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荒西 祐大(オリックス)投手のルーキー回顧へ







荒西 祐大(26歳・HONDA熊本)投手 177/75 右/右 (玉名工出身) 
 




 「粘つこくなっていた」





 荒西祐大といえば、高卒3,4年目ぐらいには、若くして社会人で頭角を現してきた投手としてドラフト戦線でも注目されていたドラフト候補。しかし適齢期を過ぎても指名されず、もうドラフトの可能性はないのではないかと気にするものも少なくなっていた。しかし現在の荒西は、注目された2014年度前後よりもボールの威力・質・投球内容を良化させており、26歳になった今年ドラフト指名されても不思議ではないレベルにまで到達している。久々に、荒西の投球に注目してみた。


(投球内容)

サイドハンドというよりも、重心の低いスリークォーターといった感じです。

ストレート 常時145キロ前後~MAX149キロ 
☆☆☆☆ 4.0

 コンスタントに140キロ台中盤~後半を叩き出すスピード能力は、社会人の先発投手でも上位レベルのボールの威力があります。ドラフト適齢期でも今と近い球速は出ていたのですが、今は非常に脱力したフォームで無理なくこういったボールが投げられるということ。それにより、打者は打ち難くなっています。さらに「球持ち」が以前よりも良くなっていることで、ベース版の近くまで勢いが落ちない球質にもなっているところにも好感が持てます。それでも少し「開き」が早く合わせやすいところがあるのは、昔と似た傾向にはあります。

変化球 スライダー・ツーシーム・カーブなど 
☆☆☆ 3.0

 ストレート中心にピッチングを組み立てるスタイルは相変わらずで、スライダーなど変化球はカウントを整えたり、目先の変化に使って来ることが多いです。そのため、変化球で三振を奪うとかそういったケースは多くはありません。しかし変化球のコマンド自体はよく、以前よりもストライクゾーンの枠の中でも細かい投げ分けができるようになっています。

 以前はシンカーのような沈む球を投げていた記憶があるのですが、今は左打者外角に投げ込む球がナチュラルシュートするのか? ツーシームのような球を投げるのか? 140キロ台の球速で変化しています。あとは時々、緩いカーブを投げることで単調になるのを防ごうとします。

その他

 牽制は、それほど走者を刺してやろうといった鋭いものではありません。クィックは1.05秒前後とまずまずで、フィールディングの動きも悪くありません。以前から「間」を意識して投げたり、今は力まずに脱力して投球するようにもなってきており、速い球を打ち返そうと構える選手にとっては、なかなかボールが出てこないで合わせ難くなってきました。

(投球のまとめ)

 適齢期のときにレポートした時は、動作に粘りがなく投球が淡白で一辺倒なところを指摘しました。あれから4年余り、そういったところにも注意して投げられるようになり、細部にまで工夫の跡が感じられます。このへんが今ではHONDA熊本のエースという役割だけでなく、ジャパンの代表として国際大会に選出されたりと、社会人の中で地位を着実に築いてきました。特に「球持ち」に粘りが出てきたことで、ベース板までのボール強さ、微妙な制球力、なかなか出てこないフォームなどが実現でき、より実戦的な投球ができるようになっています。今ならば適齢期を過ぎていても、中位指名ぐらいで指名されても不思議ではない実力を身につけてきていると言えるでしょう。


(成績から考える)

では都市対抗予選と本戦の成績を加味して、成績から傾向を考えてみたいと思います。

4試合 33回 29安 5四死 21奪 9失 防 2.45

1,被安打は投球回数の80%以下 △

 被安打率は 87.9%であり、基準である80%をオーバーしている。以前ほど単調ではなく、フォームも合わせ難くはなっているものの、依然被安打は多めの数字が出ている。

2、四死球は投球回数の1/3以下 ◎

 被安打は多いものの、四死球が少なく余計なランナーを出さないのは好いところ。特に以前よりもストライクゾーンの枠の中での制球力が上がっており、そういった部分では評価できる。しかし今でも、コースを突いたような球を打たれるケースは多い。

3、奪三振は1イニングあたり0.8個以上 ✕

 1イニングあたりの奪三振は、0.64個 と平均的。140キロ台後半の速球をバシバシ投げ込む一方で、決め手なるような相手を意識させるだけの変化球がないところが課題だろうか。

