13ky-7
園部 聡(聖光学院)一塁 184/85 右/右 |
「変わっていない」 下級生の頃から何度となく見てきた選手ですが、好い意味でも悪い意味でも、この選手は変わっていないなぁという印象を受けます。すでに2年生の時点で、一つ上の世代の選手たちに混じっても全く違和感なくプレーしていた選手であり、そうかといって最終学年になって、凄みを増したという印象もありません。横ばいとは言わないまでも、極めてゆったりとした成長曲線を描いている、そんな印象を受けます。 守備面 ☆☆☆ 下級生の頃は、一塁の守備でも危なっかしかったのですが、今はそつなくこなせるまでになりました。けしてボールを捕球する時に、足をグッと伸ばして捕球したり、ボール捌きに抜群の動きを魅せるわけではありません。しかし身の丈にあったプレーをする選手で、こと一塁というポジションならばプロでも問題はないでしょう。 この選手の素晴らしいのは、パッと瞬時に的確な判断を下せるということ。結構一塁手というのは、投手とのベースカバーの微妙なやりとりや他のベースに送球する判断力が求められるので、そういった部分では冷静かつ的確な判断は評価できます。ただこれが、他のポジションへのコンバートと考えると、私は厳しいと考えます。スカウトにアピールするという意味では、三塁も練習していたと訊いていた時期もあり、その方がプロ入りには有利でしょう。しかし最終的それをやらなかったというのは、やはり一塁の方が合っており、そのままの方が評価を落とさないと判断したからだと思います。この選手は、あくまでも将来的にも一塁手として、考えるべきではないのでしょうか。 走塁面:☆☆ この選手は中々中途半端な打球が少ないので、一塁までの到達タイムが計測できません。数少ないものを集計すると、4.5秒~4.7秒ぐらいになります。これを左打者に換算すると、4.25秒~4.45秒ぐらいであり、プロに混ぜると中の下~下位の走力になります。彼のプレーを見ていても、盗塁への意識は薄く、足でアピールすることはありません。肩・走力というアピールポイントがないので、外野手としても厳しいのではないのでしょうか。 (打撃内容) 一番の売りは、勝負どころで高い集中力を発揮する勝負強さにあります。本質的には中距離打者であり、将来像としては、2割8分・15~20本 ぐらいでも、打点を多く稼ぐことで評価されるような選手だと考えるべきではないのでしょうか。 <構え> ☆☆☆ 前の足を軽く引いて、グリップを高めに添えます。腰の据わりはよく、構えたときのどっしり感は悪くありません。ただ選抜の時に比べると、センターカメラか見ても背番号が読み取れるようなクロス気味に構えるようになり、全体のバランスと両目で前を見据えるという意味では平凡になってしまいました。それでも打席での集中力は、いぜん高いものを感じます。 <仕掛け> 平均的な仕掛け この選手が長距離砲でないと言う一番の根拠は、この仕掛けのタイミングにあります。投手の重心が下がりきったあたりで始動する「平均的な仕掛け」を採用。これは、ある程度の対応力と長打力を兼ね備えた、中距離打者・ポイントゲッターが多く採用するスタイル。まさにこれは、彼のプレースタイルには合致しています。 <足の運び> ☆☆☆☆ 早めに足を引き上げて、ベース側にインステップ。始動が早く「間」が取れているので、速球でも変化球でも緩急の揺さぶりにはついて行けます。選抜までは、まっすぐ踏み出すことで、内角でも外角でも幅広く打ち返そうという意識があったのですが、夏はベース側に踏み込むことで外角の球を叩くことに主眼が置かれています。 ただ春はつま先が開いて踏み込んでいたのを、夏は閉じて踏み込んでおり、インパクトの際にもブレないでスイングできていました。強引な巻き込みは意識しないで、センター方向中心にはじき返すことを強く意識していたようです。夏の厳しいマークを想定し、外角の球でもしっかり対応することを考えたものと思われます。 <リストワーク> ☆☆☆☆ 打撃の準備である「トップ」を作るのは平均的で、極自然体です。バットの振り出しからインパクトまでの振り下ろしにもロスがないのですが、選抜同様にバットの先端であるヘッドが下がるので、打ち損じが少なくないように思います。ヘッドが下がると、ボールがバットに当たる面積が少なくなり、どうしてもフェアゾーンに落とせる確率が減ります。