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 東 弘明(徳島ID・21歳)遊撃 180/74 右/右
 






                    「実戦で光る選手」





一昨年、四国アイランドリーグの選抜チームが関東に遠征。そのとき3試合観戦して、最もNPBに近い選手は、当時19歳の 東 弘明 だと評価した。しかしこの年のドラフトでは指名されず、昨年も調査書こそ届いたが指名はなし。しかし今年、再び選抜チームの一員として関東に遠征。改めてこの選手が、実戦で光ることを実感した。

 数字的に見ても、実際のプレーを見ても、何が凄い特徴があるわけではない。しかし試合勘がよく、実戦で何か光るものがある。そんな数字では現れない魅力が、この選手にはある。


(守備・走塁面)

 遊撃手としては、打球への一歩目が鋭く、プレーにスピード感があるのが最大の魅力。キャッチング・フットワークもまずまずで、地肩も水準以上。プロでも、ニ遊間が期待できます。チームでは2番・遊撃手を担うことが多いのですが、78試合で15失策と多いのが気になります。動きが好い割に、安定感もう一つということでしょうか。一軍で信頼されるディフェンス力を身につけるには、もう少しファームでの育成が必要かもしれません。

 右打席からの一塁到達タイムは、4.35秒前後。これを左打者に換算すると、4.1秒前後に相当します。これをプロに当てはめると中の上ぐらいのレベル。アイランドリーグでも、78試合で10盗塁程度ですから際立つ数字ではありません。足は遅くありませんが、売りにするほどのものはないと思います。

 いずれにしても売りの守備でも走塁にしても、即一軍レベルではないことがわかります。この辺は、22歳の若さで更なる成長を期待したいところ。

(打撃内容)

 4年間アイランドリーグ在籍して、打率は毎年2割5分前後しか記録しておりません。ただなんというか勝負どころでは強く、試合を左右する場面での活躍は目立ちます。ちなみに13年度の成績は、

78試合 1本 29打点 10盗塁 .246厘

と数字だけ見れば、アイランドリーグでも並の選手。しかしそれでも再三選抜メンバーに選ばれてきたのは、関係者も数字では現れない何かを、感じていたからではないのでしょうか。

(打撃フォーム)

 一昨年の時も打撃フォームを分析しているので、その時のものと比較しながら、考えてみましょう。

<構え> ☆☆☆

 前足を軽く引いて、グリップの高さは平均的。背筋を伸ばし、全体のバランス・両目で前を見据える姿勢は並。リラックスを心がけて構えていますが、一昨年とはさほど変わっていないように見えます。

<仕掛け> 早めの仕掛け

 投手の重心が下がりはじめる時に始動する「早めの仕掛け」を採用。典型的なアベレージヒッターであり、これも一昨年と変わっていません。

<足の運び> ☆☆☆☆

 始動~着地までの「間」は取れており、速球でも変化球でも合わせやすい打ち方。ベースから少し離れた方向に踏み出す、軽いアウトステップを採用。どのゾーンにも対応できるように待っていますが、真ん中~内角よりに意識がある打ち方だと言えます。踏み込んだ足元もインパクトの際にはブレず我慢はできていますが、地面から離れるのは早いので、それほど「開き」を我慢できる打ち方ではありません。ボールをできれば、センターからレフト方向に引っ張りたいタイプであり、右方向への打球は外角でもやや甘めの高いゾーンの球を払う感じが多いのではないのでしょうか。この傾向も、一昨年と殆ど変わっていません。

<リストワーク> ☆☆☆☆

 打撃の準備である「トップ」を作るのは遅くはありませんが、キッチリ「トップ」を作ってから振り出すタイプではありません。またバットの振り出しも、インサイド・アウトという最短距離で振り出されるわけではなく、内角の球では少しスペースが欲しい打ち方。軽くアウトステップして振っているのは、内角が好きだからというよりは、内角の捌きが窮屈になるのを防ぐ狙いがあるからだと考えられます。

