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又吉 克樹(23歳・香川OG)投手 180/74 右/右  





                  「本会議で指名されるじゃないか?」





独立リーグに在籍する選手の多くは、育成枠ドラフトで指名されることが殆ど。そんな中、この 又吉 克樹 は、普通に本会議で指名されるのではないかと思っている。今年の独立リーグの選手の中では、頭一つ抜けた存在だと言えよう。



(投球内容)

 足を静かに引き上げて、サイドに近い位置から腕が出てきます。ゆったりと、自分の「間」を大事にするタイプ。

ストレート 常時140キロ台~MAX91マイル(145.6キロ)

 四国アイランドリーグ選抜が関東に遠征してきた時も、そして今日行われたソフトバンクとの交流戦でも、コンスタントにこのぐらいの球速が出ていました。

 ボールに勢いがありますし、両サイドにしっかり投げ分けられるコントロールがあります。特に左打者内角を、厳しく突く投球が持ち味。右のサイドハンドが苦手な、左打者に対し攻めの投球が出来るのも大きいかと。

変化球 スライダー・シンカーなど

 スライダーは、右打者の外角低めに決められ、このゾーンで三振を多く奪います。そうかといって、右打者の体の近くから内角に決まるような生かし方も出来ます。特に今日のソフトバンク戦では、アイランド選抜の時に見られなかった、左打者内角に食い込むスライダーが見られました。特に彼のスライダーは高速で、ひょっとするとカットボールなのかもしれません。

 左打者の外角には、シンカーも落とせます。ただこのボールはフューチャーズレベルの打者達にも見極められてしまい、まだ精度としては高くありません。あくまでも、投球の幅を広げるといった意味合いしかありません。

その他

 牽制はかなり鋭く、上手い部類だと評価します。クィックは、1.1秒前後で投げ込むことができ、基準以上のものがあります。そういった投球以外にも優れ、野球センスの高さを感じます。

(投球のまとめ)

 速球の勢いだけでなく、スライダーの生かし方が多彩で実戦的。ランナーを背負っても、充分な間合いをとって投げるので、走者や打者が焦らされるような「間」を意識した投球ができます。またランナーを背負った厳しい場面でも、最後は開き直って投げる気持ちの強さがあり、更に意識的にボールゾーンにも投げられます。その点でこの選手は、とても実戦的だと言えます。環太平洋大時代に、あまり目立たなかったのが不思議なぐらいです。

 ただ気になったのは、味方がアウトにして欲しかった微妙な当たりでランナーを許してしまうと、そこからガタガタと失点しまったように、リズムが崩れてしまった時の脆さは気になります。あくまでも余裕を持って投げられている間は好いのですが、そうじゃない時に、いかに乗り切れるのかが今後の課題でしょうか。



(成績から考える)

 あくまでもシーズン途中の段階でありますが、9月5日現在の成績を元に考えてみたいと思います。7月に関東に遠征してきた時は、リーグでもダントツの防御率(1.34)でした。しかし現在は2位(1.71)に落ちるなど、やや調子を落としつつあるようです。7勝1敗だった成績も、この二ヶ月で8勝4敗と勝ち星に恵まれていません。ちなみにここまでの成績は

17試合 8勝4敗0S 防御率 1.71(2位)

1,被安打はイニングの70%以下 △

 被安打率は、74.1% 。プロ入りするだけならば80%以下で充分でしょうが、一年目から一軍でと考えると、更に高いファクターを設定したい。そう考えると、少し物足りない数字ではある。速球とスライダーは多彩に活かせますが、それ以外の変化球が頼りないのにも原因がありそう。

2,四死球は、イニングの1/3以下 ◯

 四死球率は、29.8% で合格レベル。かなり厳しい攻めや、ボールになる技術も持ちあわせており、制球力はある程度のレベルにあると見て好いでしょう。今後は、更にワンランク上の精度を身につけたい。

3,奪三振は、1イニングあたり0.8個以上 △

 奪三振率は、1イニングあたり0.79個と僅かに及ばない。先発としてはけして少ない数字ではないが、プロの一軍を想定するならば、この数字をできればクリアしたかった。

4,防御率は1点台以内 ◯

 防御率は、1.71 ということで基準は満たしている。ただしプロの即戦力を目指すならば、7月までのような 1.50 位内の数字をキープしてはいたかった。

(成績からわかること)

 各ファクターを見ると、極めて高いレベルでまとまっていることはわかる。しかし一軍を想定すると、微妙に数字が満たされていなく、即戦力と考えた時は微妙だろう。一軍で投げられるだけの力はすでにあるが、そこで活躍できるほどの数字を残せるのかは、微妙な感じはして来る。



(投球フォームから考える)

<広がる可能性> ☆☆☆

 引き上げた足を地面に向けて伸ばし、腕も横から出るのでカーブやフォークといった球種は適しません。それでも「着地」までの時間は稼げているので、キレの好い変化球は充分に身につけられる下地があります。

<ボールの支配> ☆☆☆☆

 グラブは抱えられているわけではないのですが、最後まで体の近くにあります。そのため、両サイドへの投げ分けは安定。足の甲での地面への押しつけも出来ており、ボールもさほど上吊りません。「球持ち」は並ですが、制球はまずまず安定していると言えるでしょう。もう少し「指先」の感覚を磨き、ワンランク上のコントロールを身につけたいところ。

<故障のリスク> ☆☆☆☆

 お尻は落とせませんが、カーブやフォークなどの球種を多投するわけではないので、悲観することはありません。特に腕を横から出す投手なので、お尻の落としは致し方ないでしょう。

 腕の振り下ろしにも横手なので、無理がありません。そういった意味では、力投派でもないですし、故障の可能性は低いのではないのでしょうか。

<実戦的な術> ☆☆☆

 引き上げた足を、地面に着きそうなところからグ~と前に逃がすことが出来ている。この粘りがあるからこそ、「イチ・ニ~の・サン」の「ニ~の」粘りであり合わされ難い。どうしてもサイドなので、体の「開き」は早くなりがち。その欠点を、厳しい内角攻めで補っている。

 腕は適度に体に絡んでおり、速球と変化球の見極めは困難。ボールにも適度には体重が乗せられており、打者の手元まで勢いは落ちません。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」に良さがあります。「球持ち」「体重移動」は並ですが、「開き」が少し早いんではないのでしょうか。

 コントロールを司る動作に問題はなく、故障し難い投げ方。実戦的と言うほどではありませんが、大きな欠点もないフォームだと言えるでしょう。


(最後に)

 独立リーグの選手の中では、完全に頭一つ抜けた存在。まだ即戦力となると不安が残りますが、1年目から一軍で登板できるレベルにはあると思います。ドラフトでも3位~5位ぐらいでは、消えるのではないのでしょうか。何かプロで身につけたら、非常に面白い存在になりそうです。


蔵の評価:☆☆


(2013年 プロアマ交流戦)