いい状態の選手のインパクトは、実にヘッドが立った感じでボールを捉え、その後綺麗に振り抜けています。 選抜ぐらいからの成長は、腕っ節の強さで打っていたスイングだったのを、大きな弧で振ることでバットのしなりを活かせるようになったこと。そしてフォロースルーを使えるようになり、ボールを遠くに運べるようになってきました。これにより、以前よりも打球が上がるようになったと考えられます。 <軸> ☆☆☆ 足の上げ下げが大きくても、頭があまり動かないのが彼の良さでした。しかしこの夏は、少し上下動が激しく見えました。将来的には、もう少し動きを小さくしたシンプルなスイングに移行すると考えられます。 体の開きは我慢でき、軸足は地面から真っ直ぐ伸びて綺麗に回転できています。比較的、調子の波が少ない打者だと考えられます。 (打撃のまとめ) 春の方が良かった部分もあるのですが、いろいろ試行錯誤して取り組んでいるのが伺えます。2歩下がって3歩進むみたいな感じですが、長い目でみれば少しずつ成長を遂げているのでしょう。 上のレベルでも通用するヘッドスピードとスイングの強さはありますし、バットのしなりやフォロースルーなどの生かし方は、木製バットでより生きると思います。そういった意味では、木製プロへの対応には苦労しないのではないかと思います。 難しい球を捉える天才肌というよりは、打てる球を逃さない「集中力」が売り。強打者ですが、それほど大きな穴がなく粗さがないのが魅力でしょうか。あとは、ヘッドが下がらないことと、もう少し右方向への打球も増えると確実性が増すと考えられます。 (最後に) この選手は、打席に入るときでも、足場を入念に馴らすように強いこだわりを持って野球に取り組めています。高校生ですが、明確な目的意識を持ってプレーできる選手であり、高校特有の意識が何処にあるかわからないような選手ではありません。 図抜けた資質の選手だとは思いませんが、彼の生かし方を間違わなければ、一軍で通用する打撃を比較的短時間で身につけられると考えられます。あとは、入団するチームに彼が守るべきポジションがあるか、チャンスが転がっているかなどの運も大きいかと思います。他のポジションへの融通が難しい選手だけに、高い評価で指名されることはないと思います。それだけ各球団には、リストに残っているからという安易な指名はやめて、明確なビジョンを持った上でチームに迎えて欲しいと願います。とりえずリストに残っているから獲っておこうという安易な方法を、プロはとりがちなので。 蔵の評価:☆☆ (2013年夏 甲子園) |
園部 聡(聖光学院・3年)一塁 184/85 右/右 |
「打力は健在だった」 下級生の時から、甲子園で4割以上のアベレージを残し、全国レベルの打力があることを証明。高校通算45本を超えるホームランも記録しており、まさに 2013年の高校球界を代表する強打者であることは間違いない。そんな 園部 聡 が、一冬越えて甲子園に戻ってきた。 (選抜での活躍) 選抜緒戦の益田翔陽戦では、センター方向中心に3安打放ち、チームバッティングに徹して魅せた。技術があるのはわかったから、今度は豪快な打撃をと期待された鳴門戦では、センターバックスクリーンに特大の本塁打を叩きこむ。準々決勝で敗れたものの、この選抜でも4割以上の打率を残し、持ち前の打撃が健在であることを印象づけた。 (守備・走塁面) 今まで文句なし打球ばかりだったので、中々計測できなかった一塁走破タイム。この選抜では、塁間4.5秒強ぐらいのタイムが計測でき、これを左打者に換算すると 4.25秒強に相当する。高校生としては遅くないが、ドラフト候補としては中の下ぐらいになる。彼のタイムを2012年のドラフト指名された右打者のタイムで偏差値化すると、走塁偏差値は 41 になる。このことからも、プロで走力を売りにするのは正直厳しいだろう。ちなみに、新チーム結成以来の36試合で、僅か2盗塁。自ら盗塁を仕掛けるようなことは基本的になさそうだ。 一塁というポジション限定ならば、打球への反応、ボール捌きを見ていると上手い一塁手に見える。しかし秋の成績ではあるが、36試合で4失策。これをプロの1シーズン144試合に出場したと換算すれば、1シーズン16失策は一塁手としては、相当多い部類。 こう考えると、守備・走力に関しては、中の下~それ以下に位置しており、かなり割り引いて考えないといけないだろう。