13ky-27




渡辺 諒(東海大甲府)遊撃 178/78 右/右 





                 「試合勘が素晴らしい」





1年生の頃は、2学年上の 高橋 周平(中日1位)に注目が集まる中、伸び伸びと本塁打を連発していた スーパー1年生として活躍。周平が卒業すると、イケイケの性格で結果を残し続けた 渡辺 諒 。そして最後の夏には甲子園に来られなかったものの、U-18のワールドカップメンバーに招集され、世代屈指の内野手であることを証明してみせた。

 U-18のワールドカップでは、予選リーグの頃はまだ調子も上がらずセンターから右方向へのつなぎのバッティングが目立った。しかし徐々に木製バットへの対応・世界の雰囲気に馴れだすと、長打を放つようになり強打者としての片鱗を見せ始める。終わってみれば、森 友哉 (大阪桐蔭)に次ぐ成績を、全日本でも示して魅せた。

 真摯に野球に打ち込む優等生タイプの高橋周平に対し、渡辺諒はイケイケで向かって行くヤンチャな選手。しかし状況に応じて右方向にも打ち返すようなバッティングを見せるかとおもいきや、引っ張り込んで豪快にスタンドインの打球も少なくない。1年生の頃のスラッガー的な打撃から、広角に打ち返す中距離打者といった様相が鮮明になった最終学年。私はプロで大成するのは、ちょっとやそっとじゃ落ち込まない、イケイケの 渡辺 諒 のような選手だと思っている。





走塁面:☆☆☆☆

 監督も語る通り、身体能力は明らかに 渡辺 諒の方が、高橋周平より優っている。塁間 4.5秒ぐらいのタイム(左打者換算で4.25秒)ぐらいでしか計測できなかったが、実戦になると積極的な走塁が目立つ。実際には、プロに混ぜても俊足の部類であり、打撃で数字が残るようになれば、盗塁の数も比例して増えて行くだろう。この選手走力自体もあるのですが、それ以上に走塁に必要な勇気と積極性が光る。守備・走塁において、迷いがなく反応できるところが素晴らしい。


守備面:☆☆☆☆

 遊撃守備も、最終学年になりワンランク向上致しました。特に凄くキャッチングが上手いわけではないのですが、打球への一歩目の判断に迷いがなく、鋭い動きが見られます。それでいて視野が広く春季関東大会の試合では1,2塁間でランナーを挟んだ場面で走者を追いかけながら、三塁でランナーを刺したり、外野からの返球を深いところで中継し、ホームで刺すなど光る野球センスを魅せます。プロのレギュラーとして遊撃を任せられるほどの安定感があるかは微妙だが、強肩を生かした守備で魅了することができる選手。身体能力が高いので、プロでもセンターラインを担える身体能力があります。最後の夏は、投手としてもマウンドに上がり、140キロ台のボールをバシバシ投げ込んでいたといいます。

(打撃内容)

 追い込まれるまでは、下級生の時に魅せていた引っ張って巻き込む打撃を重視します。ホームランが出るときも、上手く巻き込めた時が中心。そして追い込まれると、センターから右方向を意識し、広角に打ち返す打撃に切り替えます。こういった状況に応じたバッティングができる技量があり、調子が良いと固め打ちができる爆発力もあります。この選手はソツなく結果を残すというだけではなく、いったん火がつくと止められなくなる爆発力があります。技量が高校生の中では抜けていたので、どの試合でも結果を残すことが出来ていました。プロでも一年目から、ファームではレギュラーを担うことが期待されます。


<構え> ☆☆☆☆

 前足を軽く引いて、グリップは高めに添えます。背筋を伸ばし、全体バランス・両目で前を見据える姿勢も良く、余裕を持って立てているのが良い所。体はそれほど大きくないので威圧感はありませんが、余裕の中にも適度な緊張感を持てているところが素晴らしい。

<仕掛け> 平均的

 始動は「平均」~「遅め」ぐらいのタイミングで、昨年よりも始動の遅さは感じなくなりました。手元まで引きつけて巻き込むだけでなく、ポイントを遅らせて右方向への打撃が目立ちます。

 この選手は、広角に打てる中距離ヒッター。自分の中でも、そういった割り切りができるようになったのだと思います。

<足の運び> ☆☆☆☆

 非常に足の動きがシンプルになり、何かプロの打者を見ているよう。静かに軽く足を引き上げ、ベース側に踏み込んできます。昨年までは引っ張りが目立っていたので、足が地面から離れるのが早かった。しかし今は、踏み込んだ足元がブレないで我慢でき、外角の球をきっちりセンターから右方向に打ち返します。

 そのため昨年よりも一発屋のイメージは薄くなりましたが、どんな場面でも対応できる技術を身につけられるようになりました。なんだかプレーが、非常に大人びた印象があります。

<リストワーク> ☆☆☆☆

 打撃の準備段階である「トップ」を作るのが、少し遅れる時があります。そのためU-18のワールドカップでも、球威・球速に序盤戦は立ち遅れていました。しかしそれを、大会期間中に修正できる能力は素晴らしい。

 バットの振り出しも、けしてインサイド・アウトのような打者ではありません。それでいて大きな孤を描いたり、フォロースルーを使うわけではないのですが、ボールは飛んで行きます。その辺は、ボールを仕留めるときのインパクトの押し込みと、ヘッドスピードの速さに秘密があります。けして乗せて運ぶ打者ではないので、右方向への打撃は、それほど長打にはなりません。完全に引っ張り込んだ時に、長打が生まれるタイプ。

<軸> ☆☆☆☆

 足の上げ下げが静かで、目線は上下に動きません。体の開きも我慢でき、軸足も地面から真っ直ぐ伸びます。軸を起点に、綺麗に回転出来ています。

(打撃のまとめ)

