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山岡 泰輔(オリックス)投手のルーキー回顧へ







山岡 泰輔(21歳・東京ガス)投手 170/65 右/左 (瀬戸内出身) 
 




                  「開幕ローテーション入り」





 今年の候補の中でも、数少ない開幕からローテーション入りできそうな即戦力候補。特に凄みは感じられないが、確実に計算できる戦力を補充したい球団には持ってこいの人材ではないのだろうか。


(ここに注目!)

 社会人屈指の実戦派して、開幕ローテーションが期待される即戦力候補。高校時代から、どのぐらい成長してきたのか注目して頂きたい。


(投球内容)

 本人もプレッシャーを感じ無い性格だというだけあって、いつも淡々と冷静にピッチングを組み立ててきます。

ストレート 常時145キロ前後~150キロ 
☆☆☆★ 3.5

 以前から指摘するように、球速ほど苦になるボールではありません。特にベース板を通過するときのボールの力に改善が観られず、ストレートを多投するとプロレベルの打者ならば充分に対応できるでしょう。この選手の場合多彩な球種の中の一つとして、時々速球を織り交ぜるという感じで効果的に使えます。

 けして投球の軸が速球でという投手でありませんし、割合もかなり少ないはず。ボールは両サイドに散らすことができますが、絶妙なところにズバズバ速球を決めて、見逃し三振の山を築くというタイプではありません。甘く入ることは少ないのですが、抜けることも少ないありません。

変化球 カットボール・スライダー・チェンジアップ・スプリット系、カーブなど 
☆☆☆☆ 4.0

 とにかく球種が多彩で、何を投げているのかよくわからないことがあります。高校時代の代名詞だった曲がりながら落ちるスライダーはそれほど目立たなくなり、どの球でもカウントを取れる代わりに、絶対的な球種はなくなりつつあります。

 小さく変化するカットボールやスプリット系などの微妙な変化が多くなり、相手の狙いを絞らせない、芯で捉えさせない投球を重視するようになりました。今や絶対的な球がない代わりに、どの球でも苦しい時に使うことができます。

その他

 牽制やフィールディングの動きもよく、クィックも1.0秒前後で投げ込める高速クィック。そういった野球センス、運動神経の良さは光ります。

 マウンド捌きも冷静ですし、パッとマウンドを外す危険回避の嗅覚にも優れます。

(投球のまとめ)

 3年間で思ったほど球の強さが増していない点が気がかりですが、着実に社会人でも実績を積み重ねてきました。もうアマで得ることは殆どなく、プロへのステージを目指すべき段階です。しかしながら大勝ちするような絶対的な凄みはなく、ランナーを出してからでも粘り強く投げてゆく、ゲームメイク能力に優れます。プロの圧倒的な打力の前には、この投球で誤魔化しキレるかは微妙ではないのでしょうか。

(成績から考える)

 オフに作成した寸評では、フォーム分析を行いました。今回は、都市対抗予選・本選で残した成績を元に、傾向を考えてみます。

都市対抗予選 3試合 17回1/3 16安打 3四死球 17三振  防御率 2.08
都市対抗本選 4試合 22回   3安打 2四死球 23三振  防御率 1.23
合計     7試合 39回1/3 29安打 5四死球 40三振  防御率 1.60

1,被安打はイニングの80%以下 ◯

 被安打率は、73.8%と、ハイレベルの社会人ならば充分合格ラインの数字に。多彩な球種を駆使して、的を絞らせない配球が功を奏している。

2,四死球は、イニングの1/3以下 ◎

 四死球率は、脅威の12.7%。けしてピンポインで決めるような繊細なコントロールがある感じではないが、甘いゾーンに入ってくることも少なく、四死球で自滅する事も考え難い。見ている方としては、安心して任せられる。

3,奪三振は1イニングあたり0.8個以上 ◎

 奪三振は、イニング数を上回っており、先発で投げることが多いだけに充分に合格点。リリーフでも基準を満たす内容だが、これといって絶対的な武器があるようには見えない。そのためプロでは、結構狙って三振が取れず苦しむかもしれない。

4,防御率は1点台以内 ◯

 社会人の先発で、1点台であることはかなり優秀。絶対的な投球でなくても、安心して見ていられる安定感がある。

(成績からわかること)

 どのファクターも、余裕を持ってクリアできている点に、この選手の能力の高さが感じられる。即戦力として、充分に期待に応えてくれる選手ではないのだろうか。


(最後に)

