14dp-1


 
amanatu.com




有原 航平(日本ハム)投手のルーキー回顧へ







有原 航平(早稲田大・4年)投手 187/93 右/右 (広陵出身) 
 




                     「健在ぶりをアピール」





この春の 有原 航平 はどうだったのか?というと、昨秋ほどの内容ではなかったものの、健在ぶりをアピールしたシーズンだったのではないのだろうか。この春の内容で、この秋のドラフトで1位・競合になることを、ほぼ確実にしたことになる。

(この春の成績)

8試合 5勝1敗 52イニング 38安打 6四死球 42奪三振 防御率 1.38

 昨秋に比べると、四死球率こそ減っていたものの、あとの数字は昨秋より若干悪くなっている。何より優勝を賭けた早慶戦で、結局勝ちきれなかったことに、この選手がドラフトの目玉?と位置づけるには、物足りないものを感じずにはいられない。

(投球内容)

投球内容は、秋と殆ど変わっていません。

ストレート 常時140キロ台後半~MAX153キロ

 それほど力を入れなくても145キロ以上の球を投げ込んできますし、勝負どころで力を入れた球ならば、150キロ台をだいたい刻んで来ます。意識してか無意識なのかわかりませんが、ストレートが微妙に変化したりして、綺麗な回転のストレートよりも、汚く動く球が多いのが特徴。その辺をどの程度意図しているのかは、よくわかりません。ただこれだけの圧倒的な球速がありながら空振りの三振は少ないのは、ストレートで三振を奪う時はズバッとコース一杯に投げ込んだ見逃しの三振であることが多いのことからも伺えます。圧倒的な馬力な持ち主ではありますが、それほど苦になる球ではありません。

変化球 カーブ・スライダー・チェンジアップ・フォークなど

 カットボールやツーシーム系ボールを除くと、こんな感じでしょうか。どの球も絶対的な威力はないのですが、カウントを稼げたりすることはできます。この投手は、コンビネーション投手で、どの球が軸というのはあまりありません。

右打者の時は球筋が安定していますが、左打者の時は若干アバウトになるように思います。

その他

 昨年はもっと鋭い牽制を入れていたようですが、観戦した試合では見られませんでした。むしろクィックがあまり上手くなかったのが、今や1.05秒前後で投げ込めるようになり、その辺の成長は感じます。

(投球の見た目)

 2季連続で安定した成績を残した今シーズンは、ピッチングのコツは完全に掴んだのかなと思います。特に昨秋から大きく変わった印象はなく、相変わらずメリハリが感じない投球で、それほど心惹かれるものはありません。ただただ投球全体のパワーの次元が、他の投手とは違うのかなとは思います。

 間合いや投球術などにセンスは感じないものの、コントロールが安定していて、どの変化球もそれなりで、ストレートの水準が極めて高いことを考えると、1位競合の器であることは間違いないと思います。ただしプロでいきなり15勝とか、図抜けた数字を期待できるのかには疑問が残ります。


(投球フォーム)

<広がる可能性> 
☆☆

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻は一塁側に落ちません。そのため体を捻り出すスペースは確保できず、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦に鋭く落ちる球種には適しません。

 それ以上に気になるのは、「着地」までの粘りに欠け、あっさり地面を捉えてしまうところ。体を捻り出す時間が確保できず、好い変化球が習得し難いのが気になります。彼はいろいろな変化球を投げられますが、その球でストライクは取れますが、相手を仕留めきれるほどの球がありません。その辺の理由は、この「着地」の早さにあると考えられます。

<ボールの支配> 
☆☆☆

 グラブは最後まで内に抱えられ、両サイドの投げ分けは安定。しかし足の甲が地面から浮きがちで、力を入れて投げるとボール上吊る傾向にあります。それでも高いコントロールを維持できるのは、「球持ち」が非常に好いこと。ここに一つ、彼の特殊技能が垣間見れます。

