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田中 広輔(24歳・JR東日本)遊撃 171/80 右/左 
 




                    「埋もれないか」





東海大相模時代から、ドラフト候補として注目されてきましたが、すべてが中の上レベルの選手で特徴に欠けるのが気になっていました。しかし東海大の最終学年ぐらいから、この選手が気になり始めてマークするようになりました。そしてJR東日本に進み、社会人屈指の遊撃手としての地位を築くようになります。相変わらず、すべてが中の上レベルであり、プロに混ぜてしまうと埋もれてしまうかなという危険性も感じますが。


(守備・走塁面)


 社会人になりウエートトレを相当やったのか? 豆タンクみたいな体型になっています。それでも塁間は、4.05~4.15秒前後で一塁まで駆け抜けることはでき、ドラフト候補としても中の上レベルはあることになります。ただし都市対抗予選の6試合で、盗塁は0個。やはりプロに混ぜてしまうと、足で売りにするのは正直キツイかなと思います。

 遊撃手としては、特に打球への反応が鋭いとか、プレーにスピード感があり守備範囲が広いとか、グラブ捌きが柔らかくキャッチングが凄く上手いとかはありません。ただし球際でのボール処理が上手く、安定感を感じるプレーヤー。何か観るものを魅了するような地肩もありませんが、内野なら何処まで守れるようなユーティリティープレーヤーとしての役割を果たして行く選手ではないのでしょうか。それでもカーブのニ遊間候補は多く、あえてこの年令のニ遊間候補を、チームに加える必要性があったのかは疑問です。

 走力も守備もプロに混ぜると中~中の上ぐらいであり、際立つものがないのは相変わらず。特に今年になって、その辺が大きく変わった印象はありません。


(打撃内容)

 どんな状況でも、安定して自分の役割を果たす選手といった感じで、経験に裏打ちされる精神力の充実には観るべきものがあります。

<構え> ☆☆☆☆

 両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップを高めに添えた強打者スタイル。適度に腰は据わり、全体のバランス、両目で前を見据える姿勢も悪くありません。体を動かし、打席でも自分のリズムで立てています。

<仕掛け> 早めの仕掛け

 投手の重心が沈む時に始動する、「早めの仕掛け」を採用。典型的な対応力重視の、アベレージヒッター。

<足の運び> ☆☆☆☆

 足を早めに動き出し、まわし込んで踏み込んできます。始動~着地までの「間」は取れているので、速球でも変化球でも合わせやすい打ち方。踏み込みは、ベース側にインステップするように、外角を強く意識しています。また踏み込んだ足元もインパクトの際にブレないので、低めや外角の球にも食らいつくことができます。

 ただし左のアベレージヒッターの場合、右打者のクロスに食い込んで来る球筋に対しインステップすると、どうしても内角が窮屈になりがちで率があまり上がらない傾向が見られます。その辺が、イマイチ打率が突出しない要因かもしれません。

<リストワーク> ☆☆☆☆

 打撃の準備である「トップ」を作るのは、かなり早めに作れています。そのため、速い球に立ち遅れる心配はありません。またインステップする分、少し懐は窮屈ではあるのですが、バットを上からミートポイントまで振り下ろすので、スイング軌道にロスがありません。バットの先端であるヘッドも立てて、フェアゾーンにボール落とせる確率も高まります。スイングも最後までしっかり振り切るので、左の好打者タイプでも、けしてひ弱さはありません。

<軸> ☆☆☆☆

 足の上げ下げが静かなので、目線は上下にブレません。体の開きも我慢出来ていますし、軸足にも粘りを感じます。

(打撃のまとめ)

 技術的にはほぼ完成されておりますし、全日本の常連として国際試合を多く経験したり、アマチュア最高峰の社会人でも結果を残し実績を積み上げてきました。そしてどの試合でも、安定して能力を発揮できるタフな精神力を養ってきた選手だと言えるでしょう。


(最後に)


 やはりドラフト候補としては、すべてが中~中の上ぐらいとプロに混ぜると特徴に欠ける点は否めません。そのため、プロでレギュラーまで昇りつめる選手ではないように思います。

