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相原 和友(24歳・七十七銀行)投手 186/72 左/左 
 






                「おっ!と思えるものはあるのだが・・・」





186センチの恵まれた体格をダイナミックに使い、それでいて安定したコントロールを誇る技巧派サウスポー。特に曲がりながら落ちるスライダーの切れは、プロでも通用する球だろう。ドラフト会議では、地元仙台の楽天から7位指名された。

(投球内容)

 ワインドアップで振りかぶり、勢いよく足を高い位置まで引き上げます。打者としても、マウンドで大きく見え威圧感を感じるのではないのでしょうか。

ストレート 135キロ前後~140キロ台前半

 身体をダイナミックに使って来るので、どんなに凄い球が来るのかと思いきや、意外なほど球威・球速に欠ける球が来るので、打者としては幻惑されてタイミングが狂うフォーム。球速は常時135キロぐらいですが、球速より身体を使うぶん速くは感じられるのではないのでしょうか。

 ただし球威・球速は、ドラフト候補としては平均以下なので、見極められると苦になく振りぬかれてしまうのが気になります。この球威・球速で、プロの打者を抑えこむことができるのかは正直不安。左打者には外角を中心にストレートを多く投げ込みますが、右打者にはあまりストレートを使ってきません。

変化球 スライダー・スクリュー

 最大の武器は、左打者外角に曲がりながら落ちるスライダーの切れ。右打者に対しては、内外角にスライダーを使い分けます。また右打者に対しては、外に逃げるスクリュー系のボール使い外角中心に組み立てます。

その他

 左投手ですが、見分けの難しいような牽制はなし。クィックは、1.1秒~1.3秒ぐらいとバラつきがありますが、それほど上手い感じは致しません。野球センスや運動神経に優れるというよりは、恵まれた体格を武器にするタイプかと。プロで一番戸惑うのは、投球以外の部分ではないのでしょうか。

(投球のまとめ)

 両サイド投げ分けられるコントロールはありますが、実際の投球は外角中心で組み立てます。時々内角にも投げるのですが、ボールに力がないので打ち返されることが少なくありません。

 外に粘っこくボールを集めて、相手の打ち損じを誘います。安定した制球力を武器に、四死球で自滅することがないのは強味。ただしプロの一軍の打者相手に、この球威・球速で通用するのかは疑問です。ちょっとハマれば面白そうな技巧派なのですが、しばらくすると馴れられてしまいそうで怖いです。

(投球フォーム)

では、フォームの観点から考えてみましょう。

<広がる可能性> ☆☆

 引き上げた足は地面に向けて伸ばしているので、お尻は三塁側(左投手の場合は)には落とせません。そのため見分けの難しいカーブで緩急をつけたり、フォークのような縦に鋭く落ちるボールには適しません。実際そういった球も、投球の中で投げていません。

 「着地」までの粘りも並なので、身体を捻り出す時間も平均的。特に球種を増やして、ピッチングの幅を広げて行くこともあまり期待できないでしょう。それでもスライダー・スクリューといった球に関しては、きっちり使えています。

<ボールの支配> ☆☆☆

 グラブは最後後ろに抜けてしまっていますが、ボール自体は両サイドに散らせます。足の甲の地面への押し付けも浅いので、ストレートは真ん中~高めに浮きやすいのが気になります。それでも「球持ち」はよく、指先の感覚に優れているのか、四死球で自滅することはないタイプ。

<故障のリスク> ☆☆☆

 お尻は落とせませんが、肘に負担のかかるカーブやフォークといった球種を投げないので悲観することはないでしょう。

 腕の角度は適度にあるのですが、腕の送り出しに無理は感じないので肩への負担は少なそう。そういった意味では、故障の可能性は低いのではないのでしょうか。

<実戦的な術> ☆☆☆

 「着地」までの粘りは並ですが、柔らかい肩の可動域のおかげで、体の「開き」は抑えられてボールは見難いタイプだと思います。

 長い腕が体に絡むように腕は振れ、速球と変化球の見極めは困難。グッとボールに体重が乗って来る感じは致しませんが、覆いかぶさるようなフィニッシュでもあり、思ったよりは悪くありません。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」「体重移動」は発展途上も、「開き」「球持ち」はよく打者としては合わせ難いフォーム。

