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 柴田 健斗(25歳・BC信濃)投手 175/80 右/右
 






                   「カープの入団テストに合格」





一昨年のドラフト前だったかに カープの入団テストに合格し、育成枠あたりでの指名が有力視されていた選手。しかし結果的には指名なく終わり、プロ入りは幻と消えた。そんな 柴田 健斗 選手を、北陸遠征で観戦。実際どんな投手だったのか検証してみた。



(投球内容)

 上背はないのですが、ガッチリした体格から投げっぷりの良さが目立ちます。それほど細かいことはできませんが、力のある速球と変化球をおりまぜて来る典型的なリリーフタイプ。

ストレート 常時140キロ~MAX91マイル(145.6キロ)

 ボールに勢があり、ストレートには魅力を感じます。空振りをバシバシ誘えるほどではないのですが、この球を魅せ球にしておけば、変化球も効果的に使えそう。ボールは多少バラつきますが、適度に両サイドには散っています。

変化球 スライダー・チェンジアップ・カーブなど

 横滑りするスライダーと、チェンジアップのような沈む球があります。この球がフォークかチェンジアップかはわかりませんが、カーブも含めてひと通りの球種は投げられます。ただ相手から空振りを誘うような、絶対的なキレはありません。

その他

 リリーフ投手らしく、牽制はそれなりに鋭いものが。クィックも1.1秒前後と素早くまとめてきます。そういった動作に大きな欠点はありませんが、投球術に長けるとかそういったセンス型ではなく、気持ちで押す力投派ではないのでしょうか。

(投球のまとめ)

 25歳という年齢もあり、それなりにキャリアも積んできた選手なので、球速だけでなく、変化球や制球力なども適度なレベルにはあります。

 ただ逆にプロを想定すると、突き抜けた武器がないのも確か。これでストレートが当たらないとかいう魅力があれば好いのですが、そこまで絶対的ではありません。グイグイと押すピッチングは観ていて気持ちが好い投手なので、短いイニングならば二軍レベルならば通用しそうといった感じはしてきます。

 しかし更にピッチングを膨らませて一軍で活躍する、そういった未来像までは、中々描けませんでした。

(成績から考える)

ここまでの今季の成績は

17試合 0勝0敗0S 27回 31安打 9四死球 23奪三振 防御率 2.67

1,被安打は、イニングの70&以下 ✕

 被安打はイニングを上回るなど、単調だとは思わないのですが、ヒットを打たれるケースが多いようです。やはり細かいコントロールがないのが、一つ大きな要因ではないのでしょうか。またこの後取り上げますが、あまり着地までの粘りのない、合わせやすいフォームなのも原因なのでは。

2,四死球はイニングの1/3回 ◯

 四死球は、ちょうど基準である1/3に留まっています。このことからも四死球で自滅する荒っぽさはありませんが、ストライクゾーンの枠の中での、細かいコントロールに課題を残すことがわかります。

3,奪三振は、1イニングあたり0.9個以上 △

 リリーフ投手なので、1イニングあたり0.9個以上の奪三振を望みたいのですが、0.85個と少し物足りません。速球の威力も変化球のキレも悪くありませんが、相手を仕留めきるほどの球がないのが要因でしょう。ましてNPBの打者を想定すれば、なおさら厳しくなります。

4,防御率は、1.50以内 △

 リリーフならば、最低でも 1.50以内にしたいところですが、現状は 2.63。私が観戦した6月初旬の頃には、まだ 1.13 と基準を満たしていたのですが、かなり打ち込まれたことがわかります。

(成績からわかること)

 こうやってみてみると、持ちえるボールは魅力的でも、成績としては微妙なのがわかります。まして一昨年の23歳時ならば素材としての魅力があったでしょうが、今はそういった魅力も年齢を重ね薄れているところみると、指名はまでは厳しいかと思います。

 ブルペンや短いイニングで見るには、投げっぷりも良くボールにも威力があるので見栄えはするでしょう。しかしチームの中で中継ぎに留まっているのには、よ~く見ているとな理由がわかってきます。



(投球フォーム)

では今後の可能性について、投球モーションから検証してみましょう。

<広がる可能性> ☆☆☆

 引き上げ足を高くあげ、お尻は一塁側に落とせます。そういった意味では、カーブで緩急を、フォークで空振りを誘える下地はフォームにあります。

 しかし「着地」までの粘りがイマイチなので、体を捻り出す時間が足りません。これによりボールのキレも曲がりも中途半端になり、武器になるほどの変化球が修得できないのだと考えます。

<ボールの支配> ☆☆☆

 グラブは最後まで体の近くにあるので、両サイドにはボールが散ります。しかし足の甲の地面の押し付けは充分とは言えないので、ボールが上吊ったり安定しません。それ以上に「球持ち」があまり良くないのか、指先の感覚はもうひとつ。おおよそストライクゾーンにボールを集めることはできますが、細かい投げ分けまでは出来ない、そういったアバウトさを感じます。

<故障のリスク> ☆☆☆☆

 お尻が落とせる投手なので、カーブやフォークなどの球種を投げても、肘への負担は少ないはず。ただ腕の振りを鋭く振って来るタイプなので、あまり緩い球には向かないのでは? また体格から見るに、手が大きくない可能性もあり、その辺がボールを挟むフォークなどの球種には適さないのかもしれません。

 腕を真上から投げ下ろすので、肩へ負担を感じます。しかし投げ下ろし方をみると、それほど無理のある投げ方でもないように思います。そういった意味では、タフなリリーフに向いているのでは。性格的にも、リリーフ向きでしょうし。

<実戦的な術> ☆☆

 グラブを斜め前に出すことで、体の「開き」は抑えられ、打者から球の出どころは見やすくはないはず。ただ「着地」までの粘りがイマイチなので、「イチ・ニ・サン」のタイミングで、合わせられてしまう危険性を感じます。「着地」までの粘りは「イチ・ニ~の・サン」の「ニ~の」ので粘りを作ります。これが、一流投手と二流投手の、決定的な差になります。

 力投派なので、腕は強く振ることができます。この点では、速球と変化球との見極めは困難で実戦的。ただ下半身をあまり上手く使えていないので、ボールへの体重乗せが甘く、打者の手元まで生きた球が行きません。この部分が、打者の空振りをイマイチ奪えない理由ではないのでしょうか。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」においては、「開き」を除けば課題を多く残すことがわかりました。この辺が、勢いのあるボールを持っていても、それを生かし切れない最大の要因ではないのでしょうか。

「着地」までの粘りと「球持ち」を強く意識して、今後は下半身の強化と股関節の柔軟性を、より考えて行かなければならないでしょう。


(最後に)

 プロテストに合格したように、短い時間で見るには見栄えのする投手。しかし長い時間見て行くと、いろいろな粗があることがわかりました。その辺がテストで合格しても、最終的に採用に至らなかった要因では?

 25歳にしては、投球の完成度・総合力に課題があり、現状はNPBからの指名は厳しいように思います。しかし魅力ある素材ではあるので、創意工夫次第では変われる余地は残されていると考えます。その辺に賭けて今年指名がなくても、もう一年ぐらい頑張って頂きたい投手ではありました。

(2013年 リーグ戦)