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児山 祐人(関西)投手 183/76 左/左 
 






                  「目に見えては変わってないけど」





選抜で投球では、夏には140キロ台を連発できるようになれば、中位指名以上の指名が期待できるのではないかと評価保留にしていた 児山 祐人 。しかし最後の夏の投球を見ても、その姿は選抜の時と殆ど変わらなかった。

(投球内容)

重心を低く沈ませ、球持ちよく投げるのが、この投手の持ち味.

ストレート 135~140キロ(MAX143キロ)

 自身のMAXは143キロと言われるが、この夏の大会の試合を観る限り球速は135~140キロぐらいと、選抜と殆ど変わらない。いつも言うことだが、この選手は「球持ち」が実に好いので、打者がどうしても差し込まれてしまい、常時5キロ程度は速く感じさせる効果がある。

 更に一冬超えた選抜あたりから、ベース板を通るまでボールの勢いが落ちなくなり、実に球筋が力強くなってきた。特にこの選手、いつでも左打者外角、右打者内角へのクロスの球筋ならカウントを取れる絶対的な自信がある。そこを中心に、投球を組み立てられる強味がある。また右打者に対しては、外角いっぱいにも球を集められる制球力。

 結構球筋がバラついているようにも見えるのだが、要所ではしっかり締めることができ、この夏は 41回2/3イニングで、四死球は僅か6個。四死球率は、14.4% と極めて低く、フォアボールで自滅することがないことを示している。

変化球 カーブ・スライダー・スクリュー

 持ち球も特に選抜の時と変わっていない感じで、速球を軸にしながらも、これらの変化球を上手く織り交ぜ投球を組みてて行く。何か絶対的な球種があるわけではないのだが、それでもこの夏の準々決勝まではイニングを上回る数の奪三振を奪っていた。どの球にも絶対的なキレはないが、使える球種であることは間違いない。


その他

 牽制はそれなりに鋭いのですが、クィックは1.25秒前後とあまり上手くはありません。またフォームをあっさり盗まれて、盗塁される場面も見られました。フィールディング自体は上手いのですが、状況判断が甘く無理な送球で傷口を広げてしまうことがあります。

(投球のまとめ)

目 に見えての変化は、春~夏にかけて殆どありませんでした。そういった意味では、成長力・野球への意識という意味では不安は残ります。その一方で左腕にしてはコントロールが安定していることと、独特の「球持ち」の良さという武器を持っている点は高く評価できます。



(フォームについて)

 春から目に見えて変わっておらず、今回は細かくは分析致しません。ただ引き上げた足を比較的な高い位置で伸ばす、昨秋までのフォームに戻したように思います。それが、どの程度ピッチングに影響しているのかはわかりませんでしたが。

 この選手「球持ち」もよく、結構実戦的なフォームをしているので、凄く考えてプレーしているように思えるのですが、私はそうは思いません。あくまでも、自然に打ち難いフォームが出来上がってしまった感じがします。

 ピッチングを観るかぎり実戦派に見えるのですが、ピッチングにインテリジェンスは全く感じません。というのは、同じような過ちを繰り返す傾向にあるから。

(最後に)

 以前の寸評にも書いた通り、数多くの左腕を輩出してきた関西の中でも、私はこの選手の資質を一番買います。それは核になるクロスの球筋が明確であり、また天性の「球持ち」の良さがあるから。

 その一方で、資質を順調に膨らませてこられなかった野球への意識・感性の無さに疑問を持たざるえない部分もあります。この点が、評価を悩まさせる要因になっています。それでも全国的に見ていないタイプの左腕であり、高校からプロに混ぜてみたいと思わせてくれるものがありました。物凄い投手になるかもしれないと言う期待もある一方で、全然ダメかもという不安も同居します。果たしてどう転ぶのか、私自身見守って行きたいと思いました。不安はありますが、高校からプロでやって行ける素材だと評価します。

蔵の評価:☆☆

(2013年夏・岡山大会)








