13sp-31



 
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 山本 翔也(25歳・王子)投手 181/80 左/左
 




                      「攻撃的軟投派」





左サイドに近いスリークオーターから、打者の胸元を徹底的に突くエグい球筋が売りの 山本 翔也 。130キロ台中盤の球速ながら、その投球は常に攻撃的。

(投球内容)

 都市対抗の東海予選の時は、右打者の内角胸元を徹底的に突くエゲツない投球が目を惹きました。しかし都市対抗本戦では、外角中心に投球を組み立てる守りに入った投球で、彼らしくないなと思い残念に思った記憶があります。

ストレート 常時135キロ前後~後半

 球速は130キロ台中盤~後半ぐらいまでで、ボールそのものの勢い・キレに際立つものはありません。ですから実際に東海予選での投球を見ても、正直指名されるとは思ってもみませんでした。ただしそのボールを内角の厳しいところや、外角にキッチリ投げ分ける制球力は光っていました。

 予選の時は内角を厳しく突く投球、本戦のJR東日本戦では外角中心に集めることができ、その両方ができることが確認できたことは大きかったです。投球の基本である外角の組み立てだけでなく、厳しく攻めの投球ができる。その両方を、状況に応じて使い分けることができるわけです。

変化球 カーブ・スライダー・スクリュー

 特に左打者には、背中越しから来るような球筋を生かし、外角にスライダーを多く使います。また時々カーブで緩急をつけたり、右打者の外角にはスクリューボールを使ってきます。ただしこのスクリューボールなのですが、外に逃げるというよりも結構縦に落ちるフォークようにも見えてきます。その東海予選では、31回1/3イニングで奪三振は18個と、1イニングあたり0.58個とかなり三振が少ないのがわかります。あくまでもコースに速球や変化球をちらし、打たせて取るのが身上。

その他

 左腕投手ですが、見分けの難しいような鋭い牽制は見られません。牽制に関しては、可も不可もなしといったレベル。クィックは、1.05~1.15秒ぐらいとまずまずで、特に大きな問題はありません。

落ち着いて、自分の「間」を大切にしながら、しっかり投球を組み立ててきます。

(投球のまとめ)

 31回1/3イニングは、四死球は12個。四死球率は、38.3%と、けして抜群のコントロールとは言えません。ただしこれは制球がアバウトというよりは、ギリギリのところを出し入れして勝負しているからだと考えられ、コントロールはかなり精度が高いと言えるでしょう。

 マウンド捌きや投球術も洗練されており、ピッチングは非常に上手い。あとは、ストレート・変化球の威力に際立つものがないので、いかにボールの生かし方・コントロールで打ち損じを誘うことができるのかという部分で勝負。投手としては、ほぼ完成されていると言えます。


(投球フォーム)

 ほぼ完成されている投手だけに、投球フォームがいかに実戦的なのかがより重要になります。

<踏み出し> ☆☆☆

 引き上げた足は地面に向けて伸ばすので、お尻は三塁側(左投手の場合は)には落とせません。そういった意味では、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦に鋭く落ちる球種は適しません。

 それでも「着地」までの粘りは作れているので、体を捻り出す時間は確保。ただし腕の振りはサイドに近いスリークオーターなので、縦に鋭く落ちる変化は望めません。特に際立つキレはありませんが、コンビネーションで相手を抑えることは出来ています。

<ボールの支配> ☆☆☆☆

 グラブは最後まで体の近くにあり、両サイドの投げ分けは安定。足の甲の地面への押し付けは浮いているものの、腕を横からから出すことで、球筋は上吊らず悲観することはなさそう。「球持ち」もまずまずで、指先の感覚にも優れている。左腕としては、かなりコントロールは好い方ではないのだろうか。

<故障のリスク> ☆☆☆☆

 お尻は落とせないフォームですが、それほどカーブを多投するわけではないので問題ないでしょう。腕の角度・送り出しにも無理がなく、力投派でもないので故障の可能性は低いのではないのでしょうか。

<実戦的な術> ☆☆☆☆

 「着地」までの粘りも悪くなく、体の「開き」も抑えられボールの出処は見難いはず。コースにしっかりコントロールできていれば、球威・球速不足を補うことができそう。

 振り下ろした腕は身体に当たるように、それなり振れています。そのため、速球と変化球の見分けも問題なさそう。ただしボールに体重を乗せて投げるフォームではないので、いかに腕や上体の振りの鋭さで「キレ」を作って行けるかではないのでしょうか。いずれにしても、球威のある球を生み出すのは難しいと考えます。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「体重移動」を除けば非常に実戦的だと言えます。

