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嘉陽 宗一郎(亜細亜大4年)投手 187/90 右/右 (松山聖陵出身) | |
松山聖陵時代や亜大の1年時ぐらいは、140キロ台中盤の速球を投げ込んでいた 嘉陽 宗一郎 。 しかし上級生になるにつれ、亜大特有のどんどん球速を抑えたピッチングに変わってゆく。それでも昨秋ぐらいまでは、常時140キロ前後ぐらいでも、最速では140キロ台中盤には到達。しかし今春は、常時135キロ前後で~最速でも140キロ出るか出ないという、コントロール重視の投球になっていて物足りない。 (投球内容) 惚れ惚れするようなスラッとした投手体型で、フォームもバランスのとれた正統派右腕。 ストレート 常時135キロ前後~140キロぐらい ☆☆★ 2.5 角度を感じさせる球で、両サイドを突いてきます。ここまでのシーズンでは、29回2/3イニングで四死球15個とイニングの半分ぐらいの割合(目安は1/3以下)で出しているものの、これはギリギリを突こうという意識が強いからでコントロールが悪いからではないのだろう。ときにはコース一杯にビシッと決まって、見逃しの三振を奪うケースも少なくない。 また打者の内角を厳しく突くことをテーマにしているのか、そこで詰まらせることも少なくない。しかしそれは、コースに決められなければ抑えられない程度の、球威・球速であるという裏返しでもある。試合を壊さないように丹念にという気持はわかるが、明らかに大学からのプロ入りを諦めたのか?という感じの投球にうつる。 変化球 スライダー・チェンジアップ・カーブなど ☆☆★ 2.5 曲がりながら沈むスライダーと、チェンジアップを織り交ぜて来るコンビネーション。余裕が出てくると、さらに緩いカーブを織り交ぜて来る時がある。ただしこれらの変化球が、高めに浮いたりすることも少なくありません。また打者の空振りを誘うほどの威力はないので、決め手に欠ける部分も否めない。全体に変化球の精度・キレに物足りないものを感じます。 その他 牽制が非常に鋭く上手いのが特徴で、フィールディングもうまく、ベースカバーへの入りもよく鍛えられています。クィックも1.05秒前後と素早く、投球以外の技術には高いものがあります。 (投球のまとめ) けして打者との駆け引きができない選手でもなければ、普段のコントロールが悪い選手でもありません。ただし時々に甘い球があったり、甘くない球でも打ち返されてしまう傾向があることは否めません。このキャパを落としたピッチングで結果が出ていれば良いのですが、ここまで7試合に登板し 4勝2敗 防御率 2.73 と平凡。大学生のドラフト候補ならば、防御率が1点台あることが望ましいといえます。それだけ数字の示すとおり、実際の投球も物足りないことを裏付けます。 (投球フォーム) ではどのへんに問題があるのか、ピックアップしてみてゆきましょう。フォームの構造上は、チームメイトの 高橋 遥人(亜大)と似た傾向がみられます。 1,良い変化球が習得できない 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻がバッテリーライン上に落ちてしまいます。そのため体を捻り出して投げる、カーブやフォークといった球種を投げるのには窮屈になります。すなわち、緩急や縦の変化を違う球に求める必要がでてきます。お尻の落とせないフォームを修正するのはリスクが大きいので、そこを変えないで投球を工夫する方がよろしいかと。 しかし他の変化球に求めようとも、「着地」までの粘りがあっさりしていて、体を捻り出す時間が確保できません。こういった投手は、どうしても変化球のキレや曲がりの特徴に欠ける傾向があります。>「着地」までの粘りを意識しつつ、股関節の柔軟性を養って下半身を強化する必要がありそうです。 2,ストレートに存在感がない 上記の下半身の使い方と関連するのですが、粘りが足りないためにボールにしっかり体重を乗せきる前にリリースを迎えてしまっています。もう少し「球持ち」も意識して、体重が乗ってから放せるようになると、グッと打者の手元まで生きた球・球威のある球がベース版を通過できるようになるでしょう。 3,ボール全体が高い 下半身の使い方が下手なので、足の甲で地面を抑える時間が短く遅い。足の甲の動きを見ていると、最初は地面から浮きがちなのが、フォーム後半にはしっかり地面を捉えているのがわかります。