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柳澤 一輝(早稲田大4年)投手の最終寸評へ
柳澤 一輝(早稲田大4年)投手の春季寸評へ
柳澤 一輝(早稲田大3年)投手 180/82 右/右 (広陵出身) |
「数少ない剛球タイプ」 2017年度の大学球界には、150キロ級の重い速球を投げそうな剛球タイプがほとんどいない。そんな中、その条件にピッタリ合致しているのが、この 柳澤 一輝 。しかし入学以来の3年間では、リリーフで時々投げるぐらいと際立つ実績はない。 (ここに注目!) 広陵高校時代から、力強い真っ直ぐには目を見張るものがありました。しかし明らかに経験不足の部分があり、大学などで経験を積む必要がありました。しかしここまでの3年間は、充分な経験を積んだとは言えません。飛躍が期待される最終学年で、どんな実績を残せるのか注目されます。 (投球内容) ストレート 常時145キロ前後ぐらい ☆☆☆★ 3.5 ボールの力には、確かなものがあります。恐らく球速も、コンスタントに145キロ前後を刻んでいるでしょう。しかし全体的に球が高く、アバウトな印象を受けます。3年秋の成績は、23回1/3イニングで、四死球は5個と悪くありません。しかしストライクゾーンには集まり四死球はあまり出しませんが、枠の中での投げ分けはできていないように感じます。 変化球 スライダー・チェンジアップ(ツーシーム?) ☆☆★ 2.5 左打者に対しては、チェンジアップだかツーシームのシュート系のボールでカウントを整えます。この球で確実にカウントを整えられるので、左打者に対しての制球にそれほど苦労していません。右打者に対しては、スライダーとのコンビネーション。しかし高めに甘く抜けて来ることが多く、見ていてハラハラします。曲がりも悪く、抜け気味なのが気になります。 こういった変化球のキレ・精度にかけてはまだまだで、この辺をもう少し磨かないと、プロレベルでは厳しいのではないのでしょうか。最終学年で大事なところに任されるためにも、変化球のレベルUPが不可欠です。 その他 高校時代は投げるふりだけであまり投げなかった牽制も、鋭くできるようになりました。クィックは、1.0~1.1秒ぐらいで投げ込めるなど悪くありません。パッとマウンドを外したりできるなど、意外に冷静だったりとマウンドセンスは悪くないようには感じます。 (投球のまとめ) 現状はまだ、ストレートに魅力あるといった程度。そのため変化球や制球力など、不安な部分があります。最終学年になり自覚を促し、どの程度やれるかという感じか。位置づけとしては、昨年の 竹内 諒(早大)を、右にしたようなポジションではないのでしょうか? (投球フォーム) ランナーがいなくても、セットポジションから勢いよく足を引き上げて来きます。典型的な、リリーフタイプの力投派かと。 <広がる可能性> ☆☆ 2.0 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻はバッテリーライン上に残ってしまいます。したがって身体を捻り出すスペースは充分ではなく、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦に鋭く落ちる球種を投げるのには適しません。 「着地」までの粘りもあっさりしていて、身体を捻り出す時間も不十分かと。こうなると曲がりの鋭かったり、曲がり幅の大きな変化は望み難くなります。そのため決め手になるほどの変化球の習得が、将来的にも期待できるのかは疑問が残ります。 <ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5 グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分けはしやすいはず。足の甲の地面への押しつけが浮いてしまって、力を入れて投げるとボールが高めに抜けやすくなっています。それを「球持ち」が良いことで、ある程度制御できているのかもしれません。 <故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5 お尻は落とせていないものの、カーブやフォークといった球種はほとんど見られません。そういった意味では、肘への負担は少ないのではないかと考えられます。 また腕の送り出しを見る限り、肩への負担も少なめ。ただし力投派なので、疲れが溜まりやすいところはあるのでしょう。 <実戦的な術> ☆☆☆ 3.0 「着地」までの粘りはいまいちで、打者としては合わせやすいのでは。そして身体の「開き」も極端ではないものの、少し見やすくは感じます。 素晴らしいのは、腕の振りが強くしっかり身体に絡んで来ること。これにより、速球と変化球は見極めがつき難く、空振りを誘いやすいはず。ボールにもしっかり体重を乗せてからリリースできており、打者の手元まで勢いと球威の落ちない球が投げられます。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」「開き」に少し課題があり、「球持ち」に良さが感じられます。 故障のリスクはそれほど高くなく、足の甲が押し付けられないぶんボールが上吊りやすい傾向があります。それをなんとか、「球落ち」の良さで軽減していると言えるのではないのでしょうか。気になるのは、お尻が落とせず「着地」までの時間が稼げないこと。そのため今後、武器になる変化球を見出だせずに、決め手に欠けたり伸び悩む危険性があります。 (最後に) まだまだ素材型の域を脱しておらず、最終学年でどの程度やれるのか見えてきません。間違いなく素材・馬力という意味では、今季のドラフト候補の中でも上位のレベル。あとは大学生だけに、実戦に即しているかではないのでしょうか。期待込み不安込みの素材ですが、今後もその成り行きを注視して見守ってゆきたい一人です。 (2016年 秋季リーグ戦) |
