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濱矢 廣大(20歳・HONDA鈴鹿)投手 185/80 左/左 
 






                      「素材は一級品」





都市対抗東海予選に足を運んだ最大の理由は、この 濱矢 廣大 を確認するためだった。均整の取れた体格から投げ下ろされるストレートが、140キロ台中盤を記録すると訊いて、ぜひ見てみたいと思っていたサウスポー。その期待を裏切らない、一級品の素材だった。

(投球内容)

ちょっとテイクバックに癖がるのが気になりますが、本格派のサウスポー。

ストレート 常時140キロ台~MAX91マイル(145.6キロ)

 球速は常時140キロ台を刻み、岡崎球場のガンではMAX147キロを記録。私のスピードガンでも、コンスタントに88マイル(140.8ロ)・89マイル(142.4キロ)を刻み、MAXでは91マイル(145.6キロ)を記録するなど、確かなスピード能力があります。

 けして力を入れて速い球を投げようとしているのではなく、無理しなくてもこのぐらいの球速は安定して出せます。ボール自体物凄くピュッと切れるとか手元でグ~ンと伸びてはきませんが、ビシッとした勢いは感じます。

変化球 スライダー・カーブ・スクリュー

 変化球は、曲がりながら落ちるスライダーとカーブの中間球のようなスライダー。それに緩いカーブ、更にスクリューボールのようなシュート回転沈む変化球があり、ひと通りの球種は投げられます。

 ただし打者を仕留められるような、圧倒的な球種はストレートも含めてありません。それが、後一歩物足りない点ではないのでしょうか。

その他

 牽制やフィールディングは平均的ですが、クィックは1.1秒前後と基準以上。元々野球センスに優れたタイプというよりは、肉体の資質が勝ったタイプではないかと思います。

(投球のまとめ)

 淡々とボールを両サイドに散らせつつ、相手の打ち損じを誘う投球スタイル。まだ投球にメリハリを利かしたり、相手を仕留めきるような圧倒的なボールがありません。

 けして大きな欠点はないのですが、特筆すべき武器や投球センスを感じません。特に本当のコントロールがないので、相手に粘られたりすると勝負どころになると苦しくなります。

 恵まれた体格から、平均して速い球を投げられる左腕という魅力はありますが、現状はそれだけの選手であり、素材型の域を脱していません。それだけにこれからどんな色に染まってゆくのかは、今後にかかっているといったタイプです。



(投球フォーム)

 では今後、どんな可能性を秘めているのか、投球フォームから考えてみたいと思います。

<広がる可能性> ☆☆☆

 お尻は三塁側(左の投手の場合は)に落とせないわけではないのですが、まだ甘さの残る位置にあります。それほど体を捻り出すのに無理がある位置ではありませんが、カーブやフォークを捻り出すスペースがあるかと言われると微妙です。

 また「着地」までの時間もある程度稼げているので、体を捻り出す時間はそれなり。しかし腕を柔らかくしならせて投げるフォームではないので、カーブで緩急をつけたり、鋭く縦に落ちるようなフォークの修得には優れていないのではないかと考えます。そういった球種以外ならば自分のものにできる可能性はあるので、比較的球速のある小さな変化球を中心に、投球の幅を広げてゆくことになりそう。

<ボールの支配> ☆☆☆

 グラブは胸元に最後まで抱えられており、両サイドの投げ分けは安定。足の甲での押し付けも悪くないように見え、ボールはそれほど上吊りません。「球持ち」は平均的で、指先の感覚はあまり好いようには思いません。細かいコントロールまでは期待できませんが、おおよそは狙ったところに投げられる下地は出来ています。

<故障のリスク> ☆☆☆☆

 お尻の落としに甘さは残すものの、お尻を落とせないフォームでもなければ、カーブやフォークといった肘の負担になるような球種も多くは投げません。

 振り下ろす腕の角度にも無理はないので、肩への負担も少ないはず。それほど力投派でもないので、故障の可能性は低いのでは。

<実戦的な術> ☆☆☆☆

 「着地」までの粘りは平均的ですが、肩の可動域が柔らかく体の「開き」は見難くなっているはず。けして合わせやすいフォームではありませんし、独特のテイクバックでタイミングは狂わされます。

 ただし体に巻き付くような鋭い腕の振りではないので、もう少し腕を振って速球と変化球の見極め難しくしたい。ボールへの体重の乗せも発展途上であり、まだまだ打者の手元まで生きた球が行っていると言うほどではありません。

(投球フォームのまとめ)

 投球フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の観点で云えば、「開き」の遅さに特徴があります。「着地」や「球持ち」は平均的で、「体重移動」には課題を残しているのではないのでしょうか。

 コントロールを司どる動作に課題がないのと、故障のリスクが低いのが魅力です。まだまだ発展途上ではありますが、鍛えがいのある素材ではないのでしょうか。



(最後に)

 恵まれた投手体型から、140キロ台中盤を叩き出せるサウスポーという付加価値とまだ伸びそうな素材としての魅力は感じます。チームでも先発を任される機会が多く期待の高さも伺えますが、現状本当に強い相手だと誤魔化しがきかないなぁといった印象は否めません。

 残りの足りない部分をプロで補う、そういったことを期待しての指名ならば十分ありでしょう。現状の力は、ドラフト上位指名が噂される 岩貞 祐太(横浜商科大)ぐらいの投球内容でしょうし、素材としての魅力は、その上をゆくと評価します。まだ高卒3年目の世代だけに、チームが残留を要請するかもしれません。そういった問題がなければ、中位前後でなら指名される選手ではないのでしょうか。プロで云えば、村中 恭兵(ヤクルト)そういったタイプ。ただしチームに残留するよりは、ある程度のレベルまで来ているので、プロに託す方が本人のためには好いと思います。個人的には、充分に指名リストに載せられる選手だと評価します。


蔵の評価:☆☆


(2013年 都市対抗予選)