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野村 颯一郎(環太平洋大3年)三塁手の個別寸評へ






 野村 颯一郎(広島・崇徳3年)遊撃 182/70 右/左





                       「ノムケンJr.」





 あのノムケンこと、野村謙二郎(カープ監督)の息子として、入学時代から注目されてきた大型内野手。父と同じ遊撃手だが、その父よりも大型のショートストップ。左膝の故障で春はアピールできなかった悔しさを、最後の夏にぶつけるべく開幕戦に挑んだ。


(この日の内容は)

 チームの1番・遊撃手として出場。100人を超える大所帯を、主将としてまとめた三年間だった。その責任感の強さ故か? この試合では、充分なアピールができないまま終わっている。ただ試合の方は、延長戦の末、広島商を破りアピールの機会は残されている。

<守備面> 
☆☆☆

 父は、駒沢大学からドラフト1位で入団したように、アマ時代から超エリート。遊撃守備にもスピード感があったし、補球してからの動作の切り返しにも非常に「鋭さ」があったと記憶している。

 しかし息子の方は、大型故にプレーにスピード感や鋭さ・細やかさは感じられない。けして下手だとは思わないが、上のレベルのニ遊間としては重苦しい。ただ父同様、いやそれ以上かもしれないのは、地肩の強さ。そういった意味では、三塁なり外野なりで、この肩がより生きるかもしれない。

<走力> 
☆☆☆

 一塁までの塁間は、少し緩めて4.4秒前後。もし本気で走り抜けたとしたら、4.1~4.2秒前後ではないかと考えられる。これは、プロの基準レベルのタイムに相当するが、父親のように快速で魅了する選手とは違うようだ。走力は、足を売りにしていた父と比べると遠く及ばないし、今後も足を売りにできるかは疑問が残る。





(打撃内容)

 広角にはじきかえすタイプの好打者だといった気が致します。けして二塁打・三塁打が多い、強打者タイプではないのでは。

<構え> 
☆☆☆

 前足を引いた左オープンスタンスで、グリップを高く添えて懐深く構えます。ただ腰の据わり・両目で前を見据える姿勢・全体のバランスとしてはそれほどでもなく、平均的な構えと言えそう。

<仕掛け> 早めの始動

 投手の重心が沈み始める時に動き出す、早めの始動を採用。これは、典型的なアベレージヒッターが採用する仕掛けで、彼が対応力を重視しているのがわかります。

<足の運び> 
☆☆☆☆

 早めに足を引き上げ、まわしこんで踏み込んできます。そのため「間」は取れており、速球でも変化球でも合わせやすいはず。

 真っ直ぐ踏み込むように、内角でも外角でも同じように捌きたいタイプ。踏み込んだ足元もブレないので、外角や低めの球にも、食らいついて行けます。そういった意味では、緩急やコースにも対応でき、幅広く打ち返せます。

<リストワーク> 
☆☆☆☆

 早めに打撃の準備であるトップの形をつくり、速い球に立ち後れないようにしています。振り出しも、上からミートポイントまでロスは感じません。スイング時も、バットの先端であるヘッドを立てる意識が持てており、フェアゾーンにボールを飛ばせます。

 そういった当てる技術は持っているので、あとは強く・鋭く振り抜けるスイングを身につけたいところ。

<軸> 
☆☆☆

 足を上げ下げする割には、頭が動かず目線は安定。体の開きも我慢出来ていますが、軸足が前に傾き体が突っ込みがちだったのが、結果を残せなかった要因でしょうか。できればもう少し懐まで呼び込んで、捌きたいところでしょう。

(打撃のまとめ)

 技術的には、かなり精度の高い選手であることがわかります。特別な感性の高さは感じませんが、努力して作り上げてきたものであることがわかります。そういった、努力できる才能は父譲りではないのでしょうか。


(最後に)

 地肩は強そうですし、走力・技術共に一定レベルのものは持っていそう。父のような天性の才能はないにしても、それに奢ることなく、自分なりの形を作ることは出来ています。

 ただ今回残念だったのは、まだまだ春の故障の影響なのか、充分な状態ではないのではないか、そんな気もします。どうしても上半身だけで合わせにいって、体が突っ込んでしまいがち。当てること自体上手いので、そういった傾向がより顕著になっていました。

 幸いにして緒戦を延長戦の末を制しただけに、まだアピールできる機会が残りました。ただ現時点では、プロ云々ではなさそう。父のような名門野球部に進むよりも、地方大学などで力を入れているところに進んだ方が資質は伸びるかもしれません。4年後に期待して、ドラフト候補としてまた出会うのを楽しみにしております。


(2013年夏 広島大会)