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梅野 隆太郎(福岡大)捕手 173/80 右/右 |
「集中力をいかに持続できるか」 昨秋寸評を作った時は、それまで捕手として疑問を持ってきたプレーがだいぶ改善されてきていることを指摘した。その成長を、楽しみにして挑んだ春のオープン戦。しかしキャッチングミスを連発し、捕手としてのインテリジェンスに欠けるプレーで、法政グランドに集まっていた多くのスカウト達をガックリさせた。しかし大学選手権では、再び安定したディフェンスを披露。好い時は好いが、集中力を欠けると元の悪い部分が顔を覗かせる。プロの長いシーズンを想定すれば、安定して力を発揮できる持続力が求められる。 (ディフェンス面) 上背はないが、捕手らしくガッチリした体格。昨秋あたりから重心を低く構えられることになり、ミットを動かさなくもなり投手に的をつけやすい体勢を維持できるようになりました。それだけ投手や審判がプレーしやすいことを意識できるようになり、捕手としての成長を感じます。 勢いのあるボールにも、けしてミットがブレることがありません。これにより、際どい球でも審判からストライクカウントが導きやすくなります。低めの球へのグラブの出し方も改善されつつあり、キャッチングの悪さも目立たなくなりつつあります。ただしこれは意識が集中している時は好いのですが、気持ちがキレるとガタガタとミスを連発します。元々グラブを伸ばすだけのキャッチングや、すぐにミットを動かしてしまう癖があったので、つい余裕がなくなるとそういったプレーが顔を覗かせミスを連発してしまうことがあるわけです。 リードにも安定感が出てきていますし、普段はそれなりのプレーを見せます。以前のような1.7秒台で投げ込む鬼肩を魅せることはなくなりましたが、今でも上手くハマれば1.85秒前後で到達するようなA級の送球を見せます。ただし送球が乱れることも少なくなく、精度としては安定していません。 現状、捕手としてもドラフト候補として見られるレベルまでは達しています。根本的に気遣い・インテリジェンス・注意力が持続できるタイプではないので、プロのレギュラー捕手にまで昇つめられるかは疑問です。プロ入り後も数年は捕手として適正が見られると思いますが、いずれは非凡な打撃と身体能力を生かし、他のポジションへコンバートされるのではないかと考えます。 (打撃内容) 彼の魅力は、大学球界でもトップクラスの打力と、塁間4.2秒前後(左打者換算で3.9秒台)で走り抜けられる走力。そして捕手として抜群の地肩を強さを持った、高い身体能力にあります。 この春のリーグ戦でも、1本 5打点 0盗塁 打率.333厘 と健在であり、日米野球でも打率.300を残し、国際レベルでも打力があることを証明しました。 (打撃フォーム) <構え> ☆☆☆☆ 前の足を軽く引いて、カカトを浮かせて構えます。グリップは高めに添えて、腰の据わりも悪くありません。両目で前を見据える姿勢や全体のバランスも悪くなく、打席での集中力も感じます。あとは、力まないように注意したところ。 <仕掛け> 早めの仕掛け 昨年までは、投手の重心が沈みきるあたりで始動する「平均的な仕掛け」を採用していたように思います。しかし今年は、投手の重心が下がりはじめる時には動き出す「早めの仕掛け」を採用。より対応力を重視した、アベレージ傾向の強い始動となっています。 <足の運び> ☆☆☆☆ 足を早めに引き上げて、まわしこんで打ちに来ます。始動~着地までの「間」は取れているので、速球でも変化球でも合わせやすいはず。スクエア~アウトステップ気味に踏み込むので、元来は打球を強引に巻き込みたいタイプ。それでも踏み込んだ足元をブレないように抑え込み、外角の球にも対応しようとする意識が感じられます。 腰の逃げは少し早いのですが、外角でも真ん中~高めのゾーンの球ならば、充分に右方向にはじき返せます。緩急やコースにも、幅広く対応できる打ち方になっています。 <リストワーク> ☆☆☆ 早めに打撃の準備である「トップ」の形を作れるので、速い球に対しても余裕を持って構えられます。バットの振り出しは、けしてインサイド・アウトで振るようなタイプではないので、内角の捌きにはある程度のスペースが欲しいタイプ。 その分大きな孤を描いてスイングしているので、外の球にもバットが届きやすいメリットがあります。