 それでもバットの先端であるヘッドを立てるので、スイング軌道に大きなロスは感じません。むしろプロ仕様の大きな弧を描き、きっちり外の球をセンター中心に振り切るスイングができる点は評価できます。一昨年からの成長は、スイングに強さ・鋭さが増し、外角の球でもキッチリ叩けるスイングになったことではないかと思います。

<軸> ☆☆☆☆

 足の上げ下げも静かなので、それほど目線は動きません。地面から足が離れるのが早いのはありますが、インパクトの際にブレるとか、開きが極端に早い感じはしません。軸足も地面から真っ直ぐ伸びており、軸を機転に綺麗に回転出来ています。

(打撃のまとめ)

 技術的には、一昨年から殆ど変わっていませんでした。しかしスイングに強さ・鋭さは増しており、よりプロ仕様のスイングになっていたことは好感。今ならば、ファームレベルなら違和感なく入って行ける可能性を感じます。

 守備も、二軍ならばニ遊間を任されるなど、使い勝手の好い選手として重宝されると思います。ただファームの便利屋に終わることなく、一軍でも売りにできる武器を見出して行って欲しいところ。使われてナンボの選手なので、実戦で生きるタイプ。1,2年ファームでつけ込まれたときに、どんなプレーヤーになっているのか? ただ本会議で指名するほどの絶対的なものはなく、育成枠だから評価できる指名といった感じは致します。


(2013年 アイランドリーグ選抜チーム関東遠征)










 東 弘明(徳島 19歳)遊撃&三塁  180/70 右/右 (八日市南出身)





                    「一番NPBに近い野手かも?」





四国アイランドリーグ選抜が、関東に遠征してきた試合を3試合ほどみた。その中で、野手で最もNPBへの指名を感じさせてくれたのが、この 東 弘明 だった。

(プレースタイル)

19歳の若さながら、どの方向にもはじき返す実戦的な打撃と、三遊間を守る守備に、隙があれば次の塁を狙う走塁など、三拍子バランスの取れたプレーと意識の高いプレーヤー。ちなみに今シーズンは、8月14日現在

48試合 1本 17打点 盗塁3 打率.272厘

と数字だけ観ると平凡な成績で終わっている。


(守備・走塁面)

 遊撃手としては、最初の一歩目の判断力に優れ、前へダッシュ力など動きの良さが目立ちます。キャッチング・フットワークも悪くなく、NPBでも二遊間を期待されるタイプでしょう。ただ際だって上手いわけではないのと、地肩があまり強くなく、長い距離へのスローイングに若干の不安を感じます。動きの良さからも、二塁あたりが一番適しているのではないのでしょうか。

 右打席からの到達タイムは、4.5秒前後。これを左打者に換算すると、4.2秒前後に相当します。実際のプロの基準が、この左打者換算で4.2秒が基準ですが、丁度基準レベルの脚力ということになります。フューチャーズとの試合では、積極的に次の塁を狙ってアピールしていましたが、48試合で3盗塁と言う数字は、正直もの足りません。それほど元来は、足を売りにするプレースタイルではないのかもしれません。

通常塁間の目安となるのは、

3.9秒弱  プロで足を売りに出来るレベル

4.0秒前後 足を売りに出来るのかは走塁センスにもよるが、プロでも俊足の部類

4.2秒前後 スカウトが、プロの基準と判断するタイム

4.3秒以下 プロの基準以下となり、割り引いて考える

となる。上記の数字は、左打者の目安であり、通常右打者の場合、タイムから、0.25秒を引くと、同等の走力が計測することが出来る。ただし、セーフティバントや左打者が一二塁間に引っ張ったような、最初から一歩目のスタートをきっているような場合は、参考資料とはならない。

守備は、中の上。走力は、並ななると、プロにアピールするには、打撃でと言うことになります。


(打撃内容)

 打席での集中力、ボールに食らいつく姿勢、どの方向にも打ち返す打撃の幅と好いものを持っています。ただ7月の終わりに成績をチェックした時は丁度3割だった打率が、1ヶ月も経たないうちに、打率.272厘まで降下しているところを観ると、関東遠征後はかなり調子を落としていることがわかりました。

