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石川 歩(25歳・東京ガス)投手 185/70 右/右 
 

 



                 「今年イチバン大化けした選手」



中部大時代から、140キロ台後半を投げ込む逸材として注目を浴びてきた。しかし線が細く、ここ2年は目立った成長は感じられないまま時は過ぎてゆく。すでに大卒3年目になり、周囲の期待も薄れゆくなか、この選手の素質は開花し始めていた。2013年度の大学・社会人選手で、この一年で一番劇的に伸びたのは、この選手だろう。

(投球内容)

 春先から東京ガスを観る機会が少なかったので、ベイスターズとのプロアマ交流戦に特にアテもなく見に行った。石川がリリーフコールされた時も、あの石川かと何気なく見ていた。しかし投球練習の時から、何やらボールの勢いが違うのに驚いた。

ストレート 常時90マイル(144キロ)~95マイル(150.2キロ)

 春先見たときは、先発だということもあり、常時130キロ台後半~140キロ台中盤ぐらいといつもの球速でした。しかしこの日はリリーフだったので、常時145キロ前後~150キロまで記録。特にこの選手のストレートは、ボールに勢いとキレがあり、キャッチャーミットにビシッと突き刺さる快速球。

 ただ速いだけの選手はいますが、彼のように空振りを取れる球質の150キロを投げられるアマチュア選手は中々いません。この日は殆どストレート中心の配球で、外角一杯にビシバシ決まります。ベイスターズの二軍選手たちでは、全くわかっていても当たらないというお手上げ状態。

 この投球を魅せられて、石川への印象はガラリと変わります。ただし都市対抗などでは、チーム事情で先発をすることが多く、こうなると投球が少しおとなしくなってしまいます。それでも今までよりも、地に足の着いた投球ができるようになり、精神面でも制球面でも、一回りも二回りも成長していることを印象づけられます。

変化球 カーブ・スライダー・シンカー

 元々正統派右腕といった綺麗なフォームの投手で、腕の振りもしなやかで筋の好い投手といった感じでした。そのためカーブはブレーキが効いて綺麗に抜けてきますし、シンカー(フォークだか)の落ちる球も多く交えてきます。それに曲がりながら落ちるようなスライダーもあるようですが、基本カーブで緩急とカウントを稼ぎ、縦の変化とストレートで仕留めるといったパターンが目立ちます。

その他

 ランナーを背負っても鋭い牽制で威嚇できますし、クィックも1.1~1.2秒ぐらいと基準レベル。フィールディングの動きもよく、投球以外の技術にも問題はありません。

(投球のまとめ)

 都市対抗緒戦の四国銀行戦では、もう一つ狙ったところにボールが行かず、思ったほどの内容ではありませんでした。しかし2戦目の三菱重工名古屋戦では、粘り強い投球を魅せ、精神面の成長を感じます。

 明らかに先発の時とリリーフの時では、考え方が違う別人のような投球をします。元々筋の好いセンス型なので、先発でもそれなりに試合を作れます。しかしリリーフになると、自慢のストレートでグイグイと押すピッチングスタイルに変わり、プロの打者でも中々まともに捉えることができません。

 私も今までのイメージが強かったので、私の見た試合がたまたまだったのかと思いましたが、私が観る前後あたりから石川が1位候補だという評判が上がってました。特に全日本などの試合ではリリーフを任されており、たびたび150キロの噂を耳にします。観戦したスカウトからも、今までのイメージとは違ったとの声が上がっていました。とにかくわかっていても捉えられない、空振りを取れるストレートということに関しては、2013年度の候補では一番だと思います。

 ただし元々のんびりした性格の選手のようで、頭角を現すのにも時間がかかりました。プロという環境に混ざっても、すんなり入って持ち味を発揮できるのか? 先発投手として見た時にどの程度なのかという部分では、少し引っかかるものが残ります。

(成績から考える)

 そこで私の見た試合だけでは客観性に欠けるので、今年の都市対抗予選・本戦の成績から、実像に迫ってみたいと思います。都市対抗では、チームのエースとして先発で起用されるケースが多かったことを、まず頭に入れておいてください。

6試合 32回 25安打 6四死球 16奪三振 防御率 1.69

1,被安打はイニングの70%以下 △

 あえてプロで即戦力を求めるために、ファクターを70%以下と厳しめに設定しています。彼の被安打率は、78.1%。この基準は満たしておりませんが、それほど悲観する数字ではありません。しかし先発だと、これといった抜けたボールがなく、仕留め切れない物足りなさを感じるのも確かです。特にカーブ・シンカーというボールはありますが、中間球であるスライダーをあまり駆使しないので、投球が汲々としやすいのが気になります。

