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柿田 裕太(21歳・日本生命)投手 181/80 右/右 
 




                      「観戦運に恵まれず」



昨年の日本選手権での活躍で、高卒3年目の解禁組の中では、最も上位指名が期待できる選手として、春先からマークしてきた。しかし日本生命が関東に遠征してきた時に2度の練習試合に足を運ぶも、いずれも登板はなし。ようやく今年確認できたのは、都市対抗本戦の僅か1イニングの投球のみだった。

 今回は、松本工業時代や入社一年目に魅せた投球なども加味しながら、少ない観戦を補いつつ寸評を作成したい。仮にドラフト終了後の日本選手権で再度確認できた場合で、新たに寸評を作成仕直す必要性に迫ったら、再度レポートを作成しようと思う。しかし現時点では、これが一応最終寸評として捉えて頂きたい。

(投球内容)

足を勢いよく高く引き上げて、腕を真上から振り下ろして来る力投派。

ストレート 常時140キロ前後(MAX142キロ)

 東京ドームのスピードガンが辛いということもあり、球速としては驚く程のものは出ませんでした。ただ入社一年目の都市対抗予選での投球を見たのですが、その時も常時140キロ前後~MAX89マイル(142.4キロ)ぐらいだったので、球速といった意味では今でもそのぐらいなのでしょう。

 腕を真上から振り下ろして来るので、ストレートの勢い・迫力は球速よりも感じます。ただ相手を抑え込むほどの、絶対的な切れや伸び・勢いは感じられず、あくまでも変化球とのコンビネーションで抑えるタイプ。


 ただこの投手の球は、ボールがカット気味に動かしたり、右打者内角をツーシームで詰ませたりと結構ボールを動かしてきます。ただその球が時々甘いゾーンに入ることも多く、ただの棒球となって痛打を浴びることも少なくありません。

 

変化球 カーブ・スライダー・フォークなど

 以前見た時は、スライダー中心の投球で、カーブをアクセントに使っていました。しかし今年の都市対抗の投球を見ていると、スライダーよりもカーブを多く織り交ぜ、フォークのような縦の変化球を積極的に使ってきます。

 ただし変化球の精度はそれほど高くなく、カーブで上手く緩急は使えていますが、相手を仕留めきれるほどの変化球はないように思います。あくまでも芯をズラす癖球と変化球とのギャップで、相手の打ち損じを誘うタイプだと考えられます。

その他

 クィックは1.1秒前後で投げ込める素早さはあるものの、牽制やフィールディングはあまり上手くない。そういった投球以外の部分を器用にこなせるセンスや運動神経には疑問が残ります。

(投球のまとめ)

 入社1年目の好投が印象的だったものの、二年目の秋までは思ったほどの実績をあげられませんでした。それでも今年の都市対抗予選では活躍し、実績を重ねてきました。しかしこの日の投球を観るかぎり、目に見えて成長をしているのかと言われると、それほどでもないのかなと。

 あくまでも発展途上の投手であり、高卒3年目の若さを加味して評価すべき選手ではないのだろうか。コントロールもかなりアバウトで、まだボールの威力と勢いで抑えこむ、そういったピッチングスタイルでしかない。

(成績から考える)

観戦の少なさを補う意味で、都市対抗予選の数字や昨年の成績から考えてみたい。

12年度成績 8試合 29回2/3 22安打 8四球球 9奪三振 防御率 2.43

都市対抗予選 2試合 12回    6安打 5四死球 6奪三振 防御率 0.75


1,被安打は、イニングの70%以下 △

 12年度の被安打率は、74.3%。都市対抗予選は、50% 。あえて1年目からプロの一軍を想定するために、70%以下という厳しいファクターを設けたが、かなり被安打は少ない投手だと言えよう。打者としては、かなり的を絞り難い厄介なタイプ。12年度の74.3%も設けた基準は越えているが、けして多い数字ではない。

2、四死球は、イニングの1/3以下 △

 12年度での四死球は、27.0% と基準を満たしている。逆に今年の都市対抗予選では、41.7% で、このファクターを満たしていない。イメージ的には、それほど四死球を出す荒々しさは感じていなかったものの、今年の投球だけをみると、かなりアバウトでこの数字も納得できてしまう。ただ一つ言えることは、本当のコントロールは持ちあわせていないのかと。

