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豊田 拓矢(26歳・TDK)投手 176/85 右/右 |
「都市対抗で一番の内容」 今年のドラフト会議において、多くのドラフト指名選手を輩出した社会人球界。その最高の舞台である都市対抗野球大会において、一番のパフォーマンスを魅せたのが、社会人5年目の 豊田 拓矢 。上武大時代から150キロ近いストレートには定評があったものの、小さな投手が一所懸命投げているだけという底の浅さが拭えなかった。しかし今年は投球に力強さだけでなく、変化球を上手く生かし奥行きが感じられるようになってきた。その成長を、プロのスカウトも見逃すことはなかったのである。 (投球内容) 都市対抗では二回戦での先発だったので、すべてのスカウトがこの試合を目の当たりにしたわけではないだろう。しかし二回戦でも注目の選手としてマークしていた球団にとっては、彼のピッチングを意義深く見えたはず。 ストレート 常時140キロ台~MAX148キロ ボールにしっかりウエートを乗せて、腕を物凄く強く振れるなど、その投げっぷりの良さには目を見張るものがあります。魂のこもった球を投げるという意味では、2013年度の指名選手の中でも一番かもしれません。それでいてしっかりボールをコースにコントロールできる技術もあり、力投派でも荒っぽさがないところが素晴らしいところ。都市対抗予選の18イニングでも、四死球は僅か3つという安定感。 変化球 カーブ・シュート・スライダー・フォーク・チェンジアップなど 以前はスライダーやフォーク程度だった球種も、今はカーブで緩急をつけたり、シュート系のボールでピッチングを広げたり、スライダーやフォークだけでなくチェンジアップを使いわけるなど、相手に的を絞らせないバリエーションが生まれました。この辺は、ドラフト適齢期にはなかった多彩さ。 特に自慢のストレートを活かすまでの過程が組み立てられるようになり、配球に意図が感じられるようになりました。以前のように、やみくもにボールをストライクゾーンに投げ込んでいた投球とは違います。 その他 クィックも1.2秒前後で基準レベルですし、以前はベースカバーに遅れるなどの欠点があったのですが、その辺もだいぶ改善されてきている感じ。典型的なリリーフタイプの投手でしたが、今は投球に奥行きが出て先発でも行けます。普段は、相手に考えさせないように、ポンポンと早いテンポが特徴。 (投球のまとめ) 強気の投球でも、内角を厳しく突く投球ではなく、外角でも球の威力で相手を仕留めることができます。左打者相手には、少しボールが中に入ってくるのと、セットポジションになると少し投球が浮足だつ傾向が気になります。 それでも予選の18試合イニングで僅か2失点しかしないなど、年齢を重ねるにつれ安定感を増し、要所を締めるのも上手くなってきました。イメージ的には、則本 昂大(楽天)の投げっぷりの良さを彷彿とさせます。 (投球フォーム) ノーワインドアップながら、勢いよく足を高くまでに引き上げて来る力投派。 <広がる可能性> ☆☆☆☆ 引き上げた足を高い位置でピンと伸ばせるので、お尻は一塁側に落とせます。これにより体を捻り出すスペースが確保できるので、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦に大きく落ちる球種を投げるのにも無理がありません。 「着地」までの粘りは平均的で、体を捻りだす時間は並。いろいろな変化球は投げられますが、絶対的な球種はありません。あくまでも多彩な変化球で、相手の的を絞らせないようにしつつ、ストレートでズバーンと決めるのが持ち味。 <ボールの支配> ☆☆☆ グラブは最後体から離れていますが、外角へのコントロールは悪くありません。ただし内を突く時に、少し中に入ってくるのが気になります。足の甲でもしっかり地面を捉えているわけではないので、力を入れたボールが低めに集まるわけではありません。それでも「球持ち」は好いので、指先まで神経を通わせて、ストライクゾーンにはコントロール出来ています。 <故障のリスク> ☆☆☆ お尻は落とせるフォームなので、カーブやフォークなどの球種を投げても、肘への負担は少なそう。腕の送り出しや角度にも無理は感じないものの、物凄い力投派なので体への負担・消耗はかなり激しいと言えるでしょう。これまでも結構怪我に泣かされてきているので、一番の心配は故障。 <実戦的な術> ☆☆☆ 「着地」までの粘りも並で、体の「開き」も平均的なので、けして合わせ難いフォームではありません。まして、ボールに角度があるわけでもありませんので。 腕を強く振れるので、速球と変化球の見極めは困難。足の甲で深く体重移動出来ているわけではないのですが、ボールにはグッと体重が乗っており、決めに来る時のボールの勢い球威は本物で中々打てる代物ではありません。 (フォームのまとめ) 投球フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」「体重移動」はよく、「着地」「開き」は並といった感じでしょうか。特に苦になるフォームではないのですが、多彩なコンビネーションでそれを補います。 力投派にしては制球も安定してますし、身体に大きな負担がかかるフォームではありません。ただしこの身体で全身を使って投げ込むだけに、消耗・負担は理に適っていても尋常ではありません。 (最後に) 実際の身長は、170センチ台前半ぐらいだと思います。それだけに、エネルギーを爆発させる短期決戦などでは好いのですが、プロのような長く厳しいシーズンに向いているのかには疑問を持ちます。都市対抗のあとにも、故障したとも訊いています。それだけに使い方を考えてあげないと、大活躍したとしても短命で終わる危険性があります。あるいはプロでは、怪我のため力を出せないで終わるかもしれません。 それでも持ちえる能力は、今年上位指名された選手たちとの遜色がないどころか、それ以上の部分もあるので、一年目から大活躍を期待したくなるだけのものがあります。先発でも7,8勝以上に、リリーフならばセットアッパー級の活躍をこなしても全然不思議ではありません。 ただし社会人5年目の年齢と故障の危険性などを加味すると、その実力に比べワンランク低く評価せざるえません。果たしてどんな投球を一年目から見せてくれるのか、期待を持って見守ろうと思います。 蔵の評価:☆☆☆ (2013年 都市対抗) |
豊田 拓矢(23歳・TDK)投手 173/83 右/右 |
(どんな選手?) 上武大時代から、速球派として存在感を示してきた選手。TDK入社1年目にも都市対抗で145キロのストレートを投げ込み注目されました。社会人3年目の今年は、JR東日本東北の補強選手として再びドームのマウンドに立ち、豪快な投球が健在のところを魅せつけてくれました。 (投球内容) 上背はありませんが、ガッチリした体格から今時珍しいぐらい勢いをつけて投げ込む力投派。一見粗そうに見えるピッチングなのですが、ボールが両コーナーに散らす制球力があるのが、この選手の隠し味。 球速は、130キロ台後半~MAX144キロ。その球速表示以上に、ボールには勢いを感じさせます。変化球は、100キロ台のカーブで緩急をつけつつ、スライダーやフォークなども交えてきます。速球派ですが、変化球も上手く交えて来ます。 かなり粗っぽい投球ではありますが、クィックは1.2秒前後と基準レベル。ただベースカバーに立ち遅れるなど、フィールディング面に不安を残します。完全に勢いで押す、リリーフタイプだと言えるでしょう。 (投球フォーム) <広がる可能性> お尻を一塁側に落とせるフォームなので、無理なくカーブやフォークなどの球種を投げることができます。ただその速球の割にフォークの落ちが速く、思ったほど効果が薄いのが残念。「着地」にもう少し粘りが出てくると、もっと変化球のキレや体の近くでの変化も期待できるのではないのでしょうか。投球フォームとしては、いろいろな球を投げられる下地はありますが、手が小さい可能性があり、球種によっては握りがしにくい球種もあるのかもしれません。 <ボールの支配> グラブも最後まで抱えきれず、足の甲もつま先のみで、しっかり地面を押しつけられていません。それでもボールをある程度コントロールできるのは、非常に「球持ち」が好いからだと思います。ただボールはコースに散りますがバラつくので、グラブをしっかり抱えたり、足の甲の押しつけをもっと深くするなど、各動作をきっちり行うことが求められます。 <故障のリスク> お尻をしっかり落とせるので、無理な捻り出しがないのが魅力です。振り下ろす腕の角度にも無理がないので、力投派ですが故障のリスクが低いタイプだと思います。タフなリリーフでの投球が、これからも期待できます。 <実戦的な術> 「着地」までの粘りは並ですが、体の「開き」は早すぎることはありません。そのため速球派ですが、淡白で打ちやすいフォームということはないと思います。 腕もしっかり振れて球種による見分けも難しそうです。「体重移動」もしっかりできているので、小さな体でもボールにしっかり体重を乗せて勢いのあるボールが投げられています。 (最後に) 遅生まれでまだ24歳ですが、今年大卒3年目の投手です。そういった意味では、ドラフト適齢期を終え、プロへの可能性は大幅に減りました。今年ベイスターズとの交流戦で、一度生で見ましたが、やはり小さい投手が一所懸命投げている感じで、プロと言うほど奥行きは感じられませんでした。そう考えると、今後もアマの好選手としての活躍を期待したいタイプ。ぜひ末永く、ドームのマウンドで吠え続けて欲しいものです。 (2011年 都市対抗) |
(どんな投手?) 上武大時代から、勢いのある速球でグイグイ押すピッチングスタイルでした。社会人でも、そのイキの良い投球は健在で、予選3試合でもリリーフを中心に無失点の活躍でした。来年に向けて楽しみな投手の登場です。 (投球内容) 上背はないのですが、ガッチリした体格から全身を使って投げ込む力投派です。球速も常時140~MAX145キロを記録し、スライダー・チェンジアップも織り交ぜます。今回は、短いイニングでの登板だったので、あまり細かいことはわからず。 それでもマウンド度胸の良いマウンド捌きに、しっかり左右両打者に対し、外角に速球や変化球をコントロール出来る、投球の基礎が出来ている点は評価出来るところです。 (今後は) 小柄な右腕がプロ入りするには、球を低めにしっかり集められること。武器になるフィニッシュボールがあることなど、かなり高い実戦力が、いろいろな点で求められます。そういった意味では、そういったファクターを来年までに、如何に揃えられるのか注目してみたい選手でした。指名云々があるかは別にして、ドラフト候補として来年追いかけてみたい力量の選手です。 (2009年・都市対抗) |