2,四死球はイニングの1/3以下 ◎

 四死球率は18.8%と極めて少なく、コントロールの良さが目を惹きます。都市対抗でも粘り強い投球が出来たのは、このコントロールの良さで連打を許さなかったことが大きいと考えられます。そんなに普段は絶妙なコントロールといった感じはしませんが、四死球で自滅するということもありませんし、リリーフでは勝負どころで絶妙なところにズバッと投げ込みます。

3,奪三振は、1イニングあたり0.7個以上 ✕

 先発では力でねじ伏せようという意識がないのと、シンカーのような縦の変化球は、空振りを誘うというよりは引っ掛けさせるようなドロンとした変化球。そのため、リリーフ時で力でねじ伏せようとした時しか三振は奪えません。

 奪三振率は、1イニングあたり0.5個 とドラフト候補としては少なめ。この辺が、この投手が先発投手としては物足りなく感じる要因なのかもしれません。

4,防御率は2点台以内 ◯

 それほど好いとは思わない先発での投球でも、防御率 1.69 の数字を残しました。都市対抗2戦目の三菱重工名古屋戦で粘り強い投球を魅せ、彼の精神的な成長を感じます。先発としても、ある程度試合を壊さないだけのセンス・投球はできるようになっています。

(成績からわかること)

 奪三振の少なさ、被安打の数からも、先発としては見栄えがしないのが数字の上からもわかります。それでも四死球の少なさ、防御率の低さからも、粘り強く試合を作ることができるようになってきていることも証明されました。

 彼は単にボールの速さに磨きがかかったというだけでなく、やはり意識や精神面の成長が、投球に現れているのではないかと考えます。

(フォームから考える)

<広がる可能性> ☆☆☆

 お尻の一塁側への落としは甘さが残るものの、落とせていないわけではありません。そういった意味では、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化球を投げられる下地はあると思います。

 「着地」までの粘りがそれほどでもないので、体を捻り出す時間が充分ではありません。そのため変化球も、絶対的なキレや変化がなく、武器になるほどの球が修得できない要因ではないのでしょうか。以前よりは良くなりましたが、もう少し「着地」に粘りが出てくると、このへんも変わってきそう。

<ボールの支配> ☆☆☆☆

 グラブは体の近くに最後まであるので、両サイドの投げ分けは安定。足の甲での地面への押し付けが浮きがちなので、力を入れて投げるとボールが上吊る可能性を感じます。それでも「球持ち」がよく指先の感覚に優れているので、安定した制球力を誇ります。

<故障のリスク> ☆☆☆☆

 お尻はある程度落とせるので、カーブやフォークといった球種を投げても、肘への負担は少なそう。腕の角度にも無理がないので、肩への負担も大丈夫そうです。ただ頑強な体つきではないので、何処まで無理が効くのかは微妙ではないかと思っています。

<実戦的な術> ☆☆☆

 「着地」までの粘りはそれほどではなく、綺麗なフォームで打者としてはイヤラシさは感じないと思います。体の「開き」はなんとか抑えられ、その辺は大学時代よりも成長。

 先発だと腕の振りをセーブしているのか? 「球持ち」が好い割に、長い腕が体に絡んできません。しかしボールには上手く体重が乗せられるようになり、この辺が打者の手元まで生きた球を投げられる原動力になっていると考えられます。腕がもっと強く振れれば、変化球でも空振りが誘いやすくなるのではと思います。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」と「体重移動」に良さがあります。ここでいう「体重移動」は、ボールに上手く体重が乗せられているということ。全体の動作の流れとしては、まだ課題を残します。その一方で「着地」までの粘りと「開き」に関しては最低限のレベルは満たしていますが、まだまだ改善の余地は感じます。

 それでも制球力はよく故障の可能性も低いフォームで、推せる材料は少なくありません。大学時代はスリークオーターだったのですが、今は上から腕が振れるようになってきました。

(最後に)

 先発としては、中間球のスライダーの生かし方に課題があり、カーブは悪くありませんが武器になる球が見当たりません。それをコントロールの良さと元々持っているセンスで補って試合を作ります。もし一年目からローテーションを期待するのは、よほど投手の頭数が不足しているチームになるでしょう。現状の内容を見るかぎり、先発では5勝前後ぐらいといった感じです。

完全にオススメするのは、リリーフとしてのピッチング。本人の意識も変わりますし、わかっていても空振りを奪える球質は素晴らしいものがあります。ただそれほど、無理が効くだけの体力・体つきをしていないのは気になります。

 また性格的にものんびりしているので、環境適応には少し時間がかかるかもしれません。一年目よりも2年、3年と時間を経た方が持ち味が発揮できそう。素材的にもまだ発展途上のことを考えると、焦って無理使いして潰してしまうのにはもったいない気がします。