 しかし厳しいコースの球でも、ボールに食らいついてなんとかヒットゾーンに落とすなど、しぶとさがあるのがこの選手の最大の持ち味。そういった精神面の強さで、長く球界で生き残ってくれる、そんな期待は抱きます。

 現在の力でも、ファームレベルではレギュラー級でしょうし、一軍半ぐらいの力はあると思います。何処でも守れる選手ですし、ある程度は打てる選手なので、使い勝手の好い選手であるのは間違いありません。そういったチャンスに恵まれれば、生かし方次第では面白いとは思います。チーム層を厚くする、激しい競争を煽るという意味では、好い選手ではないのでしょうか。ただ願わくば、そういった人材が不足しているチームに行って欲しかったなぁというのが率直な感想です。


蔵の評価:









田中 広輔(23歳・JR東日本)遊撃 171/80 右/左 (東海大相模出身) 





               「正直高校時代は好きではなかった」





東海大相模時代の 田中 広輔 は、ドラフト戦線でもかなり注目を浴びる存在だった。しかしすべてが中の上タイプの彼のプレーをみて、私は特徴に欠け好きにはなれなかった。そんな彼が気になり始めたのは、東海大の上級生になってから。確かに今でも図抜けたものはないのだが、三拍子の総合力が引き上げられプロを意識できるレベルにまでなってきた。あとは、何がなんでもプロになるのだという、あと一歩の欲があるかどうかだと思っている。

(守備面) 
☆☆☆☆

 打球への反応が鋭いとか、フットワークが軽快だとか、スピード感溢れるプレーをするとか、そういった目に見えて上手いなと感じさせる選手ではありません。しかし球際に強く、実に安定感のあるプレーをする、そんな堅実なプレーが、この選手の最大の魅力。地肩も平均的なので、プロに混ぜてしまう二塁手向きかもしれませんが、大学・社会人の遊撃手の中では、今最もプロに近い位置にいる選手だと言えるでしょう。

(走塁面) 
☆☆☆☆ 走塁偏差値 55

 一塁までの塁間を、おおよそ4.05秒前後で走り抜けます。このタイムは、2012年度にドラフト指名された左打者のタイムを偏差値に直すと、偏差値 55 (上位 30%ぐらい) ということがわかります。この数字からも、中の上レベルであり、足を売りにできるかは微妙ですが、俊足と言えるレベルでしょう。





(打撃内容)

 鋭い当たりを連発するというよりは、上手く合わせる対応力が自慢です。そのためプロに行くような選手に不可欠な「鋭さ」とか「強さ」みたいなものが、あまり身体の奥から湧いて来ない物足りなさは感じます。

<構え> 
☆☆☆☆

 スクエアスタンスで足を揃え、グリップは高めに添えながらも捕手側に引かれて添えられています。腰の据わり具合・全体のバランスはよく、両目で前を見据える姿勢は平均ぐらい。常に身体を動かし、自分のリズムで打席に立てています。あとは、打席から隙無しの「鋭さ」みたいなものが感じられれば、文句はないのですが・・・。

<仕掛け> 平均的な仕掛け

 投手の重心が下るときに、一緒に地面を一踏みしてタイミングを合わせます。そして重心が沈みきったあたりで始動する「平均的な仕掛け」を採用。ある程度の対応力と長打力をバランス良く兼ね備えた中距離打者・ポイントゲッタータイプが採用する仕掛けです。まさに彼の打撃スタイルとも合致しているのですが、この仕掛けの一番の弱点は、アベレージ打者でも長打力打者でもないので、一つ間違えると特徴が見えづらい中途半端な打者に陥りがちだということ。彼のここまでの野球人生は、まさにそういった傾向にあったと思います。

<足の運び> 
☆☆☆☆

 足を引き上げて、真っ直ぐと踏み出してきます。「平均的な仕掛け」の恩恵で、ある程度の「間」が作れることにより、速球や変化球なども合わせやすい打ち方。ベース側に踏み出すように、外角の球を強く意識しています。踏み込んだ足元もインパクトの際にブレないので、外の球でも低めの球にも喰らいつきます。

 ただ左の好打者タイプの彼にとって、インステップ踏み込むということは、最初の一歩目の走りだしがワンテンポ遅れたり、右投手のクロスに食い込んでくる球筋には差し込まれやすい打ち方。そのため左のインステップ打者は、イマイチ率が上がりきれません。できれば、真っ直ぐ踏み出すような、オーソドックスな踏み出しにした方が対応力は上がると考えられます。

