13ky-18
金子 一輝(神奈川・日大藤沢)遊撃 182/73 右/右 |
「やっぱり打撃が・・・」 今年の春季大会が終わったあたりから、にわかに 金子 一輝 にプロが注目しているという情報が流れ始めた。昨年も見ているはずだが、全くどんな選手か思い出せない。打撃が一定レベルないとドラフト候補としてみない私にとって、覚えていなかったのも当然であった。この夏のプレーを見ても、打撃の弱さは顕著だったのだから・・・。 (ディフェンス面) ☆☆☆☆ 彼の最大の売りは、180センチの体格を生かしたダイナミックな守備にある。特に球際でのボール捌きは見事であり、かつ非常に丁寧にボールを扱うことを心がけている。こと守備に関しては、上のレベルでも売りにして行ける可能性を持った素材だろう。 ただし見ていて気になった点が2つ。大型故に、あまり守備範囲が広くないように見える。また上のレベルのニ遊間に求めれるスピード感は感じれない。あともう一つは、無理な体勢からでもアウトにできる上手さがある反面、それほど地肩が強いようには見えないのだ。あくまでも自分が届く範囲のボールには上手さを発揮できるが、その範囲はあまり広くないのではないか? そんな疑問が残った。それでも高校生としては、A級のディフェンス力だろう。 (走塁面) ☆☆☆ チームでは4番を務めている関係上、あまり走力が求められない。それでも右打席から4.25~4.55秒前後で一塁まで到達しているところを見ると、走力も中の上レベルはあるのではないのだろうか。これを左打者に換算すると、4.0秒~4.3秒 前後に到達するタイム。通常塁間の目安となるのは、 3.9秒弱 プロで足を売りに出来るレベル 4.0秒前後 足を売りに出来るのかは走塁センスにもよるが、プロでも俊足の部類 4.2秒前後 スカウトが、プロの基準と判断するタイム 4.3秒以下 プロの基準以下となり、割り引いて考える の赤字のあたりの走力ではないかと考えられる。盗塁をバシバシ決められるようなセンスや能力があるかは微妙だが、基準以上の脚力はありそう。また一塁までの駆け抜けを見ると、最後まで全力で走り抜け、なんとかセーフになりたいという貪欲さは感じられる。 (打撃内容) 神奈川を代表する強豪校である日大藤沢において4番打者を務めるように、箸にも棒にもかからないといった程打力がないわけではない。特に外の球を捉える能力はそれなりで、むしろ左投手の内角に食い込んで来る球筋に、全く対応できなかったのが気になった。 <構え> ☆☆ 両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップの高さは平均的。両目で前を見据える姿勢は良いのだが、腰が上手く座らず構えがしっくり決まらない。そのため何か構えている段階から、弱々しさが見ていて伝わって来る。せっかく恵まれた体格をしているのだから、ビシッと決まる構えを身につけたい。 <仕掛け> 遅めの始動 投手の重心が下がりきって、少し前に移動する段階ぐらいで動き出しているように見える。これは「遅めの仕掛け」に属し、ボールを手元まで引きつけて叩くスタイル。通常は、手元まで引きつけて最大限のインパクトを伝える長距離打者か、ボールギリギリまで見定めてプレーする生粋の二番打者が多く採用する。彼の場合は、後者の2番打者としてのつなぎ役が適しているのかもしれない。 <足の運び> ☆☆☆ 足を軽く上げて、真っ直ぐ踏み出してきます。始動~着地までの「間」が取れていないので、打てるタイミングは限られます。あらかじめ狙い球を絞り、その球を逃さないだけの「鋭さ」が求められます。また真っ直ぐ踏み出すということは、内角でも外角でも捌きたいという幅の広いスタイル。これは狙い球を絞るというスタイルと何でも打ちたいとする矛盾する2つの動作を行なっており、中途半端に陥りやすいわけです。 踏み込んだ足元は、インパクトの際にブレません。そのため体の「開き」を我慢できており、外角の球や低めの球にもついて行けます。実際試合を見ていても、外角の球には素直にバットが出てきます。しかし内角の捌きには、課題を感じます。 <リストワーク> ☆☆☆ 打撃の準備である「トップ」を作るまでにも、遅れることなく自然体。バットの振り出しも悪くなく、バットの先端であるヘッドも下がっていないのでスイング軌道にロスは感じません。ただし外の球を捌くときにでも、一度腰が引ける癖があります。そのため外の球を強く、引っ張ったくことができません。それでいて内角の球も綺麗に振り抜けないなど、矛盾を抱えるスイングを続けています。 <軸> ☆☆☆ 足の上げ下げ小さいので、目線は上下に動きません。体の「開き」も我慢できていますが、軸足を起点には綺麗に回転出来ていません。動作が矛盾しており、メカニズム的にはおかしなことになっています。 (打撃のまとめ) ボールを捉える根本センスが悪いとは思わないのですが、スイングのメカニズムがおかしいので、綺麗にボールを捌けない欠点があります。こういった動作を、一つ一つヒモ解いて改善して行くしかないでしょう。 また上のレベルを意識するのには、スイング自体が弱いのも気になります。少なくてもスイングに関しては、まだプロのそれではありません。 (最後に) これだけの体格をしながら、高校生の遊撃手として守れるディフェンス力を持っているのは貴重です。しかし打撃に大きな欠点があり、これを改善してゆくには時間が必要でしょうし、かなり改善の難しいリスキーな作業だと言わざるえません。 打撃の感性がもう少しあれば、理屈抜きに打ってしまう圧倒的な能力があっても良いのですが、そこまでのものは感じられません。まずは大学などで、一から打撃を作り直すぐらいの気持ちで、取り組んで欲しいと思います。上手く紐解けるセンスがあれば、将来プロの世界も見えて来るでしょう。現状は、残念ながらプロ指名レベルではないと判断致します。 (2013年夏 神奈川大会) |