この時間をもっと早くから、そして長く抑えられるようなフォームになっていると、もっと低めに集まる可能性がでてきます。 そして先にも触れたように「球持ち」が浅く押し込みに乏しいので、ボールが抜けやすく低めまで押し込めないのだと考えられます。 (フォームのまとめ) 高橋選手と似ていると書いたのは、下半身の使い方に課題があり、「着地」や「球持ち」などの動作に粘りが足りないから。ここを意識して取り組めば、エネルギー伝達はもっと効率的に、更に打者からもタイミングが合わせ難いフォームになると考えられます。昨日も書きましたが、投球フォームの核は、メリハリと粘りです。 特に嘉陽選手の場合は、「粘り」を重点的に追求すべきではないのでしょうか。 (最後に) 実戦的な投球を追求したい、重視したいという気持は伝わってきますが、それがまだ中途半端なところで留まっています。そのためには何をすべきなのか、試行錯誤の日々なのではないのでしょうか? 現状の内容では、大学からのプロ入りは厳しく社会人で力と技のバランスを養った投球を構築する時間が必要だと感じます。もちろんこれを秋までに実現できれば良いのですが、なかなか環境の変らない世界で大きな変化を望むのは大変なこと。とりあえず秋までは継続して追いますが、今のままだと社会人で力を付けてからという判断になりそうです。 蔵の評価:追跡級! (2017年 春季リーグ戦) |
嘉陽 宗一郎(亜細亜大3年)投手 186/85 右/右 (松山聖陵出身) | |
松山聖陵時代には、☆☆ を付けて、ぜひ高校からプロに入って欲しかった 嘉陽 宗一郎 。 そんな彼も、再びドラフト解禁の年を迎えようとしている。しかし亜細亜大に進んでからの彼の投球を見ても、まだまだ成長途上といった感じで、こんなものではないだろうという思いが強い。 (ここに注目!) 亜大下級生時代は、140キロ台中盤のボールを連発していて球速があったような気がします。亜大の選手は、どうも省エネピッチングを心がけるようにしているのか? 上級生になってキャパを落として投球する傾向が強いのが気になります。その間に素材が劣化して、本当に速い球が投げられるなくなる。これは学生相手には通用しても、プロでは通用しません。東浜巨(ソフトバンク)が、下級生時代のボールの勢いを取り戻すのに、プロ入り後随分と時間がかかったのは記憶に新しいところかと。果たして嘉陽が、最終学年でどのようなパフォーマンスを魅せるのか注目したいところです。 (投球内容) 惚れ惚れするような均整の取れた体格ながら、ランナーがいなくてもセットポジションから投げ込んできます。 ストレート 常時130キロ台後半~140キロ台中盤 ☆☆☆★ 3.5 ビシッとミットに収まる、適度な角度と伸びを感じさせるストレート。そのため球速は平凡でも、それ以上に感じさせる球質です。やはりこの球質で140キロ台中盤をコンスタントに投げ込まれたら、容易に捉えるのは難しいのではないのでしょうか。 しかしリリースの時に球離れが早く、ボールがしっかり押し込めないことが多々あります。そのためボールが高めに抜けてしまうことが多く、両サイドに散らすことはできても、高低の球筋は安定しません。 変化球 スライダー・カーブ・フォークなど ☆☆★ 2.5 曲がりながら沈むスライダーのキレは悪くありませんし、基本的に変化球はこの球とのコンビネーション。余裕がでてくれば緩いカーブを交えたり、何やらあまり沈まないフォークのような球を投げます。しかしこれらの球の依存度は低く、またその精度もそれほど高くないといえます。そういった意味では、ストレート以外に空振りを誘えるほどの変化球はないのではないかと。この辺は、今後の大いなる課題ではないのでしょうか。 その他 元々牽制には鋭いものがあり、苦手意識はなさそう。フィールディングは平均的ですが、ベースカバーに入るのは素早くよく鍛えられています。クィックは1.05秒前後とまずまずで、高校時代よりも0.1秒ぐらいは素早く投げ込めるようになっています。 (投球のまとめ) 威力のある速球とスライダーを、両サイドに散らせて来る投球スタイル。まだ細かいコントロールや投球術はなく、ボールの力に頼ったピッチング。もう少し相手をみて、じっくり投球できたり、いろいろな駆け引きができる余裕が出てくると良いのですが。 持っている素材は確かなので、最終学年で本格化すれば、一気に上位候補への評価を不動のものにできると思います。力量的には、下級生時代の 木佐貫 洋(元巨人)ぐらいで素材の良さが優先しています。