強打者らしく、バットのしなりを生かした大きなスイングができていますし、腕っ節の強さを活かして最後まで力強く振り抜けます。大きな孤を描きますが、けしてドアスイングにはなっていませんし、強烈なヘッドスピードでそれを補います。スイングとしては、上のレベルを意識できるプロ仕様のスイングです。 <軸> ☆☆☆☆ 頭はそれほど大きくは動かないので、目線が動いて的確に捉えるのに妨げにはなりません。体の開きも我慢出来ていますし、強打者らしく軸足の内モモの筋肉にも強さを感じます。軸を起点に、綺麗に回転出来ているのではないのでしょうか。 (打撃のまとめ) 下級生の時のような荒っぽさはなくなり、かなり精度を高めたスイングになってきました。これにより高いレベルの投手相手でも、順応しやすくなってきたはず。ボールを捉えるセンスも悪くないですし、力負けすることはまずありません。打撃に関しては、勝負どころでもグッと集中力高まります。 (最後に) 私がバッテリーに求める繊細さがないので、捕手としての適正は買いませんが、野手としての才能は評価します。できれば捕手を続けるかどうかは、プロ入り後2,3年以内には判断して欲しいですね。中途半端に、ダラダラ続けるのは避けたいところ。 高い身体能力と野手的性格、打者としての才能を加味すると、野手に専念できればプロでもレギュラーの座をつかめる才能があると評価します。捕手としてではなく打者として、この選手を高く評価してみたいと思います。 蔵の評価:☆☆☆ (2013年・大学選手権) |
梅野 隆太郎(福岡大3年)捕手 173/77 右/右 (福岡工大城東出身) |
「少し捕手らしくなってきた。」 福岡工大城東時代から、強肩・強打の捕手として注目されていた選手でした。しかしあまりに試合前練習のプレーが雑で、観ていて不快に思ったのを今でも忘れません。試合前練習を観ていて、これほど腹立たしく思えた選手は、後にも先にもこの選手しかいません。その雑なプレーは、大学になっても一向に改善されませんでした。 (ディフェンス面) 彼の何が頭に来るかというと、物凄くキャッチングが雑なところ。その傾向は、6月の日米大学野球選考合宿でも同様で、それを見かねた 生田 勉(亜大)監督から、選考試合中にも関わらずベンチ横でキャッチングの指導を受けていたぐらい。投手への配力が足りず、ただ捕る、投げる、打つだけといった選手で、捕手らしさの欠けらも、この選手のプレーからは感じられませんでした。 そんな梅田選手の、この秋のプレーに大きな変化が起きていました。まずミットを構える時も、重心を下げて的をできるだけ低くして構えます。こういった姿勢を維持することは、捕手としては大変なこと。しかし投手にしては、ボールを低めに狙いがつけやすいですし、審判からも捕手の陰になる部分が減り、ボールが見やすくなるというメリットがあります。そういったことまで、意識できるようになりました。 何よりボールをシッカリ捕球しきる前に、ミットを動かすような雑なキャッチングをしていたのですが、審判のコールが終わるまで、それもミットを押し込めるように捕球できるようになりました。このため、審判からもストライクを導きやすくなっています。 ワンバウンド処理なども、ミットを上から被せるような変なキャッチングも少なくなかったのですが、今はミットの出し方も的確になり、身体で素早く止めることに心がけます。元々やる気になれば素早く動ける身体能力はあるので、こういった部分もだいぶ改善されてきました。これまでキャッチングに難があった印象が、この秋は格段に良くなったと言えるでしょう。 スローイングは、以前は1.7秒台の猛肩ぶりをアピール。しかし何処か痛めたのか?それともめいい一杯投げることよりも制球を重視するようになったのか?以前ほど、圧倒的なスローイングを見せつけることがが減りました。それでも1.8秒台ぐらいでは投げられるので、スローイングに不安はありません。プロに混ぜても、上位レベルの強肩捕手のはず。 ただ根本的に、考えてプレーするという習慣を培って来なかったので、リード面や本質的な捕手的適正があるのかは個人的には未だに疑問が残ります。しかしキャッチングやプレーに対する意識が劇的に変わったことは確かで、この部分に関しては評価しないといけないポイントだと思います。今後は、将来的にリード面・捕手として適正を高めて行ける可能性があるのか、その部分に注目して来年は見て行きたいと思います。 (打撃面) 梅野のもう一つの魅力は、福岡大の4番を座る確かな打力があること。