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萬谷 康平(26歳・ミキハウス)投手 185/78 右/左 
 




                   「コントロールはいいけれど」





どうしてもプロに行きたいという明確な意志を持ち、シティライト岡山から自ら探してきたというミキハウスに移籍。今やチームにおいて 山田 秋親(元ソフトバンク)と共に、ダブルエースとして君臨するまでに成長。26歳にして、スカウト達から注目を集める存在に成長しました。

(投球内容)

 ノーワインドアップから、ゆったりとしたモーションから入ってきます。阪南大時代から、リーグを代表する好投手として何度も見てきました。その頃と比べ、目に見えて大きく変わった印象はありません。

ストレート 常時135キロ前後~140キロぐらい

 クラブ選手権のときは先発ということもあり、常時135キロ前後。都市対抗の時はリリーフということで、140キロ近い球速は出ていました。ドラフト候補としては、球威・球速は物足りません。ただボールに角度があり、低め一杯、コース一杯に投げ込める高い制球力が自慢だと言えるでしょう。そのため球質は並でも、容易にはつけ込めない理由もそこにあります。

変化球 カーブ・スライダー・チェンジアップなど

 かなりチェンジアップを多く織り交ぜて投球を組み立てます。スライダーも横に滑るというよりは、かなり落差のあるスライダーで、チェンジアップと真逆の軌道で曲がります。時々カーブを織り交ぜて、投球のアクセントとしています。それでも格別変化球に、特別なものは感じませんでした。

その他

 クィックは、1.15秒前後と平均レベルで、牽制もそれなりに鋭い。フィールディングも並で、大きな破綻はありません。特にピッチングが上手いというよりは、コントロールがよく絶妙なところに要所で決められることが持ち味なのでしょう。

(投球のまとめ)

 四球で自滅するなど、そういった心配はありません。その一方で球威・球速が物足りなく、ある程度は打たれても要所締める粘り強い投球が身上。特に三振を奪える決め手がないので、あまりプロが注目するタイプには見えないのですが・・・。彼が予選で残した数字が、特徴を如実に表しているように思います。

3試合 14イニング 12安打 9奪三振 1四死球 防御率 1.29





 このボールの威力では、二軍で成績をあげても、一軍の打者を抑え込めるのかには疑問が残ります。

(投球フォーム)

そこで、どのぐらい実戦的なフォームをしている考察してみたいと思います。

<広がる可能性> ☆☆☆

 引き上げた足を高い位置でピンと伸ばしているので、お尻は一塁側に落ちているはずなのに、あまり落ちているようには見えない。それでもカーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化球を投げるだけのスペースは、それなりに確保出来ているのではないのだろうか。

 むしろ気になるのは、「着地」までの粘りが並なので、体を捻り出す時間の方が充分ではない。どの球もある程度までは変化させることができるが、決め手となるほどのキレ・曲がりは手に入れ難いのではないのだろうか。

<ボールの支配> ☆☆☆

 グラブは最後まで体の近くにあるので、両サイドの投げ分けは安定。足の甲での地面の捉えは浅いように見えるが、実際はかなり低いところに集められている。「球持ち」もそれほど好いように見えないが、指先の感覚がよく細かいところまでコントロールできている。ただし時々甘い球も見られるので、その辺をプロは見逃してくれるのだろうか?

<故障のリスク> ☆☆☆☆

 お尻はある程度落とせるフォームなので、カーブやフォークなどを無理なく振り抜けるフォームとなっている。そういった意味では、肘などを痛め難いだろう。

 腕の角度もスリークオーターであり、腕の送り出しに無理は感じない。それだけに肩への負担も少なく、まして力投派でもないので故障しらずの体なのかもしれない。

<実戦の術> ☆☆

「 着地」までの粘りが平凡なので、打者としては苦になり難い。まして「開き」も早く、球筋はいち早く読まれてしまう。

 腕の振りも弱いので、変化球を見極められてしまう可能性が高い。ボールにも体重が乗せられず、打者の手元までの勢いが物足りない。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の観点でいえば、「着地」「球持ち」は平均的で、「開き」「体重移動」には課題を感じる。実戦派とみせかけて、あまり実戦的なフォームをしてないのは気になる材料。いくらピンポイントに突いても、この球威とフォームでは打ち込まれてしまう危険性を感じる。

 それでもコントロールを司る技術以上に、制球は安定。故障し難いフォームという強味もある。

(最後に)

 球威・球速不足を、コントロールの良さで補うタイプ。しかしそれだからといって、変化球が抜群だとか、フォームが打ち難いとか、別の部分で推せる材料に乏しい。

 経験豊富な投手で、早くから実戦段階に入れられる強味はあるが、一年目から数字を残せないと苦しいだろう。あえて26歳で、このレベルの選手を取りに行く必要性は見当たらない。ただ捨て身で来る覚悟はあるから、そういった意味での良い意味での開き直りに期待。しかし常識的にみて指名リストに載せるという判断は、私には出来なかった。


(2013年 全日本クラブ選手権)