まして三塁なども練習しているが、スカウト達を納得させるだけの内容を夏までに示せるのかは疑問が残る。 (打撃内容) 新チーム結成以来の秋の成績は 36試合 112打席 9本 42打点 打率.411厘 となっている。まずこの成績を、プロの規定打席である446打席に換算して、この数字に当てはめてみると、大体どんな選手なのかイメージができてくる。 36本 167打点 を1シーズンで残す計算になる。個人的には、もう少し打球が上がらないタイプかなぁと思っていたのだが、けしてそんなことはなく、生粋の長距離打者と言えないまでも中長距離打者ぐらいのタイプである可能性が高い。更に勝負強さは抜群で、打席での集中力の高さが数字でも現れている。ちなみにこの方法で大阪桐蔭時代の中田翔(日ハム)を算出したら、1シーズンで100本以上のペースで本塁打を打つという、信じがたい数字を残していた。 (打撃フォーム) 昨夏と比べて、何かフォームに変化があるのか考えてみたい。 <構え> ☆☆☆☆ 前の足を軽く引いて、カカトを浮かして構えます。グリップは高めに添えられており、強打者らしいスタイル。腰の据わり具合・全体のバランスも優れ、昨夏よりも両目でしっかり前を見据えられるようになっていた。打席での集中力は相変わらずで、非常に理にも適った構えになっている。 <仕掛け> 平均的な仕掛け 投手の重心が下がりきったあたりで始動する「平均的な仕掛け」を採用。この仕掛けは、ある程度の対応力と長打力をバランス良く兼ね備えた中距離打者やポイントゲッターが多く採用する仕掛け。この部分は、昨夏から変わっていない。勝負強さを売りにする、彼らしい仕掛け。 <足の運び> ☆☆☆☆ 足を引き上げて、まわし込んで踏み込んできます。始動~着地までの「間」をある程度取れるので、速球でも変化球でもある程度対応しやすい打ち方。 昨夏からの変化は、ベース側にしっかりインステップしていた踏み込みを真っ直ぐにし、内角でも外角でも同じように捌きやすくした点。相変わらず踏み込んだ足元はブレないので、外角や低めにも喰らいつくことができます。 踏み込みこそフラットしていますが、大きくは変えていないように見えます。 <リストワーク> ☆☆☆ 打撃の準備である「トップ」を作るのは平均的で、特に問題は感じません。バットは上からロスなく振り出されているのですが、昨夏よりもバットの先端であるヘッドが下がってしまっており、少し状態としては悪かったのではないかと思います。 昨夏は、バットのしなりやフォロースルーを生かすようなスイングではなかったので、あまり打球が上がる感じがしませんでした。しかし昨夏よりは、バットのしなりとフォロースルーが少し使えてきたので、打球が上がるようになってきたのかなという印象は受けます。 <軸> ☆☆☆☆ 頭の動きは少なめで、目線は安定している。踏み込んだ足元もブレないのですが、少しこのセンバツでは腰が早く逃げるのが気になりました。軸足は地面から真っ直ぐ伸びており、調子の波が少ないタイプだと思います。 (打撃のまとめ) 強打者ですが、ボールを捉える感覚は基準以上。この選手は、強打者故の脆さや粗さみたいなものは感じません。甘い球を逃さない「鋭さ」も持っておりますし、打球の強さも基準以上。こと打撃に関しては、大きな欠点が見当たりませんでした。 ただヘッドが下がり気味だったり、腰の逃げが早かったところをみると、センバツは状態は良くなかったのではないかと推測します。大きくフォームはいじっていませんが、細かい部分では努力の跡は感じられます。 (最後に) 良い意味でも悪い意味でも、昨年から変わらず高いレベルを維持出来ていると思います。ただ目に見えて凄みを増したとか技量が備わった印象もありません。 守備・走塁に関してはアピール度が薄いので、一塁手でもこういった選手が欲しいだという、明確な意志がのある団ならば充分リストアップに値する選手だと思います。個人的には高校生でありながら意識の高さを感じる選手でもあり、センバツの時点で指名リストに入れたいと思います。夏には更に凄みを増して、大舞台に戻って来ることを期待します。今のプロ野球では、生粋の飛距離は助っ人に任せておいて、こういった勝負強い打者が日本人には求められているのではないのでしょうか。 蔵の評価:☆☆ (2013年 センバツ) |
