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 平良 拳太郎(北山)投手 180/70 右/右
 





                         「新星現る」





対戦相手の鹿児島情報の試合が見たく、たまたま観戦した北山高校。部員17名のチームが沖縄大会を制して、春季九州大会に乗り込んできた。このチームを支える 平良 拳太郎 は、想像以上の好投手。今大会の活躍で、一躍ドラフト候補に躍り出た。

(投球内容)

 引き上げた足をかなり二塁側に送り、少しトルネード気味体を捻って投げる独特のフォーム。それでいて腕は、サイドハンドに近いスリークオータの位置から振り出されてくる。

ストレート 常時135~89マイル(142.4キロ)

そ れほど球威や勢いは感じないが、コーナーにビシッと決まってくるストレート。ストレートに絶対的なものはなく、むしろ武器であるスライダーやシンカー(本人曰くフォーク)といった球種を、より演出するために存在する。そのボールには、ドラフトで指名されるほどの自己主張するような強烈なものは感じない。ただし両サイドに、キッチリコントロールはできている。

変化球 スライダー・フォーク

 サイドに近いフォームなので、大きく横に曲がるスライダーが最大の武器。特に右打者にとっては、かなり厄介な球だと言えよう。左打者にもこのスライダーを両サイドに使い分けてくるが、勝負球はシンカーのようなフォークボール。右打者にも左打者にも、仕留められる変化球を持っていることは大きい。

その他

 牽制は、殆ど鋭いものは入れてきません。しかしクィックは、1.0秒前後で投げ込めるように、非常に素早いものがあります。フィールディングはよくわかりませんでしたが、野球センスが高い選手なので、その辺は抜かりはなさそう。

(投球のまとめ)

 マウンド捌き、コントロール、変化球で空振りを取れる技術などを見ていると、ある程度完成された投手との印象を受けます。すでにその投球は、全国レベルで活躍するレベルでしょう。同じ沖縄では、中部商ー富士大に進んで、すぐに頭角を現した 多和田 真三郎 投手を彷彿させます。その多和田の高校時代よりも、球速・変化球レベルなども、現時点でワンランクは上回っていると言えます。

 課題は、サイド・スリークオーター系の宿命でもある、左打者に対し合わされやすいところ。右打者には完璧な投球をしていも、左打者にコースを突いた球をあっさり打たれてしまう場面が見られました。

 あと問題は、今後の伸びしろや投手としてのスケールがあまり感じられないという部分。その不安を払拭する意味でも、この春季大会~夏の大会までに、もうワンランク・ストレートの球威・球速など訴えかけて来るようなボールが欲しいかなと思っています。



(投球フォーム)

かなり独特のフォームなのですが、技術的な観点ではどうなのか検証してみましょう。

<広がる可能性> ☆☆

 引き上げた足を地面に向けるので、お尻は一塁側に落とせません。そのため体を捻り出すスペースが確保出来ていないので、カーブで緩急をフォークのような縦の変化に適しませんが、彼の大きな縦の変化はフォークとのこと。

 「着地」までの粘りはあるので、体を捻り出す時間は確保。これによりカーブやフォークといった球種以外ならば、修得しやすい下地はあります。ただし腕の振りがサイドに近いので、どうしても使える変化球は限られてしまいます。

<ボールの支配> ☆☆☆☆☆

 グラブを腰のあたりで抱え、両サイドへの制球は安定。足の甲でも地面を捉えており、ボールもそれほど上吊りません。「球持ち」もよく、指先の感覚も悪くありません。それでいて投げ終わった後のバランスも良いので、コントロールの良さは彼の最大の武器になって行くのではないのでしょうか。

<故障のリスク> ☆☆☆

 お尻が落とせず腕の振りも下がっているのに、フォークという肘を立てて投げる球種を武器にしている点は、肘への負担などを考えると大きそう。

 振り下ろす腕の角度には無理がないので、肩の故障の可能性は低いでしょう。いずれにしても故障には十分注意して、日頃から気をつけて欲しいものです。

<実戦的な術> ☆☆☆

 「着地」までの粘りは悪くないのですが、少し「開き」が早いので、その辺が左打者相手に苦労する要因でしょうか。

 腕は振れており、体に絡んできます。そのため見分けが困難で、スライダーやフォークといった球で空振りが取れます。かなりステップが広いので、前に十分乗りきれていないフォームのせいか、ボールへの体重の乗せという意味では物足りません。この辺がストレートに、訴えかけて来るような勢いを感じない要因ではないのでしょうか。



(最後に)

 すでに大学生が投げているような、大人びた投球をします。高校生としては完成されてしまっている印象で、今後の伸びしろや将来性といった意味では不安が残ります。そのためにも、夏までにもうワンランク・ツーランク、ストレートに磨きをかけて欲しいところ。短期間の間に目に見えた成長が見られるようならば、高校からプロに行くべき素材だと思うし、実際に指名されることになると思います。ただし春見た感じでは、強豪大学・有力社会人などに進みそうな選手、そんな印象を受けました。夏までの成長を、見届けたいですね。


蔵の評価:追跡級(夏は確認できず)


(2013年 春季九州大会)