4,防御率は1点台 △

 防御率 2.45 と基準を満たしていないが、これに関してはサンプルが少ないので、あまり気にすることはないだろう。ちなみに予選だけの防御率は 1.88 と基準は満たしている。都市対抗本戦でも、終盤まで好投していただけに、内容的には悪くなかった。

(成績からわかること)

 被安打がやや多いのは、四死球が少ないことで補えている印象。気になるのは、三振が少ないところ。これだけのボールの威力があるので、もう少し取れてもと思うのだが、この辺が若い頃に比べ力でねじ伏せようという意識が薄くなっているのも影響しているのかもしれない。その分、安定感は増したのだが。


(最後に)

 おそらく短いイニングならば、150キロを連発することも可能なのだろう。しかしながら、彼の持ち味はランナーがいない時であり、ゆったりと自分の「間」で力みなく投げるところ。そう考えると、先発の方が持ち味が出やすいのではないかとみている。果たして26歳の今年、指名して来る球団があるのか注目してみたい。ボールそのものでいえばドラフト上位レベルではあるが、年齢も加味すると、中位(3~5位)あたりが妥当な判断になるのではないのだろうか。攝津正(ソフトバンク)のような、活躍を魅せて欲しい選手です。


蔵の評価:☆☆ (中位指名級)


(2018年 都市対抗)









荒西 祐大(22歳・HONDA熊本)投手 178/78 右/右 (玉名工出身) 
 




                     「更にパワーアップ」 





 高卒3年目の昨年、プロ解禁となる若手の中では期待されていた一人だった 荒西 祐大。しかし荒削りのため、まだプロにまで手が届くまでの総合力は身につけられなかった。あれから一年、正直あまり期待していなかったのだが、目に見えてボールの威力を増している彼に、改めて注目してみた。


(投球内容)

 サイドからゆっくりと静かに入ってゆくフォーム。ぱっとマウンドを外したり、投球センス自体は悪くない。

ストレート 常時145キロ前後~MAX148キロ

 例年より2キロ程度速くなっているのではないかという感じの東京ドームだったが、それでもコンスタントに145キロ前後~けしてそれほど力を入れて投げている感じでもないのに148キロまで投げ込んでいた馬力は社会人でも上位レベル。一昨年寸評を作成した時のMAXは145キロだったから、球速・ボールの勢いはその当時よりも増している。

 両サイドに投げ分けるコントロールもあるのだが、サイド特有の「開き」の早いフォームのせいか、打者には自慢のストレートが苦になく打ち返される。それも左打者だけでなく、右打者にも。

変化球 スライダー・シンカー・スローカーブなど

 変化球は、サイド特有のスライダー・シンカー、それにたまに緩いスローカーブを交えてきます。変化球のキレは空振りを誘えるほどではないのですが、コースやボールゾーンにコントロールする技術は持っており、変化球を狙い打たれるケースは殆どありません。予選の8回2/3イニングで、奪三振は7個ですから、けして三振が取れない投手ではないのですが。

その他

 元々鋭い牽制は入れて来ませんし、フィールディングも基準以下でした。それでもクィックは、1.1秒前後でまとめられるなどまずまず。しかし結構「間」を意識してゆったり投げてくる投球だけに、ランナーを背負うと持ち味が発揮できずに連打を食らいやすいのかもしれません。

(投球のまとめ)

 サイドから140キロ台後半を投げ込める能力はあり、変化球・コントロールも悪くありません。しかし合わせやすいフォームに課題があり、サイド特有の球筋や変化球のキレを活かせているわけでもありません。パワーアップには成功していますが、まだまだ実戦的な部分では課題を残します。

(投球フォーム)

 サイドハンドなので、通常のフォーム理論が当てはまりに難いのですが、いつもどおり進めて行きましょう。

<広がる可能性> 
☆☆☆

 この投手はサイドハンドの割に、お尻を一塁側に落とせます。しかし腕が横から出るので、カーブやフォークといった球種は、実際のところかなり投げ難いという問題があります。特にフォークは、基本的に厳しいといえるでしょう。

 「着地」までの粘りがイマイチで、身体を捻り出す時間が充分ではありません。このため変化球のキレ・曲がりに影響し、良い変化球が中々習得できません。サイドの割にスライダーはそれほど曲がらず、シンカーの落差も際立つものがありません。