<故障のリスク> 
☆☆☆

 お尻が落とせない割に、カーブやフォークを投げますが、それほど頻度は多くないので悲観しなくても好いでしょう。

 腕の送り出しには無理がなく、肩への負担も少ないはず。元来力投派でもないので、故障の可能性は低いと考えられます。

<実戦的な術> 
☆☆

 「着地」までの粘りに乏しく、打者としては合わせやすいはず。更に体の「開き」も早く、ボールの出処は見やすい。それでもそれほど打たれないのは、圧倒的なボールの威力だけでなく、ボールが見え始めてからでも、なかなかリリースを迎えない「球持ち」の良さがあり、これが打者のタイミングを微妙に狂わせているのではないのでしょうか。

<フィニッシュ> 
☆☆☆

 
腕は鋭く振られており、速球と変化球の見極めは困難。しかしボールへの体重の乗せは、体が流れてしまっていて充分ではない。ボールが変なシュート回転するのは意図的にやっているというよりは、フォームの関係からではないのだろうか。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」こそ素晴らしいが、あとの「着地」「開き」「体重移動」では、いずれも課題を抱えていることがわかる。

 制球を司る動作と故障の可能性については平均的で、許容範囲内ではないかと思う。特に4年間大きな故障をしなかった丈夫な体と安定したコントロールは、技術以上に確かなものがある。


(最後に)

 この選手の投球にピンと来ないのは、「着地」までの粘りの無さから来る淡白さだとわかった。また投球自体にメリハリがなく、特に勝負どころでの強さを感じない、むしろ負のスパイラルの方が優先している投手にすら思える。そのためプロでは、あまり勝ち運に恵まれない投手になるのではないかと危惧する。

 しかしこの投手がキャパ全開になって投げる時のパワー・ボールの勢いは凄まじく、菅野(巨人)や大瀬良(広島)よりも、持っている器は大きいのではないかと考える。しかし菅野のような勝てる投手とは感じないし、大瀬良ほどボールに存在感がないのは気になるところ。一年目から二桁前後は勝てるとは思うが、15勝級の選手になれるには、もう一皮二皮向けられるかにかかっている。現状は、ローテーションの一角が欲しい球団にはいいが、チームのエースを期待するのはどうか?という疑問は残る。すなわち、ドラフトの目玉というほどの魅力は感じない。



蔵の評価:
☆☆☆☆


(2014年 春季リーグ戦)










有原 航平(早稲田大・3年)投手 187/93 右/右 (広陵出身) 
 




                      「本格化したのか?」





広陵高校時代にプロ入りを宣言していれば、1位指名で消えた男・有原 航平 。しかしその期待をよそに、六大学ではなかなか満足のゆく成績があげられなかった。しかし3年秋・3勝1敗 ながら、防御率 0.72 で最優秀防御率を獲得。名実共に、六大学を代表する投手として認められた瞬間だった。果たしてこの力が本物なのか? 今回は、検証してみたい。


(投球内容)

相変わらず、大きな身体から淡々と投げ込んで来るタイプ。特に微妙な出し入れをするとか、「間」を使って上手く投球するといった感じではありません。あくまでも一つ一つのボールの威力で、勝負して来るタイプだと言えるでしょう。

ストレート 140キロ台後半~150キロ台前半

 先発しても、140キロ台後半~150キロ台前半の球速を刻んで来る、圧倒的なエンジンの大きさが魅力。ただし打者の空振りを誘うというよりは、詰まらせて討ち取るタイプだと言えるでしょう。時々コースにズバッと決め、見逃しの三振を奪うことはあります。

変化球 カーブ・スライダー・カットボール・チェンジアップ・フォーク・ツーシームなど

 変化球は結構多彩で、以前よりも縦の変化やツーシームのようなシュート系のボールが増えているように思います。元々は、スライダー・チェンジアップ系投手だったイメージがあります。しかし今はスライダーだけでなく、ツーシーム的なボールで内野ゴロを打たせたり、フォークのような縦に落ちる球を多く投球に織り交ぜてきます。これが、フォークではなく、チェンジアップなのでしょうか? ただしこの球は、打者から早めに見極められてしまい、殆ど手を出してもらえません。目線を低めに集める、そういった効果しか期待できないでしょう。

