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吉田 一将(24歳・JR東日本)投手 191/90 右/左 






                  「都市対抗で評価上昇」





日大時代から、この体格の割にしてバランスよく投げられる投手として、4年秋まで追いかけた 吉田 一将 。しかし大学時代彼を殆どのスカウトは、追いかけていたなんて話を訊いたことはなかった。そんな彼が注目されるようになったのは、名門・JR東日本に進んでから。ルーキーながら主戦投手として活躍し、都市対抗準優勝に貢献し注目される。

 しかし2年目を迎えた彼の評価は、190センチ台の体格の割にフォームやボールがおとなしく、何か訴えかけて来るものがない、ピリッとしない投手との評価で、けして1位指名確実なんていう高い評価ではなかった。ただ昨年の11月に見たアジア選手権の壮行試合で見た彼の投球は、ドラフト上位を意識できるだけの内容だった。それだけに、その時の投球が安定して出せるかどうかが、今年のポイントだとみていた。

 しかし春のスポニチ大会、そして都市対抗予選に至るまでは、私も彼を1位指名とまでは評価していなかった。彼の評価を不動にしたのは、今年の都市対抗で魅せた快投によるもの。これは私だけでなく多くのスカウトも、都市対抗以降に彼を社会人NO.1投手と評価されるようになってくる。実は、吉田が1位指名・それも競合しするまでに評価をあげたのは、わりと最近のこと。そこで前置きは長くなったが、吉田が何故それまで評価されなかったのか、そして現在のような高い評価に至ったのか、今回は考えて行きたい。



(投球内容)

 190センチの長身ながら、彼のフォームは綺麗でボールにもそれほど威圧感が感じられない。そのため相手を力で圧倒するとか、そういった派手なアピールは見られません。あくまでもいつもと同じような感じで、波風立てず淡々とイニング刻んでゆくのが、彼の特徴でもあります。

ストレート 常時130キロ台後半~140キロ台中盤

 特にボールが手元までグッと来るとか、ピュッとキレるような迫力のあるボールは投げません。普段は、両コーナーにボールを集めて来る感じ。ただボール自体には角度が感じられるので、打者としてはボールに迫力を感じない割に、芯できっちり捉えられないという特徴があります。それでも勝負どころになると、140キロ台中盤のボールを投げ込むように、彼は彼なりに投球に強弱をつけようという意識はあるようです。

 ピンポイントに決まるというよりは、8割ぐらいその周辺に集められるといった感じで、時には高めに甘く入って痛打を喰らったりすることも少なくはありません。終わってみれば、7回を2,3失点ぐらいでいつも試合をまとめるといったタイプで、今日は全く手足も出ないほど完璧な投球だったよということは、今年の都市対抗の時を除けば殆ど見られませんでした。ある程度のレベルで、いつもまとまっている、それが吉田の持ち味なわけです。

変化球 スライダー・フォーク・チェンジアップ・カーブ・カットボールなど

 大型の割に器用貧乏なところがあって、いろいろな球種を投げ込みます。しかし絶対的な球種がない、そんなイメージが日大時代にはありました。彼の球種目で立つのが、チェンジアップ。そして最近は、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の落差にも磨きがかかってきました。変化球の精度・キレに関しては、社会人になって確実に成長した部分ではないのでしょうか。

 しかしそれほど三振をバシバシ取るような投手には見えなかったのですが、都市対抗本戦では、19イニングで23奪三振と、イニングを上回る数字をマーク。それは、ストライクゾーンからボールゾーンに切れ込むスライダーや、縦に落差のあるフォークなど、ボール球を振らし三振を取れるコツを身につけたことも大きかったようです
その他

 気になるのは、鋭い牽制などがあまり見られない点。クィックは、1.2秒前後と平均的。フィールディングも大型なので、上手いようには見えません。プロで一番苦労するのは、こういった投球以外の部分が、上手くないところでしょう。

(投球のまとめ)

 都市対抗で何が変わったかというと、低めに丹念にボールを集める集中力を、どの試合でも最後まで持続できたということ。ですから三振も、コーナーギリギリとか低め一杯に投げて見逃しを奪うことが多くなりました。ボールそのものが凄くなったのではなく、そこに集めようという意志が、以前よりも明確になりました。それを最高の舞台でやってのけたことに、彼の価値があるわけです。

(最後に)

 都市対抗までの吉田の評価は、大きな体の割にボールに迫力がない、ピッチングがピリッとしない、面白味に欠ける投手。そんな評価だったのではないかと思います。少なくてもそれまでは、ドラフトでも3位ぐらい、良くても2位になれればといった雰囲気でした。