 児山 祐人(関西3年)投手 183/76 左/左
 




              「赤川克紀(ヤクルト)の同時期より上では?」





2008年度のドラフト会議で、ヤクルトからドラフト1位指名された 赤川 克紀。高卒3年目には、ローテーション投手になり6勝をマーク。4年目の昨年は、8勝をマークしヤクルトの中心投手へと成長した。そんな赤川を3年春に、宮崎県の招待試合で観戦。招待された帝京打線に、こてんぱんに打ちのめされていた。そういった意味では、児山 祐人 の方が、春の時点での投球内容は上ではないかと思うのだ。

ただ赤川が素晴らしかったのは、この全国レベルの打力を実感し、春~夏の間に大きく成長。田舎のもっさりした左腕といった感じから、夏には全国レベルの技量を身につけドラフト1位の評価をこぎつけた。しかし児山は、神宮大会の時と殆ど変わっていなかったところに、今後に不安を残す。

(投球内容)

神宮大会の時の寸評にも書いたように、この選手の良さは「球持ち」の良さ。良い意味で悪い意味でも、その辺は神宮大会と変わらない。

ストレート 135~後半

球速的には、神宮大会の時と一冬越えても殆ど変わっていなかった。しかしベース板を通過するときのボールの力強さは、秋よりもワンランク上がっているように見える。そのため神宮大会代表チームであった高知高校も、終盤まで児山のストレートに押され続けることになる。

元来球持ちの良さでタイミングを狂わせ、両コーナーを丹念に突くピッチングで粘っこく投げるのがこの選手の持ち味。特に右打者内角・左打者外角のクロスの球筋には、いつでもカウントを取れる安心があり、この選手の最大の魅力だといえよう。

変化球 カーブ・スライダー・スクリュー

ひと通りの変化球を投げられ、緩急をつけたり、カウントを稼ぐのには役立ちます。結構ボールゾーンに投げてくるのですが、その割に空振りが誘えません。テイクバックを小さく屈め、少しボールを置きに来るような腕の振り。打者は、意外と速球との腕の振りを見極めている可能性があります。というか、投球に空振りを誘うほどの勢いがボールにもフォームにも欠けているからかもしれません。

その他

牽制は平均的で、左腕ですが特別上手くはありません。そのためランナーを刺すような、そういった送球は見られません。フィールディングも動きは悪くないのですが、自らミスしてピンチを広げてしまう状況判断の悪さが目立ちます。クィックも1.25秒前後と、基準である1.2秒からは少し遅れがち。こういった動作からも、野球センス自体に疑問が残ります。

(投球のまとめ)

彼の「球持ち」の良さは、努力と創意工夫で生まれたものと言うよりは、気がついていたら出来るようになっていた類だと、そういった気がしてなりません。そのため投球にムラがあったり、マウンドでの集中力が切れると一気にガタッと崩れて集中打を浴びます。その辺の投球は、選抜でも終盤に逆転を許した内容を見ていると、一冬越えても根本的には変わっていないなという印象は否めません。

若干手元でのボールの威力は増しましたが、殆ど神宮大会の時と変わっていない。その点は、大いに気になる材料。特にこの選手で一番欠けるのは、同じようにやられても、そのことを繰り返す学習能力に欠ける部分。これが、今後資質を伸ばして行く時に、どう影響して行けるのか気になります。

(投球フォーム)

では、実際の投球フォームを見て、秋からの変化がなかったのか考えてみたいと思います。

<広がる可能性> ☆☆

高い位置でピンと伸ばしていた足を、地面に向けて伸ばすようになりました。そのため体を捻り出すスペースは狭くなり、見分けの難しいカーブや縦の変化を投げるには無理があるようになりました。

「着地」までの粘りもそれほどではないので、体を捻り出す時間も確保出来ていません。スピードのある小さな変化は可能ですが、切れの良い変化球や大きな曲がりは期待し難くなっています。変化球で絶対的な武器がないのも、この辺のフォームが影響しているのではないのでしょうか。

<ボールの支配> ☆☆☆☆

グラブは一応最後まで体の近くにあるので、両サイドへの投げ分けは安定。膝小僧をついてしまうほど沈めていた重心の沈み込みを緩和しつつも、足の甲での地面への押し付けは健在。これにより、ボールが上吊るのを防ぎます。「球持ち」は非常に良いのですが、その割に指先の感覚はそれほどでもないのでは? それでも困ったときは、クロスへの速球を投げていれば、四球を出すことは少ないはず。大型左腕ですが、制球に狂いがないのが魅力。