3 奪三振は、1イニングあたり 0.8個以上 ✕

 12年度の成績では、1イニングあたり 0.3個程度であり、この数字は極めて少ない。更に今年の予選でも、0.5個であり、これは球の威力で勝負したい選手にしては、相当少ない数字。完全に、相手を抑えこむほどのボールがないことは明らかで、あくまでも相手のタイミングをずらし、打ち損じを誘うタイプだということがわかってくる。

4、防御率は、2点台以内 ◯

 社会人レベルの打者相手だと、プロの打者と防御率の観点では同じに設定しても好いだろう。ただプロの1軍を想定するのであれば、1点台、もしくは0点台 を望みたい。昨年は、2.43 とまあ合格ライン。都市対抗予選は、投球回数も少なめだったので、防御率1点台は望みたかったなか、0.75 の数字は合格ライン。そういった安定感は、持ちあわせている。

(データからわかること)

 被安打・四死球に関しては、絶対的なものはないが悲観する数字でもなかった。しかしその割りには防御率をみると踏ん張ることができている。ただし相手を仕留められる球がないのが、プロの打者相手に対しどうなのだろう? そんな不安は拭えない。

 成績的にはドラフトにかかる能力はあるが、即戦力としては微妙といった感じはする。大きな破綻はなく最低限のまとまりはあるが、特別なものは感じない。

(投球フォーム)

最後は、投球フォームの観点から考えて行きたい。

<広がる可能性> ☆☆

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻は一塁側に落とせません。すなわち体を捻り出すスペースが確保できていないので、それでも腕を縦から振り下ろそうとするので、無理やり背中を後ろに反って投げないといけなくなるわけです。このフォームでカーブやフォークを多投するので、かなり無理があると言えるでしょう。

 「着地」までの粘りは平均的で、可も不可もなしといった感じ。変化球に絶対的な切れや変化がないのも、体を捻り出す時間を充分確保できていないのが原因ではないのだろうか。

<ボールの支配> ☆☆

 抱えていたグラブは最後解けがちで、しっかり最後まで抱えられていない。その辺が、両サイドへの投げ分けを中心に制球のアバウトさにつながっているのでは。足の甲での地面への押し付けも浮きがちで、ボールも高めに抜けやすい。「球持ち」は並で、制球がアバウトなのも納得してしまうフォームとなっている。ボールを動かして打ち損じ誘うタイプだけに、低めやコースーに集められる制球力は不可欠だろう。

<故障のリスク> 

 お尻が落とせない割に、カーブやフォークなどを多投するので、肘への負担は少なくないはず。更に腕を真上から無理に振り下ろしており、肩への負担も大きいだろうし、それでいて力投派。少しでも登板過多になると、故障の可能性が高く大いに不安になる。

<実戦的な術> ☆☆☆

 「着地」までの粘りは平均的で、体の「開き」も並ぐらい。腕を真上から投げ込むダイナミックなフォームでもあり、打者としては合わせやすいわけではないだろう。

 腕が地面に当たってしまうような腕の振りで、体に巻き付くような粘りは感じられない。それでもボールには適度に体重が乗せられており、球速以上に勢いは感じられる。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、いずれも平均的で、大きな欠点は見当たらない。しかしその分、特別優れた部分もない。

 一方で、制球を司る動作や故障へのリスクという部分に不安が残り、その辺は大きな不安要素として残る。

(最後に)

 実際の投球や残してきた実績を検証すると、プロに入るだけの力はあるが、一年目からバリバりに活躍できるのかと言われると疑問が残る。高卒3年目の若さも加味して、今後の伸び代に期待したい。

 しかしそれを可能にするためにフォームを分析してみると、それほど特筆すべき点は見当たらない。それでいて制球・故障へのリスクが大きいことは、頭の片隅に入れておきたい。

 恐らくドラフト会議では、2位か3位ぐらいまでには指名されるだろう。ただ私は、リスクの大きな素材だとして、評価は控えめに留めたい。もちろんプロの指導で一皮むける可能性は否定しないが、思い通りの力を発揮できずに終わる、その可能性の方が高いのではないかと考えている。ただし一つ彼を買える部分を付け足せば、野球に向かう姿勢・意識は高卒3年目にしては実に頼もしい。高卒の選手が、社会人に混ざって主力投手になるには、そういった部分が非常に大きく影響していたのではないのか? そういった意味では、プロでの更なる進化も期待せずにはいられない。

蔵の評価:

(2013年 都市対抗)










 柿田 裕太(20歳・日本生命)投手 181/80 右/右 (松本工出身)