 しかしこの都市対抗で、一気に評価は上がります。単に面白味がないのではなく、あえて力をセーブしてでも、低めやコースに丹念に投げ続けることを忍耐力があると変わりました。そしていつでも、同じようなパフォーマンスを示すことを心がける意識の高い投手へと、周りの見方が変わりました。

 評価を覆した理由は、都市対抗という最高の舞台で、自らの最高のパフォーマンスを示せる調整力・低めにボールを集め続ける忍耐力、常に高いレベルで試合を作り続ける持続力を見せつけ、まさにプロのローテーション投手に必要な要素を、すべて持ち合わせていることを実証できた点にあるのではないのでしょうか。

 私が観る限り、2013年度のドラフト候補の中で、最も失敗する可能性が低い、安心して獲得できる選手。それが、この 吉田 一将 だと思うのです。爆発的な活躍や凄みのある球は投げませんが、年間10勝前後の活躍は、一年目から計算できる。そんな安心感が、各球団の高い評価につながっているのだと考えます。


蔵の評価:☆☆☆☆


(2013年 東アジア選手権壮行試合)



 









吉田 一将(24歳・JR東日本)投手 191/90 右/左 (日大出身) 





                    「着実に成長」





190センチの長身ながら、少しスリークオーター気味に投げ込んで来るフォーム。日大時代は、エース格でしたがドラフト戦線で殆ど話題になることはありませんでした。ただ個人的には気になる存在で、4年秋まで追いかけていた一人です。当時はまだアバウトなところが目立ち、ボールの威力も突き抜けるものがなかったのですが、社会人に入りその辺もだいぶ改善されてきました。2013年度の社会人投手の中でも、最も注目される存在だと言えるでしょう。

(投球内容)

 絶対的なボールはないのですが、両サイドにボールを散らしたり、低めにボールを集めたりして打ちとってきます。空振りをバシバシ奪うような力投派ではなく、ストレートと変化球をおりまぜて、打たせて取ってきます。イメージ的には、オリックスに京産大から入団した 平野 佳寿 に近いものを感じが致します。

ストレート 常時140キロ台~MAX148キロ

 普段は、130キロ台後半~140キロ台前半ぐらいでコントロール重視で投球を組み立ててきます。ただ都市対抗では、結構シュート回転して中に入って来る球も少なくなかったものの、ボールの勢いが勝っていて痛手をあまり食らいませんでした。特に力を入れた時の、140キロ台中盤前後の勢いのあるストレートにはみるべきものがあり、この球が低めやコースに決まった時は中々打てません。こういった球がコンスタントに投げられるようになれば、プロでも二桁を意識できると思いますが、まだ勝負どころでの限定です。

 11月のアジア選手権での壮行試合を見たのですが、この時は寒さもありボールの威力・勢いはそれほどでもありませんでした。しかし都市対抗のアバウトな投球とは違い、右打者にも左打者コースにボールを散らすことができ、打者の内角を厳しく突いて詰まらせる投球が目立ちます。都市対抗では特に左打者に対し制球がアバウトだったのですが、この時は左右の打者相手にもキッチリコースに集めることが出来ていました。

変化球 スライダー・フォーク・カーブなど

 右打者には、外角に小さく横滑りするスライダー中心に投球を組み立てます。左打者には、チェンジアップのような小さく逃げながら沈む球があるのですが、これがチェンジアップではなく、どうもフォークのように挟んでいるように見えます。綺麗にストンと落ちて空振りを誘うことは少なく、基本的にチェンジアップ的にタイミングをズラして、カウントを取る球になっています。
 
 大学時代のように、あまりカーブで緩急をつける機会は減り、その代わりツーシームやカットボールなど小さな変化を加えているのではないかと思える時があります。その辺は、腕が少し下がっているのでナチュラルなのかもしれませんが。

その他

 この選手は、鋭い牽制を入れたのを見た記憶がありません。全くできないということも、走者への意識がないわけでもないとは思いますが。クィックは、1.2秒前後で平均的。フィールディング等も、大型なのでけして機敏なタイプには見えません。そういった野球センスに秀でたタイプというよりは、肉体のポテンシャルで勝負する選手なのでしょう。

(投球のまとめ)

 特に「間」を意識して、投球するようなセンスは感じません。コースの微妙な出し入れもしてきませんが、コースにボールを集める制球力はあります。特に内角で胸元を厳しく突くだけの、度胸と制球力はあります。

 まだ速球でも変化球でも、図抜けたものは感じませんが、これらを上手くコントロールして、投球を組み立てることが出来ています。力を入れた時のボールには上位指名級の素晴らしい球があるので、今年はそういった球を平均して出せるようになると、一躍上位12名に割り込んで来るのではないのでしょうか。年々着実に伸びており、今季も更なる成長が期待できます。


(成績から考える)

