神宮大会の時もインパクトはありませんでしたが、それでも135~140キロぐらいは出ていたので、まだ来年もう少し良くなればと思えるものがありました。しかし今年は、そういった球ではありません。まして球筋が安定しているのかというとそれほどでもなく、けして精度の高いコントロールがあるようなピッチングには見えません。

変化球 スライダー・チェンジアップ・フォーク

 確か昨年は、落差のあるフォークを投げていたような記憶があります。しかしこの秋見た時は、スライダーとチェンジアップとのコンビネーション。特に甘く入ったスライダーもチェンジアップも捉えられるなど、変化球のキレ・精度にも特別ものは感じません。

その他

 クィックは1.05秒前後とまずまずですが、フィールディングも平均ぐらいで、鋭い牽制も見られませんでした。特にマウンド捌きが素晴らしいとか、そういった投球センスみたいなものは感じられません。

(投球のまとめ)

 特に私が観戦した神院大戦は、悪かった秋のシーズンの中でも一番失点の多い試合でした。それだけに、何一つ褒められる材料がなく、これでは指名されたのがどうしてなのかさえわかりません。昨年見た時も微妙な投球でしたので、それ以下だったのですから、評価のしようがありません。

(データから考える)

 これでは、たまたま悪い試合を観てしまった可能性も高いので、4年春の成績から考えてみたいと思います。この春の成績は、

9試合 5勝2敗 防御率 1.80(2位)

1,被安打はイニングの70%以下 △

 地方リーグの選手なので、あえて70%以下という厳しい設定をしてみた。実際は、55イニングで43.本ということで、被安打率は 78.2% 。設定したファクターを満たすことはなかったが、80%の基準は満たすことが出来ている。

2,四死球は、イニングの1/3以下 ◯

 四死球は18個であり、四死球率は32.7%と僅かに基準を満たしている。細かいコントロールはないが、四死球で自滅するような不安定さはないことがわかる。

3,奪三振は、1イニングあたり0.8個以上 ◎

 55イニングで54個の三振を奪っており、1イニングあたり0.98個と、ほぼイニング数と同数の奪三振を奪えている。特に彼のような先発が殆どの投手にしては、非常に高い奪三振を誇っている。恐らくこれは、武器であるフォークボールによって多くの三振を奪えたのだろう。

4、防御率は、1点台以内 ◯

 春の防御率は、1.80 と基準を満たす数字を残している。特に地方リーグの選手だけに、0点台の絶対的な数字も残して欲しかったかと思ったのだが、2年秋と3年春のシーズンに0点台の防御率を記録している。

(データからわかること)

 データを見る限りは、ドラフト指名されても不思議ではないだけの実績を残しています。特に良かった春のシーズンを確認出来ていないので余計にそう思うのでしょう。そう考えると、この順位での指名ならアリだったのかもしれない。





(投球フォーム)

 これだけだと、どっちを信じて良いのかわからないので、投球フォームを分析して彼の将来を考えてみたい。

<広がる可能性> 
☆☆

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻は一塁側に落とせません。すなわち、体を捻り出すスペースが充分確保できず、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化球には適さない投げ方なのです。彼のようなフォークボーラーには、考えさせられるフォームです。

 「着地」までの粘りもそれほどでもなく、体を捻り出す時間も充分ではありません。こう考えると、将来的に、いろいろな球種を覚えて、ピッチングの幅を広げて行けるのかも微妙。すなわち、伸び悩む危険性を感じます。


<ボールの支配> 
☆☆☆

 最後までグラブは内に抱えられており、両サイドの投げ分けは安定。しかし足の甲の押し付ける時間が短いので、充分浮き上がろうとする力を抑え込めず、ボールが高めに浮きやすい。さらに「球持ち」も並で、それほど指先の感覚にも優れてなさそう。四死球で自滅するほどではないが、それほど細かいコントロールがあるわけではないのだろう。

<故障のリスク> 
☆☆☆

 お尻を落とせるわけではないのに、フォークを結構投げる投手なので、肘への負担は大きいはず。振り下ろす腕にも角度はあるが、こちらは送り出しに無理は感じず、肩への負担は大きくなさそう。今後もフォークを武器としてゆくならば、肘のケアには充分注意して欲しい。

<実戦的な術> 
☆☆☆

 「着地」までの粘りがそれほどでもないので、打者としては苦になりにくいフォーム。実際秋に見た時は、神院大打線に面白いように振りぬかれていました。それでも体の「開き」は早くはないので、コースにきっちり投げていれば、そうは打たれないのでは?どうしても、甘く入った球を打たれている印象。

 腕はしっかり振れているので、速球と変化球の見極めは困難。そういった意味では、フォークを効果的に使える可能性は高い。ボールへの体重の乗せが不十分なので、打者の手元まで生きた球が行きません。この辺が改善されれば、グッと凄みのある球が投げられそうなフォームではあるのですが。


(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」に良さがあるものの、「着地」「球持ち」「体重移動」とイマイチで、けして実戦的なフォームとは言えないでしょう。

 更にお尻が落とせない割に、フォークを多投することでの肘への負担。足の甲の抑えと球持ちの甘さから来る、コントロールのアバウトさからも、推せる材料は少ない。

(最後に)

 実際に昨年の神宮大会・今年の秋の投球を見る限り、何故指名したのだろうという疑問は残る。しかし春の成績を分析する限り、そこまでメチャクチャな指名ではないことがわかってきた。特にフォークという縦の変化があり、そこに可能性を見出したとしたならば、わからなくもない指名ではあった。しかしフォーム分析をすると、やはり微妙な選手であることがわかってくる。

 また私自身、納得させられるほどの投球を見たことがないので、指名リストに名前を残すことは出来ない。果たして一年目から、どのぐらいの数字を残すのか? もし彼が即戦力で活躍するようだと、いろいろ考えさせられることになりそうだ。



(2014年 秋季リーグ戦)