<リストワーク> 
☆☆☆☆

 あらかじめ「トップ」に近い位置にグリップを引いて構えているので、打撃の準備である「トップ」を作るのは早い選手。そのため、スピードボールに立ち遅れる心配は少ないはず。

 またバットの振り出しにも癖がなく、ミートポイントまで綺麗に振り抜けます。バットの先端であるヘッドも下がることがないので、高めの球に対しても上から被せるようなスイングでヒットにします。低めを上手くすくうよりも、高めの球に上手く合わせるのが上手い印象があります。

<軸> 
☆☆☆☆

 足の上げ下げはありますが、頭の動きは小さく目線は安定。身体の開きも我慢でき、軸足も地面から真っ直ぐ伸びて、調子の波の少ないタイプだと考えられます。

(打撃のまとめ)

 左の好打者にしては、インステップするのが気になります。しかしそれ以外の部分では、技術的にはほぼ完成されているように思います。

 ただその半面、ボールを強く叩く力感や鋭いヘッドスピードみたいなものは、あまり感じられないスイング。ボールを捉えるセンス・甘い球を逃さない「鋭さ」は、大学時代以上に成長しているように思います。じっくりボールを見て四球を選べる選球眼もあり、派手さはありませんが、実践に上手く馴染んで行ける選手です。

(最後に)

 守備・走力・打撃ともに、相変わらず中の上タイプの好選手。肉体的に図抜けたものは感じませんが、試合感覚の良さで結果を残すタイプなのでしょう。

 あとは、内から滲み出るような精神的な鋭い感覚や、明らかに感じさせる肉体的な「強さ」みたいなものが出て来ると、グッとプロでの期待も広がります。今年は、何がなんでもプロという訴えかけて来るものが感じられるか、ここが最大のチェックポイントではないのでしょうか。


(2012年 アジア選手権壮行試合)


 








 田中 広輔(東海大)遊撃 171/78 右/左





                     「あと一歩の欲を!」





東海大相模時代は、一年秋からレギュラー。東海大に進んでからは、一年春から試合に出場し続けている。しかし高校時代はプロからも注目されていた野手だったが、どれも中の上レベルと、図抜けた特徴がなく、私にはなんとも物足りない印象が残った。むしろ彼に魅力を感じたのは、東海大の上級生になってから。しかしプロと言うことを想定すると、まだ何か物足りないものを感じる。その何かについて、今回は考えてゆきたい。

(守備・走塁面)

私が彼のことを気になり始めたのは、遊撃守備に非常に磨きがかかってきたからだ。それまでは、ソツなくこなす選手と言う感じで、遊撃手としてよりも二塁手向きだと考えていた。今でも際立って、フットワークが軽快だとか、スピード感が際立っていると言う感じはしない。しかし球際に強く、実に安定した守備を魅せるようになってきた。プロレベルだと二塁手向きだとは今でも思うが、この安定感は派手さはなくても、堅実にプレーをする遊撃手としてもありなのではないのか。少なくても2011年度の大学生の中では、トップクラスの遊撃手と言う位置づけであることは間違いない。

一塁までの塁間は、4.05秒前後。これは、プロの基準である4.2秒を上回り俊足の部類には入る。しかしプロで足を売りにしようとするならば、4.0秒を切るようなスピード能力に加え、高い走塁センスが求められる。彼のリーグ戦での盗塁数を観てみても、1シーズンに5個前後であり、ここでも中の上レベルと言った印象はつきまとう。むしろここからは、彼が何処まで走塁と言うものにコダワリを持っているのかで、成績も変わって来るだろう。

(打撃内容)

技術的には、良い意味でも悪い意味でも、高校時代から大きく変わっている印象はない。ある意味高校時代から完成されていて、その土台の良さを活かして、筋力の増加と経験を積むことで進化を続けてきた。

実際見てみると当てるのは上手いし、球の捌きは悪くない。ただスイングに関しては、ドラフト候補と言う切れ味鋭いヘッドスピードや力感溢れるスイングと言う感じはしてこない。何処か小慣れてしまっていて、凄みを感じ無いのだ。

