13sp-13






金平 将至(21歳・東海理化)投手 180/73 左/左 
 






                   「スカウトの眼の色変わる」





これといった目新しい選手がいなかった今年のスポニチ大会、そんなのんびりムードを一変させたのが、高卒4年目の左腕・金平 将至 の登場だった。都市対抗でも左腕から140キロ台のボールを投げ込んでいたが、秋の日本選手権予選ではMAX148キロまで記録。一躍ドラフト候補へと、評価急上昇中の注目株。バックネット裏に陣取っていた、12球団のスカウト達の目つき完全に変わった瞬間だった。

(投球内容)

 この投手、今時珍しいぐらい腕がカラダから離れてブンと外旋するフォーム。ただ左投手ということもあり、この癖のあるフォームは、かえって威圧感があって面白いのではないかと思える部分はある。

ストレート 常時140キロ前後~MAX145キロ

 私のスピードガンでは、MAX89マイル(142.4キロ)止まりだったが、神宮のガンではコンスタントに140キロ台~MAX145キロまで記録。その球質は球威型で、その球速どおりの勢いと力強さは感じられる。打者の空振りを誘うような球ではないが、バットを押し返す球威がある。

変化球 スライダー・シュート・カーブ

 最大の武器は、高岡第一時代からスカウトを魅了したスライダーの威力。この球でしっかりカウントを整えられるので、ストレートが暴れても投球を組み立てることができる。また右打者の外角には、沈むのではなく逃げて行く130キロ台中盤のシュートボール。それに、時々緩いカーブなども交えて来る。ただこのカーブは、あまり曲がり・精度とも高いとはいえない。

その他

 ランナーを背負うと、じっくりと時間をかけて投げ込んでくるので、走者としてはスタートが切りにくい。左投手ということもあり、常に一塁ランナーは見える格好。クィックも1.1秒ぐらいで投げ込めるので、盗塁を試みのは厳しいだろう。

 フィールディングも基準以上で、思ったよりも投球以外の部分もシッカリしている。走者を背負っても、冷静にある程度マウンドで考えてピッチングできていた。

(投球のまとめ)

 ストレートが暴れて、かなり荒っぽい投球に見えます。しかしスライダーでカウントが整えますし、ボールもある程度両サイドに散らせるので、四球で自滅するというタイプではありません。また変化球も真ん中~低めに集まるので、それほど痛手は食らいません。ストレートに威力はありますが、むしろスライダーの割合が多い配球。

 気になるのは、左のスリークオーターなのに、左打者に完全に見極められていたこと。けしてこれは、左打者にインコースが使えないわけでも、背中越しから来る感じの脅威を感じさせないわけではありません。では、何故か苦にされないのか? それは、左打者に対しては圧倒的にスライダーが多いから。例え自分の方に向かって来ると思っても、最後はストライクゾーンに来ることがわかっているので、打者は真ん中~外角に山を張ってれば打てるということを確信されてしまいます。特にスライダーはまだコントロールされているので好いのですが、ストレートは真ん中高め近辺にゆくので、その球を逃さず叩かれていました。

 投球フォームの関係上、中々左打者のインハイをストレートで突くのは難しいでしょう。しかし得意のはずのスライダーも、ストライクゾーンにしか来ません。これが、外角低めのボールゾーンに逃げて行くようなスライダーになれば、誰もがやすやすと見切ることはできないはず。現状変速左腕ではありますが、左腕という有難味は薄いというのは残念。



(投球フォーム)

 冒頭にも書いたように、ノーワインドアップから腕をブンと外旋させて投げるフォーム。当然指先まで力が伝えられないので、かなりアバウトな投球にはなりがち。ただ力任せなフォームの割に、意外にリラックスして投球できていたり、じっくり相手を見て投げ込むことは出来ています。

<広がる可能性> ☆☆

 引き上げた足を地面に向けて伸ばしているので、お尻は三塁側(左投手の場合)に落とせません。そのためカーブで緩急をつけたり、フォークのような縦に鋭く落ちる球種には適していません。実際カーブを投げますが、充分に曲がりきらなかったり、腕の振りが緩むなど実戦的とはいえず。

 「着地」のタイミングは、けして悪くはありません。腕の振りから上半身に頼ったフォームに見えますが、意外に下半身が使えているところはミソ。ただ腕の振りはサイドに近いぐらいで、横の変化が中心になるのは致し方ないでしょう。

<ボールの支配> ☆☆☆

 腕を外からブンと振って来るのですが、グラブを最後まで内に抱えられており、ある程度両サイドに投げ分けられます。むしろ足の甲での地面の押し付けが浅いので、速球は高めに集まりやすい。そのため高めに甘く入った速球を、打ち返される場面が目立ちます。

 また「球持ち」が非常に浅いので、指先の感覚はイマイチ。グラブの抱えである程度両サイドに投げ分けられますが、細かいコントロールまでは期待できません。それでも速球以上に多く投げて来るスライダーが、真ん中~低めに集まるのが救いです。

<故障のリスク> ☆☆☆

 お尻は落とせませんが、無理にカーブやフォーク系の球を多投しないので負担は小さいかと。また腕の振り下ろしには無理がないので、その点では問題が少なそう。ただ外から強引に腕を振って投げるので、当然肩への負担はそういった意味では少なくないでしょう。頑強そうな体つきではありますが、通常の投手よりは負担が大きいことは、普段から意識しておいた方がよさそうです。

<実戦的な術> ☆☆☆

 「着地」までの粘りは悪くなく、ボールの出どころも見難いはず。そういった意味では「開き」は遅い部類。

 腕の振りは体に絡んで来ませんが、ボールへの体重の乗せは思ったほど悪くありません。非常に重いボールを投げられるのは、球持ちの悪さから来る回転の悪い球質と、このウエートをある程度ボール乗せられるフォームによるところが大きいはず。ただ高めに浮けば、ただの棒球になりやすいことは注意しておくべきポイント。

(投球フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」に関しては、「着地」「体重移動」は平均的で、「開き」の遅さに特徴があります。その半面「球持ち」の悪さがあるので、制球がバラつく傾向にあります。

 良い面と悪い面が同居しているフォームなので、個性をどうピッチングに生かすかで、全然変わって来そう。現状は、どう今後転ぶのかは非常に判断に迷います。

(最後に)

 確かにスポニチ大会では、一番のサプライズと言うべき選手だったと思います。またボールの球威・威力と言う意味でも存在感は大会NO.1でした。

 そういった意味では、まだまだ若い左腕ということで、今後もスカウト達の注目を浴びてゆく存在だと思います。ただドラフト指名の可能性は高いと思いますが、何処まで即戦力として期待できるのか?といった観点で考えた場合、かなりリスキーな素材だとも思います。プロの育成力と本人が何処まで追求できるかに、かかっているのではないのでしょうか。結局都市対抗本戦での登板もなく、スポニチ大会以後投球は確認できずに終わってしまいました。スポニチ大会の時に、プロでやって行けるとまでは確信できなかったので、評価としては指名見送りということにさせて頂きたいと思います。

(2013年 スポニチ大会)