<故障のリスク> ☆☆☆

お尻を落とせるフォームではなくなったので、秋よりもカーブなどを投げるときに負担がかかるようになりました。それでもカーブを多く投げるわけではありませんし、フォークのような縦の変化を武器にするわけではないので、神経質になることはないでしょう。

振り下ろす腕の角度には無理がないので、肩への負担も少ないはず。そのため、故障への心配はそれほど大きはないと考えられます。

<実戦的な術> ☆☆☆☆

「着地」までの粘りが浅く、打者としては合わせやす。しかし「開き」までは早くなく、けしてボールが見やすくはありません。独特のテイクバックと「球持ち」の良さが、打者のタイミングを微妙に狂わせます。

これだけ「球持ち」が良いのに、腕があまり絡んできません。それだけ腕を鋭く・強く振れていないということでしょう。ただ重心の深い沈み込みを緩和させたことで、以前よりもボールに体重を乗せられるようになり、打者の手元まで勢いの落ちないボールが投げられるようになりました。ここが、彼の最大の成長ではないかと考えます。

(投球フォームのまとめ)

お尻の落としが悪くなったのは気になりますが、「体重移動」は緩和されボールの質が向上。投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の観点では、「着地」以外の部分は良いと評価します。何処まで考えて作りあげたフォームかは疑問ですが、結果的にはかなり実戦的なフォームになっています。

(最後に)

本質的には、神宮大会からの大きな成長は感じられませんでした。それでも結果として重心の沈み込みを緩和させ、ボールの質の向上。球筋の良さだけでなく、実際に投げ込むボール自体にも成長が感じられます。

夏までに、今の土台を維持しながら、常時140キロ前後~MAX145キロぐらいまで投げ込めるようになると、ドラフトでも中位以上での指名も期待できるのではないのでしょうか。ただそういった己を追求し、資質を伸ばして行けるのかという部分には疑問が残り、夏までその成長を見極めてから最終的な判断を下したいと思います。個人的には、関西で今まで見てきた左腕では、一番の素材だと今でも評価します。

蔵の評価:追跡級!

(2013年 選抜)






 児山 祐人(関西2年)投手 183/76 左/左





               「歴代関西左腕で一番じゃないか?」





 数々の左の好投手を世に輩出してきた関西の中でも、この 児山 祐人 が、私は歴代NO.1の素材ではないかと思うのだ。その一番の理由は、どちらかというと関西の投手は、マウンドさばきが洗練されていて、凄いピンチングが上手そうに見えて、意外にコントロールがアバウトだったり、フォームに課題があったり、精神的にムラがあったりと、上のレベル意識できる実戦力に欠けた投手が伝統的に多かった。そのためアマチュア時代は異彩を放っても、プロなどに行くと伸び悩む傾向が強い。しかしこの 児山 祐人 は、実に実戦的だ。





(投球内容)

 この投手の一番の良さは、なんと言っても「球持ち」の良さにある。そのため球威・球速は驚く程ではないのだが、実にボールがねちっこい。また右打者の内角クロスへのコントロールには、絶対的な自信を持っている。カウントに困っても、このコースへなら必ずストライクが取れるという、明確なものを持っているのだ。2年秋の時点で、これだけ球持ちがよく、球筋が安定している左腕は、全国的にも殆どいないだろう。

ストレート 常時135キロ前後~後半

 ボールに際立つ球威・球速・キレは感じないのだが、「球持ち」が良いので打者が食い込まれタイミングを取りにくい。特に空振りをバシバシ誘うような球ではないのだが、粘っこく相手をつまらせる。特にピンチになると、右打者の内角を突いて、フライの山を築かせる。ただ左打者からはボールが見やすいのか、意外に左のスリークオーターにしては、左対左の有利さがない。

変化球 カーブ・スライダー・スクリュー

 ひと通りの変化球を、コンビネーションに交えてきます。ただカウントや緩急をつけるのには役立ちますが、三振を奪えるほどのキレはありません。またスクリューも、ピッチングの幅を広げるのには役立ちますが、投げる時に身体から腕が離れて振られ、腕の振りの違いから球種がわかってしまいます。