木佐貫のように、最終学年で才能が花開くことを期待します。 (投球フォーム) フォームを分析して、今後の可能性を模索してみたいかと。 <広がる可能性> ☆☆ 2.0 引き上げた足をしっかりピンと伸ばせないので、お尻はバッテリーライン上に残ってしまっています。すなわち身体を捻り出すスペースが確保できないので、捻り出して投げるカーブで緩急を利かせたり、フォークのような縦に鋭く落ちる球を投げるのには適しません。 また「着地」までの粘りもいまいちで、身体を捻り出す時間が物足りません。こうなると変化球のキレや曲がり幅が平凡になりやすく、武器になる変化球を習得できるのかには疑問が残ります。あくまでもカットボールやツーシーム・スプリットのような、速球に近い小さいな変化で芯をズラす投球を目指すことになるかもしれません。 <ボールの支配> ☆☆★ 2.5 グラブは最後まで内に抱えられているので、両サイドの投げ分けは安定。しかし足の甲での地面への押しつけが浮いてしまっているので、力を入れて投げるとボールが上吊りやすいのだと考えられます。だからある程度投球をまとめるためには、キャパを落として投げざるえないのではないのでしょうか。 また「球持ち」が浅く、リリースでボールを押し込む前に放してしまっています。これでは、ボールが低めに集められるのも致し方ないかと思います。微妙なコントロールがつかないのも、この指先の感覚の悪さからもしれません。 <故障のリスク> ☆☆☆ 3.0 お尻は落とせないものの、カーブやフォークなど肘への負担がある球種それほど投げません。今後こういった球種を投げる頻度が増えない限りは、それほど悲観しなくても良さそうです。 腕の送り出しにも、それほど無理は感じません。そのため肩への負担は、高くないと考えられます。フォーム自体も力投派ではないので、消耗は激しくないと考えられます。疲れは、それほど堪らない投手ではないかと。 <実戦的な術> ☆☆★ 2.5 「着地」までの粘りが淡白で、比較的苦になく合わせやすいフォームかと。更に「開き」も早くなりがちで、いち早く球筋を読まれてコースを突いた球でも打たれるかもしれません。 振り下ろした腕は身体に絡んでおり、打者の空振りは誘いやすいのでは。しかしボールにしっかり体重が乗り切る前にリリースを迎えているので、打者の手元までの球威という面ではどうでしょうか? (フォームのまとめ) 投球フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の観点でみると「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」すべてに欠点があり、非常に素材型であることがわかります。 お尻が落とせないので肘への不安、足の甲の押しつけと球持ちの甘さからの制球力。お尻が落とせないことと着地の粘りのなさから来る、今後の投球の広がりなどを加味すると現時点では伸び悩む危険性が高いことがわかってきました。 (最後に) 素材としては、一気に来春は大学NO.1右腕までのし上がっても不思議ではないと考えます。しかし現時点での投球を観る限り、まだ発展途上の段階。技術的に観ると、かなりリスキーな素材であることがわかってきました。そう考えると、最終学年でも伸び悩むかもしれない、そんな恐れを感じたオフシーズンでした。 (2016年 大学選手権) |
嘉陽 宗一郎(愛媛・松山聖陵3年)投手 185/70 右/右 |
「見違えるほど成長」 昨秋の四国大会で見た時は、MAX140キロという触れ込みだったものの、まだ恵まれた体格を生かしきれず、球速も130キロソコソコだった 嘉陽 宗一郎 。しかし、この夏の愛媛大会準決勝。すでに大会も終盤だというのに、コンスタントに140キロ台を記録し、最速で146キロまで到達。明らかにボールの勢い、投球の逞しさが目に見えて変わっていた。 (投球内容) 185/70 の体格が示す通り、実にスラッとした投手体型が目を惹きます。フォームも正統派の右腕といった本格派で、見ていて惚れ惚れするタイプ。 ストレート 140~146キロ 常時140キロ台を出せるようになり、ボールにもそれなりに勢いが出て来ました。右打者の外角一杯にコントロールでき、そこで三振が奪えます。基本的に、右打者にも左打者にも内外角に投げ分けます。際立つ球威や伸びはありませんが、高校からプロに行けるだけの球を投げつつあります。 変化球 スライダー・カーブ スライダーは大きくキレるというよりは、打者の近くで小さく曲がる実戦的な変化。