 故障の可能性も少なそうですし、コントロールを司る動作も悪くありません。そういった意味では、打ち難い以外の部分でも推せる材料は揃います。


(最後に)

 生で見たときは、球威・球速が物足りなく、まさかドラフト指名されるほどだとは思いませんでした。しかしドラフトが近づくにつれ、彼の名前を耳にする機会が増えて驚いています。

 今回改めてみて、このボールの見栄えの無さを、攻めの投球・精度の高いコントロール・打ち難いフォームで、なんとか補うことが出来るのではないかと考えるようになりました。

 もうすでに完成されている投手であり、一年目から活躍が期待できる投手だと思います。あまり長いイニングを任されるかは疑問ですが、攻めの投球もでき短いイニングならば面白いと思います。最後は私のポリシーでもある「コントロールの好い左腕は買い」ということで、即戦力で使い勝手の好い活躍を期待します。


蔵の評価:


(2013年 都市対抗)








山本 翔也(福井・福井高)投手 182/81 左/左 

 個人的には、順調に育てば 斎藤 悠葵(福井商-広島)投手レベルまで行けるのではないかと期待しているのが、この 山本 耕也 投手である。180センチ台の恵まれた体格の大型左腕で、球速は常時130キロ前後、恐らくMAXでは135キロぐらいまで、昨夏の時点で出せる能力はあったのではないかと想像する。あまり曲がらないのが気になるカーブとのコンビネーション投手。

 洗練されたマウンド捌きと三振を取れる投手に変貌しつつあると言うが、個人的には素材型の左腕で、追い込んでからの決め球に欠ける印象は否めなかった。一冬越えてどんな投手に成長しているのか非常に楽しみだ。

(投球技術)

 右打者にも左打者にも、両サイドをしっかり投げ別けられる制球力があるようだ。速球はやや高めに集まりやすのと、カーブ以外の変化球がないのが辛い。またそのカーブのブレーキ・威力がもう一つなのも残念。左腕投手の割に牽制などの技術にも課題があるなど、まだまだ学ばなければいけないことも多い。ただ土台となる制球力が安定していることは大事な要素となる。

(投球フォーム)

<踏みだし> 
☆☆  セットポジションで制球重視

 ランナーがいなくてもセットポジションから投げ込むため、両足のスタンスは狭めで、足も引かていないので、エネルギーの捻出は高くない。

<軸足への乗せとバランス> 
☆☆ もう少し膝に余裕が持てれば・・・

 軸足の膝がピンと伸びきって直立気味に立っている。そのため膝に余裕がないので、フォームに力みが生じた、身体が突っ込みやすくなったり、軸足の股関節に体重が乗りにくいなどの弊害が生じやすくバランスが悪い。

<お尻の落としと着地> 
☆☆ 着地のタイミングを遅らせる意識を

 お尻をしっかり三塁側落とせないため、身体を捻り出すスペースが確保出来ない。これではブレーキの好いカーブや縦に落ちるフォーク系の球種の修得は厳しいだろう。また着地のタイミングも早く体重移動も不充分で、打者からもタイミングが合わせやすい。

<グラブの抱えと軸足の粘り> 
☆☆☆ 足の甲の押し付けを

 グラブは最後までしっかり身体の近くに添えられているので、左右の軸のブレを抑えられ両サイドへの制球力は安定する。ただ軸足は爪先のみが地面についており、足の甲で地面を押し付けられていないので、球は浮き上がりやすく、エネルギーの伝達も不充分になる。

<球の行方> 
☆☆☆ 意外に球持ちが好い

 グラブでそれほど球の出所は隠されていないが、着地が早い割には身体の開きは平均的なのでは?腕の角度は高く、球持ちが想像以上に好いのは買い。

<フィニッシュ> 
☆☆☆ 意外に足は引き上がっているが・・・

 腕の絡みつきは並程度。地面の蹴り上げは中々好い。ただしこれは体重移動が不充分なために、その力が足の方に伝わったからかもしれない。

(最後に)

 いろいろな意味で課題の多い投手ではある。ただこれは斉藤にも言えたことで、問題はこの課題を如何に改善しているかだろう。ただ左腕としては制球力が好いのは買いであり、球速的にもこの時期の高校生としては基準に達している。春までにワンランク球威・球速に上積みがあれば、ドラフト候補として夏までマークする価値は出てくるだろう。同じ福井には「北陸の目玉」騒がれる嶋田 泰佑(羽水高)投手がいる。彼に負けず劣らずの成長を期待したい!

(2006年 2月16日更新)