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松井 聖(ヤクルト)捕手のルーキー回顧へ







松井 聖(25歳・BC信濃)捕手 176/78 右/左 (東邦-中部大中退-香川OG) 





 「打撃には良いものがある」





 東邦高校の下級生時代から、将来を嘱望されてきた 松井 聖 。しかし大学を中退し、独立リーグをめぐる中でようやくプロ入りを実現した。東邦でも下級生の頃から注目されていたのだが、最終学年になって大きく伸びてきた 関根 大気(DeNA)にプロ入りを先越されてしまった。しかし改めてみると、やはり打撃には非凡なものを持った選手だと実感する。


(ディフェンス面)

 結構、気持ちを全面に出してくるプレースタイルです。ミットを示し、地面に着けることなくキャッチング。特にボールまわしとかにセンスは感じませんが、投手には軽く返球してきます。高校時代も指摘したのですが、腕だけを伸ばし身体でボールを止めにゆこうという姿勢があまり感じられないのは、今も時々そういった風に見えます。きっとこの選手は、動きの良い選手なので瞬時に反応できる自信がそういったプレーに繋がっているのかもしれません。ボールの押し込みやグラブ捌きも並で、そのへんは高校当時と印象は変わっていませんでした。

 高校時代にしっかりしたタイムが計測できなかったのですが、独立では二塁までの送球を何度も確認。捕ってから素早く送球できる選手で、1.8秒台中盤をコンスタントに記録し、地肩は基準以上だと思います。ただしコントロールの精度など含めると、平均的な捕手なのかもしれません。育成で獲得した捕手なので多くは望めませんが、捕手としては控えレベル、むしろ非凡な打力を活かして将来コンバートされるかもしれません。


(打撃内容)

 パンチ力はありますが、基本的に右に左へと強い打球で打ち返す対応力のある打撃が魅力です。ちなみに高校時代に計測したタイムですが、左打席から4.25秒前後の一塁到達タイムだったので、ドラフト指名される左打者としては平均以下のタイム。実際のところもう少し早いタイムは出せそうな感じですが、足でガンガン揺さぶるタイプではないように思えます。

<構え> ☆☆☆★ 3.5

 前の足を軽く引いて、グリップの高さは平均的。腰の据わり具合、両眼で前を見据える姿勢は良いのだが、幾分お尻を引き過ぎで、全体のバランスとしては並だろうか。それでも打席ではボールに食らいつく姿勢と、高い集中力や気持ちの強さが伝わってくる。

<仕掛け> 早め

 投手の重心が沈み始めて~底のあたりで動き出す、「早め」~「平均」的なタイミングで始動してくる打者です。アベレージヒッター~中距離打者に多く見られる始動であり、彼のプレースタイルとも合致している感じがします。

<足の運び> ☆☆☆★ 3.5

 足を引き上げ回し込み、真っ直ぐ踏み出してきます。始動~着地までの「間」は取れており、速球でも変化球でもスピードの変化には対応しやすいはず。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でも打ちたいタイプだと考えられる。

 高校時代も指摘したのだが、インパクトの際に少し足元がブレて止まっていないことが多い。特にそれが打撃に影響しているほどには見えないが、逃げてゆく球や低めの球には開きが充分我慢しきれない危険性をはらんでいる。

<リストワーク> ☆☆☆☆ 4.0

 打撃の準備である「トップ」の形を作るのは自然体で、力み無くボールを呼び込めている。バットの振り出しも良く、ロス無くインパクトまで振り下ろすことができている。けしてインサイドアウトで出てくるタイプではなく、ある程度バットのしなりを活かし大きな弧を描いて振り切ってくる。

インパクトの際にもヘッドの下がりも気にならないので、広い面でボールを捉えることができている。19年・20年シーズンでは、6本・4本とホームランを打っており、時々スタンドインさせるパンチ力は持っている。

<軸> ☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げはそれなりで、目線の上下動も平均的。時々インパクトの際に足元が動いて開きが充分でなかったり、エネルギーロスに繋がっている可能性は感じられる。しかし軸足の形までは崩れておらず、内モモの筋肉にも強さが感じられ、強い打球を生み出す原動力になっている。

(打撃のまとめ)

 上半身の強い振りに対し、下半身が負け気味なところはあるが、大きく打撃に影響しているというほどではないように思える。特にスイング軌道が理想的で、それでいてヘッドスピードや打球の強さもあり、すでに一定水準の打力は身につけていると考えられる。そのためファームレベルならば、すぐに入って行けるレベルにはあるのではないのだろうか。問題は、完成度が高いぶん、プロ入り後打撃をどのぐらい広げられるかに懸かっている。


