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宮崎 敦次(ロッテ)投手のルーキー回顧へ








 宮崎 敦次(広島国際学院大)投手 171/72 左/左 (下関国際出身)





                   「殆ど話題にならなかった。」





 全国大会への出場経験がなく、1年春からリーグ戦で活躍するも、ドラフト戦線で話題にのぼることがなかったサウスポー。171/72 の小柄な体格ながら、コンパクトにまとまっている実戦的な投手との印象を受けた。実際に観戦したことのない選手なので、今回は幾つかの映像からの判断と、これまでの成績から今後の可能性について模索してみた。


(投球内容)

ストレート 常時135~140キロ強ぐらいか? 

 MAX146キロということだが、映像を見る限り135~140キロ台前半ぐらいかなといった印象。適度にキレの良い球は投げ込んでいるが、この球で打者を圧倒できるほどのものはない。あくまでも変化球とのコンビネーションで、ストレートを活かすタイプ。低め膝元に決まることも多いのだが、高めに抜けたりとバラつきが目立つ。

変化球 カーブ・スライダー・チェンジアップ

 左腕らしい大きなカーブ、低めに決まるスライダー、それにチェンジアップなどひと通りの球種はありそう。変化球も絶対的な球種はないようだが、カーブで緩急を利かしたり、スライダーが低めに集まるのは明るい材料。

(投球のまとめ)

 速球と変化球をいろいろ散らせて、相手に的を絞らせないのが身上。もう少しキレで勝負するタイプならば、腕や上体を鋭く振れるようになると、フォームにギャップが生まれて打者もタイミングが狂いそう。

 すでにある程度完成された投手との印象を受け、それほど今後の大きな上積みは感じない。ただし本格的にプロの指導を受けたり、野球に集中できる環境が整ったとき、今まで引き出せなかった能力が発揮される可能性は秘めている。いずれにしても、中継ぎタイプの左腕ではないのだろうか。

(データから考える)

 1年春からリーグ戦で活躍し、通算17勝21敗 。しかし本格化した4年時には、11勝3敗 と安定している。今回は、春・秋の4年時の成績を元に、今後の可能性を模索してみたい。

1,被安打はイニングの70%以下 ◎ 

 春・秋の登板イニングは121イニングで、被安打は72本。被安打率は、59.5% であり、充分にこの条件を満たしている。相手に的を絞らせない投球が、功を奏している。

2,四死球は、イニングの1/3以下 △

 四死球は47個であり、四死球率は 38.8% 。悲観するほど多くはないが、残念ながら条件を満たすほどの細かい制球力はない。実際の投球を見ていても、おおよそストライクゾーンに集められるものの、バラつきも多く細かい制球力がないことが伺われる。ストライクゾーンも狭く、遥かに打力のあるプロの打者相手だと、このぐらいの制球力だと苦労する可能性は高い。

3,奪三振は1イニングの0.8個以上 ◯

 1イニングあたりの奪三振率は、0.93個に昇り、充分に基準を満たしている。絶対的な決め球はないように見えるが、左腕の有利さも活かし三振を多く奪えている。プロレベルでこうゆくかは疑問だが、基準を満たすだけの三振は奪えている。

4,防御率は、1点台以内 ◯

 春の防御率は、1.31 。秋の防御率は、1.61 で優勝に貢献。プロを意識するのであれば、0点台の絶対的なシーズンも欲しかったが、そこまでの圧倒的なものはない。

(データからわかること)

 コントロールの荒っぽさはあるものの、それ以外のファクターは基準を満たしている。地方リーグのデータであり、何処まで信用して良いかは疑問だが、投手としての適度な総合力があることはわかってきた。秋のシーズンでは、チームの優勝に貢献し、リーグMVP を獲得。神宮大会代表決定戦で敗れてしまい、初の全国大会出場を惜しくも逃すこととなった。ぜひ生で、一度観てみたかった投手なのだが・・・。





(投球フォームから考える)

いくつかの部分的な映像を見ただけなので、その将来性に迫るためにも、投球フォームも分析してみたい。

<広がる可能性> 
☆☆☆

 引き上げた足を斜め下にピンと伸ばすために、お尻の三塁側(左投手の場合)への落としは甘さは残るが落とせてはいる。そのためカーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化球も投げられないことはないが、中途半端な曲がりになりやすい。

 特に「着地」までの粘りに欠けるので、体を捻り出す時間が充分ではない。変化球のキレ・曲がりに絶対的なものがないのは、この辺の動作の甘さも原因になっているはず。


<ボールの支配> 
☆☆☆☆

 グラブは最後まで体の近くに抱えられており、両サイドの投げ分けは安定しやすいはず。足の甲でも地面を捉えられているので、低めに決まることも少なくない。しかし「球持ち」が浅く、まだリリースが不安定。もう少し指先の感覚を磨き、ボールを押し込めるようになると、安定して低めに集まるのではないのだろうか。

<故障のリスク> 
☆☆☆

 お尻の落としに甘さが残るものの、カーブの頻度が物凄く多いわけでもなく、悲観するほどの問題ではないだろう。腕の角度にも無理は感じず、肩・肘への負担はそれほど大きくない。ただし結構力投派だし、体格にも恵まれていないので、消耗は激しいタイプではないのだろうか。あまり無理な登板が続くと、反動も少なくはないだろう。

<実戦的な術> 
☆☆☆

 「着地」までの粘りに欠けるものの、体の開きは抑えられ、球の出どころは見難くなっている。この点では、左投手としてのメリットは活かせることになる。

 腕は振れているが、キレで勝負するタイプだけに、もっと強く・鋭い振りは望みたい。ボールへの体重の乗せも不十分で、前の足が突っ張って充分体重移動が出来ていない。


(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」においては、「開き」こそ抑えられているものの、あとの3つには課題を残している。

 コントロールを司る動作は悪くないものの、指先の感覚はイマイチ。故障のリスクはそれほど高くないものの、無理をすると体格がないだけに、頑強さには乏しそうな印象はうける。


(最後に)

 投球を完全に確認したわけではないので、評価づけは避けておく。しかしいろいろ検討した結果、プロの一軍戦力としてはまだ物足りない。更に今後上積みがそれほど感じられる素材ではないので、プロ入り後何処まで力量を伸ばせるだろうか? あとは、プロの指導・野球に専念できる環境で、どのぐらい今まで眠っていた才能が残されているのか?ある程度一年目の成績で、今後が見えてきてしまう選手ではないかと思っている。

 ただ注目度が低い選手だっただけに、これが上手く行ったら、これほどスカウトとしては痛快な指名はないだろう。イメージ的には、平成国際大~西武に自由枠で入団した 山崎 敏 (元西武)投手のキレと勢いを半減させた投手、そんな印象を受けた。