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森 唯斗(21歳・倉敷オーシャンズ)投手 174/74 右/右  
 

 




                    「ドラフトヲタが好むタイプ」





小さな体でも全身をめい一杯使い、胸をすくような投げっぷりは、プロのスカウトが好む選手というよりは、ドラフトマニアが好む典型的な選手のように思える。別の言い方をすれば、これまでプロのスカウトは、こういった小柄の力投派に高い評価は下さないことが多かったので、よりマニアとスカウトとの距離が近くなった指名だと言えよう。

(投球内容)

 全身を使った力投派で、完全なリリーバータイプの投手だと言えるでしょう。ただし力投派ではありますが、フォームの入りは比較的静かだと言えます。それでもこの選手の良さは、投げっぷりの良さにあると言えるでしょう。

ストレート 常時140キロ台~MAX146キロ

 腕を強く振れるので、ボールの勢いはそれなりにあると言えます。コースにもある程度投げ分けることはできますが、全体的にボールが高い印象はあります。ただし速球派でもありボールも伸びているので、勢いがあるうちは高めでも問題はないかと。また強気に打者の内角を突ける、攻めの投球が身上。

変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップ・カットボールなど

 変化球は、結構多彩。ブレーキの効いたカーブでカウントを稼げたり、どの変化球もそれなりのレベルにありますが、逆に言えば絶対的な球種はありません。フォークだかチェンジアップだかわかりませんが、沈む球も鋭く大きく沈むわけではありません。変化球の変化の幅が、小さな投手だと言えるでしょう。

その他

 都市対抗では、ランナーを背負っての場面がなかったので、牽制やクィックは正確にはわかりませんでした。ただ小柄で動きの好い選手なので、そういったものも運動神経の良さで機敏にこなしそうな印象は受けます。

(投球のまとめ)

 腕が強く振れ、向かって行く姿勢と投げっぷりの良さが魅力。ただし体格の無さから来る余力の無さが、プロの長いシーズンを想定すると心配になります。

 細かい投球はできないものの、制球や変化球に破綻はありません。また本当の意味で勝負できるの球が、ストレート以外なのはどうなのでしょう。確かに実戦で力を発揮するタイプだと思うので、中継ぎとして一年目から活躍するかもしれません。しかしセットアッパー・クローザーなどの重要なところを任されるほどの絶対的なものがあるのかと言われると疑問です。仮にそういったところを任される活躍を見せたとしても消耗の激しそうな選手だけに、極めて活躍期間は短いものになってしまうのではないのでしょうか。もちろんそういったことを承知の上でも、即戦力になってくれればという指名なのかもしれません。

 ただしカーブで緩急をつけたり球種も多彩なので、美馬学(楽天)のように先発で持ち味を発揮するという可能性もないわけではないかと。このように角度のない選手は、試合中に球筋が馴れられやすい危険性をはらみます。



(投球フォーム)

では今度は、フォームの観点からこの選手の可能性を検証してみたいと思います。

<広がる可能性> ☆☆☆

 引き上げた足を、比較的高い位置でピンと伸ばせます。そのためお尻を一塁側に落とせ、体を捻り出すスペースは確保できています。そういったこともあって、ブレーキの好いカーブを投げたり、フォークのような球を投げるにも無理がありません。

 「着地」までの粘りも悪くなく、体を捻り出す時間もある程度確保できています。そういった意味では、実際の投球どおりいろいろな球種を身につけ対峙できています。ただし体が小さいということは、手も小さい可能性が高く、フォークのような球種をしっかり挟むのは厳しいかもしれません。そのため握りを浅くした、スピリットのような小さな変化が中心になっているのも、そのせいではないのでしょうか。

<ボールの支配> ☆☆☆

 グラブは最後まで、内でしっかり抱えられています。そのため、両サイドの投げ分けは安定。足の甲は地面を捉えているようにみえるのですが、実際は少し地面から浮いていてボールが上吊る要因を作っています。「球持ち」は前で放せていて悪くないのですが、力投派のために制球は暴れやすいのだと考えられます。おおまかにボールをコントロールできますが、繊細な制球はありません。

<故障のリスク> ☆☆☆

 お尻を落とせるので、カーブやフォークといった球種を投げても、肘への負担は少ないものと考えられます。腕の角度はそれなりにつけていますが、腕の送り出しに無理は感じません。ただしこれだけ腕をダイナミックに振って投げているわけですから、体への負担や消耗は尋常ではないはず。そういった意味では、アフターケアには充分注意してもらいたいものです。

<実戦的な術> ☆☆☆☆

 「着地」までの粘りは平均的ですが、体の「開き」は抑えられています。そのためコースを突けば、打ち込まれる可能性は低いでしょう。

 素晴らしいのは、腕の振りの良さ。地面に腕を擦るほどのダイナミックな振りに、地面を強く蹴りあげるような体重の乗ったフォームは、持ちえる能力を遺憾なく発揮できている証です。

(投球フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」「開き」「体重移動」などもよく、実戦的なフォームだと言えます。

 力投派故に負担が大きそうなのと、足の甲での地面の押し付けができていないのが気になりますが、フォームとしては実戦的だと評価できます。





(最後に)

 短いイニングそれも短期間での活躍ならば、勢いがあり攻めの投球ができる点からも通用するのかなぁという気がします。ただし素材としての奥行きが感じられないのと、この手のタイプにして 則本 昂大(楽天)のアマ時代とくらべて、ボールに凄みは感じません。むしろ決め手に欠けている分、美馬 学(楽天)の方が近いタイプなのではないのでしょうか。

 アマではリリーフでの活躍が目立ちますが、プロでは余裕を持って投げる先発の方が持ち味を発揮するかもしれない。長く活躍してくれるという期待よりも、短期間でも一線で活躍してくれたら、そういったタイプの補強ではないのでしょうか。個人的には、こういった選手を上位で指名したいとは思わないのですが、最近のトレンドなのかもしれませんね。ある程度完成している選手なので1年目から、あえて結果を求めたいタイプでした。


蔵の評価:☆☆


(2013年 都市対抗)