 そういった様々な制限がつくことを考えると、一年目から爆発的な期待を抱くのはどうでしょうか?ただしリリーフでも、セットアッパーとかクローザーだとか使い方を限定してあげれば、期待以上の成績は残すのではないのでしょうか。あえてリリーフとしてならと限定にはなりますが、高い評価を下してみたいと思います。


蔵の評価:☆☆☆☆


(2013年 都市対抗)










石川 歩(24歳・東京ガス)投手 185/69 右/右 (中部大出身) 





                     「久々に観たが」





中部大の下級生時代に、大学選手権で注目された速球派。しかし最終学年では、もう一つアピール不足でプロ入りとは行かなかった。私自身も最終学年の投球を確認できず、久々に春の関東選抜リーグで確認できた。そして今年の都市対抗・緒戦の先発を任されるなど、期待が高いことを証明。そんな 石川 歩 の現状をご紹介したい。

(投球内容)

 彼の最大の魅力は、柔らかい腕の振りにある。その身のこなしこそ、彼の高い将来性を期待させる。しかし久々に見て思ったのは、社会人の投手にしては線が細いなぁということ。そのため球威に欠け、ボールのボリューム感がなんとも物足りない。

ストレート 135~MAX143キロ

 大学選手権で注目されたときは、MAX146キロを記録。しかし春の関東選抜リーグでは、ほとんどが135キロ前後まで球速が落ちていた。都市対抗では、130キロ台後半~MAX143キロまで回復。ただ球威の無さは相変わらずで、特にシュート回転して中に中に入ってくるのは、どうしても気になった。

変化球 チェンジアップ カーブ など

 彼の最大の武器は、チェンジアップ。この球でカウントも整えるし、フィニッシュボールにもなる。また110キロ台のカーブで緩急をつけつつ、カウントを稼ぐ。このカーブは、低めに集まるので有効に使えている。逆に中間球である、スライダーらしき球は殆ど見られない。ただ大学の下級生時代の寸評を読むとスライダーを使っていたようだが、今のようにカーブやチェンジアップのような沈む球はなく、投球スタイルはかなり変化していることに気がつく。この投手の場合、あくまでも速球を魅せ球にしつつ、変化球も織りまぜて抑える総合力で勝負するピッチングスタイル。

その他

 出塁したランナーに対しては、鋭い牽制で威嚇する。フィールディングの動きもまずまずだし、クィックも1.1~1.2秒ぐらいで投げ込めるなど、基準レベルにありそうだ。

 都市対抗の大舞台でも、適度にマウンドを外したり冷静に対処出来ていた。ルーキーで都市対抗・緒戦を任されるのだから、ハートという意味では強いのだろう。けしてマウンド捌きとか投球術などは、荒々しくはない。

(投球のまとめ)

 大学選手権の時にはなかったような、カーブやチェンジアップなどを覚え投球の幅が広がった。ただこれにもう一つ、スライダーなど中間球があると投球の幅は広がりそう。速球がシュート回転する分、カットボールなど逆に曲って行く球も有効かもしれない。

 肝心のストレートが、けして遅くはないが甘く中に入って来るのが怖い。もう少しストレートに磨きがかかって来ないと、プロとしては厳しいのではないのだろうか。

(投球フォーム)

ランナーがいなくても、セットポジションから投げ込んできます。

<広がる可能性> 

 引き上げた足が地面の方に向いているので、お尻は一塁側に落とせません。そのため見分けの難しいカーブや縦に鋭くフォークなどの習得には元来適しません。ただ実際にはカーブを多く使って来るのだが、特に腕の振りが緩むようなことはなく上手く使えているので悲観することはないだろう。またフォークはないが、かなり落差のあるチェンジアップを使えているので、この球で代用できている。

 また「着地」までの粘りに欠けるので、その他の変化球を身につけるのにも苦労しそうだ。やはりカットボールやツーシームなど球速のある変化球を交えることで、更に投球の幅を広げて行くことを期待したい。

<ボールの支配>

 グラブは最後まで体の近くにはあり、両サイドの投げ分けは比較的安定。ただ足の甲での地面の押し付けは浅いものの、ボールはそれほど上吊っていない。「球持ち」も際立って良いとは思わないが、ある程度はボールをコントロールできている。

<故障のリスク>

 お尻が落とせない割にカーブを多投するので、体への負担は小さくはありません。ただ降り下ろす腕の角度には問題がないので、肩への負担は少なそう。肘などを中心に、体の手入れは日頃から注意を払いたい。

<実戦的な術>

 「着地」までの粘りに欠けるので、どうしても打者からはタイミングが合わせやすい欠点があります。ただ体の「開き」は平均的なので、甘いところを突いたような球まで打たれることは少ないはず。