<ボールの支配> 
☆☆☆

 グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分けは安定。しかし足の甲での地面への押し付けが浮いてしまい、ボールが上吊りやすい傾向があります。更に「球持ち」が浅いのも、細かいコントロールという意味では気になります。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆

 お尻が落とせるフォームなので、基本的に肘への負担は少ないはず。更に腕の送り出しにも無理がないので、肩への負担も少なそう。しいていえば「球持ち」が浅く、腕が外旋してブンと振る傾向があり、その辺で負担はあるのかなという気はします。しかし普段からそれほど力投派ではないので、故障の可能性は少ないと考えられます。リリーフで、タフな活躍を期待できるのではないのでしょうか。

<実戦的な術> 
☆☆

 「着地」までの粘りに欠け、打者としては合わせやすいフォーム。更に「開き」が早く、コースを突いた球でも苦になく打たれてしまいます。

 腕も身体に巻き付くような粘りがなく、ブンと強引に振っている印象があります。これは「球持ち」が浅いことが、大きく影響しているからでしょう。ボールへの体重の乗せも充分とはいえず、球速の割にグッと手元まで来る感じは薄いように思います。そうでなければ、いくら合わせやすいフォームだとはいえ、ストレートを打たれ過ぎです。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」いずれにも課題があり、サイドからこれだけの球速を持ちながら簡単に合わせられるのも頷けます。

 ボールが上吊りやすい欠点がありますが、故障の可能性は低く、タフなリリーフでの期待は高まります。フォーム全体にいえるのは「着地」までの粘り、「球持ち」の浅さなど、各動作全体に「粘り」というものが足りないこと。このことを強く意識して、取り組んだら全然変わって来るのではないのでしょうか。


(最後に)

 昨年に比べても、目に見えてパワーアップしています。サイドの割に、コントロールも悪くない強味があります。予選でも8回2/3イニングを投げて、四死球は0個という数字からも伺われます。

 しかしストライクゾーン内での細かいコントロール(特に高さ)や、動作の粘りなどあと一歩踏み込んだところまで追求して欲しいですね。そこまで深くまで野球を探求できれば、結果もおのずと変わってくるのではないのでしょうか。プロ入りには、まだもうちょっと待った方がいいと思います。まだまだ22歳ですから、回り道も許される年齢。確かな実戦力を身につけて、来年のドラフトを目指して欲しいと期待します。


(2014年 都市対抗)










荒西 祐大(21歳・HONDA熊本)投手 178/78 右/右 (玉名工出身)
 




                    「ワイルドだろ~」





高卒一年目ながら、都市対抗の大舞台で登板した 荒西 祐大 。怖さ知らずの勢いで、サイドから145キロのキレのある球を投げ込んで魅せた。2年目の都市対抗では、僅か打者1人のみの登板。その成長を、実感できるまでには至らなかった。3年目の今年、満を持してドラフト解禁となる。


(投球内容)

 ランナーがいない時は、ジワ~とゆっくり足を引き上げてくる独特の間を持っている。一転ランナーを背負うと、高速クィックからの投球を披露。

ストレート 常時140キロ前後~MAX145キロ

 一見、荒っぽいサイドハンドに見えます。ルーキーイヤーの時は、常時140キロ台~中盤を記録。2年目の東京ドームの時は、135~後半ぐらいで、肩が温まる前に役目を終えてしまいました。ただ特にボールの勢いが落ちた感じはしなく、恐らくこの球速差は両球場のスピードガンの差ではないかと思います。

 球筋はバラついているように見えますが、適度に両サイドに散っています。またそのボールは、重い剛球というよりは以外にキレのある一面も。サイドのためか、右打者の内角の逆クロスの球は、シュート回転してきます。

変化球 スライダー・カットボール・シンカー

 120キロ台の横滑りスライダーは、曲がり過ぎて上手く制御できないことも少なくありません。むしろ130キロ台中盤の、カットボールの方が小さく鋭く曲がり実戦的。また右打者にも左打者にも、シンカーをおりまぜてきます。現状、打者の空振りを誘うような絶対的な変化球はないように思います。

その他

 牽制は、結構鋭くターンしてランナーをベースに釘付けにします。クィックも、1.05秒前後であり、フォームが大きなサイドハンドですが、中々進塁を許しません。フィールディングに関しては、それほど上手くなく、平均から~やや下手な部類ではないのでしょうか。