 社会人1年目の昨年は、チームの主戦として都市対抗・日本選手権の本戦で8試合に登板。そこでの成績を参考に、考えてみたいと思います。その8試合の成績は

44回2/3 30イニング 6四死球 24奪三振 防御率1.41

1,被安打は、80%以内 ◎

 被安打率は、67.3%。二大大会に出て来るような強豪社会人チームならば、プロの2軍とほぼ同レベルの相手と考えて、ファームの選手が1軍を意識する基準を採用しても良いだろう。そういった意味では、その中でも被安打率が80%ではなく70%を割っている点では、高く評価したい。

 結構甘い球も少なくないのだが、ボールの勢いが勝って社会人レベルの打者達のバットを押し返すだけのものがある。これがプロの1軍打者相手に打たれないかは気になる部分だが、それだけの数字は残せている。

2,四死球はイニングの1/3以下 ◎

 四死球率は、13.5%。極めて低い数字になっており、四死球で自滅するような投手ではない。あとは、ストライクゾーンの枠内の精度を、もうワンランク上のものにしたい。

3,奪三振は、イニングの0.8個以上 ✕

 奪三振率は、1イニングあたり0.54個 。この数字は、かなり低めであり、決め手不足を露呈している。基本的にコースを突いて打たせて取るのが身上なので、この数字も納得の部分がある。スライダーにしてもフォークのようなチェンジアップにしても、コントロールは良いが空振りを誘うような球ではない。ストレートもよほど力を入れて140キロ台中盤前後を連発している時には良いが、そういった球を常に投げているわけではないので。こういった球を連発できるようになれば、奪三振率もかなり変わっては来るだろう。ただ現状は、そこまでの馬力はない。

4,防御率は2点台以内 ◎

 一年目から1軍での即戦力を目指すならば、2点台は欲しいところ。現状統一球で1軍の目安となるのが、防御率2点台の投手。ましてアマである社会人の投手ならば、1点台の防御率ならば1軍も視野に入れられるだろう。2大大会の大舞台で、1.41の数字は、その基準を充分満たしていると言えるのではないのだろうか。

(データからわかること)

 三振を奪うという決め手の部分以外は、プロの1軍を視野に入れられるレベルまで来ていることがわかる。更にワンランク上の制球力・平均したボールの威力が望めれば、一年目から二桁勝利を意識できる可能性が膨らんで来る。

(投球フォーム)

更にもうワンランク上の投球を目指すには、どの辺に課題があるのか考えてみたい。

<広がる可能性> 
☆☆☆

 引き上げた足は、比較的高い位置でピンとは伸ばせているものの、お尻の一塁側への落としは少し甘い。そのため見分けの難しいカーブで緩急をつけたり、フォークのような縦のに大きく落ちる球種を投げるのに大きな負担はかからないものの、キレ・曲がりというものは中途半端になりやすい。
 
 着地までの粘りも平均的で、ひと通りの球種は投げられるかもしれないが、絶対的な武器がない、空振りが誘えないというのも頷ける。そのためには、幾分足を伸ばすときに、もう少し地面に向けてでなく高い位置で伸ばすことで、より一塁側に落とすことができる。ただそれだとバランスを崩しやすいので、若干二塁方向に送った方が着地までの粘りは作りやすい。かなり微妙なバランスの部分なので、下手するとフォームを崩す危険性ははらむ。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆

 
グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分けは安定。足の甲でも深く地面を捉えており、ボールを低めに集めることができる。ただ「球持ち」に関しては、振り下ろした腕があまり身体に絡んで来ないように、粘っこさはそれほどでもない。ただ上手く指にかかった時のボールは、素晴らしい球が行く。もう少し指先の感覚が磨かれば、ワンランク上の制球も期待できそう。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆

 
お尻は甘さを残すものの、落とせているので捻り出すスペースはある程度確保。これによりカーブやフォークなどの球種を投げても、大きな負担はかからないのだろう。

 振り下ろす腕の角度にも無理は感じないので、肩・肘に負担のかからない投げ方。それほど力投派でもないので、故障の可能性は低いのではないのだろうか。


<実戦的な術> 
☆☆☆

 
着地までの粘りは平均的で、身体の「開き」も並でしょうか。そういった意味では、嫌らしいフォームでもなければ、特別打ちやすいフォームでもないということ。

 ちょっと物足りないのは、腕の振りがまだ強くないのかなと。そのため振り下ろした腕が、身体にあまり絡んでこない。腕の振りが弱いと、速球と変化球の見極めがついてしまい空振りを誘い難い。ボールには適度に体重は乗せられており、上手く乗った時のボールは素晴らしい。ただ必ずそういったフォームで投げられているわけではないので、ウエートの乗った球を安定して投げられるようになれば、ピッチングの質は格段に変わりそう。


