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 相沢 晋(26歳・日本製紙石巻)投手 172/70 右/左






                      「シュートボーラー」





投球の殆どは、ストレートと動かすボールで構成されており、変化球らしい変化球が殆どないかわった投球スタイル。綺麗なフォームから繰り出す球威に欠けるボール故に生み出された、彼なりの投球スタイルなのだろう。

(投球内容)

 上背もなく、フォームも非常に綺麗な正統派。一見何の変哲もない好投手に見えてくる。それ故に社会人球界で生き残るために、いろいろ工夫してきた跡が伺われる。

ストレート 135~MAX142キロ

 キレのある、綺麗な回転のボールを投げ込みます。ただしドラフト指名されるような投手にしては、球威・球速が足りないので甘くない球でも長打を喰らいます。それも力を入れると高めに浮きがちなので、余計に痛手食いやすいわけです。それでもキレ型なので、打者の空振りは誘いやすい特徴があります。

変化球 シュート・カットボール

 左打者に関しては、外に逃げながら沈む130キロ前後のシュートボールを多投します。この球が、打者にとっては厄介で中々芯で捉えられません。このシュートボールを左打者には使うのですが、右打者の内角にはあまり使えないのが残念。

 あとは、左打者の内角を突くようなカットボールも使います。こちらは、小さく変化する球種なので、殆どストレートとの見分けがつきません。そういった意味では、目に見えての変化球は、シュートぐらいしかないように見えます。

その他

 もう一つ特筆すべきポイントは、クィックが0.9秒前後で平均し、極めて早いということ。ここまで早いタイムで刻める選手は、私も過去殆ど記憶がありません。牽制も、コントロールはともかく鋭い送球に。中々彼から盗塁を決めるのは、困難ではないのでしょうか。

フィールディングの動きもよく、投球以外の動作に大きな自信を持っています。

(投球のまとめ)

 ボールは両サイドに散らせてきますが、ショートボールこそ低めに沈むものの、ストレートは全体的に高いのが気になります。特にキレ型でボールが飛んでしまうので、その点で物足りません。ただし経験豊富な選手なので、マウンド捌きなどは洗練されています。



(投球フォーム)

今度は、投球フォームの観点から、考えてみましょう。



<広がる可能性> 

 引き上げた足を地面に伸ばすので、お尻は一塁側に落とせません。そのため見分けの難しいカーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化球には適しません。

 それ以上に気になるのが、「着地」が早すぎるので体を捻り出す前にリリースを迎えてしまいます。これでは好い変化球の修得は難しく、ストレートを動かしたり、ショートなどに走るのも充分理解できます。逆に自分のことが良くわかった上で、ピッチングを組み立てているようにも思えます。

<ボールの支配> ☆☆☆

 グラブは比較的体の近くにあるので、両サイドへの投げ分けは安定。足の甲で地面深く押し付けられているのですが、体を捻り出す前にいち早くリリースをしてしまい、ボールが低めに押し込めません。そのため力一杯投げると、みんなボールが高めに抜けてしまいます。少し力を抜いたシュートの時に、上手く低めに沈んでコントロールできています。

<故障のリスク> ☆☆

 お尻が落とせない割にシュートを多投するので、肘への負担は大きそう。腕の角度には無理は感じないので、肩への負担は少ないのではないのでしょうか。アフターケアには充分注意して、取り組んで欲しいと思います。

<実戦的な術> ☆☆

 「着地」が早すぎるために、打者としては「イチ・ニ・サン」のタイミングで待てば好い合わせやすいタイプ。また体の「開き」も早くなり、球筋が予測できコースを突いても打たれてしまいます。

 それでも腕はよく振れており、速球とシュートの見極めは困難。地面の蹴り上げもよく体重を乗せられているように見えるのですが、ボールに体重を乗せきる前にリリースしてしまっており球威が生まれません。あくまでも腕や上体を鋭く振ることで、キレを生み出すタイプ。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、リリースを早く迎えてしまうため、すべてに課題があると言わざるえません。

 制球もコーナーへ散らす投球はできますが、ストレートが高めに浮いてしまいます。またシュートを多投するので、肘への負担が大きいのも気になります。



(最後に)

 独特の沈みながら落ちるシュートは、打者にとっては芯で捉えきれず厄介な球だと言えるでしょう。ただしその割にボールが上吊ってしまったり、フォームが合わせやすいなどの欠点があり、打たせて取る投球を支える土台がしっかりしていないのが残念。またこのシュートボールを、右打者内角にも使えると面白いのですが、内角を突く球はストレートになってしまっています。

 なかなか野球界にいないタイプの投球をするので、そういった意味では最初打者も戸惑うかもしれません。しかし長く誤魔化せるだけの他の要素がないので、プロの打者ならば充分対応してしまうのではないのでしょうか。

 自分の特徴をわかっている選手であり、今後も進化を遂げて行けるかもしれません。そういった期待は抱けるのでしょうが、都市対抗の投球を観るかぎりは指名リストに載せようという気にはなれませんでした。投球に、更なる工夫を期待します。


(2013年 都市対抗)