13kp-26



 
amanatu.com




田口 麗斗(新庄)投手 170/71 左/左 
 




                  「大学・社会人含めてもNO.2左腕」
 




 田口 麗斗 の広島大会での再試合やU-18のワールドカップでのリリーフ投球を見なおして、今年の大学・社会人を混ぜても、松井 裕樹(桐光学園)に次ぐ存在は彼なのではないかと思うようになった。今年の大学・社会人球界の左腕達は、いずれも危うい存在の投手ばかりで、ボールに力があってもコントロールに難があったり、不安定な投手ばかり。そんな中、田口の適度にまとまったコントロール・洗練されたマウンド捌き・ここぞの時のハートの強さ・ボールのキレなどを加味した総合力で考えると、そういう結論にたどりつく。





(投球内容)

 かなり左のサイドハンドに近い、スリークオーター。そのため左打者にとっては、背中越しから来るような球筋であり、逆に右打者にとってはボールが見やすい特徴がある。

ストレート 130キロ台後半~140キロ台中盤

 先発の時は、常時140キロ前後ぐらいで驚くような球威・球速はない。それでもボールにキレと勢いがあり、打者はワンテンポ差し込まれる。しかしU-18の大会ではリリーフでの投球を始めてみたのだが、常時140キロ台中盤のボールを連発するなど、こういった投球もできるのだと改めて驚く。投球を見ていると、元来この投手は、リリーフ向きなのではないかと思えて来る。

変化球 スライダー・カーブ・スクリュー

 最大の武器は、右打者の内角膝下に食い込んでくるスライダーにある。曲がりながら落ちてくるハードなスライダーは、プロの打者でも苦労するでしょう。田口の投球は、ストレートは右打者の外角に集めますが、スライダーは内角に使うことが多い。逆に外角にスライダーを投げるときは、結構打たれることが少なくありません。彼の被安打を調べると、甘く入った右打者への外角のスライダーのが、非常に多いのに気がつきます。

 あまり投げないのですが、右打者の外角にスクリューも使ってきます。この球もけして悪くないのですが、スライダーが圧倒的なので、使う頻度が少ないように思います。更にスライダーより少し球速を殺した、カーブも時々交えます。松井同様に、スライダー以外の変化球の精度・キレが思ったより好いのも推せる材料。

その他

 左腕らしく鋭い牽制を使えますし、クィックも1.05~1.10秒ぐらいでまとめられます。特にランナーを背負っても、投球が乱れる、ランナーへの注意が甘くなる感じも致しません。フィールディングもまずまずで、総じて運動神経・野球センスに優れた選手だと言えるでしょう。

 一辺倒なリリーフタイプに見えますが、ランナーを背負ってもじっくり打者と対峙できるなど、ある程度の「間」を持って投球出来ています。そういった意味では、高校生でも大人の投球ができます。

(投球のまとめ)

 高校生なのでボールがバラついたり多少しますが、おおよそ内外角にボールを投げ分けることが出来ています。左打者には外角中心の組み立てですが、独特の背中越しから来る球筋なので打者には遠く感じるはず。右打者に打たれるケースが多いのですが、スライダーで内角を厳しく突きつつ、外角でしっかり投球を組み立てることが出来ています。

 延長再試合を投げ抜いたように、ここぞという時の気持ちの強さ・高い精神力もあり、並の高校生ではありません。まだ基礎体力・体の芯の強さに課題を感じる部分もありますが、プロでも比較的早い段階から、一軍に出てくるのではないか評価しています。





(投球フォーム)

<広がる可能性> ☆☆☆

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻は三塁側(左投手の場合は)に落とせません。そのため見分けの難しいカーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の球種には適さない投げ方。

 「着地」までの粘りは、少し前に足を逃がすことが出来ており、思ったほど早くありませんでした。そういった意味では、体を捻り出す時間はある程度確保できており、カーブやフォークといった球種以外はある程度期待できます。実際にカーブの曲がりも悪くないですし、スクリュー系のキレ・精度もまずまずした。

<ボールの支配> ☆☆☆

 グラブは最後まで体の近くにあるので、両サイドへの投げ分けは安定しやすい。また足の甲でも思ったより地面をしっかり捉えており、ボールがそれほど上吊りません。特に、スライダーは低めに集められます。腕が外旋して、ブンと腕と上体の力で投げるフォームなので、その分「球持ち」は浅く指先の感覚としてはどうなのかな?と思える部分があります。その辺が、大まかの制球は出来ても、繊細なレベルまで行かない理由かもしれません。それでも左腕としては、かなりまとまっている方だと言えるでしょう。

<故障のリスク> ☆☆☆

 お尻は落とせませんが、カーブも多投するわけでもないですし、フォークも投げません。そういった意味では、肘への負担は少ないのでは。更に腕の振りもスリークオーターで、腕の送り出しに負担は感じません。それでも腕を外からブンと振って来るので、肩への負担は少ないとは言えないでしょう。登板過多になったときは、ちょっと怖い気は致します。

<実戦的な術> ☆☆☆

 「着地」までの粘りも思ったよりはあり、体の「開き」も早すぎることはありません。腕が少し外から下がって出てくる分、打者としては打ちづらい球筋。それも自分のイメージよりも、ボールにキレがあって差し込まれます。

 気になるのは「球持ち」が浅く、手足が短い体型なので、腕が身体に絡んで来ない点。また体が外に流れてボールに体重を乗せられず、球威のある球が投げられません。これだと腕と上体の振りでキレを生み出して行くしかないわけで、少しでも疲労が溜まってキレを損なうと、パフォーマンスが大きく低下することが想定されます。それでも延長15回再試合でもパフォーマンスを下げなかったように、基礎体力・精神力は見た目以上なのではないのでしょうか。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」「開き」は並ですが、「球持ち」「体重移動」に課題を残します。また独特の球筋を持っており、左投手としての特徴があります。

 それに制球を司る動作は出来ており、故障のリスクも現時点ではそれほど高くないなどの要素は推せる材料でしょうか。





(最後に)

 キレで勝負するタイプなので、プロの長いシーズン・長い年月を想定すると、少し怖い気は致します。しかし投手としてのマウンドセンスや度胸、制球力・変化球レベルも適度にあり、総合力では高く評価できます。

 見た目は華奢ですしボールの芯の力が足りないなど、プロで1,2年パワーアップを並行して行わないといけないでしょう。しかし早い段階から実戦に混ぜて使って行ける完成度は、すでに備わりつつあります。

 今年の大学・社会人は、極めて計算がたたない素材型が多いので、そういった選手たちに比べると、モノになる確率が高校生ながら高いのではないかと考えます。例年ならば3位ぐらいで指名したいタイプですが、今年は極端に層が薄いことを考えると、松井を外した球団などが2位あたりで指名するのではないのでしょうか。

 どちらかというとリリーフ・中継ぎ向きのように見えるので、先発の一角にという将来像は今のところ見えて来ません。あえてそれでも構わないという球団ならば、面白い選手だと思います。良いリリーフ投手になれる資質を持っている素材だと、高く評価致します。


蔵の評価:☆☆☆


(2013年夏 U-18ワールドカップ)