これは、偶然調子を落としているのか?体力的にきつく、疲れから数字を落としているのかは定かではありません。






(打撃フォーム)

<構え> 
☆☆☆☆

 前足を軽く引いて、グリップの高さは平均的な高さで添えています。腰の据わり・全体のバランス・両目で前を見据える姿勢もよく、適度な緊張感の中にも力みがない構えには好感です。

<仕掛け> 早めの仕掛け  投手が足を降ろし初めて~一番底に到達する間に始動

 これが、現在採用される仕掛けの中では、最も早い仕掛けとなる。打者が足を地面から浮かし~着地するまでの時間(間)が長いほど、打者はいろいろな変化に対応出来る可能性が広がる。そのためアベレージ打者は、この仕掛けを採用するケースが多い。

<下半身の動き> 
☆☆☆☆

 足を上げて、降ろすまでの「間」が取れているので、いろいろなタイミングでボールを捉える幅ができています。そしてベースから離れた方向に踏み出すアウトステップを採用。内角の球を引っ張って巻き込むのが、この選手の持ち味のようです。

 それでも踏み込んだ足下は、インパクトの際にブレません。外角の球でも、真ん中~高めの球ならば右方向への打撃も、期待できると考えられます。外角は打てるゾーンが限られるでしょうが、どのコースにも打ち返せる打撃は、この幅の広い下半身の使い方に秘密がありそうです。

<上半身の動き> 
☆☆☆

 打撃の準備段階である「トップ」(バット振り出し始めるところ)を作るのは、けして遅くありません。そのため速い球に立ち後れる心配は少ないはずです。ただ今調子を落としているとするならば、知らず知らずに始動が遅れていたり、トップの形を作るのが遅れている可能性があります。打者が調子を悪くしている要因は、この始動の遅れか、体の突っ込みであることが大半ですから。

 彼の場合、少しバットの振り出しが、体から離れた遠回りなスイングになっています。そのためボールを捉えるまでに、少しロスが感じられます。特にバットの先端が下がってしまっており、フェアゾーンにボールが落ちる可能性が少ないのが残念です。バットの先端を立てる意識でスイングできると、遠回りのスイング軌道もだいぶ変わっています。

 ボールを捉えてからは、しっかり最後まで振り切れています。夏場でヘッドスピードも鈍っているかもしれないので、それに負けない体力と筋力を養いたいですね。元々ヘッドスピードが鋭いとか、ボールを捉えるセンスに優れていると言うよりは、意識を集中せて甘い球を逃さないタイプでしたから。

<軸> 
☆☆☆☆

 足を上げ下ろししますが、頭の動きは小さく目線のブレは感じません。体の開きも我慢できているので、あとは軸足が前に傾いたりして突っ込まないことを意識したいところ。どうしても調子の悪い打者は、ボールを呼び込めずに自分からボールを捉えに行っていまし、自然と開きが早くなってしまうものです。

(最後に)

 守備は中の上、走力は並、打撃も際だつものがないとなれば、幾ら若くて意識が高い選手でも、育成枠での指名があるのかも微妙な状況です。ただ今年のアイランドリーグの野手の中では、一枚抜けているかなと感じられた選手なので、チーム事情に合致している球団が、育成枠で指名してくる可能性は秘めていると思います。

 残念ながら私が観戦した関東遠征での三連戦では、三日間とも1人のスカウトも視察してませんでした。アイランドリーグの選手達にとって、一番のアピール時は、恐らくドラフト直前に行われるフェニックスリーグの時期だと考えられます。ここで選抜メンバー選ばれるぐらいの成績をあげていることが、重要になります。ここでアピールできれば、NPB入りも大きく前進するはずです。最後まで諦めずに、夢を叶えて欲しいと思います。


(2011年 アイランドリーグ選抜 VS フューチャーズ戦)