(最後に)

 捕手としては、チームのレギュラーという将来像は見えてこない。打力のある控え捕手として位置づけられるのか? 打力を活かしてコンバートされるかは打撃の内容次第かと。元々東邦の下級生時代は、外野手としてスタートした選手だったと記憶している。

 それでも打撃レベルは非常に高いし、気持ちが伝わってくるナイスガイなので、育成でも一軍に絡んでくるような選手になっても不思議ではない。しぶとくプロの世界で、長く生き残って行ける選手になれるかもしれない。


蔵の評価: (下位指名級)


(2020年 BCリーグ戦) 









松井 聖(東邦・3年)捕手 171/68 右/左  





                    「天才肌だったのに・・・」





 一年夏の大会で初めて 松井 聖 を見た時は、イチローテイストの天才肌でどのぐらいの選手になるのかと期待していた。しかし同じ小柄な 森 友哉 (大阪桐蔭)捕手が西武にドラフト1位指名されたのとは対照的に、東海地区の大学に進学するという。もし松井が、下級生の時に全国の舞台を経験していたら、また違う野球人生が開けていたかもしれない。甲子園とは、それだけ選手たちにとって大きな意味を持つのだ。


(ディフェンス面)

 1年夏に見た時は、まだ外野手だったと記憶しています。捕手としては、ミットをしっかり示し、そのグラブは下に下げません。しかしキャッチングの際に身体で止めに行こうとせず、小手先だけで対処してしまうので、どうしてもパスボールが多くなちがち。

 非常にフットワークも機敏な選手だけに、そこからでも反応して捕れてしまうのだろうという意識が強いのかもしれない。ボールの押し込みやグラブ捌きも並で、捕手としては正直あまり魅力を感じません。

 残念ながら、二塁までのタイムは計測できず。バント処理の際に二塁への返球があったのですが、球筋は強く中の上ぐらいの地肩はあるのかなとは思いました。1年夏に見た時は、外野手としては平均的な肩だと評価した選手です。

 大学後も捕手を続けるかわかりませんが、捕手としては可も不可もなしと言った感じ。森 友哉 とはこの辺が大きな差ではないのでしょうか。


(打撃内容)

 身体は小さいですが、スイングの弧は大きく、フォロースルーも使えるなど中距離打者のイメージはあります。何より素晴らしいのは、対応力の高さにあったのですが。一塁までの塁間は、4.25秒強と左の好打者としては少し物足りません。

<構え> 
☆☆☆☆

 前足をしっかり引いた左オープンスタンスで、グリップは高めに。腰の据わり具合・全体のバランス・両目で前を見据える姿勢もまずまずで、懐深くボールを呼び込めるのが魅力。

<仕掛け> 早めの仕掛け

 投手の重心が下がる時に始動する「早めの仕掛け」を採用するように、典型的な対応力重視のアベレージヒッターの始動です。

<足の運び> 
☆☆☆

 早めに足を引き上げまわしこんで来るように、速球でも変化球でも緩急の対応には幅広く対応。左の好打者らしく、アウトステップを採用する、内角を強く意識したスタイル。残念なのは、踏み込んだ足元がインパクトの際にブレてしまい、エネルギーをロスしてしまっている点。もう少し、内にエネルギー貯められると良いのですが。

<リストワーク> 
☆☆☆

 打撃の準備である「トップ」を作るのは自然体で、バットの振り出しもインサイド・アウトの最短距離ではありませんが、ロスは感じません。大きな弧のスイングで、フォローするーまで綺麗に振りぬきます。

<軸> 
☆☆☆

 足の上げ下げは静かで、頭は殆ど動きません。体の開きが充分我慢出来ていないのが残念ですが、軸足には好打者らしく粘り強さを感じます。

(打撃のまとめ)

 残念ながら、一年の頃から正直伸びていないなと感じます。ボールを捉えるセンスは相変わらず非凡なものを感じますが、下半身がブレてしまうなど残念なところも。捕手という難しいポジションで、打撃にそれほど神経を傾けられなかったかもしれません。


(最後に)

 体が小さい上に、肩・走力に特別なものがないだけに、ドラフト候補として浮上しなかったのは当然でしょう。しかしボールを捉えるセンスには相変わらず良いものを持っているので、今一度打撃に意識を傾けて欲しいと思います。

 中央の大学ではありませんが、大学選手権などにも出場する地方の有力校。志しを高く持って、大学・社会人野球と息の長い活躍になることを期待します。


(2013年夏・愛知大会) 







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