その他

 牽制は、適度に鋭いものを入れてきます。フィールディングの動きも、平均レベルはありそう。クィックは、1.15~1.25秒ぐらいで標準レベル。投球以外の部分に大きな欠点はありませんが、それでいて特別上手いわけでもありません。

 前にも書いたように、微妙な出し入れや「間」を使うような、そういったきめ細やかさはありません。それでもボールは両サイドに散っており、コントロール自体は悪くありません。

(投球のまとめ)

以前は、スライダー・カットボール・カーブなど、クロスに曲がってゆく球種が中心だったのですが、ツーシームなどを覚え、両サイドへのピッチングができるようになりました。更にフォークだか、縦に落ちる球も目立つようになり、相手に高低も意識させることが出来ています。これにより打者は、かなり的を絞り難くなったと考えられます。

それでいて150キロ前後のストレートをコースに投げてきたり、一つ一つの変化球のキレ・精度も悪くないので、より的を絞らせない投球ができるようになっています。


(成績から考える)

この秋は、彼のベストシーズンと言える成績を残しました。そこで、その成績を元に傾向を考えてゆきましょう。ちなみに秋の成績は、

8試合 3勝1敗 50回1/3イニング 33安打 7四死球 46奪三振 防御率 0.72(1位)

1、被安打は、イニングの70%以下 ◯

被安打率は、65.6%と基準を満たしており、ボールの威力・的を絞らせない投球というのが出来ているのがわかります。

2、四死球は、イニングの1/3以下 ◎

 四死球率は、実に 13.9% と極めて少なかったことがわかります。精神的に成長したのか、そこまで追い込まれることがなかったのかはわかりませんが、制球を乱す機会は極めて少なかったことがわかります。

3、奪三振は、1イニングあたり0.8個以上 ◎

 奪三振も、1イニングあたり 0.91個を奪えており、これは先発のみならずリリーフでの基準をも満たしていることがわかります。以前は淡々と打たせて取るイメージが強かったのですが、秋に関しては三振をバシバシ奪えていました。

4、防御率は、1点台以内 ◎

 防御率は、0.72であり、0点台に突入。大学球界でも、最もレベルの高い六大学において、この数字を残したのは立派です。主要リーグで0点台を残すということは、プロでも上位指名の資格ありと見て良いでしょう。

(成績からわかること)

 この秋が良すぎた可能性は否定できませんが、すべてのファクターを満たすことが出来ました。現時点では、ドラフト1位候補の有力選手であることは間違いありません。

 しかしながらこれまで、散々勝負どころで手痛い目にあったり、良かったと思ったら悪かったりという投球を魅せられてきたので、今回の数字を鵜呑みにできるのかには疑問が残ります。最終学年でも、これに近い数字を残し続けられるのか、更に凄みを増すことができるのか注目したいところ。

(最後に)

 この秋の内容は、上位指名に相応しい内容でした。特に彼の投球で印象的だったのが、6月の日米大学野球の選考会・平塚合宿での投球。この試合では、コンスタントに150キロ台のストレートを投げ込み、そのボールの威力は破格でした。しかし次のイニングは、あっさり失点を許すなど彼らしい内容でもありました。

 とにかく持っているエンジンの大きさは破格で、これは、2014年度の候補の仲でも屈指のものがあります。ある意味、本当のプレッシャーがかかった時に、そこで踏ん張れるだけのものを魅せられるのか、それが2014年度のチェックポイント。リーグ戦の優勝もさることながら、大学選手権・国際試合 などハイレベルな舞台で、どんなパフォーマンスを魅せてくれるのか、見極めて行きたいと思います。3年秋の内容を、4年春・秋と持続できるようならば、プロで二桁も十分見込めるという評価に落ち着くのではないのでしょうか。


(2013年・秋季リーグ戦)










有原 航平(早稲田大)投手 187/93 右/右 (広陵出身) 
 