その辺は、リーグ戦の成績にも現れていて、3年秋の.350厘の成績を除けば、あとは2割台と平凡な数字で留まっていることからも物語っている。やはり地方リーグの選手ならば、4年間で1シーズンぐらいは4割を越えて欲しいし、通算でも3割5分ぐらいの成績は、コンスタントに残して欲しい。それだけの潜在能力は充分秘めていると思うが、高校時代からどこか殻が破れない。それは、この春のリーグの観戦でも変わらなかった。

(野球への意識づけ)

私が彼のことを評価するようになったのは、遊撃守備の成長と共に、野球への高い意識と集中力にあった。高校時代は、何か惰性でやっている選手なのかな?とも感じられたのだが、彼が一年生からレギュラーを任せられるのは、センスだけでなく、上級生をも納得させるだけの普段からの取り組み、試合への入り方の良さがあったからだろうと言うことに、大学になってから気がつかされた。


(しかし・・・)

上記の動画で、打席に入るときの彼の姿に注目して欲しい。バッターボックスに向かう際に、ダートサークル のラインを何気なく踏んでしまっているのがおわかりだろうか?

別に踏むなと言わないが、やはり白線で関係者が引いてもらったものを、無意識でも踏んでしまうような選手は、何処かキメ細かい部分まで意識が行く選手ではないのだなと言う印象を受ける。イケイケの強打者ならば、少々細かい部分も気にしないで、おもいっきりの良さなど大胆さを重視したいところ。しかしバッテリーや二遊間を担うような選手には、こういった部分まで意識が行くような繊細さを私は求める。

まあそれはともかく、むしろ気になるのは、バッターボックスに入った時の足場の馴らし方だ。これも前の打者の足場を気にするタイプと気にしないタイプで異なる。しかし総じて自分の打撃にコダワリを持っているような選手は、この地面の馴らしに時間をかける。そういった意味では、自分の打撃にコダワリが薄く、それが総じて特徴に欠けるプレースタイルを作り出しているのではないかと思うのだ。

勿論この選手の、ネクストバッターボックスから集中力や試合の入り方、普段の試合へ取り組む姿勢のすばらしさは認めた上で述べている。彼が高校時代から今一歩殻を破れないで来たのは、やはりプレーへの細かい部分に至るまでの追求・欲求が、プロに行くような選手たちに比べると弱いからではないのだろうか?本当に野球で飯を食って行ける気構えはある?そう私は、彼に問いたい。

(最後に)

いくら素晴らしい才能に恵まれていても、それだけではプロにはなれない。その才能を磨くだけの、こだわりや人と違う発想を持って取り組んでゆかないと、結局は大きく資質は伸ばしては行けないからだ。ましてプロのように、何年にも渡り同じような相手と戦い続けなければならない。そんな中で求められるのは、才能以上にむしろコダワリや執着心なのかもしれない。

今一度、そういった部分で変化が見られるのか注目してみたい。現状は社会人タイプかなと言う印象は受けるが、秋に最後のチェックに行きたいと思う。プロに行けるだけの才能があるのだから。


蔵の評価:追跡級! 


(2011年 春季リーグ戦)


 






 田中 広輔(神奈川・東海大相模)遊撃 174/70 右/左
 





                    「技術的には大きな進歩!」





 1年生の頃から名門・東海大相模のレギュラーを務め活躍してきた選手。2007年度の神奈川の高校球界を代表する野手の1人、それがこの 田中 広輔 だ。生で観るといっそうよくわかるのだが、この選手の体つきなどをみると、ドラフト候補と云うよりはアマの好選手と云った感じで、プロの臭いはしてこない。しかしながら、下記に記してある昨春の寸評と比べると、かなり打撃技術の向上が観られることに注目したい。


(守備・走塁面)

 一塁までの塁間は、4.05秒前後と、プロの基準である4.2秒を上回る俊足選手。しかしプロで足を売りにする程の絶対的なスピードではない。

 下級生までは、二塁手として活躍。今年は遊撃手にコンバートされている。試合前練習や実際の試合などの動きを見ると、地肩・キャッチング・フットワーク・反応・スローイングなど破綻はないのだが、際だつものもない。やはり将来的には、二塁手あたりをソツなくこなすタイプが合っているのではないのだろうか。