(投球のまとめ)

 一見、荒れ荒れのサイドハンドに見えます。しかしボールは適度にコーナーに散らし、制球難ということはありません。またランナーを背負うと、パッとマウンドを外して魅せたり、普段はジワ~と足を引き上げてくるなど、「間」を意識した投球術も魅せます。ただの荒削りな力投派サイドとは、一線を画します。





(実績から考える)

今回は、都市対抗予選の成績から考えてみましょう。

3試合 13イニング 12安打 3四死球 10奪三振 防御率 1.38

1,被安打は、イニングの80%以下 ✕

 被安打率は、92.3%。これは恐らく、着地までの粘りに欠ける淡白な投球フォームで、開きも早く球筋が見極められやすいからではないのでしょうか。

2,四死球は、イニングの1/3以下 ◯

 四死球率は、23.1% と基準以内。粗そうなコントロールに見えますが、適度にコーナーに散っており、四死球で自滅するタイプではないようです。

3,奪三振は、0.9個以上 △

 奪三振率は、1イニングあたり、0.77個。リリーフ投手で三振を多く奪っているとなると、0.9個以上の数字は欲しいものの、比較的多くのアウトは三振で奪えています。それも変化球ではなく、ストレートで奪っているケースが多いのではないのだろうか。

4,防御率は、2点台以内 ◯

 投球回数も少ないので一概にいえないが、高卒2年目の選手が 防御率 1.38 は立派。少なくてもその投球は、充分社会人でも通用していることがわかる。

(データからわかること)

 被安打が多いのと、決め手となる変化球がないのは気になるが、思った以上に投手として大きな破綻がないことに驚かされる。変化球に磨きがかかり、攻めのバリエーションが増えたり、決め手となる変化球を身につけられたら面白い存在ではないのだろうか。

(投球フォームから考える)

<広がる可能性> 
☆☆

 投球において、攻めのバリエーションを広げるのが大きな課題。しかし体を前に倒して行くサイドハンドなので、お尻は一塁側には落とせません。そのためカーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化球は厳しいでしょう。

 更に「着地」までの粘りに欠けるので、体を捻り出す時間も確保できていません。そのため球速の速い、小さな変化球を中心に、投球の幅を広げて行くことになるのではないのでしょうか。

<ボールの支配> 
☆☆☆

 グラブは最後まで体の近くにあるので、両サイドへの投げ分けは安定。足の甲での地面の押し付けは遅い感じは致しますが、ボールは上吊りません。「球持ち」に関しては、それほど粘っこい感じは致しません。そのため指先の感覚はもうひとつで、繊細なコントロールまでは期待できないのでは。

<故障のリスク> 
☆☆☆

 お尻は落とせませんが、カーブやフォークなどの球種は投げないので、肘への負担は少なそう。サイドなので、腕の角度にも無理がないので、肩を痛めるといったことはないでしょう。ただ腕が外旋して、ブンと強引に振る部分はあるので、負担が少ないフォームとは言い切れないように思います。

<実戦的な術> 
☆☆

 「着地」までの粘りがないので、打者としては合わせやすいフォーム。さらに「開き」が早いので、球筋が読まれやすいフォームです。コースを突いた球でも、踏み込まれて打たれてしまう可能性は否定できません。

 腕の振りは鋭く、体に巻き付いてきます。そういった意味では、速球と変化球の見極めは困難。ただ下半身が上手く使えないので、体重移動は不十分。ボールにウエートを乗せるというよりは、上体や腕を鋭く振ることで、キレを生み出す投げ方になっています。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の各部分に課題を抱え、実戦的なフォームとはけして言えません。それを、投球センスとボールの勢いで補っている印象。それだけに、プロの打者相手に、これでも誤魔化しきれるのかは微妙だと言わざるえません。

(最後に)

 高卒2年目にしては、投球に大きな破綻はなく、思ったよりまとまっています。ただ攻めのバリエーション不足、決め手となる変化球の無さ、何より実戦的なフォームという観点では、物足りないものを感じました。

 社会人では期待の若手投手ですが、一冬超えて、その辺がどう変わってきているのかスポニチ大会では注目したいですね。社会人では、最も勢いを感じさせる高卒解禁組みの代表格なので。期待して、見守りたいと思います。

(2012年 都市対抗)