 昨年の高校NO.1投手と言われ、もしプロ入りを宣言していれば、ドラフト1位指名されたことは間違いない。そんな彼が、大学球界屈指の東京六大学に進学してきた。

(投球内容)

 春のリーグ戦では、常時145~150キロ級の球でグイグイ押すも、六大学レベルでは通用しなく、1勝1敗 防御率 5.33 の成績に終わった。この経験から、秋は少し球速を殺し、制球を重視でピッチングをするも、元来細かい投球ができるタイプではない。高めに浮いた球を痛打されたり、開きの早いフォームのせいか、甘くない球でもヒットを浴びやすかった。結局秋も、1勝2敗 防御率 6.11 と成績は改善されなかった。

 変化球は、スライダー・チェンジアップ・カットボール・フォークなど、結構いろいろな球種を投球に織りまぜているように思える。しかし実際は、ほとんどスライダーとのコンビネーション。フィールディングは、大型故にやや緩慢だが、ベースカバーは遅くない。牽制も鋭いし、クィックも1.15~1.25秒でまとめられるなど悪くない。

 ただ淡々と投げ込んでいる感じで、投球の「間」や駆け引きはイマイチ。更に先に上げたように、ボールが高かったり、見やすいフォームで球速ほど苦にならない。この点を改善されないと、今後も同じ事の繰り返しだろう。

(投球フォーム)

<広がる可能性>

 お尻を一塁側に落とせないフォームなので、見分けの難しいカーブやフォークのような縦の大きな変化球の習得は厳しい。そのため球速のある小さな変化球を中心に、投球を組み立ててゆくことになるだろう。

<ボールの支配>

 グラブは、最後まで内にしっかり抱えられているので、両サイドの制球は安定。ただ足の甲の押し付けが浅く、どうしてもボールは上吊りやすい。また「球持ち」もイマイチで、指先の感覚はよろしくない。そのため大雑把にボールをコントロール出来ても、細かい制球力は期待できない。

<故障へのリスク>

 お尻が落とせないが、カーブや縦の変化、あるいはシュート系の球を多く投げないので、体への負担は大きくないだろう。降り下ろす腕の角度にも無理はなく、肩への負担は大きくなさそう。そういった意味では故障はしにくく、タフな活躍が期待できるタイプ。

<実戦的な術>

 「着地」までの粘りは平均的で、体の「開き」は少し早い。特に彼の投球フォームは、常に打者に正対して投げるフォームなので、ボールが見やすいのだ。

 腕は強く振れていて良いのだが、「体重移動」はもうひとつなので、ボールに体重が乗っていっていない。そのため球速ほど、打者の手元までボールが来ないのだろう。

(将来に向けて)

 高校の2年~3年にかけての急成長も、技術的な成長は殆ど見られなかった。それは、肉体の成長で、大きくスピードアップを遂げた点でしかなかった。そのため本当の意味で、実戦的な投球フォーム、投球術を磨ききらないまま大学に進学。六大学レベルでは、それを誤魔化すことができなかった。

 すなわち、今のまま同じことを繰り返しても、けして成績は良化しないだろう。ここは意識を変えて、技術的な部分まで踏み込んだ改善を試みないと、単なる素材型でこのまま終わることになりそうだ。そのことを本人が、この一年間で痛いほど実感したはず。これからが、彼の本当の真価が問われることになりそうだ。

(2011年 秋季リーグ戦)







有原 航平(広島・広陵)投手 187/87 右/右





                 「更にワンランク成長!」





 昨夏~選抜の間に見違えるほど成長した有原 航平。選抜組の右腕の中では、唯一私自身指名頭角の評価を下した選手だった。あれから4ヶ月あまり、更なる成長を遂げ、甲子園に戻ってきた。


(投球内容)

 相変わらず下半身の粘りに欠けるフォームながらも、マウンドでの余計な力みがなくなり、質の良い球が行くようになってきた。球速は、コンスタントに140キロ台を記録し、勝負どころでは140キロ台後半を記録。夏の甲子園では、MAXで149キロにまで到達した。