 振り下ろした腕は体に絡み振れていますが、ボールに上手く体重が乗せられていなく「体重移動」に課題を残します。そのため球威にも欠け、打者の手元までそれほど威圧感のあるボールが投げられていません。

(投球フォームのまとめ)

 「着地」の粘りの無さが、打者からは打ちやすい淡白なフォーム。それでも「開き」はなんとか我慢できているのが救い。

 「球持ち」は平均的で、将来的にも制球は並レベルだろうか。「体重移動」が不十分なので、これを改善して行かないと、球速ほど活きた球が行かないだろう。ストレートの課題を改善できるのかが、今後の大きなポイント。

(今後は)

 年齢的にも大卒選手なので、今後爆発的に資質を膨らませて行くことは難しいと思います。そのため、如何に技術を磨くことで、実戦的な術を向上させて行けるのかがポイントになります。

 最大の課題は、「着地」の粘りに欠ける淡白なフォームと、ストレートの球威の問題。ここを改善して行かないと、プロは見えて来ないと考えます。変化球・マウンド捌きは悪くないだけに、この部分を改善を来年までに期待したいですね。現状は、ドラフト候補に名前はあがるかもしれませんが、プロ入りまでは厳しいかなというのが率直な感想。果たしてどんな成長を魅せてくれるのか、密かに期待して見守りたいと思います。

(2011年 都市対抗)

 






石川 歩(中部大)投手 185/68 右/右 (滑川高出身) 





                 「今年も現れた東海の逸材!」





 ここ数年、毎年のように東海地区の大学生が、ドラフト戦線を賑わしている。元々東海地区と言うのは、2部・3部にも、プロを意識できる素材がいると言う、全国的にも稀な地域。今年も愛知大学リーグには、プロを意識できる素材が現れた。その男の名前は、石川 歩 。

 彼の存在を世に知らしめたのは、昨年の大学選手権・東海大戦。リリーフで登板した彼は、しなやかな腕の振りから、MAX146キロの速球を投げ込み、その素材の良さを印象づけた。





(投球内容)

 彼の特筆すべき点は、何といっても柔らかい腕の振りにある。球速は、コンスタントに140キロ台を記録し、神宮では殆どストレートを投げていた。実際高校時代も見た記憶がない選手だった。しかし誰もが、ほれぼれするような身のこなしには、この選手の高い将来性を感じさせる。

 ストレートの勢いも確かで、それに加え、変化球はどうもスライダー・チェンジアップがあるように思える。また大学選手権では、140キロのシュートボールと言うかツーシームあたりも持っているかもしれない。ただカーブで緩急・フォークで空振りといった投球はできず、三振の多くは高めの速球で奪っている。

 けん制も鋭く、フィールディングも軽快。ただ身のこなしに素材としての素晴らしさを感じさせる一方で、実際の投球内容からは、それほど投球センスの高さは伺われない。ただ両サイドへの制球力はあるので、四死球で自滅すると言うタイプでもなく、破綻のない投球ができるタイプだ。

(課題)

 グラブをしっかり内に抱え込んで投げ込んで来る投手なので、両サイドへの制球は悪くない。しかし4年間で、一度もイニングに近い数の奪三振は奪えておらず、その速球の非凡さの割に、決め手に欠ける部分がある。

 また投球フォームにおいても「開き」こそ早くないが、投球動作の核となるべき「着地」までの粘りに欠ける。また投げ終わったあとに、腕が体に絡みついてこないように、「球持ち」にも、もっと粘りが欲しい。また前にグッと体重が乗ってくるような「体重移動」にも課題があり、「開き」を除く部分で、課題を抱えるフォームだと言えよう。

 また足の甲でしっかり地面を押し付けられておらず、つま先のみが地面を捉えて回転している。そのため球全体が上吊り、どうしても低めに生きた球が行かないのだ。

 またお尻を基本的に一塁側に落とせないフォームなので、将来的にも見分けの難しいカーブの習得や、縦に落差のあるフォーク系の球種の習得が厳しいフォーム。それだけに、速球は素晴らしいが、緩急・決め手不足を露呈し、伸び悩む要素が多い。


(今年のチェックポイント)

 リーグ戦でもソコソコの数字は残せるのだが、絶対的な活躍を魅せているのかと言われると、まだまだ物足りない。今年は、リーグでも図抜けた数字を期待してみたい。

 技術的にも、プロで活躍するための実戦的なフォーム・配球と言う意味では、課題が多い。それらの欠点を如何に改善したり、違う方法で補ったりできるのか注目してみたい。

 そういった努力を惜しまない姿勢や努力・そして自分の立ち位置を冷静に分析できる能力・センスがあるのかどうかが、一つプロで活躍して行けるのかの大きなポイントになるのではないのだろうか?



(2009年・秋)