(投球フォームのまとめ)

 
投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」に関しては、すべて平均レベルぐらいであり、可も不可もないといった感じ。この辺がもう少し追求できるようになると、より実戦的になり、ワンランク上の制球・打ち難さ・ボールの勢いなどにつながって来るだろう。

(最後に)

 
現状は、まだ発展途上の選手であり、日々成長の段階。それでもこの体格で、ここまで下半身を使って投げられる稀な素材であり、フォームのバランスには非凡なものが感じられる。日大~JR東日本 の先輩である十亀剣が社会人後も成長を続けたように、同様の道をたどれば上位12名に入って来る可能性は秘めている。

 現状は、平野 佳寿(オリックス)投手の大学時代と比べ、低めに140キロ台後半の伸びのあるボールをコントロールできていた投球に比べると、ワンランク劣る印象は否めない。ただ素材的には、同様のあるいは更に上の投手になれる可能性を秘めているので、期待して見守って行きたい投手であります。



(2012年 アジア選手権走行会)



 






吉田 一将(日本大)投手 191/89 右/右 (青森山田出身) 

(どんな選手?)

 190センチ台の大型右腕なのですが、かなりサイドに近いスリークオーターから投げ込んできます。今や日大のエースに成長し、春の二部での成績は、4勝1敗 防御率 2.63。入れ替え戦でも活躍し、チームの一部昇格に貢献致しました。

(投球内容)

 右スリークオーターから、恐らく130キロ台後半~140キロ台中盤ぐらいまで球速は出ていたのではないのでしょうか?ストレートの威力には見るべきものがあり、他にもシンカーを武器に、カーブ・スライダーなどを織り交ぜます。

 結構ボールが暴れる選手で、ビシッとピンポイントで決めたい時に決められない、もどかしさみたいなものがあります。逆にそれが、相手打者からすれば、的を絞り難い要因なのかもしれません。

 左打者には、速球とシンカーとのコンビネーション。ただ右打者には、あまりシンカーを使えないので、カーブやスライダーなどを織り交ぜますが、絶対的な球種がなく物足りない投球になります。

 大型ですが、クィックは1.2秒台と大きな破綻はありません。ただ「間」を上手く取るとか、投球術に優れているというほどではありません。あくまでも抑揚なく、淡々とボールを投げ込んで来る投手との印象を受けます。


(投球フォーム)

 ランナーがいなくても、セットポジションから投げ込んできます。サイドハンドのように体を前に折って来る、スリークオーターです。

<広がる可能性>

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻の落としは深くありません。そのため見分けの難しいカーブで緩急をつけたり、縦に鋭く落ちるフォークのような球を身につけるのは厳しいと考えられます。また「着地」までの粘りもそれほどではないので、今後もスライダー・シンカー系やカットボール・ツーシームなど球速のある変化球で投球の幅を広げることになりそうです。


<ボールの支配>

グラブは最後まで内に抱えられているので、両コーナーへの投げ分けに優れていそうですが、実際にはそういった細かさはありません。足の甲の押し付けも長く深くできているのですが、意外なほどボールが上吊ったりもします。完全に荒れ球投手なのですが、その最大の要因は「球持ち」が長くなく、指先の感覚は悪そうな投手です。将来的にも、極め細やかな制球や微妙な出し入れをするような投手にはならず、ボールの威力で押すタイプではないのでしょうか。

<故障のリスク>

 特に無理な角度も作って投げるわけでもないですし、物凄く力投して投げる負担の大きなフォームではありません。フォークやカーブを無理に投げようともしていませんし、シュート系などで肘を痛める心配も感じません。タフな体を武器に、どんどん体を鍛えてレベルアップに励んで欲しいですね。

<実戦的な術>

 「着地」までの粘りはあまり感じませんが、体の「開き」は早すぎることはありません。そのためスリークオーターにありがちな、球の出どころの見やすはないように思えます。

 ただ腕はそれほど体に絡んできませんので、速球と変化球の時の腕の振りの違いに気がつく時があります。球種が読まれやすく、その辺が今後の大きな課題ではないかと思います。「体重移動」は適度にできており、全く下半身が生かせないタイプではありません。そのためボールの勢いも、打者の手元まで落ちません。


(最後に)

 まだまだ大型で制球も、投球内容もアバウトです。現状、これは!という絶対的な武器がありませんが、馬力も体格にも恵まれておりますし、無理のないフォームは、これから更に資質を伸ばせる余力を感じさせます。そういった意味では、社会人でしっかりした指導者に恵まれれば、二年後は楽しみではないのでしょうか。今後も期待して、見守って行きたい投手でした。

(2011年 秋季リーグ)