 コントロールを司る動作に甘さはあるのですが、指先の感覚の良さで補えています。故障へのリスクもそれほど高くないなど、フォームに大きな欠点はありません。そうかといって、技巧派として物凄くタイミングが取りにくいといったほどではなさそう。

(最後に)

 コントロールの好い左腕であり、何気ない場面で投げるとポンポンと抑えてしまう可能性があります。特に相手が馴れるまでは、対応され難い可能性も。そのためファームレベルの打者や短い期間であれば、一軍でも一時的にやれてしまう可能性もあります。

 ただし今の球威・球速だと、一軍の打者に対しては厳しいかなという印象は否めません。まして対戦経験を積んでなれられてしまうと、通用しないのではないかと。ドラフト7位の選手なので、短い期間での活躍やちょっと面白いかもという理由で獲得するのもわからなくはありません。私なら指名リストには入れませんが、このぐらいの順位でならひょっとしてを期待してと、指名して来る球団があっても不思議ではないと思いました。一時はハズレ1位候補という話も出ていたぐらいで「えっ?」とは思いましたが、この順位での指名ならばアリなのではないのでしょうか。ひょっとしたら、最初の1,2年ぐらいは、活躍するかもしれません。


(2013年 都市対抗)









 
 大きな体をダイナミックに使ってくる、迫力満点のサウスポー。特に左打者の外角低めに決まるスライダーは、左打者にはとっても厄介な代物。

(投球内容)

 勢い良く足を引き上げ、大きなテイクバックで思いっきり体を振って来る。体が大きいから、左打者なんかは相当な重圧を感じるはず。球速は、130キロ台後半~MAX141キロぐらいと、思いの外フォームの割には大したことはない。ただこの体の使い方に、打者は完全に幻惑。特にスライダーのキレがよく、その球がおまけにストライクゾーン~ボールゾーンへ消えて行く。左打者からもっとも遠いところに決まるので、この球が見極められない打者には辛い。ただ明大戦では、甘く高めに浮いたストレートを痛打された。左打者への制球は、意外に甘いことが多い。一方右打者には、両サイドにボールを散らすことが出来ていた。内角低めに切れこむスライダーが、外角への踏み込みを封じている。

(投球フォーム)

 一番気になるのは、テイクバックの際に肩が後ろまで入り込むこと。また腕を振り下ろす際に、かなり無理な角度から投げ込んで負担が大きい。これはリリースの際に、グラブを持っている肩が下がり、ボールを持っている肩が上がって投げ込まれていることからも明らか。このフォームのまま今のように力を入れてを続けていると、いつかは故障するのではないかと心配になる。

 またボールが上吊るのは、足の甲での地面への押しつけが出来ていないから。足のつま先のみが地面を捉えていて、「球持ち」もよくないのでボールを低めに押し込めない。

 ただ腕はダイナミックに振ることができ、体重移動も悪くない。それほど速くない球を、速く見せるフォームの幻惑が作れているのは、この選手の大きな武器だと言えよう。

(最後に)

 恵まれた体格にダイナミックなフォームだから、大型左腕としての可能性を感じずにはいられない。ただボールが高めに浮いたり、まだまだ肝心なところでの詰め甘さを明大戦で露呈してしまった。

 いくらフォームで幻惑できるとはいえ、ストレートの球速・キレも、もうワンランク速くなって欲しい。この辺が成長し、社会人で上手く修羅場を経験して実績を残したら、2年後はプロもという可能性は捨て切れない。福祉大での実績は乏しいが、今後も覚えておいて損はない左腕じゃないかな。


(2011年 神宮大会)