13kp-4
鈴木 翔太(聖隷クリストファー)投手 183/71 右/右 |
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鈴木 翔太(聖隷クリストファー2年)投手 183/71 右/右 |
「1位で消えるじゃないの」 スラッとした投手体型から、まさに正統派といった感じのクセのない綺麗なフォーム。一筋に伸びてくる球筋の良さ、ひと目みれば、この投手が只者ではないことはわかる。ただフォームが綺麗、ストレートが速い、そいった素材型なのかとおもいきや、いや中々それだけの投手ではなかったのだ。 (投球内容) ストレート常時140キロ前後(MAX143キロ) ストレートは、グワーンと伸びてくるので、その球速以上に打者の手元まで来る感じで空振りを誘える。特に力を入れた時のボールは、すでに140キロ台中盤は出ているのではないかという勢い。まだボールは低め膝下に決まったり、高めに行ったりとバラつきはあるが、ピンチになると右打者の内角を厳しく突いて来るのがこの投手の投球スタイル。 ただ左打者に対しては、指にボールが引っ掛かり過ぎて内角低めのボールゾーンに行ったりする。また全体的に、左打者への制球はアバウトで、右打者ほど思い通りのコントロールできないようだ。 変化球 スライダー・チェンジアップ、フォーク、カーブ など カーブを除く変化球は、非常にスピードがあり、速球との見分けが困難な球ばかり。右打者の外角や左打者の外角に決まるスライダーは、身体の近くで小さく鋭く曲がる実戦型。また意識的だと思うのだが、シュート回転して沈むチェンジアップのような球も。投球に余裕があると、小さくブレーキの効いたカーブを、右打者外角低めに集めて、ゴロの山を築く。最大の武器は、高速で沈むスピリット気味のフォークボール。私は観戦出来なかったが、夏の静岡高校戦では、そのフォークが素晴らしかったという。その次の浜松工業戦では、フォークの精度はもう一つだった。まだまだ日によってこの球の精度にもバラつきがあるようだ。 投球は、ストレート中心に組み立てているのだが、思いのほか変化球の制球力・キレが実戦的で驚いた。ストレートはバラついても、変化球の多くは低めやコースに決まるなど精度は高い。 その他 牽制は、マウンドを外して投げるフリまではするが実際投げる場面は少ない。ただ鋭く牽制できないわけではない。むしろ走者を刺そうというよりは、マウンドを外して「間」をとっている意味合いが強い。クィックは、1.0秒前後~1.1秒ぐらいで、かなりの高速クィックも身につけている。フィールディングの動きもよく、フライでも自分から取りに行く。肉体の資質に頼ったタイプではなく、野球センスに秀でたタイプ。 (投球内容) 昨年の武田 翔太(日南学園-ソフトバンク)のような圧倒的なポテンシャルで押して来るタイプではない。各所作にセンスの良さが感じれる選手で、力と技を組み合わせて来るタイプ。むしろピッチングスタイルは、釜田 佳直(金沢-楽天)の方が、むしろ近いタイプではないのだろうか。釜田よりも体格に恵まれているだけ、1位指名の期待が高まる。 投球のチェックポイントとしては、左打者への制球。カウントが悪くなると、立て直すことが出来ず四球を出してしまう。そういった、本当のコントロールがまだこと。またストライクだと思っていた球が、審判にボールだと判定されてしまうと、その後踏ん張りきれずに四球を出してしますセルフコントロール。この辺が、今年は改善されているかみてみたい。 あとは、自分の資質を伸ばして行こうとするだけの、貪欲さと新しいものを身につけて行ける器用さがあるかではないのだろうか。すでに夏の時点で、一学年上の選手に混ぜても上位指名されるぐらいの素質の高さを示していた。更に一冬超えて資質を伸ばすことができれば、1位指名で消える可能性は高いと言えよう。武田翔太のように、全国の舞台を踏まなくても「高校NO.1」と言われる存在になるかもしれない。 (投球フォーム) 今度は、投球フォームの観点から、今後の可能性を模索してみたい。 <広がる可能性> ☆☆☆☆ 引き上げた足を高い位置でピンと伸ばせており、お尻は一塁側に落とせます。そのため無理なくカーブで緩急を利かしたり、フォークのような縦の変化を投げることができます。 「着地」までの粘りも悪くないので、今後もいろいろな変化球を身につけ、コンビネーションに組み込んで行くことが期待できます。 <ボールの支配> ☆☆☆☆ グラブは最後まで身体の近くにあるので、両サイドへの投げ分けは安定。足の甲での地面への押しつけも悪くないので、低めにボールが行くこともあります。「球持ち」も良く見えるのですが、まだリリースにバラつきがあるのか、速球の球筋が安定しないことがあります。一冬超えて来ると、だいぶ変わって来るのではないのでしょうか。 <故障のリスク> ☆☆☆☆ お尻も落とせますし、腕の振り下ろしにも無理がありません。それにそれほど力投派でもないので、身体への負担も大きいタイプではないでしょう。フォームにクセがないので、故障の可能性は低そうです。 <実戦的な術> ☆☆☆ 「着地」までの粘りは平均的で、身体の「開き」も並でしょう。極端に打ち難いような粘っこいフォームではありませんが、合わせすいといったほどのタンパクさもありません。 腕も身体に絡んできますが、更にオフの間に腕の振りの鋭さが磨かれると更に厄介です。ボールへの体重の乗せも悪くないので、打者の手元まで勢いが落ちません。ただ球威で詰まらせる、そういった球は投げ込んでいません。 (投球フォームのまとめ) 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動では、「球持ち」がよく、「着地」「開き」「体重移動」が、現時点では平均的でしょうか。もう少し下半身の鍛錬と股関節の可動域が広がると、この辺の部分も更に良くなりそうです。特に悪い部分は見つからず、更によくなる可能性を感じます。 (最後に) 持っている投手としての器、そして2年夏の時点で示したパフォーマンスは、全国の2年生右腕の中でも、私が知る限りNO.1だと思います。あとは、その高い資質を活かすだけの器用さ。その能力を広げて行ける感性と野球頭脳。何より一番求められるのが、現状に満足することなく、自分の才能を伸ばして行こうとする努力できる資質があるかということ。それさえ兼ね備えていれば、文句なしの1位候補として推せる投手だと思います。あえて、過度な期待してみたい、そんな男でした。 (2012年 夏) |