緩いカーブも投げることができ、投球にアクセントを与えます。他にもチェンジアップ系の球もあるようですが、それほど大きなウエートは占めておりません。まだ絶対的な変化球はありませんが、速球以外でも投球を組み立てられるレベルにはあります。 その他 牽制もまずまずで、ベースカバーに入るのも早いです。クィックも1.15秒前後と基準レベルであり、大型でその辺が心配されたのですが、無難にこなせるだけの術は身につけています。 (投球のまとめ) 特に投球にメリハリをつけるような、力の入れどころと抜きどころを心得ている感じは致しません。あくまでも淡々と投球を刻んで来るのですが、安定して高い能力を出せるまでに成長してきています。 特にまだ絶対的なボールはありませんが、変化球も悪くなく、総合力で評価できます。素材としての伸びしろも期待できますし、この一年でここまでレベルを引き上げているのですから、意識が低い選手だとは思えません。昨秋の投球を見ているだけに、よくこの一年でここまで引き上げたなぁと関心さえします。 (投球フォーム) ランナーがいなくても、セットポジションから投げ込んできます。力投派というよりは、淡々と投げ込んで来る先発タイプ。 <広がる可能性> ☆☆ 引き上げた足を地面に向けてピンと伸ばすので、お尻は一塁側には落とせません。そのため体を捻り出すスペースは確保できていないので、カーブで緩急をつけたりフォークのような縦の変化球を投げるのには無理があります。その点ではカーブを結構投げてくるので、肘への負担は否定できません。 また「着地」までの粘りもあっさりしているので、体を捻り出す十分な時間が確保出来ていません。そう考えると、打者の空振りを誘うような鋭い曲がりの変化球を習得したり、球種を増やして投球の幅を広げて行くことには不安を覚えます。むしろカットボールやツーシーム・スピリットなど、球速豊かな曲がりの小さな変化を中心に、ピッチングの幅を広げるのが向いているのではないのでしょうか。 <ボールの支配> ☆☆☆ グラブは最後まで体の近くにあり、両サイドへの投げ分けは安定。ただ足の甲の地面への押し付けが浮いてしまっており、力を入れて投げるとボールが上吊りやすい可能性があります。その割に低めに決まることも少なくないのは、「球持ち」がよく指先の感覚が好いからかもしれません。特に制球を乱し、苦労するということはなさそう。 <故障のリスク> ☆☆☆ お尻が落とせない割にカーブを多投することでの、肘への負担は前にも書いた通り。ただ腕の角度には無理がなく、肩への負担は少なそう。しかしボールを少し無理に押し出すような動作も見られるので、その辺が少し引っかかります。いずれにしても、アフターケアには充分気をつけて欲しいところ。 <実戦的な術> ☆☆☆ 「着地」までの粘りがいまいちで、打者としては合わせやすいのでは? 体の「開き」も少し早く、いち早く球筋が見極められてしまいます。せっかくコースを突いたり、ストレートに磨きをかけても、その効果は今のままだと薄いものになってしまいます。 腕は体に絡んで来るように、腕の振りは好いです。そのため、速球と変化球の見極めは困難。下半身の使い方が下手な割には、地面の蹴り上げが良く体重が乗せられているようにも見えます。ただ足の甲の押し付けができていないだけに、それほど球威は感じられないのではないのでしょうか。 (投球フォームのまとめ) 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」と「開き」に課題を残します。「体重移動」は「着地」が早い割にはソコソコできているようで、「球持ち」も悪くは見えません。ただ技術的には、まだまだ課題が多いのがわかります。 見た目のイメージよりも、伸び悩む要素は少なくありません。そういった意味では、リスキーな素材だとも言えなくはないでしょう。 (最後に) それでも体つきはまだまだ細身ですし、肉付け・パワーアップの余地は充分残されているように思います。コントロール・投球にも大きな破綻はなく、適度なまとまりもあります。 まだ突き抜けるほどの凄みは感じませんが、今後そういったものを身につけて行ける可能性は感じます。上位指名は無理でしょうが、ドラフトにかけるなら、3~5位 ぐらいで指名できるぐらいの選手ではないのでしょうか。個人的には、秋までのイメージがある分、その変化に衝撃を受けました。高校から、プロに行ける素材だと評価します。 蔵の評価:☆☆ (2013年夏 愛媛大会) |