高校通算24本塁打の実績はありますが、大学でのリーグ通算2本のように、ボールを遠くに運ぶタイプではありません。1年春から不動の正捕手として登場して以来、1年春を除けば残りの5シーズンはすべてリーグの打撃10傑に名前を連ねています。それだけリーグでは抜けていますし、波のない成績にはみるべきものがあります。ましてこの選手は、全国大会や全日本の経験も豊富であり、そういった部分でもけして見劣ることはありません。 <構え> ☆☆☆☆ スクエアスタンスで両足を揃え、グリップは高く添えます。腰の座り具合、両目で前を見据える姿勢・全体のバランスもまずまず。少し力が入り過ぎている感じはしますが、打席での集中力にも高いものを感じます。 <仕掛け> 平均的な仕掛け 投手の上げた足が下がり終わるぐらいから~底に到達するあたりで動き出す「平均的な仕掛け」を採用。これは、ある程度の対応力と長打力をバランスよく兼ね備えた中距離打者が採用する仕掛けです。 <足の運び> ☆☆☆☆ 始動~着地までの「間」はある程度取れているので、適度にスピードの変化にも対応できます。足を上げてまわしこんで、幾分インステップ気味に踏み込みます。内角よりも、外の球を意識したスイングだと言えるのでしょう。 特に踏み込んだ足元がブレないので、外角の球や低めの球にも開きを我慢して、右方向へ打ち返すことができます。 <リストワーク> ☆☆☆ 打撃の準備である「トップ」を作るのは平均的で、少しボールを呼び込む時にグリップが上がってヒッチする傾向があります。ただ悲観するほど極端ではないので、あまり気にしなくても良いでしょう。 バットの振り出しは、以前よりはだいぶ良くはなっています。それでも懐にはある程度スペースがないと、内角はさばけません。彼が得意なのは外角の球であり、外角低めの球でも良い形で振り切れます。 ボールを捉えるまでは平均的ですが、ボールを捉えてからは大きな弧のスイングができ、シッカリ最後まで振り切ります。スイングには鋭さと力感があり、けしてレベルの高い相手の球でも、力負けすることはないでしょう。 <軸> ☆☆☆☆ 頭の動きは大きくないので、目線は大きくは動きません。身体の開きも我慢できていますし、軸足も地面から綺麗に真っ直ぐ伸びて、軸がブレないのが良いところ。スイングした時のフォームが、非常に美しいのが特徴です。 (打撃のまとめ) ボールを捉えるセンス・技術に特別非凡なものは感じません。しかしそれらも、ドラフト候補としては基準に達していて、捕手としては上位の打力の持ち主。スイングにひ弱さはありませんし、狙い球を逃さない「鋭さ」は持っており、打撃では集中力があります。 (最後は) ディフェンス面では、まだ疑問な部分が残るものの、プロを完全に視野に入れられるレベルに達してきています。打撃面も、捕手としてならば十分合格点であり、よほど極度の不調や大きな怪我でもしない限りは、ドラフト指名されるのは間違いないと思います。 それが一体どのぐらいの順位でとなると、本当にシーズンでのアピール・成長次第かと。2012年度の大学NO.1捕手である 伏見 寅威(東海大-オリックス3位)捕手と比べると、打撃と肩の能力は梅野方が一枚上ではないかと。ただリード・捕手としての適正、キャッチングに関してでは伏見の方が現時点では上ではないかと思います。ただ最終学年での内容次第では、2位ぐらいまで評価を高めてきても不思議ではないだけの、ポテンシャルはあると考えています。果たしてどんな驚きを次は見せてくれるのか、今後の劇的な変化に期待して待ちたいと思います。 (2012年 神宮大会) |
梅野 隆太郎(福岡大)捕手 173/72 右/右 (福岡工大城東出身) |
(どんな選手?) 09年度の福岡は、全国屈指の捕手の当たり年でした。その時の福岡でも、強肩・強打の捕手として名前があがっていた選手です。ただプレースタイルが雑で意識も低く、ただ投げる・打つだけのポテンシャルに頼ったプレーで、正直評価いたしませんでした。しかし福岡大に進んで、だいぶその辺の部分が改善されつつあるようです。このたびの日米大学野球のメンバーに、見事選出されました。 (ディフェンス面) 体を小さく屈め、投手からグラブが大きくしっかり見えるように構えます。ミットを動かさず、しっかりボールを受け止められるキャッチングは好感です。ミットを示した後も、グラブを下に下げることがないので、低めの球にも素早く反応。