園部 聡(聖光学院2年)内野 183/84 右/右 |
「良い選手だがスラッガーでは」 甲子園に出場した4試合では打率.462厘と、すでに下級生ながら全国級の打力があることを証明してきた 園部 聡 。高校通算30本近い本塁打を放っているが、私は彼は長距離打者ではないと思っている。 (守備・走塁面) この選手は中途半端な打撃をしないので、今まで何度となく見てきたが、未だに塁間を計測できたことがない。ただ昨夏の福島予選6試合で、盗塁は1個。その数字が示す通り、走力でアピールするプレースタイルではないことは間違いないだろう。 選抜の頃は、一塁の守備もイマイチでけして上手い選手ではありませんでした。しかし春~夏にかけて、一塁手としての安定感は大幅に向上。今は、ソツなくこなせるまでに上達しています。また新チームからは、三塁の練習もしているという話もあり、今春のプレーをみるのが、今からとっても楽しみ。三塁あたりも無難にこなせるレベルがあれば、いっきに評価される可能性は広がります。 ただいずれにしても現時点では、打撃でアピールしてナンボといった選手です。 (打撃内容) 打球は、右にも左にも打ち返せる広角打者。この選手はスラッガーというよりは、勝負強さを売りにする中距離ヒッターといったタイプだと思います。 <構え> ☆☆☆☆ ほぼスクエアスタンスで足を揃え、グリップは高めに添えます。腰の据わり具合・全体のバランスは良いのですが、両目で前を見据える姿勢は並ぐらいでしょうか。ただ何より打席での集中力が高いのが、この選手の最大の魅力です。 <仕掛け> 平均的な仕掛け 投手の重心が下がりきったあたりで始動する「平均的な仕掛け」を採用。この仕掛けは、ある程度の対応力と長打力をバランス良く兼ね備えた中距離打者やポイントゲッターが多く採用する仕掛け。まさに彼のプレースタイルと、見事に合致していると言える。 <足の運び> ☆☆☆☆ 始動~着地までの「間」はある程度取れているので、速球でも変化球でも合わせやすいはず。強打者らしく、ベース側にインステップし、強く外角の球を叩くことを意識。踏み込んだ足元も、インパクトの際にブレないでスイング。そのため外角の厳しい球や、低めの球にも喰らいつくことができます。 <リストワーク> ☆☆☆ 打撃の準備である「トップ」の形は早く作れており、速い球にも振り遅れません。バットを振り出すときに、けしてインサイドアウトの最短距離で出て来るタイプではありませんが、大きなロスは感じません。そう感じさせないのは、バットの先端であるヘッドが下がらないようにスイング出来ているから。 ただバットのしなりを生かすような大きなスイングや、フォロースルーを上手く使ってボールを運ぶような技術は感じません。どちらかというと、腕力が強く強烈なヘッドスピードで結果を残してきた選手であり、あまり打球は上がらないタイプではないかと思います。二塁打・三塁打などの長打は出ても、オーバーフェンスを量産するようには思えません。 <軸> ☆☆☆☆ 足を結構引き上げても、頭が大きく動かないバランスの良さがあります。そのため、目線も大きくは動きません。足元もブレませんし、軸足も安定しているので打撃の波も少ないのでしょう。 (打撃のまとめ) 大型の強打者にありがちな粗っぽさがなく、技術的にもシッカリしたものを持っています。それ以上に高い集中力があり、自分の打てる球を捉え結果に結びつけることが出来ています。 身体に力があり、スイングの強さ・ヘッドスピードも確かなので、その点も基準をクリアしています。ボールを見る目、甘い球を逃さないセンス・強い身体と、打者として必要な要素が揃っています。 (最後に) 最終学年で結果を求めるあまりに、打撃を崩さないことを祈ります。あくまでも自分は、ヒットの延長線上にホームランがあるだという意識で、この選手の場合は良いように思います。そこを、無理にホームラン狙いに走ると、打撃を崩す恐れがあります。 守備では上手くはなくてもいいので、三塁を無難にこなせることができると、指名される可能性がグッと増しそう。意識が高い選手なので、そういった課題にも向き合って行ける選手だと思います。恐らく選抜にも選ばれるでしょうから、足元を見据えたプレーを今年も魅せてくれることを期待しています。そうすれば自ずと、プロへの扉は開かれるでしょう。 (2012年 夏) |