                    「甲子園では不甲斐なかったが」





高校3年の時に、松本工業で甲子園に出場。北信越NO.1右腕としてスカウト達からも注目されていたが、調子を落とし甲子園では力を発揮できないまま終わった。しかし社会人一年目の都市対抗予選で見た時は、「俺の力はこんなものではねぇ」と言わんがばかりに、ルーキーイヤーから素晴らしいボールを投げ込んで魅せた。
 
しかし高卒2年目の昨年は、チームが都市対抗出場を果たす中、予選では全く登板無し。その存在は陰を潜めていたが、秋の日本選手権予選で好投。本戦でも2試合ほど登板し、全国大会で存在感を示した。プロ解禁となる3年目、今年最も飛躍が期待される高卒解禁投手の一人となる。





(投球内容)

 今回は、残念ながら2年目の登板が確認できなかったので、ルーキーイヤーの都市対抗予選での投球を元に、レポートを作成してみたい。柿田は、非常に綺麗な正統派の上手投げといったフォームで投げ込んでくる。

ストレート 130キロ台後半~140キロ台前半

 甲子園では、130~135キロぐらいで、MAXで139キロ止まりだったことを考えると、コンスタントに140キロ前後を刻み、MAXで89マイル(142.4キロ)を記録。明らかにボールの勢いが違いました。特にこの試合は、エースの 海田 智行(オリックス)が打ち込まれ、その後の投手もピリッとしなかったので、尚更その投球はきらりと光るものがありました。

変化球 スライダー・カーブ

 変化球は、横滑りスライダーとのコンビネーション。この球のキレはわるくありませんが、それ以外の球がありません。高校時代は、余裕が出て来るとカーブをアクセントに使っていました。少なくても高卒1年目の時点では、球種は殆ど変わってはいなかったと言えるでしょう。

その他

元々クィックは、1.1秒と基準以内。ただフィールディングや牽制が、あまり上手くない投手だった。

(投球のまとめ)

 ボールを両サイドに散らし、ある程度投げ分けられるコントロールがあります。そういったストライクを先行できるテンポの良さがあり、グダグダの試合展開のなか、ようやくまともな投手が出てきたという安堵感があったのを今でも覚えています。課題は、甲子園の時のように、自分のペースで投げられないような調子の悪い時でも、試合をまとめることができるのか。そして長いイニングを任されるためには、もう少し攻めのバリエーションを増やさないと、厳しいのではないのでしょうか。


(投球フォーム)

投球フォームに関しては、昨年の春先の動画あがっていたので、それを参考にさせて頂きたい。

<広がる可能性> 
☆☆☆

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻は一塁側にあまり落ちません。そのためカーブで緩急を利かしたり、落差のあるフォークのような球種には適さないフォームだと言えるでしょう。

 ただ「着地」までの粘りは悪くないので、そういった変化球以外ならば、ものにできる可能性は秘めています。球速ある小さな変化球を中心に、ピッチングの幅を広げてはいかがでしょうか。特にチェンジアップ系の習得は、必須だと思います。

<ボールの支配> 
☆☆☆

 グラブは最後まで体の近くに留められているものの、最後後ろに抜けそうなのが気になります。おおまかに両サイドに散らせますが、シッカリ投げ分けられているという程ではありません。

 また足の甲での地面の押し付けですが、動画の関係上ちょっとわかり難い部分があります。どうも見ている感じだと、足の甲を押し付ける時間が短く、充分浮き上がろうとする力を抑え込めていないのではないかと思います。そのためストレートは、高めに抜けることこそありません。しかし全体的に、真ん中~高めに集める傾向が見られます。「球持ち」は悪くなさそうで、指先の感覚は平均以上はあるのではないのでしょうか。制球は、おおよそ思ったところに投げられていますが、それほどピンポイントの精度の高さはなさそうです。

<故障のリスク> 
☆☆

 お尻を一塁側に落とせないフォームですが、カーブやフォークといった球種を多投しないので、それほど気にしなくても良いと思います。

 しかしテイクバックした時に、背中のラインよりも肩が後ろに入りますし、振り下ろす腕の角度にも無理があるので、肩には負担がかかるフォームだと考えられます。高校3年の時の失速や社会人一年目から、あれだけのボールを投げながら、2年目は秋まで目立った活躍がないのは、肩か何処かの調子次第で、パフォーマンスが大きく変わっている危険性を感じなくはありません。

<実戦的な術> 
☆☆☆☆

 「着地」までの粘りがある程度作れているので、フォームとしては合わせやすくはないはず。また体の「開き」も遅く、ボールの出どころはわかり難いはず。そのため、この単調なフォームでも、ある程度抑えられると考えられます。