 おそらく何処のチームに入っても、開幕ローテーション入りできる力の持ち主。一年間ローテーションを守れば、7,8勝前後ぐらいは計算できるだろうし、場合によっては一年目から二桁を勝っても不思議ではない。

 ただし個人的には、もう少しストレートに強さを増せばなぁという思いがつよく、それが変わらないまま3年間過ぎてしまったところは残念でならない。非常に精神的にも冷静だし、器用な一面も感じられる。そういった意味では、何処の球団に入ってもある程度1年目から順応してくれるのではないかと期待している。15勝できるような凄みは感じないが、新人王の有力候補なのではないのだろうか。イメージ的には、小川 泰弘(ヤクルト)みたいな感じの投手になるのではないのだろうか。


蔵の評価:
☆☆☆(上位指名には相応しいが図抜けてはいない)


(2016年 都市対抗)









山岡 泰輔(20歳・東京ガス)投手 172/66 右/左 (瀬戸内出身) 
 




                       「冷静だね」





 瀬戸内高校以来久々に、真剣に 山岡 泰輔 を観てみた。そこで感じたのは、目に見える成長よりも、数々の修羅場を潜り抜けてきただけあって、ピンチでも冷静に対処するその姿にあった。この 平常心 こそ、山岡 の最も優れた資質ではないのだろうか。

(投球内容)

都市対抗開幕戦の大阪ガス戦。山岡は、先発のマウンドに立っていた。

ストレート 130キロ台後半~MAX147キロ

 高校時代同様に、キレ型の球質でボールそのものに大きな上積みは感じられない。両サイドに投げ分ける確かなコマンドはあるが、高校時代はもっと低め膝下に集まる球が多かった気がする。この日がたまたまなのか? 最近は、いつもこんな感じなのだろうか? 球威がないだけに、甘く入ると長打を浴びやすい。プロの一軍の打者ならば、その辺は打ち損じてはくれないだろう。

変化球 縦横のスライダー・フォーク・チェンジアップ・カーブなど

 山岡といえば、独特の縦に大きく割れるスライダー。その他に横滑りするスライダー・チェンジアップ・フォーク・余裕が出て来ればカーブなども頻繁に投げ込んでくる。縦に曲がる球が多いのだが、縦スラやフォークといった球種は、多く投げる割に曲がりが早過ぎるのか?思ったほど空振りが奪えていないのは気になる材料。

 興味深かったのは、左打者の懐に食い込んで来る、スライダー・カットボール系の球で厳しく内角を突いていたこと。内角にズバッとストレートを魅せていたり、内角を魅せておいての外角に沈む球を投げるなど、投球が確立している。多くの右投手が左打者を苦手とするなか、そういったことはこの投手に限ってはなさそうだった。

その他

 ランナーを背負うと、パッとマウンドを外したり、軽く牽制を入れて自分を落ち着かせる。更に牽制自体非常に鋭いし、フィールディングの技術も一級品。クィックも、1.05~1.20秒ぐらいで投げ込めており問題ない。ランナーを背負うことで、自分の投球をリズムを崩すとか、そういう不安定なところは微塵も魅せない。


(投球のまとめ)

 都市対抗開幕戦・大阪ガス戦では、ストライクが決まらずコントロールに苦しんだ感はある。しかしランナーを背負っても、実に冷静に、自分の投球を貫いていたのは印象的。そういった冷静なマウンド捌きは、十分に即戦力と思わせるものがあります。

 高校時代と比べると、目に見えてパワーアップしている、成長している感じはしません。そのため先発などをしていると特に感じるのですが、ベース板を通る時のボールが弱いなあという印象は、社会人1年目から常に感じてきたことでした。この辺が、先発でも払拭できているようだと、文句なしの1位候補と推せるのですが。


(投球フォーム)

<広がる可能性> 
☆☆☆

 この選手は、足を地面に向けつつピンと伸ばさないまま、前に大きくステップさせると特殊な足の使い方をしてきます。そのためお尻は一塁側に落ちず、体を捻り出すスペースは確保できません。そういった意味では、体を捻り出すスペースは確保できず、カーブやフォークには適さない投げ方となります。

 それでも前に大きくステップさせることで、体を捻り出す時間はある程度確保。これによりカーブやフォークといった球種ならば、好い変化球を投げられる下地はあります。その辺が、魔球縦スラを生み出している原動力なのかもしれません。