キャッチング・フットワークなどはしっかりしております。以前のような雑な印象は、試合を観る限り陰を潜めました。 今でもリードセンスや捕手的適正があるのかは疑問なのですが、スローイングはピカイチです。まず捕ってから投げるまでの型が崩れず、実に素早くて無駄のない動作で投げ込みます。また制球も安定しており、塁間1.7秒台~1.8秒台前半で投げられ、アマでも屈指なレベル。そういった意味では、今の内容ならば全日本に選ばれたのも、納得できる部分があります。また純粋に地肩の強さでも、今やアマで1,2を争うほどではないのでしょうか。 (打撃内容) 今シーズンは、1本塁打 2打点 打率.349厘 と打力もあります。投手の重心が沈みきった底あたりで始動する「平均的な仕掛け」を採用する中距離・ポイントゲッタータイプ。足をしっかり引き上げて、真っ直ぐ踏み込んできます。基本的に踏み込んだ足下が、地面から離れるのが早い、引っ張り型です。そのため巻き込める球しか打てない傾向が強いので、粗さがあることは否めません。 ただ高校時代に比べ、トップを作るのが早くなりましたし、バットの振り出し角度がよくなり、ミートポイントまで無駄なく振り抜けるようになりました。スイングも強いですし、最後までしっかり振り切れます。あとは、下半身がブレないで我慢できるようになれば、もっと対応力が増して来るのではないのでしょうか。 (今後は) 攻守に粗さ・雑なところが、当なくなって、素材の良さを活かせるようになってきました。あとは、足下のブレを無くす努力をし、右方向への打撃を磨けると、打撃の幅も広がります。体は小柄ですが、当然来年のドラフト候補としてマークされるだけの存在に成長してきました。 (2011年 大学選手権) |
梅野 隆太郎(福岡・福岡工大城東)捕手 172/75 右/右 |
(どんな選手?) 09年度の福岡は、全国屈指の捕手の当たり年でした。そんな福岡を代表する強肩・強打の捕手です。沖縄で開催された春季九州大会では、試合前練習には参加していたものの、実際にはその試合には出場しておりませんでした。そこで試合でのプレーを、今回初めて観ることが出来ました。 (ディフェンス面) ミットを示した後も、グラブを下げないで捕球出来る選手です。そのため低めへの対応にも優れ、ワンバウンド処理の対処も悪くありません。フットワークも機敏で、打球への反応も悪くないです。残念ながら、この試合ではスローイングの機会はなかったのですが、九州大会の時の試合前練習からも、地肩はかなり強い選手だと言う印象を受けました。捕手としての資質はかなり高い選手なのですが、キャッチングが雑なのと、プレーへの集中力・繊細さに欠けるなど、捕手的適正に関しては、正直疑問を持ちました。 (打撃内容) 思いっきりの良いフルスイングが魅力です。チームの3番を担うなど、打力も悪くない選手です。前足を軽く引いて、自然体に構えられリラックスして構えられているのが良いですね。「早めの仕掛け」を採用する、アベレージ傾向が強いタイプです。足を大きく引き上げて真っ直ぐ踏み込んで来ます。そのためタイミングを合わせるというよりは、思いっきり踏み込んで叩くタイプの選手。それでも踏み込んだ足下も、インパクトの際にブレないでスイング出来るので、自分の打てるポイントの球は、逃さず叩くことが出来るはずです。 残念なのは、トップを作るのがやや遅れる点。そして肘が下がって出てくるので、インパクトまでのスイング軌道にロスがあり、ボールを捉える確実性が低い点です。それでも大きな弧を描きつつ、フォローまでしっかり振り抜けるスイングは、中々見事です。 ヘッドスピードも基準レベルあり、力強いです。ただ粗い・脆い部分があり、打てる球は仕掛けが早い割に、結構限られているかなと思います。ただ捕手と言うポジション柄、その辺はあまり気にしなくても良いのではないのでしょうか。 (今後は) 打撃にしても、ディフェンスにしても、一つ一つの動作からは、ポテンシャルの高さを強く感じます。動きも良いですし地肩も強く、打球も力強いです。 ただプレーへの意識・野球への取り組み方、インテリジェンス等、もう少し考えて行かないと、結局ある程度のところで伸び悩んでしまうのではないのでしょうか。大学で野球を続けられる才能は充分ありますが、更にその上でと言うことになると、そういった意識づけも大事になります。攻守に良いものを持っているだけに、志しを高く持って取り組んでもらいたいと思います。 (2009年・夏) |