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秋吉 亮(24歳・パナソニック)投手 182/76 右/右 |
昨年プロ入りを宣言すれば、上位指名も夢ではなかった 秋吉 亮 。しかしチームが休部の危機のさなか、絶対的エースとして残留を決意。しかし今年も大車輪の活躍をするも、都市対抗では思い通りの内容を示すことができなかった。むしろ投球内容に関しては、昨年の方が勢いがあったのではないのだろうか? |
秋吉 亮(23歳・パナソニック)投手 182/76 右/右 (足立新田-中央学院大出身) |
「更にパワーアップ」 中央学院時代は、スリークオーターから140キロ前後のストレートと変化球で、千葉リーグでは圧倒的な安定感を誇っていた好投手。元々は試合をまとめるセンスに優れた好投手タイプ。しかし最終学年の大学選手権では、九州共立大を完封し、MAX148キロを記録するまでにパワーアップ。個人的にも、☆ を付けプロでもやれると評価していた選手でした。 名門・パナソニックに進んで2年目の今年、チームの絶対的なエースに成長。大学時代は、球速ほど威圧感のあるストレートではなかったが、社会人に進んでボール自体に凄みが加わってきた。その反面、投球の繊細さ・細かいコントロールは、少し粗くなった印象も受けている。 (投球内容) 右のサイドに近いスリークオーターから元々コースを丹念に突くタイプで、打たせて取る印象が強かった。しかし今は、力で討ち取るパワーピッチにシフトしている。 ストレート 常時140キロ台~MAX147キロ 球速表示が他球場より3~5キロ程度遅く東京ドームにおいて、140キロ台中盤を連発したのは、価値のあることだと思います。大学選手権で同じような球速を出していましたが、その時よりも更にボールのキレ・球威・勢いは増した気が致します。 ただ大学時代も書いたように、物凄く打者の空振りを誘うようなピュッと切れるキレやグ~ンと手元で伸びるタイプの球とは、少し違う気は致します。それでも質という意味では、ワンランクあがっているのではないのでしょうか。 変化球 スライダー・シンカー 大学時代は、横滑りするスライダーと、ショート系の球を投げる両サイドに散らす投球だったと記憶します。ただスライダーに絶対的なキレはなく、大学時代になかった沈むシンカーを使うようになりました。この球も、絶対的な落差はなく、追い込んでからの投球が一つ課題なのかなと思います。これだけのストレートを持ちながら、都市対抗予選では、20回1/3イニングで15奪三振と決め手に欠ける部分があるようです。 その他 牽制に関しては、それなりに鋭いものを織り交ぜてランナーを威嚇。クィックに関しては、1.0~1.15秒ぐらいでまとめられ、大学時代よりも素早く投げ込めるようになっている。更にフィールディングでも、冷静に対処できており、投球以外の部分も問題ないだろう。その辺は、大学時代から全国大会でも実績を残してきた投手らしい。 (投球のまとめ) 大学生の頃は、微妙な出し入れができるような精彩なコントロールを持っていた。しかし大幅にパワーアップできた反面、ボールは適度にコースに散っているという感じなり、精彩さは薄れている。それでもボールがバラついても、甘いゾーンにはあまり入って来ない。 四死球も20回1/3イニングで7四死球と、ほぼイニングの1/3ぐらいではあるが、絶妙なというほどではなくなっていることは数字からも裏付けられている。ただ気になるのは、防御率が3.10と、けして打力が高いとは言えない関西の予選で、モノの違いを魅せられるほどではなかったということだろうか。 その辺は、大学時代からの課題である緩急に乏しい点と、決め手不足が否めないところは、未だに課題として残っている。 (投球フォーム) サイドハンドに近いので、通常のフォームの選手と同じ条件にはあてはめられないが、共通する部分を中心に考えて行きたい。 <広がる可能性> サイドハンドのフォームですが、お尻を一塁側に落とせるフォームではあります。しかし腕の振りの関係で、カーブで緩急をつけたり、フォークのような大きな縦の変化には適しません。ただ「着地」までの時間は稼げてはいるので、球速のある変化球を中心に、投球の幅を広げて行くことは可能でしょう。 <ボールの支配> グラブが内に抱えられない上に、足の甲の押しつけも浮きがち。「球持ち」もけして長くはなく、そういった意味では、あまり細かいコントロールはつきにくいと考えられます。それでも身体を前に折って投げるサイドハンドは、通常のフォームに比べれば、こういった動作の弊害を受けにくい特徴があります。 <故障のリスク> カーブやフォークといった球種も多投しませんし、シュートもツーシーム的な感じなので、それほど肘への負担は大きくないのでは? 肩への負担も少なそうですし、故障などの可能性は低そうです。今の感じだと、タフなリリーフでの活躍も期待できます。 <実戦的な術> 「着地」までの粘りは平均的で、身体の「開き」も並でしょうか。けしてボールの出所が見難い、イヤらしいフォームではありません。 腕は強く振れているので、速球と変化球との見わけは困難。ただボールに上手く体重を乗せられていると行ったフォームではないので、強い上半身や腕の振りでキレを生み出すタイプで、球威や伸びで圧倒する投げ方ではありません。 (投球フォームのまとめ) 「着地」や「開き」も平均的ですし、「球持ち」や「体重移動」では、むしろ物足りなさを感じます。超実戦的な投手というイメージが元々あったのですが、むしろ現在は、技術よりもボールの威力で圧倒するタイプといった感じになっています。 (今後は) サイドに近いフォームから140キロ台後半を投げ込めるキャパと、ボールそのものの威力を観ていると、ドラフトでも上位24名に入るぐらいの球を投げています。実際に今季は、パナソニックの不動のエースとしての実績を積みました。 ただ投球を観てもわかるように、細かいコントロールが損なわれ、以前ほどの微妙な駆け引きをするような好投手から変わりつつあります。その分力で押せる迫力を身につけていますし、元々そういったセンスはあるので、取り戻すことも可能ではあると考えます。 緩急の無さ・勝負どころでの決め手不足は感じますが、短いイニングならプロ相手でも力で圧倒できるのではないのでしょうか。荒れ荒れの素材ではなく、適度に試合や投球をまとめられるだけの制球力や投球術はあります。一年目から、リリーフを中心とした活躍が期待できそうです。 蔵の評価:☆☆☆ (2012年 都市対抗) |
秋吉 亮(中央学院大)投手 182/74 右/右(都立足立新田高出身) |
「面白い!」 サイドから繰り出すMAX148キロの球速よりも、完成度の高い投球術や制球力の方が私の心を捉えて離さない。そんなピッチングをするのが、この 秋吉 亮。ドラフト戦線ではあまり注目されることはないが、意外に下位指名あたりならば、面白い存在になるのではないかと、密かに期待してみたい投手。2010年度の大学選手権では、名門・九州共立大を完封するなど、その力が全国レベルであることを改めて証明して魅せた。 (投球内容) ストレート 140~MAX148キロ ボールに勢いを感じさせるが、もの凄く手元でキレるとか、伸びがあると言ったほどの球ではない。むしろ低めやコーナーをきっちり突いて、打たせて取るのが、この投手の持ち味。 スライダー 130キロ前後 変化球も、130キロ台前後の高速変化球が中心のピッチングスタイル。特に同じような球速のシュート系の球があり、どちらに曲がって来るのか見分けが難しい。 シュート 120キロ台後半 球速的にはシンカー系に思えるが、ボールは外に逃げるも、ほとんど沈むようなことはない。スライダーとセットで、この投手のシュートは生きてくる。 その他 フィールディングに際しても、非常に落ち着いてボールを処理するのが印象的。