ストレート 140~MAX149キロ

 普段は、力みのないフォームから、両コーナーにきっちり投げ別けられるコントロールがある。特に左打者外角にの逆クロスへ投げ込むストレートは、シュート回転して沈むツーシーム的な独特の球。打者の空振りを誘うと言うよりは、コーナー一杯に投げ込んで、打者の見逃しを誘うことで、三振を奪うタイプの投手だろう。

変化球 カーブ・スライダー・チェンジアップ

 この投手が好いのは、変化球の多くが真ん中~低めのゾーンに集まるところ。そのため変化球が、甘くなって打たれるケースが極めて少ないのだ。右打者の外角低めに切れ込むスライダーを振らせたり、左打者の外角に沈むチェンジアップを武器に、ストレートと共に、両コーナーに変化球を集めて来る。

その他

 それほど鋭い牽制を入れることは少ないのだが、技術的には平均的。フィールディングやベースカバーにも、名門の選手だけに破綻はない。クィックは、大型ながら1.0秒前後~1.15秒前後となり、春よりも格段に素早いモーションで投げ込めるようになってきた。

 ただ平常心を保ち淡々と投げ込んでいる時は、力みもないので両サイドにしっかり球を投げ別けることが出来ている。しかし選抜でも脆さを魅せたように、ランナーを背負うプレッシャーのかかる場面では、明らかに肩に力が入り自分から自滅するような脆さは、夏の仙台育英戦でも顔を出した。この夏も、唯一のピンチの場面においてフィルダースチョイスで失点し、それがそのまま緒戦敗退へつながった。そういった意味では、本質的な部分でまだ、精神的な脆さを払拭仕切れてはいないことがわかった。


(投球フォーム)

 基本的に昨夏見た時から、この投手のフォームは、ほとんど変わっておりません。この投手は、技術的な進化により技量を高めたと言うよりは、肉体の成長と経験を重ねることで、成長を遂げてきた選手です。そのため特殊なメカニズムをしておりまして、かなり技術指導がしっかりできる指導者のいる環境で野球を続けないと、一度フォームを崩すと、修正するのが大変な気が致します。

 引き上げた足を地面に向かって伸ばすタイプなので、お尻を一塁側に落とせるフォームではありません。そのため将来的に、見分けの難しいカーブや縦の変化を大きな武器にできる投手にはなれないと思います。あくまでも、スライダー・チェンジアップを活かした投球スタイルを追求すべきです。

 グラブをしっかり内に抱えられる投手で、フォームのブレも少ないので、両サイド中心に制球は安定しております。足の甲で地面が押しつけられない上体の高いフォームなのですが、球持ちの良さを活かした、指先の感覚の良さで低めへのコントロールを実現する日本人にしては珍しいタイプ。

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の観点では、「球持ち」には好いモノがありますが、「着地」「開き」「体重移動」のいずれにも課題があり、実戦的なフォームではありません。その辺が、投球内容は非凡でも、絶対的な評価に至らない大きな理由となります。



(最後に)

 速球でも変化球でもカウントが取れ、非凡な球威・球速がありながらも、コントロール・変化球レベルも高い、総合力の高い投手です。また昨夏~この夏の一年もの間、着実にその技量を高めてきた点も高く評価いたします。

 ただその反面、本質的な部分で、まだ精神的な脆さを露呈したり、プロで通用するような実戦的なフォームではない点は、大いなる不安材料。結局好投していても、突如崩れたり、勝負どころで踏ん張りきれなかったり、凄い球を投げていても勝ち味に遅いタイプではないのでしょうか。これから名門・早稲田に進むそうですが、そういった意味では六大学でどのぐらい勝てるピッチングに徹しられるのか注目したいです。

 当然1年春から、第二戦ぐらいの先発は任されそうな圧倒的なポテンシャルがある選手です。アマの王道で、来るべき4年後に備えて欲しいと思います。高校からプロ入りしても、恐らく上位12名で消えていた選手。この選択が本当に正しかったどうかを、自らの手で証明して欲しいと願うばかりです。


蔵の評価:
☆☆☆


この記事が参考になったという方は、ぜひ!