 また振り下ろした腕が体に絡んで来る腕の振りの良さがあり、更にボールにしっかり体重が乗せられる「体重移動」の良さが見られます。このフィニッシュの時の形は、素晴らしいといえるでしょう。

(投球フォームのまとめ)

 投球フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では大きな欠点がなく、「球持ち」こそ並ですが、あとの部分は優れたフォームだと評価できます。

 実戦的なフォームだと言えるのですが、もうワンランク上の制球力と、負担の少ないフォームを見出すことが、一つ課題だと言えるのではないのでしょうか。

(最後に)

 まだまだ、長いイニングを任されるほどのバリエーションの少なさに不安を感じます。スライダー以外に、もう少し使える変化球を増やしたいところ。どうしても高卒社会人投手には、こういった球種の少なさを感じさせる投手が少なくありません。

 また、上のレベルを意識するための本当のコントロール、長く険しいシーズンを戦えるだけの負担の少ないフォームを模索することができるのか、課題は少なくありません。そういった部分をいかに改善出来ているのかが、3年目のチェックポイント。

 ぜひ今年は、都市対抗予選・本戦でも存在感をアピールして、最短でのプロ入りを実現させて欲しいと思います。社会人では、数少ない高卒解禁組みのドラフト候補となります。


(2011年 都市対抗予選)


 






 柿田 裕太(長野・松本工)投手 180/75 右/右






                            「北信越NO.1右腕」





 2010年度において、北信越でNO.1右腕と評判だったのが、この柿田 裕太。しかし甲子園開幕戦で登場した柿田は、強打・九州学院の打線に粉砕された。これが彼の実力なのか?夏の長野大会の投球も加味して考えてみたい。



(投球スタイル)

 MAX143キロのストレートが売りの投手だと聞いていたが、甲子園では130キロ台前半~MAXで139キロ。その球威・キレは物足りないものだった。元々この投手、ストレートで押すと言うよりは、カーブ・スライダー・縦スラ(フォーク?)など、変化球を上手く交えて仕留める総合力で勝負するタイプの投手。ただ甲子園でのできは悪く、少し割り引いて考えて良さそうだ。

ストレート 130キロ台前半~MAX139キロ

 私がチェックした試合も、長野県大会の終盤戦のものだったので、連投による連投で、けして万全の状態ではなかっただろう。それでも勝負どころでは、力のある球を投げており、甲子園の時よりは勢いのある球が時々決まっていた。ただこの投手、身体の開きが早い上に、球もそれほど威圧感はないので、甘くない球でも痛打を浴びる場面が目立ったのは気になる材料。

変化球

 主に横滑りするスライダーでカウントを整え、追い込むと縦の変化球で空振りを誘う。更に余裕がある時は、カーブなどを織り交ぜ投球にアクセントをつけている。

その他

 クィックこそ1.1秒台で投げ込むなど素早いのだが、フィールディングは上手くなく、牽制もさほど鋭くない。ただ大まかに両サイドに投げ別ける制球力はあり、長野県予選でも60イニングで18四死球と、基準であるイニングに対して1/3以下に抑えている。

 元来マウンド捌きなどもまずまず。ただ調子の悪い時にどうにかする投球ができなかったことは、今後の反省点。まだまだ全国レベルの打者を抑え込むだけの術が、現時点ではないと言う力不足を露呈する形となった。

(投球フォーム)

 お尻は、ソコソコ一塁側に落とせるので、将来的にもカーブ・縦の変化球を織り交ぜる投球スタイルは、上のレベルでも可能だろう。腕の振りにも無理はなく、大きな故障に泣かされる可能性は低そうだ。

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「体重移動」「開き」などにおいては、フォームが直線的でボールが見やすく「開き」の早いフォームの修正が最大の課題。その他の分野に関しては、大きな破綻はない。この「開き」の部分を改善できない限り、例え球速・キレを追求しても、その効果は期待し難い。


楽天


(最後に)

 まだまだストレートのアベレージでの球速の物足りなさ・キレなどの球質・悪いなりに試合をまとめられる投球術などの観点からも、高校からプロとなると物足りない。

 持っている変化球レベル・制球力は悪くなく、縦の変化と言う決め手があることからも、レベルの高い大学などで更なる実戦力を磨けば、4年後は楽しみな存在。すでにプロ志望届けは提出されているが、本人のことを考えれば、アマでもう少し力を付けてからの方が賢明ではないのだろうか。


この記事が参考になったという方は、ぜひ!


(2010年 夏)