 守備・走力に関しては、上のレベルを意識するとソコソコと云った印象。絶対的な売りと云う程のものはない。そこでこのあとは、甲子園でも打ちまくった打撃について考察してみたい。

(打撃スタイル)

<対応>  2,3球目あたりでスイングしてくるオーソドックスなタイプ

<狙い球> 内外角に関係なく、速球中心に狙いを定める

<打球>  センター方向中心に、右に左へと幅広い打撃をする。

 典型的な対応型の中距離タイプ。打球もいろいろな方向に打ち返すなど幅広い打撃をするのが、この選手の持ち味だ。



(打撃フォーム)

 いつものように「迷スカウトの足跡!
2007年5月4日更新分に、彼の打撃フォーム連続写真が掲載されているので、そちらを参照しながら読み進めて欲しい。

<構え> 
☆☆☆☆

 スクエアスタンスで構え、グリップを高く引き上げている。腰の据わり・全体のバランス・両目で前を見据える姿勢などもよくなり、大夫理に適った「構え」になってきた。

<仕掛け> 
平均的な仕掛け

 カカトをトントンして揺らぎ、自分のリズムで打席に立てている。投手の重心が沈みきったあたりで始動する「平均的な仕掛け」を採用。これは、ある程度の長打力と対応力を兼ね備えた中距離・ポイントゲッタータイプが多く採用するスタイルだ。

 まさに彼のプレースタイルに合致したスタイルだと云えそうだが、一つ間違えると、どっちともつかずの中途半端なプレースタイルに陥る。彼は、より対応力を重視したタイプに、今後移行して行くのではないのだろうか。

<下半身> 
☆☆☆☆

 足をしっかり引き上げて、ベース側にインステップして来る。インステップすると云うことは、配球の7割を占めるアウトコースの球に対し、強くボールを叩くことを意識したスタイルだ。投手が、アウトローに決めることを投球の基本と考えるように、打者はアウトコースの球をしっかり叩けることが、まずスイングの基本だと考える私にとっては、大変好感が持てるスタイルだ。

 外の球を捌く時に大切なのが、インパクトの際に足元がブレないこと。足元がブレてしまうと、身体の開きを誘発したり、パワーロスが生まれてしまう。カベをしっかりキープして叩くことこそ、アウトコースを捌く時の基本なのだ。このことに課題があった田中だったが、今はしっかりバランス好くスイング出来ている。この一年間での成長を感じさせる。

 ただ左の好打者タイプと云うのは、右打者にクロスに食い込んで来る球筋(特に内角の球を捌くために)に対し、アウトステップを採用する選手が多い。彼がより対応型の打者を目指すのか、強打者タイプを目指すのかで、ステップの仕方も変わって来るのではないのだろうか。

<上半身> 
☆☆☆☆

 トップをそれなりに取ることが出来ている。またその際に、グリップが身体の奥に入り込むことがないので、速球に差し込まれる心配は少ない。以前は、グリップをヒッチさせてしまう癖があったのだが、その辺も改善されている。

 バットは寝て出てくるタイプなのだが、腰を上手く回転させてインパクトの際には、バットのヘッドとグリップが水平の形で捉えられている。打ち損じの少ないスイングが出来ている。

 インパクトの押し込みも好く、スイング軌道も悪くない。フォロースルーも取れているが、それほどボールを遠くに運ぶタイプの打者ではないだろう。

 気になるのは、インステップ打者でバットを寝て出して来るタイプなので、どうしても内角の球の捌きが窮屈になる可能性が高い。今後この点を改善出来るのか注目したい。

<軸> 
☆☆☆☆

 頭の位置も安定し、目線のブレも少なくなっている。身体の開きも我慢出来、軸足の形も安定している。波の少ない安定した打撃が出来るタイプではないのだろうか。


(最後に)

