「筋の良さはピカイチ」
昨夏の鹿児島大会を観ていて、一人気になる投手がいた。その男の名前は、二木 康太 。メガネをかけたスラッとした投手体型からは、投手としての筋の良さ・センスの高さを感じさせる。一冬越えて体がビシッとしてきたら、一体どんな投手になるのか楽しみにしていた。そんな ニ木のいる鹿児島情報が、春季九州大会まで勝ち上がったと訊いて宮崎まで足を運ぶ。
(投球内容)
秋季大会では、140キロ台を連発するまでに成長したと言われていた。しかしこの日は・・・
ストレート 常時135キロ前後~MAX86マイル(137.6キロ)
まだ体がビシッとしていない部分もあり、球威・球速と言う意味では物足りません。両サイドに投げ分けられる制球力はあるのですが、球威・球速が物足りないだけでなく、合わせやすいフォーム。そのためコースを突いた球でも、はじき返されてしまうことが少なくありません。
変化球 カーブ・スライダー・チェンジアップなど
ひと通りの変化球を、上手くコンビネーションに交えてきます。特に右打者外角のボールゾーンに逃げて行くスライダーで空振りが誘えますし、チェンジアップでも左打者相手に空振りも奪えます。腕の振りが良いので、速球と変化球の見極めはつき難いのではないかと考えられます。
(投球のまとめ)
一つ一つの球には驚くほどものはありませんでしたが、投手としてのセンス・総合力・将来性には高いものを感じます。イメージ的には、高校時代の 岩隈 久志 (堀越学園)的ですが、ボールの勢い・威力は岩隈の方が数段上でしょうか。
まぁ秋には140キロ台を連発していたという話が事実ならば、この冬は格段に成長したと言われるコントロールを重視した実戦的な方向で取り組んできたことがわかります。ストレートが本物になってくれば、非常に面白い素材でしょう。
(投球フォーム)
ノーワインドアップで、ゆったりと足を引き上げてきます。
<広がる可能性> ☆☆☆
引き上げた足を地面に向けて伸ばしているので、体を捻り出すスペースは確保できません。したがってカーブで緩急をつけたり、縦に鋭く落ちるフォークのような球種には適しません。
その一方で「着地」までの粘りは悪くないので、体を捻り出す時間は確保出来ています。これによりカーブやフォークといった球種以外ならば、上手く修得してピッチングに活かすことができます。実際に、そういった投球になっています。
<ボールの支配> ☆☆☆☆
グラブを胸元に最後まで抱えられているので、両サイドへの投げ分けは安定。足の甲もしっかり地面を捉えているので、ボールも上吊り難いフォーム。更に「球持ち」はそれほどでもという感じですが、指先の感覚は良さそうで制球の不安はなくなりつつあります。
<故障のリスク> ☆☆
足を地面に向けて、少し突っ立つ感じで前に重心移動して来る外人投げ。お尻が落とせないのですが、カーブを多投するわけではないので、その点は悲観しなくても良いかと。
気になるのは、テイクバックした時に肩の可動域が広く後ろに入り込んでいるところ。また無理な感じはしないのですが、振り下ろす腕の角度もある選手。けして力投派ではないので今は大丈夫だと思いますが、登板過多が続くと、肩の故障が心配なフォームではあります。先発で、間隔を開けて投げる方が向いているタイプだと思います。
<実戦的な術> ☆☆☆
「着地」までの粘りは悪くないのですが、テイクバックした時に前の肩と後ろの肩が打者に真っ直ぐ伸びていて、とても直線的なフォーム。そのため打者への正対が早く、けして「開き」が早いわけではないのですが、合わされやすいフォームになっています。
腕の振りは良く、投げ終わった後も体に絡んできます。そのため、速球と変化球の見極めは困難。ボールへの体重の乗せも発展途上ですが、これからもっともっと良くなるでしょう。
(投球フォームのまとめ)
投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の観点で言えば、現時点では特別優れている点はありませんが、大きな欠点もありません。
ただし正対するのが早いフォームなので、「開き」が早くないのに合わされやすい特徴があります。また制球を司る動作はしっかりしているので、コントロールの良さはこれから彼の最大の武器になって行けるのではないのでしょうか。
(最後に)
現時点では、センスの良さが際立っていて、それにまだボールがついてきていない気がします。これから物凄く良くなりそうな予感はしますが、いま時点で指名してしまうのには、極めてリスクを感じる素材でもあります。
まだ「旬」の時期だとは思えず、大学や社会人などを経て、3,4年後の上位指名を望みたいタイプ。レベルの高い大学球界や社会人などで、野球を続けて欲しいと思います。恐らく夏に向けてクローズアップされる素材だとは思いますが、本格化するのは少し先のことになりそうです。
(2013年 春季九州大会)
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