(2010年・夏)







有原 航平(広島・広陵)投手 187/90 右/右





              「見違えるように成長したね。」





 一冬を越えて見違えるように成長し、選抜組の中でもスカウト達から最も高く評価されたのが、今回ご紹介する有原 航平。何処が、昨夏大きく変わったのか、昨年作成した寸評と比較しながら、考えてみたい。


(投球内容)

 昨夏までは、長身から繰り出す角度のある球を、ただストライクゾーンに投げ込んで来るような球の威力に頼った感じの投手だった。しかしこの春は、ストライクゾーンからボールゾーンに切れ込む変化球を上手く振らせられたり、内角を厳しく突いたりなど、投球の一つ一つが意味のあるものになり、だいぶ投手らしくなってきた。

 球速自体も、昨夏までは常時135キロ前後ぐらいといった感じだったのが、コンスタントに140キロ台を記録するまでになり、選抜ではMAX147キロまで到達し、肉体的にも大きな成長を感じさせる。特に昨夏までは、角度こそ感じさせたものの球質は並で、それほど速球にも光るものはなかった。しかし今春は、球自体にキレが出てきて、手元でも空振りが誘えるような球質に変わり、勝負どころでもズバッとコーナーに決まる速球は、ちょっと手が出ない代物になってきた。

 変化球も、縦・横二種類のスライダー・カーブ・チェンジアップを織り交ぜ、その球を両サイドにしっかり投げ分けつつ、低めのボールゾーンに切れ込むスライダーでも三振を奪うケースが増えた。速球だけでなく、変化球でも三振を取ったり、カウントを整えたりと、投球の幅が大幅に広がっている。

 フィールディングも、大型の割には基準レベル以上だし、牽制も平均的で、クィックも1.25秒前後と大きな破綻もない。だいぶマウンド捌きもよくなってきたし、制球も大きく改善されてきた。

(気になる部分)

 それまで低め・コーナーを上手く突いていた投球が、ランナーを背負うと間が取れなくなったり、しっかり投球できなくなったりと、インテリジェンスが一気に損なわれてしまうことがあります。特に準決勝で魅せた脆さのように、一気にガタガタと崩れ出すと止まらない精神的な脆さを露呈しました。選抜の緒戦よりも、明らかに2戦目の内容の方が好かったように、平常心を保っていられる時には素晴らしい投球ができるのですが、そうではない時に崩れる微妙なバランスの上で成り立っている投手です。特に一気に崩れた準決勝、引き上げてベンチ前に集まる時に、誰よりも輪の外に立って申し訳なさそうにする姿は、この選手の気の弱さを感じずにはいられませんでした。こうやって観てみると、持っているものは素晴らしくても、それを上手く引き出させるには、周りの人間の配慮・環境も、この投手を大成させるのには、重要な要素なのかな?と思えます。夏までに、そういった側面を何処まで払拭できるのか?注目して見守りたいところです。


(投球フォーム)

 投球フォームに関しては、昨夏から大きくは変わっていないように思えます。お尻を一塁側に落とせないフォームであり、その割に縦スラとはいえ、縦の変化を武器にするところからも、身体への負担が大きいフォームです。そのため将来的に、故障との不安は拭えません。

 グラブをしっかり抱えられる上に、指先まで力を伝えられるリリースなので、制球は安定しやすいです。足の甲で地面を押しつけることのできない上体の高いフォームでも、腕を角度よく振り下ろす上に、球持ちが良いのでボールを低めにコントロールできる稀な感覚の持ち主です。

 ただ投球の4大動作である「着地」までの粘りや球の出所が見やすい「開き」の速さは相変わらず。この点を改善して行かないと、一つコンビネーションが単調になると、カカカーンと打たれるようなケースは、精神的な成長云々だけの問題ではなく、起きる可能性を秘めております。

