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砂田 毅樹(秋田・明桜)投手 177/70 左/左 





                  「想像していたより良かった。」
 




毎年秋田大会の模様を大量に送って頂いていたのだが、この 砂田 毅樹 の投球は確認できないまま最後の夏を迎えた。最終学年になっても、あまり好い評判を訊いていなかったので、正直期待していなかった。しかしこの夏の模様を見るかぎり、プロを充分意識できる素材であることがわかった。

(投球内容)

 ボールの凄みよりも変化球とのコンビネーション、マウンドセンスで抑える込む好投手。もっと実戦力に欠ける課題の多いタイプかと思っていましたが、想像以上にまとまっているのに驚かされます。

ストレート 常時135~140キロ台前半

 ストレートを中心に組み立てるではなく、変化球を多く投げて時々ストレートを織り交ぜるような投球スタイル。そのためストレート自身は、驚くような球威・球速はありません。

 ただ観戦した試合でも、球場のガンで140キロ台を記録していたように、ストレート単品では厳しいものの、変化球とのコンビネーションで織り交ぜるならばイケるだけのボールはなげていました。今後更に球威・球速を増すことが望まれますが、高校の時点では合格点は与えられるのではないのでしょうか。最終学年であまり評判にならなかったのは、夏の予選まではストレートの勢いが物足りなかったのかもしれません。

 ボールも両サイドに適度に投げ分けられており、それほど暴れないでコントロールできるところは、一定の評価ができるポイント。

変化球 カーブ・スライダー・スクリュー

 変化球は、左腕らしい大きなカーブとのコンビネーションが中心。これにスライダーも、カーブのように曲がりながら落ちる球筋なので、ちょっと区別が難しいです。またスクリューのようなシュート回転して沈む球もありますが、まだその精度はそれほど高くはなさそう。

 まだ空振りを狙って取れるほどの絶対的な変化球はないにしろ、変化球を多く魅せてストレートを生かしたり、ストレートを魅せておいての変化球で勝負したりという、ピッチングを組み立てることは充分出来ています。特に変化球が、あまり高めに浮かないところも評価できます。

その他

 左腕らしく牽制を多くはさみ、実際に上手いです。クィックも1.05秒前後で投げ込めてフィールディングもまずまずと、投球以外の部分にも優れ、センスの高さを感じます。

 牽制を多く入れてランナーを威圧するだけでなく、マウンドもパッと外ます。「間」もそれなりに意識できて、結構きめ細かやかな投球も出来ています。

(投球のまとめ)

 ボールそのものの凄みはありませんが、コンビネーションや投球術を駆使して、上手く相手を討ち取って行きます。春まではイマイチな状態が続いていましたが、最後の最後で才能の片鱗を魅せられた夏だったのではないのでしょうか。

 この筋の良さにパワーが伴ってくれば、先発も期待できる試合の作れる投手への可能性も広がります。





(投球フォーム)

 プロで大成するためには、今後のパワーアップが不可欠です。その妨げや課題になる要因はないのか? 考えてみたいと思います。

<広がる可能性> ☆☆☆☆

 引き上げた足を高くピンと伸ばすことができ、お尻を三塁側(左投手の場合は)に落とすことが出来ています。これによって体を捻り出すスペースが確保でき、カーブで緩急をつけたりフォークのような縦の変化球も期待できます。

 あとは「着地」までも粘りが並なので、もう少し粘れるようになると体を捻り出す時間も確保できるでしょう。そうなれば変化球のキレ・曲がりも増し、武器になる球を修得できるようになりそうです。

<ボールの支配> ☆☆☆☆

 グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分けは安定。足の甲でも深く地面を捉えており、ボールもそれほど上吊りません。特に変化球が、低めに集まるところは好いところ。「球持ち」も悪くなく、指先の感覚も良さそうな感じ。そういった意味では、左腕ながらコントロールの好い投手になれる期待が高まります。

<故障のリスク> ☆☆☆☆

 お尻は落とせるフォームなので、カーブを多投しますが肘への負担は少なそう。振り下ろす腕の送り出しにも無理がないので、肩への負担も大丈夫でしょう。けして頑強な体付きではありませんが、力投派でもないので故障のリスクは少ないと考えられます。イメージ的には、中日の岩瀬 仁紀 を、もう少しオーソドックスにした感じ。

<実戦的な術> ☆☆☆

 「着地」までの粘りは平均ですが、体の「開き」はなんとか抑えられ、打者としては特に合わせやすいということはないでしょう。

 ただしまだ腕の振りが弱いので、速球と変化球の見極めはしやすいはずですし、空振りを誘い難いと思います。ボールへの体重の乗せも発展途上で、打者の手元まで力強いボールがベース板の上を通過しません。

(投球のまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」で言えば、「球持ち」「開き」はまずまずで、「着地」は並。もう少し下半身を使える「体重移動」を覚えると、ボールの勢い・球威も変わってきそうです。まだまだプロのボールとは言えません。

 しかしながら、故障の可能性が低いのと制球が安定しやすいフォームだというのは、今後に向けて多いなる強味。

(最後に)

 実際投げているストレートの厚みは、ドラフト候補としてはやや物足りないかもしれません。しかし変化球、制球、フォーム、彼の持っている野球センス等を加味すると、プロの水準に達していると総合的に判断致しました。

 最後の夏まで追いかけたスカウトじゃないと、彼を指名リストに残さない球団も少なくなかったのではないかと推測します。しかし個人的には、指名リストに彼の名前を残してみたいと思います。その決め手となったのは、私のポリシーでもある 「コントロールの好い左腕は買い」 ということでした。ドラフトでは下位指名~育成枠ぐらいでの指名になると思いますが、ドラフト会議当日どんな判断をされるのか注目したいと思います。


蔵の評価:


(2013年夏 秋田大会)