 非常に動作がシンプルで無駄な動きがなくなり、それでいてコンパクトであり、甘い球を一発で仕留められる「鋭さ」も持ちあわせています。高校生なのに、こんなプロで何年もやっているような選手のスイングを観るのは久しぶり。

 元々持っている試合勘の良さがあり、何事にもめげない切り替えのきく性格、イケイケで打席に入れる思考回路など、まさにプロで野球をやるために生まれてきたような男だと思います。このぐらいの楽観的というか、いい意味での鈍感さがないと、プロの打者には向かないでしょう。





(最後に)

 攻守走において、どうしようもないポカも結構しそうです。しかしそれを補ってあまりある爆発力も秘めています。もうこういう選手は、あまりネチネチ言わず、伸び伸び育てられる環境ならば、自分で感覚を掴んで行くのではないのでしょうか。それでいて、かなり小賢しい頭の良さもあります。プロでもトップクラスの選手になれる選手だと評価しますし、2013年度のドラフト候補の中でも、私の心を最も捉えた選手でした。

蔵の評価:☆☆☆☆

(2013年 U-18ワールドカップ) 








渡辺 諒(東海大甲府2年)遊撃 178/75 右/右 
 




               「野球人としてのスケールは周平より上」





1年春から関東大会で存在感を示していた 渡辺 諒 。その圧倒的な破壊力を誇る打撃に加え、守備・走力を含めた総合力は、ドラフト1位で中日に入団した 高橋 周平 を凌ぐものがある。今回は、来年の目玉とも言える 渡辺 諒 について考えてみたい。





(守備・走塁面)

 一年生の頃は、三塁手でした。しかしこの春から、遊撃手に転向。ただショートを守るだけでなく、打球への一歩目の判断力の良さ・ハンドリング・スピード感などは、下手なりに丁寧にプレーしていた 高橋周平 とは対照的に、身体能力を生かしてダイナミックプレーを身上にしている。その割にミスも少なく、このまま順調に伸びたら、上のレベルでも遊撃手が務まるのではないかと思えるレベル達しつつある。

 今年になり、打順は1番に。今回計測した試合では、塁間 4.5秒前後(左打者換算で4.25秒前後)と平均的であったが、実際はもっと早いタイムを記録しても不思議ではない。塁に出ればすかさず盗塁を試みるなど、夏の山梨大会の5試合で、3盗塁を記録した。

 こと守備・走力という部分では、すでに3年時の高橋周平を、この選手は凌駕していると言っても過言ではないだろう。


(打撃内容)

 1年春の時は、ホームランを連発するなどイケイケの打者だった。しかし2年生になり、だいぶチームバッティングを意識。かなり長打だけでなく、率も意識したプレーに変わりつつある。元々は、お山の大将的な選手だったが、チームのバッティングを強く意識し雑な部分が薄まった。

<構え> 
☆☆☆☆

 前の足を軽く引いて、グリップの高さは平均的。腰の据わり具合・全体のバランス・両目で前を見据える姿勢も悪くない。余裕の中にも適度な緊張感が感じられる、程よい構えになっている。

<仕掛け> 遅めの仕掛け

 投手の重心が沈みきって、前に移動する段階で始動する「遅めの仕掛け」を採用。これは、典型的な長距離打者が採用する仕掛け。そのため対応力は上がっているが、根本的にな飛距離を意識したタイミングで始動している。

<足の運び> 
☆☆☆

 足を軽く引き上げ、回しこむ。始動~着地までの「間」は短いので、打てるタイミングは限られている。少しベース側に踏み込むのだが、踏み込んだ足元が地面から離れるのが早い。すなわち、引っ張る傾向が強いスイングだとわかる。打球も右中間などにも飛ばせるが、外角へ逃げて行く球、外角低めへの球は、少し弱いのではないのだろうか。現状は、打てる緩急・コースは、かなり限られていると考えられる。

<リストワーク> 
☆☆☆

 打撃の準備である「トップ」を作るのが、少し遅れがち。それでも全国レベルの投手相手でも、スピード負けすることはない。

 スイングは、けしてインサイドアウトと言うほどではない。またボールを捉えてからのスイングの弧の大きさやフォロースルーの使い方などは平均的。それでも非常にヘッドスピードが鋭いところは、特筆すべきポイントだろう。

<軸> 
☆☆☆

 頭はそれほど動かないので、目線のブレは小さめ。ただ踏み込んだ足元が、インパクトの際に地面から早く離れて「開き」は充分我慢できていない。軸足は、地面から力強く伸びている。

(打撃のまとめ)

 もう少し足元を盤石にして、右方向への打撃も重視したい。特にスイングでは、スラッガーの割りにはスイングの弧の大きさとフォロースルーの使い方が地味なのが残念。せっかく、仕掛け・内腿の強さなど、ボールを遠くに運べる資質があるだけに残念。


(最後に)

 現状、高橋周平よりも、守備・走力に関しては上を行く。しかし打撃に関しては、まだ周平の領域には達していない。ただ周平は中距離ヒッターであったこと、それも技術的に完成をしたのは、最終学年の夏だった。そう考えると、その高橋以上の資質があっても不思議ではない。

 不器用でも、愚直なまでに丁寧にプレーをすることを心がけ、バッティングを追求していった先輩。その背中を見てきた選手だけに、方向性さえ間違わなければ、高校NO.1スラッガーの称号は、自ずと転がって来るはず。思いっきり良さと打撃が小さくならないことを心がけ、自らのプレーの質を高めて行って頂きたい。それだけの期待に応えるだけのスケールが、この選手にはある。


(2012年 夏)