 その反面、あれだけの腕の角度をつけておきながら、それほど身体への負担の少ない腕の角度を保てているのは非凡であり「球持ち」の良さには、観るべきものがある選手です。

 「体重移動」がままならないフォームなのに、球がキレるのは、上体を身体に巻き付くように腕が振れる点です。これにより下半身主導のボールの伸びよりも、上半身主導で生み出されるボールのキレを作り出すことができております。

 課題も多く内包されておりますが、彼ならではの長所も含まれており、かなり特殊なメカニズムの上に成り立つ特殊なフォームです。いったんバランスを崩した時に、それを修正できる有能なコーチと本人の意識づけが求められます。


(今後に向けて)

 一冬を越えて、だいぶ投手としての形ができてきました。両サイドに球を投げ分け、低めの変化球を振らしたり、内角を厳しく突いたり、ズバッとコーナーに速球の見逃しを誘ったりと、攻めのバリエーションは豊富です。

 また野球選手としてのポテンシャルの高さもプロ級ですし、終盤でも145キロ以上の球速を叩き出すように、基礎体力も確かです。技術的な課題と精神的な脆さは確かに気になりますが、それを補ってあまりある才能の持ち主です。

 夏までに更なる成長を見込めれば、上位指名も視野に入れられる選手ではないのでしょうか。現時点では中位級の評価に留まりますが、上手く周りが導いて行けば、近い将来プロのローテーションをも担う、そういった投手への成長も期待できそうです。夏までの更なる成長を期待したいところですが、すでに指名リストに名前を入れるだけのパフォーマンスを見せた、唯一の選抜組投手ではないのでしょうか。

蔵の評価:☆☆


(2010年・選抜)







有原 航平(広島・広陵)投手 186/90 右/右





                 「まるで外人だね。」 





 中国地区で話題になっている大型右腕・有原 航平のフォームは、まるで外国人投手のような突っ立ち投げである。そんな日本人離れした投手を、今回は取り上げてみたい。






(投球内容)

 長身から投げ下ろされる速球は、MAX145キロに到達したと言われる。私が確認した彼の投球では、常時135キロ前後ぐらいで、それほどストレートに伸びやキレもなければ、打者が苦にするほどの威力は感じられなかった。

 むしろ光っていたのは、落差鋭い縦のスライダー。この球で、狙って空振りを誘えるのが、彼の現時点で優れた特徴だろう。更に、右打者の外角に決まるスライダーとカーブをおりまぜてくる。

 高校の先輩である西村健太朗(巨人)同様に、割合淡々と投げ込んでくるタイプ。格別マウンド捌きや「間の取り方など、投球センスは感じられない。ただ両サイドに球を投げ分けてくるなど、制球に大きな破綻は感じられない。けん制は平均的で、クィックも1.25秒前後と平凡。フィールディングの動作に素早さは感じないが、落ち着いてボールを処理する。格別野球センスを感じさせる素材ではないが、大型でも大きな破綻がない。

(投球フォームは)

 お尻を一塁側に落とせない割に、着地もまだ早い。それなのに縦の変化を武器にすると言うことは、かなり体への負担が大きなフォームだと考えられる。着地までの時間を稼げるようになるか、登板後のアフターフォーローを、人並み以上に気をつけることに心がけたい。

 投球フォームの4大動作である「着地」「体重移動」に大きな課題を抱える一方で、「球持ち」が良いのが一つ大きな特徴になっている。

(課題)

 ヒットの多くが、左打者からに集中している。左打者から球が見やすいのか?多少球が甘いからなのかよくわからないが、もう少し左打者への投球に、工夫が必要なのではないのだろうか?

(今年のチェックポイント)

 もう少しストレートに、凄みと言うか、手元まで来るような勢いが欲しい。また投球に「間」なり「粘り」などが感じられると良いだろう。現場は縦の変化は光が、それ以外のものには、さほど感心はしない。ただドラフト候補としてマークできる素材であることは確かで、ぜひ春季大会では、その勇姿を確認しに行かなければならないだろう。

(2009年・夏)