クィックも1.2~1.25秒ぐらいと、ほぼ基準レベル。モーションが大きい割には、けして遅くない。何より鋭い牽制で、ランナーをベースに釘付けにできる技術は大きい。 <右打者に関して> ☆☆☆☆ アウトコースに速球とスライダーを、きっちり集めて来る。その一方で、内角にシュートや内スラを活かし、両サイドを幅広く使うことができている。 球速や球種の変化には乏しい割に、結構多彩なコンビネーションも可能。コントロールミスの少ない制球力は高く評価したい。ただ緩急・縦の変化と言うのは、この選手の課題として、ついてまわることになる。 <左打者に関して> ☆☆☆☆ アウトコースに速球、シュート・外から入ってくるスライダーなどで、微妙な出し入れができる技術を持っている。それでいて、内角にスライダーや速球を突けるなど、球種の割に見極めが難しい投球が、右打者同様にできている。この投球術の高さは、社会人レベルでも即通用するだろうし、プロレベルでもある程度短いイニングならば通用するのではないかと私は考える。 (投球のまとめ) 下級生の頃に比べると、球速も伸びているし、ストライクゾーンに球を集められる投手から、ピンポイントに決めたり、球を微妙に出し入れできるまでに、その精度を高めてきている。それ故に、千葉リーグでは絶対的な安定感を誇るし、全国の舞台でも充分に通用するだけのピッチングを魅せてくれた。 ただ生で見ていて気になるのは、追い込んでからの決め手不足。ストレートでも、それほど空振りも取れるタイプではないのは変化球も同様。それだけにアマレベルの打者相手でも、粘られる場面が多い。この辺をどう評価するかで、この選手は意見が別れるだろう。 楽天 (投球フォーム) では実際の投球内容が微妙ならば、投球フォームの観点から考えてみたい。いち早く、身体を開いて投げるこの投手のフォームが、プロの世界で通用するものなのだろうか? サイドハンドなので、通常の上手投げの投球理論は、すんなりはあてはまらない。そこで今回は、上手投げの理論と、同じように評価できる部分だけ抜粋して取り上げたいと思う。 ランナーがいなくても、セットポジションで投げ込んで来る。一球、一球、間合いを計りながら、打者との時間を支配して投球できている。その「間合い」は、投球動作に入るまでだけでなく、実際に投球動作に入ってからも「着地」までの時間を稼ぎ、なかなか踏み出した足が地面を捉えない。前の肩を早く解放して投げ込むフォームなのだが、一端球の出所が見え始めてからも、なかなかボールが出てこない間隔に陥り、打者としては思った以上にタイミングは取りにくいはず。 けして上手投げ投手の投球の4大動作である「球持ち」「体重移動」「開き」と言う観点では、優れたフォームではないのだが、これを単純に当てはめられることはできない。またこれらの欠点を補うだけの「着地」の遅さが、この投手の最大の特徴であることも覚えておきたい。 けして打ちにくいといったフォームではないにしろ、「開き」が早いから、タイミングが取りやすいフォームではないことを、ぜひ抑えておきたい。 (最後に) 個人的には、その投球術の見事さ、制球力の確かさもあり、試合を作ることができる投手として、プロでも即戦力として、ある程度やれるのではないかと評価する。 しかしその一方で、スカウト達が決め手不足、フォームの課題など、不安視して二の足を踏んでもおかしくないかなと思える部分もある。こういった選手は、まずはアマ最高峰の社会人野球で実績を残してからと言う判断になりがちだが、大学時代の比嘉 幹貴(国際武道大-日立製作所-オリックス)や加賀 繁(上武大-住友金属鹿島-横浜)投手よりも、ワンランク上であるように思える。個人的には、あえて遠回りせずに大学からプロの世界に飛び込んで欲しい!と思わせてくれる選手だった。それだけの下地は、この選手にはある。 蔵の評価:☆ この記事が参考になったという方は、ぜひ! (2010年 大学選手権) |