「身体能力高いはずが・・・」
日大打線の中でも、その恵まれた体格で目を惹く存在だった 青山 誠 。チームの一番打者を担いながら、守備的負担の少ないレフトを守ることが多い。そういうこともあって、私自身チェックしようかためらい結局チェックを入れなかったことを覚えている。
今年の観戦始めは、日大グランドの改修記念の試合だった。レフトオーバーのツーベースを放ったり、ライト前にはじき返したりと目立つ活躍をしていた彼の姿を思いだす。
走塁面:☆☆☆
50メートル6秒0というタイムを記録するだけあって、単純には脚が速いのだろう。この観戦始めの試合でも、出塁するとすかさず盗塁を決めていた。しかし彼のリーグ戦での盗塁は、4年間で僅か1個。けして動けない選手ではないが、盗塁する技術などはまだまだということなのだろう。
守備面:☆☆☆
細かいチェックを入れていないので詳細はわからないが、左翼手にしては肩は悪くない選手だったと記憶している。実際遠投100メートルということで、この数字を鵜呑みにすると肩もそれなりということになる。しかし俊足・強肩の身体能力を持ちながら、何故左翼なのだろうか? 高校野球ならば守備的負担を減らし、控え投手が守ったりもするが、分業化進む大学野球ではそういったことはない。ようは身体能力は高くても、打球への勘や判断が悪く、できるだけ負担の少ないところを守らせるしかないからではないのだろうか。
4年生で高い身体能力があれば、外野の中心である中堅、もしくは肩を生かしてライトを任されるはずなのだ。そこには、何か大きな理由があるからだと考えるべきだろう。試合をちょっと観る限りでは、そのへんの理由はよくわからなかったが。
(打撃内容)
4年間でホームランはなく、リーグ戦で3割を超えたのはこの秋が始めてだった。3年秋に.286厘というシーズンもあったが、試合数が僅か3試合。それ以外のシーズンは、1割台と打撃に課題があった選手。
<構え> ☆☆☆
前足を引いて、グリップを下げて構えます。背筋を伸ばし両目で前をしっかり見据えますが、全体のバランスとしては平均的。
<仕掛け> 早すぎる仕掛け
投手の重心が下る前から、足を引き上げて長く空中で足を浮かしています。超対応型の打撃なのですが、ここまで早い段階で始動してしまうと、投げるタイミングを投手が自在に変えられてしまいます。もう少し投手が重心を下げるまでは、始動を待った方が得策でしょう。
<足の運び> ☆☆☆
始動~着地までの充分な「間」があるので、速球でも変化球でも合わせやすい打ち方。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でも捌きたい意思が感じられます。
気になるのは、踏み出した足元が地面から離れるのが早く、充分に踏ん張れていない点。これはボールを引っ張るときには好いのですが、外角の厳しい球や低めの球には「開き」が早くなったり、ボールにしっかり力を伝えきれなどの欠点が生じます。彼は外角の球を右方向に打ち返すこともできるのですが、その球は外角でも高めの球を払うように打ち返す打球ばかり。基本的には、甘くない外角は苦手なはず。打撃の基本は、外角の球をキッチリ叩くことであり、その基本が出来ていないように思います。
<リストワーク> ☆☆☆
打撃の準備である「トップ」を作るのは遅くないのですが、そこから更にグリップを奥に引きこむので差し込まれやすくなります。バットの振り出しも、肘が下がって少し身体から離れて出てきます。そのためインサイド・アウトの軌道ではなく、少しボールを捉えるまでに遠回りだったり、内角の球に対しスムーズにバットが出てきません。引っ張りを得意にしている打者にしては、内角にもある程度スペースが欲しいということは、打てる幅が極めて限られることを意味します。
それでもバットの先端であるヘッドは下がっていないので、ドアスイングにはなっておりません。また大きな弧を描きがら、最後までしっかり振り抜けています。上手く巻き込めれば、長打も期待できます。
<軸> ☆☆☆
足の上げ下げは静かなので、目線はそれほど動きません。体の開きが我慢できない部分はありますが、軸足は地面から真っ直ぐ伸びて綺麗に回転出来ています。
(打撃のまとめ)
体の開きが早く、外角の対処に課題があります。それでいて内角にも懐に空間が欲しく、捌けるコースが極めて狭いのが欠点。ただしヘッドスピードは早く、身体能力の高さはスイングからも感じられます。まだまだ打つ方でも、プロ入り後時間がかかることが予想されます。
(最後に)
体格・走力・地肩などの身体能力には恵まれていますが、それを活かす技術に大きな課題を抱えます。ある意味それは、素材型の高校生を取るのと変わらないことだと思います。
プロの指導を煽り、その眠っている潜在能力を引き上げられることが期待されますが、大卒・育成枠という立場を考えると、そう長くは待ってくれそうもありません。かなり厳しいプロ生活が待っている、そう覚悟しておいた方が好いでしょう。個人的には高校生ならまだしも、こういった指名には疑問が残ります。どれか一つでも、即プロで通用するものがあれば、ある程度球団も我慢して見てくれそうなのですが。
(2013年 秋季リーグ戦)
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