13kp-27


 
amanatu.com




加治屋 蓮(22歳・JR九州)投手 182/72 右/右  
 




                   「プロでハマるかな?」



加治屋 蓮 は、プロでもあまりいないタイプの投手である。それ故に、最初の方はプロの打者でも戸惑うかもしれない。そんな予感めいたものを感じなくはない。

彼は何が特殊なのかと言えば、ストレートとフォークといった縦の変化球を武器にした投手。しかしそのストレートは、常に動くクセ球だということ。それぞれの特徴を持った選手は、それほど珍しくはない。しかし、この両方の特徴を併せ持った選手は、意外にいない。



(投球内容)

ストレート 常時140キロ前後

 如何せんみたことが、今年の都市対抗しかないので正直普段と比較ができません。MAX152キロのストレートと言われますが、都市対抗の投球を観るかぎり130キロ台後半~140キロ台前半ぐらいの球速であり、球威・球速で圧倒するというよりは、ボールが常に動くクセ球なので、中々打者がバットの芯で捉えきれないという部分が持ち味との印象を受けました。

 ボールを動かす投手の特徴としては、ボールの回転が悪く速く見えません。また回転が悪いので、打者の空振りを誘うような手元にグ~ンと来る伸びや、ピュッと切れるようなキレはなく空振りを誘えないわけです。ですからクセ球投手は、ボールをしっかりコースや低めに集められる、このことがより重要になります。

 彼の場合、おおよそコースにはボールが散っているように見えます。しかしその高さは、真ん中~高めのゾーンなのが気になりますし、あまり細かいコントロールはありません。都市対抗本戦では先発するも、立ち上がり制球が定まらず苦労しました。都市対抗予選では、8回1/3イニングで四死球4つということで、イニングの半分近くが四死球であり(基準は1/3以下)、結構アバウトなのがわかります。

変化球 スライダー・フォーク

 頼れる球は、ストレートと見分けの難しいフォーク。この球を、ストレート以上に投げ込んできます。そのため投球はどんどん汲々となり、なんだか息苦しくなります。当然イニングが進んでくれば、相手にどんどん見極められてしまいます。その他には、曲がりながら落ちるスライダーを右打者には使ってきます。

 このフォークはかなりの確率で落ちるのですが、結構ドロンとしていますしストレートが切れないので見極められてしまっています。プロの打者ならば、当然見極めて来るのではないかと考えられます。

 ただし本当にMX152キロぐらいの球速で、コンスタントに145キロを越えて来るような勢いがあるのならば、クセ球だろうとフォークがドロンとしていても、その効果は違って来るでしょう。しかし実際には、そういった投球を見たことがないので、私には高く評価できません。

その他

 牽制はかなり鋭いもので、走者を刺しに行けます。クィックは、1.15秒前後で投げ込むなど基準レベル。特に投球以外の部分に、欠点は感じません。

(投球のまとめ)

 プロが上位で指名しようとしているのですから、多少粗い部分があろうとも、好い時のボールの勢いとフォークとのコンビネーションには素晴らしいものがあるのでしょう。ただ他の試合の情報でも140キロソコソコらしく、いつ150キロを超えるようなボールを投げていたのかと気になります。

 また左打者にはスライダーが使えず、ストレートとフォークの単調なコンビネーション。的が絞られやすいのか、左打者からヒットを打たれるケースが都市対抗では目立ちました。

 ちょっとプロにはいないタイプだけに、ハマれば面白いかなぁと思える部分もありますが、それを支えるだけのコントロールや投球術がないので、私には評価できる材料がありません。そこで今度は、技術的な観点から考えてみましょう。





(投球フォーム)

<広がる可能性> ☆☆

 引き上げた足は地面に向けられて伸ばされており、お尻の一塁側への落としには甘さが残ります。そのため充分体を捻り出すスペースが確保されているとはいえず、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化に適しているとは言えません。

また「着地」までの粘りもあっさりしており、それほど体を捻り出す時間も確保出来ていません。こうなると、カーブやフォーク以外の球種の修得にも苦労しそうだし、フォークの落差がドロンとしてしまっているのも納得できます。

<ボールの支配> ☆☆

 グラブもしっかり抱えられているわけではありませんが、比較的体の近くには最後まであります。これにより、ある程度両サイドにボールを散らすことができていると考えられます。

 ただし足の甲での地面への押し付けは浅く、ストレートが真ん中~高めに集まりやすいのも頷けます。特に「球持ち」がよく指先の感覚に優れているという感じではないので、あまり細かいコントロールがないのも頷けます。

<故障のリスク> ☆☆

 お尻が落とせない割にフォークを多投するので、肘への負担は大きいはず。腕の角度の割りには、送り出しに無理が感じられないので、肩への負担はそうでもないかもしれません。いずれにしても尋常じゃないほど縦の変化球を多投するので、故障には充分注意して欲しいと思います。

<ボールの支配> ☆☆☆

 「着地」までの粘りがなく、打者としては苦にならないフォーム。更に打者に正対するのが早く、体の「開き」が早いののも気になります。そのためコースを突いた球でも、球筋をいち早く読まれて打ち返されてしまいます。

 素晴らしいのは、腕がしっかり身体に絡んでくること。これにより、速球と変化球の見極めが困難。フォークのような球種を投げる投手にとっては、とても大事な要素になります。ボールにも適度に体重が乗せられており、フィニッシュの形には観るべきものがあります。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「体重移動」や「球持ち」には欠点を感じませんが、「着地」と「開き」には課題があり、合わされやすいのが気になります。その辺を、ボールを動かすことで補おうと考えたのかもしれません。

 コントロールを司る動作や故障をしないフォームなどの観点でも疑問な部分が残り、特に実戦的な部分があるわけではなく、推せる材料がありません。


(最後に)

 高校時代も無名の存在であり、また社会人入り後も故障に悩まされて中々頭角を現せませんでした。故障に泣かされたのは、この異常なまでの縦の変化球を投げるせいではないかと思います。このピッチングスタイルを続けるかぎり、常に故障と隣り合わせるの野球人生を送るのではないのでしょうか。

 投球自体もアバウトですし、投球フォームに特にイヤラシさがありません。動くクセ球とフォークといった武器はありますが、それがプロで絶対的な武器として通用するのかは正直疑問が残ります。今回始めて観る投手なので、これが本来の実力かどうかもわかりません。しかし普段と劇的な差がないかぎり、この投球ではプロでは厳しいのではないかと考えます。ちょっといないタイプで面白い部分もあるのですが、総合的に判断して指名リストに載せようというほどの魅力は見出だせませんでした。


(2013年 都市対抗)