柳沢 一輝(広島・広陵3年)投手 179/82 右/右 |
「経験不足だね」 選抜に出場した広陵に、まだ大舞台で登板していない幻の150キロ右腕がいるという。その男は、秋まで捕手登録だった選手。一体どんな男なのか、ぜひ見てみたいと思っていた。そして最後の夏、甲子園に出場した瀬戸内高校戦で、その姿を確認できた。 (投球内容) もっとガッチリした体格の投手かと思ったら、上背もそれほどでもなく、投球フォームも極オーソドックスだったのには、正直拍子抜け。 ストレート 常時130キロ台後半~MAX146キロ それでもMAX150キロを記録すると言われるだけあって、ランナーを背負わなければ140キロ台中盤は連発できる能力はありそう。それでもセットポジションになると、制球重視で140キロ前後のスピードになる。 評判どおりのボールの勢いは感じるのだが、それほど打者としても合わせ難いわけではない。そのため球速や勢いの割には、打者から空振りが誘えない。 変化球 スライダー 曲がりながら落ちるスライダーとのコンビネーションで、この球自体のキレは悪くない。比較的低めに集まり、むしろストレートよりもコントロールはつけやすいのかもしれない。ただ変化球は、この球とのコンビネーションのみで単調な印象は否めない。 その他 牽制は、パッとマウンドを外し投げるフリこそするが見られなかった。クィックは、1.0~1.05秒と高速で、非常に素早く投げ込める。フィールディングは、けして苦手ではなさそう。ただ試合では、三塁に悪送球して、決勝点を与えてしまうなど、冷静な判断が求められる。 (投球のまとめ) ボールの勢いは評判どおりでしたが、細かいコントロールや、投球術・冷静な判断力などに未熟さを感じます。けしてすべてが悪いというよりは、大事な場面での経験不足を実感致します。逆に場慣れすれば、もっと持ち味を発揮しても不思議ではありません。 (投球フォーム) では今後に向けて、どのへんを改善して行けば好いか考えてみましょう。 <広がる可能性> ☆☆☆ お尻の一塁側への落としは甘さが残るものの、けして落とせていないわけではありません。もう少し高いところで足をピンと伸ばせれば、より一塁側に落とせると思います。そうすれば、無理なくカーブで緩急を効かせたり、フォークのような縦の変化球の修得も期待できます。 また「着地」までの粘りもやや淡白で、あまり体を捻り出すだけの時間が稼げていません。この辺が、好い変化球を修得できない要因かもしれません。もう少し下半身の鍛錬と股関節の可動域を広げて、「着地」までの粘りを作りたいですね。 <ボールの支配> ☆☆☆ グラブは最後まで体の近くにあるのですが、少し最後後ろに抜け気味です。もう少しシッカリ抱えられると、両サイドへの投げ分けも安定して来るかもしれません。足の甲手の地面への押し付けは浮きがちで、ボールが上吊る可能性は否定できません。「球持ち」もそれほどではないですし、指先の感覚は好いように思いません。根本的に問題があるというよりは、鍛錬と意識で改善できればレベルにはあると思います。 <故障のリスク> ☆☆☆ お尻の落としは甘いとはいえ、体をひねり出すスペースはある程度確保。またカーブやフォークといった球種も投げないので、肘への負担は少なそう。 振り下ろす腕の角度はあるものの、それほど無理は感じないので、肩への負担も大きくはないのでは?いずれにしても、尋常ではない腕の振りや地面の蹴り上げなので、故障への可能性は充分秘めています。その辺は、日頃からしっかり体を手入れして欲しいものです。 <実戦的な術> ☆☆☆☆ 「着地」までの粘りはあっさりしているので、打者としては苦にならないフォーム。それでも「開き」自体は平均的で、極端にボールが見やすいということはないでしょう。 特筆すべきは、腕の振りの強さ。この体でも、150キロ級のボールが投げられるのは、並々ならぬ腕の振りがあるからでしょう。これだけ腕を振れる高校生は、全国でも殆どいません。またボールへの体重の乗せがよく、地面の蹴り上げも特筆ものです。創りだしたエネルギーを、遺憾なくボールに伝えることができています。フィニッシュの形としては、今年の候補の中でもトップ級です。 (フォームのまとめ) 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「体重移動」に優れますし、「「着地」「球持ち」「開き」も平均レベルはあります。そういった意味では、フォームに大きな欠点はありません。 ただ各動作が甘く、制球を司る動作はイマイチ。故障に関しては、大きな負担はかかっていないと考えられます。しかし尋常じゃない体の使い方をするので、負担は少なくないのでは? (最後に) すでに150キロを記録しているように、持っている資質の高さは確かなのでしょう。問題は、それを活かす術が足りないのと、明らかな経験不足を感じます。 例え150キロを投げようとも、高校からプロといった感じはしません。しかし大学や社会人でも通用するところを見せれば、近い将来ドラフト候補として注目される存在になるのではないのでしょうか。今後どういった進路をたどり、活躍してゆくのか? 大変興味深い選手でした。柳沢 一輝 その名前、ぜひ覚えておいて損はなし! (2013年夏・広島大会) |