<ボールの支配> 
☆☆☆☆☆

 グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分けは安定しやすいはず。足の甲でも地面を捉えており、ボールも上吊り難いのでは。さらに「球持ち」もよく、コントロールを司る動作には極めて優れています。まぁ上下に大きくステップさせることで、コントロールがブレる要因を作り出している可能性は、無きにしもあらずですが。

<故障のリスク> 
☆☆

 その一方で、お尻が落とせない割にカーブやフォーク系の球も結構使ってきています。これは、スペースが確保できず投げているわけで、肘への大きな負担が懸念されます。高校時代は、縦スラ中心だったのであまり気になりませんでした。しかし今は、カーブやフォークを結構使う頻度が多いので、大丈夫なのかな?という心配はあります。

 腕の送り出しに関しても、ボールを持っている肩は上がり、グラブを持っている肩が下がるフォームは相変わらず。この辺も、肩の故障の原因になる可能性が高く心配です。これまで大きな故障もなく鉄腕ぶりを発揮しましたが、これからは十分過ぎるぐらい体のケアには神経質になった方が好いと思います。


<実戦的な術> 
☆☆☆

 「着地」までの粘りはそれなりで、けして合わせやすいフォームでもありません。また体の「開き」も平均的で、特に球の出どころが見やすいという感じはしませんでした。

 腕は非常にしっかり振れるので、速球と変化球の見極めは困難だと思われます。その割に、変化球で空振りが取れていなかったのは気になりました。またボールへの体重の乗せは、ボールにしっかり体重が乗り切る前にリリースを迎えてしまっている印象。だからこそ、ボール全体が軽いのだと考えられます。


(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」が素晴らしく、「着地」「開き」は平均ぐらい、「体重移動」に改善の余地ありといった感じでしょうか。

 制球を司る動作は素晴らしい一方で、故障のリスクは高いというのは気になります。


(最後に)

 社会人の2年間を観る限りは、まだ底から沸き上がるような凄みがボールには見られない気がします。その点が、この1年で変われるのかが、最大のチェックポイント。

 投手として持ちえるセンスは一級品ですし、現時点ではドラフト1位候補に名前を連ねるのも当然だと思います。しかし今の力量のままだと、プロで何処まで即戦力としてやれるのかは半信半疑であり、あまり私自身は推せないという評価に留まります。

 いずれにしても、今年の社会人では注目度NO.1の投手ですから、早い段階から確認に行けたらと思っています。彼が凄みを増しているようだと、ドラフト戦線は大いに盛り上がることは間違いないでしょう。期待して、勝負の三年目の訪れを待ちたいと思います。


(2015年 都市対抗)









山岡 泰輔(瀬戸内・3年)投手 171/68 右/左 





                   「甲子園NO.1投手」





2013年の夏の甲子園において、最高のパフォーマンスを魅せたのが、この 山岡 泰輔 。小柄ながら、高校生離れした完成度の高いピッチングと抜群のキレを誇るスライダーで異彩を放った。あのダルビッシュ有も、twitter で彼が一番ではないかと評し話題になった投手。そんな山岡は、プロ志望届けを提出せずに社会人野球・東京ガスに進むという。


(投球内容)


一見小さな身体をめい一杯使った力投派に見えますが、足の引き上げや足の高さなどを見ると、それほど最初から力を入れて投げているわけではないようです。自分の「間」を重視して、淡々と投げ込んできます。

ストレート 常時140キロ台~MAX147キロ

初回から140キロ台の球速を刻んで来るように、高校生としては上位のスピード能力。ボールの伸び勢いも悪くありませんが、まだプロの球というよりはアマの好投手との域は脱していません。

しかしこの投手が素晴らしいのは、ストレートの球速や球質ではありません。そのストレートを内外角に投げ分けるコントロール。そして小柄な速球派投手には稀な、低め中心にボールを集めることができる点ではないのでしょうか。

変化球 カーブ・縦横のスライダー・チェンジアップ

この選手は、縦・横二種類のスライダーを軸にピッチングを組み立てます。横のスライダーでカウントを整え、追い込むと縦に曲がりながら落ちる鋭いスライダーを低めに集め空振りを誘います。このボールの曲がり・キレだけでなく、その活かし方が非凡だと言えます。

他に時々緩いカーブを投げて、緩急・カウントを整えたり、たまにチェンジアップを使いますが、この2つの球はそれほど使ってきません。あくまでも、二種類のスライダーを軸にピッチングを組み立てます。

