13ky-5





榎本 和輝(京都翔英)投手の選抜寸評へ








榎本 和輝(京都翔英2年)投手 181/74 右/右 





                       「思った程ではなかった」





 神宮大会前から、関西では大変話題になったいた強打者。一年夏から京都大会で暴れ回り、「スーパー1年生」と早くから注目されてきた。腕っぷしの強さを生かした強打は、丁度一年前の 高橋 大樹(龍谷大平安-広島1位)のような活躍を期待したが、そこまでのインパクトは我々に残さなかった。


(この日の榎本は)

神宮大会初戦・北照高校戦では

一打席目 右中間にツーベース
二打席目 スクリューボール空振り三振
三打席目 スクリューボール見逃し三振
四打席目 レフトフライ

で終わっている。特に北照のサウスポー 大串 和弥 の逃げながら外角に沈むスクリューボールに、十分対応することができない。

(守備・走塁面)

残念ながら、走塁タイムは計測できず。右中間へのツーベースの走塁をみると、極端に足を売りにするほど速いとか、逆に遅いとかいう印象はない。現状遅くはないのだろうが、足を武器にするということはなさそう。

牽制の動きもまずまずで、クィックも1.15~1.25秒ぐらいでまとめられており平均的。特別野球センスを感じさせる身のこなしではないが、投球以外の部分も基準レベルぐらいはありそう。ちなみに投手として135キロ前後はコンスタントに投げられるので、地肩も中の上レベルは期待できるだろう。野手ならば、三塁か外野手あたりを期待したい。





(打撃フォーム)


 打撃に柔軟性は感じませんが、右にも左に打球を飛ばせる選手。引き手が強く、典型的な強打者タイプといった感じでした。

<構え> 
☆☆☆☆

 前足を軽く引いて、グリップは高く捕手側に引いて添えられています。腰の座り具合・両目で前を見据える姿勢・全体のバランスなども悪くありません。打席では適度に身体を揺らぎ、自分のリズムで打席に入れています。何より、雰囲気を持っているところが、この選手の最大の魅力。

<仕掛け> 早めの仕掛け

 投手の重心が下がってくる時に始動する、アベレージ打者が多く採用する仕掛け。見た目のゴツさと違い、仕掛けの観点からみると、対応力を重視した打者であることがわかります。

<足の運び> 
☆☆☆☆

 始動~着地までの「間」は取れているので、速球でも変化球でも合わせやすい打ち方です。ただそれほど「着地」のタイミングを図っている感じはなく、対応力が高いタイプなのかは微妙。それでもスピードの変化、コースに対しても、打てるポイントは少なくありません。

 ベースから離れた方向に踏み出す、アウトステップを採用。元来は、ボールを引っ張って巻き込みたいタイプなのでしょう。しかし踏み込んだ足元は、インパクトの際にブレません。そのため外角や低めの球にも食らいつけますし、実際右中間の方にも打球を飛ばします。 

<リストワーク> 
☆☆☆

 打撃の準備である、「トップ」の形を作るのは平均的。バットの振り出しは、思ったほど遠回りではなく、ミートポイントまで大きなロスは感じません。彼の持ち味は、ボールを捉えてから大きな弧を描き、フォロースルーも高いところまで引き上げて、ボールを遠くに運ぶこと。これが、引き手の強いスイングに見えます。

 若干ヘッドスピードは鈍いので、こちらが思い描いていたレベルには、まだ達していない印象を受けます。ミートセンスなどにも、特別なものは感じられません。

<軸> 
☆☆☆☆

 頭の動きは平均的で、身体の開きは我慢出来ています。軸足も地面からまっすぐ伸びており、軸を起点にスイング出来ています。


(打撃フォームのまとめ)


 体幹に力があるので、打球は力強いものの、スイング自体のキレには欠ける印象があります。技術的には想像以上にシッカリしていましたが、ボールを捉える感覚や良い球を捉えて離さない嗅覚みたいなものに非凡なものは感じませんでした。現状は、まだまだ発展途上の選手なのだと思います。

(野球への意識)

 打席では、大物感がありリラックスして構えられています。ネクストでも合間にはシッカリ素振りを入れたり、前足のつま先が開かない意識を持ちながらスイング。ただ打席に入るときにはラインを踏むような大雑把な性格の選手ですし、足場の馴らしからも打撃へのこだわりは感じません。まだまだ試合への入り方などを見ていると、集中しきれていない印象を受けました。初の全国大会の舞台に、浮き足だっていたのかもしれません。大舞台を経験し場慣れし、彼本来のプレーを選抜では期待します。





(最後に)


 前評判では、世代屈指の強打者ぶりを期待していただけに、どうしても期待が大きかった分、物足りない印象は否めませんでした。

 心技体、すべての部分でまだ発展途上の選手。当然ドラフト候補として選抜では注目致しますが、その後追いかけるほどの素材かどうかは、選抜の内容次第といった印象。強打者タイプですが、スラッガーとしての可能性があるのか、単なる打球の速い強打者タイプなのかも含めて、見極めみたいところ。現状は、一ドラフト候補の一人なのかなぁといった印象に留まりました。


(2012年 神宮大会)