 さすがに下級生の時から、全国を舞台に活躍してきた選手だけに、技術的にも素晴らしいものがある。またこの一年で、自らの資質を伸ばしてきた野球への姿勢も評価したい。

 しかし生で観た印象では、やはりアマチュアタイプの好選手のイメージは拭えない。圧倒的な肉体的なポテンシャルや一芸に秀でたものを持っていないからだ。こういったタイプは、大学・社会人などで経験・技術を磨き、実績を残すことで評価されるタイプだろう。大学に行っても、早い段階から活躍出来そうな選手だけに、3,4年後を期待して見守りたいと思う。あとは、スイングや身体に凄みを付けて欲しいかなと感じられた。

(2007年 春季大会)








田中 広輔(神奈川・東海大相模)二塁 174/70 右/左 
 
昨夏から一年生ながら、名門・東海大相模のレギュラーを務めていた選手。走攻守・三拍子バランスの取れたプレーヤーで、高い野球センスを売りにしている好選手。

(守備・走塁面)

 一塁までの塁間を4.05秒前後で走り抜けるなど、プロの基準である4.2秒を上回る俊足の持ち主。昨夏は8番打者での起用だったが、選抜では1番打者として試合に出場していた。ただ一番打者としては、秋の成績が11試合で3盗塁と少々少なめなのが残念。これからの走塁意欲と技術の成長に期待したい。

 二塁守備は、キャッチング・守備範囲・地肩などは悪くない。ただ下半身の粘りがもう一つで、スローイングに課題を残す。この一年で、どのぐらいその精度を高めるのか注目される。

(打撃スタイル)

<対応> 大体2,3球目あたりで仕掛けて来る平均的な打者だと言えよう。

<狙い球> 速球に狙いを絞って振り出して来る。

<打球> センター方向中心に、セカンド・ショート方面に打球が飛ぶことが多い。

けして長打を売りにする選手ではない。センター中心に鋭くはじき返す強打が魅力だ。

(打撃フォーム)

<構え> 
☆☆☆

腰がどっしりして来ると更に良いのでは

 軽く前足を引いたオープンスタンス。グリップは高く引き上げた強打者スタイル。腰の据わりはそれほどでもないが、全体のバランス・前の見据え方は悪くない。

<仕掛け> 平均的な仕掛け

 投手の重心が下がりきった時に始動する「平均的な仕掛け」を採用。ある程度の対応力と長打力をバランス良く打ち分けて来る中距離・ポイントゲッター向きの仕掛けだと言えよう。一見理想的な仕掛けに見えるが、一つ間違えるとどっちとも着かずの中途半端なスタイルに陥りやすい。

<足の運び> 
☆☆☆

バランスの取れたスイングを

 足を高くまでに引き上げて、インステップで踏み込んで来る。踏み込み自体は悪くないが、インパクトの際に、足元が盤石でなくブレてしまうのが残念。もう少しスタンスを取って、上半身と下半身のバランスの取れたスイングが出来るようになると、打ち損じも減るだろう。また着地のタイミングも早すぎることもあり、上半身だけで対応する打撃には、少々気になる。

<リストワーク> 
☆☆☆

高い位置でトップを形成して、そこから振り出すのはどうか?

 トップはそれなりに深く取れているのだが、投手がリリースを迎えてからバットを引き上げるヒッチが観られる。基本的にヒッチと問題になるのは、本格的な始動を迎えてから引き上げることで、これだと完全に余計な動作となる。一定レベル以上の投手相手になると、差し込まれたり、打ち損じる原因に成りかねない。上から叩こうと言う意識はわかるが、長い目で見れば修正したいポイントだろう。

 スイング軌道・ボールの押し込みなどは良く、綺麗なスイングの弧を描けている。それだけに、ヒッチの癖さえ改善出来れば、かなり対応力を増すものと考える。

<軸> 
☆☆☆

技術には課題はあるが、素材の良さも感じる

 頭の位置は安定しているし、足元が盤石ではない変わりに、グリップが後ろに残るタイプなので開きは遅くなっている。軸足の形は崩れ気味でも、それでも粘れる軸足の強さがあるのは素材としての魅力を感じる。

(最後に)

 素材としての非凡さがある一方で、打撃技術には課題が見え隠れする部分が目立つ。まだまだ新2年生と言うことで、修正も可能だし、もっともっと良い打者になれる資質があると観る。これから神奈川の高校球界を引っ張って行く存在の一人であると思うが、志を高く持って、もっともっと良い選手に育ってもらいたいと思います。
 

(2006年 4月19日更新)