「身体能力は極めて高いが」
前回は投手としてのレポートをお送りしたが、今回は野手・岸里 亮佑 について考えてみたい。高校先輩である大谷翔平(日ハム)同様に、投打に非凡な才能があると評判の選手です。
(第一印象)
大型選手らしく、動き出しの反応がワンテンポ遅い気がします。守備にしても走塁にしても、このワンテンポの鈍さがプレーに影響しています。
(守備・走塁面)
送りバントするような、あらかじめ走りだすのがわかっている時は、塁間3.9秒ぐらいで走り抜けるなど、50メートル5.9秒と言われる速さを実感させます。しかし普段の走塁を見ている限り、最初の一歩目は遅く、それほど際立つタイムは出ません。また打球も転がすような打球は少ないので、計測できる機会も極めて少ないと言えるでしょう。それでも岩手大会6試合で4盗塁と、動ける身体能力があるのは確か。将来的には、走塁技術を身につければ、足でアピールできる選手になれるかもしれません。
打球への反応なども、ワンテンポ遅いように思います。キャッチングは平均レベルありますし、動き出してからはそれなりではあるのですが。普段のポジションニングも、深すぎる気がします。高校生としては平均レベルの守備力は有りますが、プロなど上のレベルでは、まだまだ鍛えないと厳しいのではないのでしょうか。地肩も140キロ台を連発できるはずなのに、スローイングは思ったほど強くありませんし、返球のコントロールも安定していません。現状は、プロなら左翼手ならばといった感じです。
(打撃内容)
安楽 智大(済美)の豪速球にも対応できるように、スピードボールへの反応は非凡。しかし低めのボールになる球の見極めができず、現状そこを我慢することができません。まだまだ捌ける球は、極限られているように見えます。
<構え> ☆☆☆☆☆
両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップの高さは平均的。腰の据わり・両目で前を見据える姿勢・全体のバランスなどもよく、懐深く構えられています。構えとしては集中力も感じられ、理想的ではないのでしょうか。
<仕掛け> 平均的
投手の重心が下がりきったところで始動するので、平均的なタイミングと言えます。ある程度の対応力と長打力を兼ね備えた、中距離打者が多く採用するスタイル。
<下半身> ☆☆☆☆
始動~着地までの「間」も取れており、速球にも変化球にある程度合わせられるはず。あとは、ボール球を見極める「眼」を養いたいところ。ベース側にインステップして、インパクトの際にもブレません。そのため外角や低めの球にも、喰らいつくことができます。
<上半身> ☆☆☆☆
打撃の準備である「トップ」を作るのも自然体ですし、スイング軌道にも悪い癖がありません。けしてインサイド・アウトの最短距離で振りぬくわけではないのですが、綺麗な弧を描き振り抜けています。少し内角を捌く時に、懐にスペースが欲しいタイプ。
<軸> ☆☆☆☆
足の上げ下げが小さいので、目線は殆ど動きません。体の開きも我慢出来ていますし、軸足にも強さを感じます。対応力の高いアベレージヒッターというよりは、野手と野手の間を鋭く抜けて強打者としての色彩が強いです。
(最後に)
走攻守すべてに持っているポテンシャルは、まさにプロ級。しかしまだまだ走力・守備力に関しては身体能力に頼ったプレーで技術的な課題が少なくありません。打撃も低めの変化球を見極められない欠点があり、まずボール球を振らない選球眼を身につける必要があります。そこが出来てはじめて、他の打撃が広がってゆくのではないのでしょうか。
素材的な魅力があるので、プロのスカウトが好むタイプだとは思います。しかし私はまだプロ入りの「旬」の時期ではなく、いまプロに入るのが好いとは思いません。ただこういうポテンシャルの高い選手を育てるのは、アマよりもプロの方が上手いことが多いのも確か。少し長い目で見てくれる環境に、進まれることを期待します。
(2013年夏 甲子園)
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