その他

牽制の動きはややモーションが大きい気も致しますが、ターンが鋭いので走者の足を釘付けにできます。フィールディングの動きも良く、クィックも1.0秒前後で投げ込むなど極めて高速。野球センスだけでなく、身体能力の高さもA級。

(投球のまとめ)

まだストレート単体の物足りなさは感じますが、変化球も含めてボールの活かし方に非凡な投球センスを感じます。コントールも時々甘く高めに浮く球を痛打される場面はありますが、それが続かないので連打を許しません。要所では、しっかり自分の最高のボールを投げることができ、失点を許しません。追い込まれば追い込まれるほど、ギアあげて自分のベストボールを投げられるセンスは天性のもの。

中でも素晴らしいなぁと思えたのは、甲子園で試合開始直後にフォームを指摘されたり、立ち上がりヒットを打たれたりしたにも関わらず、浮足だつこともなく切り抜けた点。初めての大舞台でも、自分の普段のピッチングに徹し続けたハートの強さは特筆。この選手の良さは、インテリジェンスの良さとハートの強さではないのでしょうか。





(投球フォーム)

少し身体を前に傾け、背中が丸まった感じで投げ込んできます。小さな身体を、大きく魅せるタイプではありません。

<広がる可能性> ☆☆☆

引き上げた足をそれほどピンと伸ばさないので、お尻は一塁側には落ちません。そういった意味では、身体を捻り出すスペースは確保できないので、カーブで緩急をつけたり、フォークのような身体を捻り出して投げる球種には適しません。しかしそれを、縦に鋭く切れ込むスライダーで代用することができています。

「着地」までの粘りは平均的で、身体を捻り出す時間も並み程度。そのためスライダーやチェンジアップという球種は問題ありませんが、それ以外だとカットボール・ツーシーム・スピリットのような速く小さな変化を中心にピッチングの幅を広げてゆくことになるのではないのでしょうか。

<ボールの支配> ☆☆☆☆

グラブは最後まで内に抱えられ、両サイドの投げ分けは安定。足の甲でもしっかり地面を捉えられており、ボールが低めに集まるところが最大の特徴。「球持ち」に際立つものはありませんので、これからもっと押し込むようになれると、更に微妙なコントロールもつくようになるのではないのでしょうか。

<故障のリスク> ☆☆

お尻を落とせない割にカーブを使うので、肘への負担がないとは言えません。しかしその頻度もそれほど多くありませんし、この点は悲観しなくても良いでしょう。むしろカーブを使わない方が、ピッチングが単調になり弊害が大きいように思います。

振り下ろす腕の角度は、グラブを持っている肩が下がり・ボールを持っている肩は上がっているので、送りだしに無理は感じます。肩への負担はそれなりにあるので、日頃から身体の手入れには注意を払って欲しいもの。それでもそれほど力投派ではないので、無理をしなければ消耗が激しいわけではないようです。

<実戦的な術> ☆☆☆

「着地」までの粘りはそれほど感じませんが、体の「開き」は早くありません。苦になるフォームではありませんが、甘く入らなければ痛手は食い難いと考えられます。

腕が短い体型なのもありますが、それほど身体に腕が絡んできません。それでも腕の振りが鈍いわけではないので、この点は「球持ち」と体型によるところが大きいのかと。ボールへの体重の乗せは平均的で、可も不可もなしといった感じ。もっと上手く下半身が使えるようになると、打者の手元までグッと来る感じが増して来るでしょう。この辺が改善されて来ると、大人の球質に変わってくるのではないのでしょうか。

(最後に)

広島県大会決勝戦では、15回を無失点に抑え引き分け再試合。更に翌日の試合でも9回1死まで無安打という驚異的なピッチングを魅せました。その体力・精神力は素晴らしく、まさに隙なしの好投手といった感じです。特にその野球センスは、投手をするために生まれてきたような男と言えるでしょう。

それでもまだ高校生、ボールの質はアマの域を脱しておらず、現時点で即プロで通用するというほどではありませんでした。そこを社会人に進んで、大人の球が投げられるようになることが、今後の一番の課題ではないのでしょうか。

しかし意識も高く、基礎体力・技術・インテリジェンスも素晴らしいので、3年の月日があれば充分に課題クリアは可能でしょう。3年後は、文句なしの上位指名でプロの門を叩いて欲しいと期待します。プロ志望届けを提出していれば、3位以上での指名があったと考えます。


蔵の評価:
☆☆☆


(2013年夏・甲子園)