その他

 牽制は平均的で、左腕ですが特別上手くはありません。そのためランナーを刺すような、そういった送球は見られません。フィールディングも動きは悪くないのですが、自らミスしてピンチを広げてしまう状況判断の悪さがあります。クィックも1.25秒前後と、基準である1.2秒からは少し遅いです。こういった動作からも、野球センス自体には少し疑問が残ります。





(投球のまとめ)

 これだけ「球持ち」がよく球筋も安定しているのに、不思議と投球にセンスを感じない珍しいタイプ。物凄く実戦的なのかと思うと、投球の融通さ・創意工夫などに欠けるのが非常に気になります。

 3番を打つ打撃でも、同じインハイのストレートに手を出しフライを連発。そういった学習能力の無さ・創意工夫のセンスの無さは、これから自分のピッチングを自ら考え、広げて行けるのだろうか?という疑問を持ちます。

 この選手のフォームやコントロールは、自ら考えて身につけたというよりは、自然に身についてしまったような気が致します。普通そういったことはあまりないのですが、彼は実際の投球とプレースタイルが全く合致しないという、今まであまり見たことのない不思議なタイプ。これからどんな成長曲線を描くのか、私自身全く想像できません。

(投球フォーム)

<広がる可能性> 
☆☆☆

 足を引き上げ曲げ伸ばしし、高い位置でピンと伸ばします。そのためお尻を三塁側(左投手の場合は)に落とせるので、カーブやフォークといった球種を無理なく投げられる、身体を捻り出すスペースは確保できています。

 しかし「着地」までの粘りがタンパクなので、身体を捻り出す時間が確保できません。そのためキレや曲がりも中途半端になり、絶対的な変化球を身につけられない要因になっています。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆

 グラブは最後まで胸元に抱えられ、両サイドへの投げ分けは安定。足の甲は、膝小僧が地面についてしまうほど重心が沈んでおり、スパイクのエッジの恩恵は受けられません。そのため重心が低い割には、ボールが高めに抜けてしまう場面も見られます。また「球持ち」が異常に良い割に、意外に指先の感覚は悪く、内角クロスへの球筋は安定していますが、それ以外は結構バラつく傾向にあります。ただこの辺は、一冬越えるとだいぶ変わってくるかもしれません。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆

 お尻が落とせるフォームなので、カーブやフォークのような球種を投げても、負担がかかり難いはず。また腕の角度にも無理がないので、肩への負担も少ない。しいて言えば、重心を非常に深く沈めて投げているので、腰への負担が大きいかもしれません。

<実戦的な術> 
☆☆☆

 「着地」までの粘りが甘く、打者としてはタイミングが合わせやすいです。またそのせいで、身体の「開き」も少し早いと言えるでしょう。しかしボールが見えてから、中々ボールが出てこない「球持ち」の良さが彼の最大の良さ。そのためわかっていても焦らされて、中々ボールを捉えきれません。

 この選手これだけ「球持ち」が良いのに、腕があまり絡んできません。それだけ腕を鋭く・強く振れていないということでしょう。また重心が深く沈みすぎるために、前への「体重移動」が不十分で、グッとボールに体重が乗ってきません。

(フォームのまとめ)

 絶対的な「球持ち」がありながら、「着地」「開き」「体重移動」という部分では、多くの課題を抱えます。「球持ち」が良いのに、こういった他の技術が未熟な選手は、あまり例がありません。





(最後に)

 「球持ち良さ」と「球筋の良さ」がありながら、投球センス・フォーム技術などに課題を抱える、非常に稀なタイプ。私自身今まで見たことがないので、今後どう伸びてゆくのかは正直想像がつきません。

 ただこの2つの破格の特徴をすでに持っていることも確かなので、この長所をベースにパワーアップしたり、更に実戦的な投球ができるようになったりしたら、それこそドラフト候補としてマークしないといけない素材でしょう。とりあえずは選抜までの成長を見極め、ドラフト候補になり得るか考えてみたいと思います。個人的には、生かし方次第で、非常に面白い存在になると思うのですが。


(2012年 神宮大会)