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桂 依央利(大商大)捕手 185/80 右/右 
 






                   「猛肩ではあるけれど・・・」





塁間1.8秒前後で送球できるスローイングが、この選手の最大の売り。しかし捕球の際に腕を伸ばすだけで、体で止に行こうとしない億劫なプレースタイルや、バッテリーに求めたいキメ細やかさがないのが個人的には気になる。185センチの大型捕手だが、実戦力よりもポテンシャルの高さを評価されても3位指名なのだろう。

(ディフェンス面)

 大きな声で、周りにしっかり指示を出す捕手らしい捕手。大きな体を小さく屈め、的を大きく魅せたり審判からも低めの球が見やすいように構えたりします。そういった意味では、周りに配慮できない人間ではないのかもしれません。

 ミットを投手に示し、的をつけやすくします。グラブも下に下げる癖もないので、ワンバウンド処理も立ち遅れません。ただし思い通りに来た球に対してのグラブ捌きには優れるのですが、コースがハズレた球に対しては腕だけを伸ばして捕球しようとするので、全身でボールを止めに行こうとしません。そのため神宮大会などでも、ボールを後逸する場面が見られました。こういった捕手は、中々プロでは信頼を得られないので修正が必要でしょう。大型故にデーンとした安心感はあるのですが、フットワークが重苦しいのが気になります。

 リードは、外内外みたいな感じで深みのあるリードはしません。基本外角を中心に、ボール散らせて来る感じでしょうか。最大の売りは、塁間1.8秒前後で到達するスローイングになります。イニング間でのスローイングでは、1.9秒前後でランナーの滑り込んで来るところにコントロールできます。しかし実戦では素早く投げようという意識が強く、確かに到達タイムは早いのですがボールがショート側に逸れたりして安定しません。捕手として一番やってはいけないのは、送球がベースに入って来るショートと逆方向に逸れる送球です。セカンド方向に多少ズレるのであれば対処できますが、ショート方向では逆を突かれたらカバーし切れないからです。この基本が出来ていないのをみると、結構時間がかかるのかなと思います。

 あと気になるのが、普段のプレーから大雑把できめ細やかさがない点。こういったものがないと、周りの空気を敏感に感じたり、ちょっとした変化に気がつかないことが多く、プロの捕手としての適正に欠ける可能性があります。単純に打つ、投げるというポテンシャルは高いのですが、配慮・インテリジェンス・注意力、そういった部分に疑問が残る選手であり、個人的には好みではありません。



(打撃内容)

 あんまりしっかり芯で捉えていないのに、気がついたらヒットになっていることが多いといった感じ。特に長打で魅了すると言うよりは、甘い球をセンターからレフト方向に打ち返すタイプの打者ではないのでしょうか。地方リーグだというのもありますが、3年春には.341厘で首位打者。3年秋には、.396厘と更に数字を伸ばしています。

<構え> ☆☆☆

 前足を軽く引いて、グリップは高めに添えます。腰の据わり具合、両目で前を見据える姿勢・全体のバランスとしては並でしょうか。懐が深いのは好いのですが、構えとしては可も不可もなしといった感じ。

<仕掛け> 平均的な仕掛け

 投手の重心が下がりきったあたりで始動する「平均的な仕掛け」を採用。これは、ある程度の対応力と長打力をバランスよく兼ね備えた、中距離打者や勝負強さを売りにするポイントゲッターが多く採用するスタイル。

 秋のリーグ戦で生で見た時や神宮大会での2試合の模様でも、それほど長打は見られませんでした。しかしリーグ戦の成績を観ると、ホームランこそ通算1本ですが、二塁打は結構多く放っているのがわかります。

<足の運び> ☆☆☆

 足をしっかり引き上げて、真っ直ぐ踏み込んできます。始動~着地までの時間はある程度稼げていますが、どちらかというとタイミングを図るというよりは、強く叩くことを重視しているように思います。

 真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でも捌きたいというタイプ。踏み込んだ足元はインパクトの際にもブレませんが、打球はセンターから三遊間方向に引っ張るスイングが目につきます。メカニズム的には右方向への打球も可能だと思いますが、本人の意識にはそれがないようです。

<リストワーク> ☆☆☆

 打撃の準備である「トップ」を作るのは、遅くありません。そのため速い球にも、立ち遅れることなく対応。バットの振り出しは、少し肘が下がって開き気味に出るのですが、足元がブレず開きをある程度で抑え、バットの先端であるヘッドも下がらないのでドアスイングにはなりません。

 特にヘッドスピードが図抜けているとか、ボールを捉える感性に優れているようには見えませんが、最後までしっかり振りぬきます。リーグ戦を見に行った時は、内角の捌きが窮屈だったり、バットが下から出て来るところが気になりました。基本的に打てるポイントは限れていますが、打てる球を逃さないで仕留めるのが、この選手の持ち味では。

<軸> ☆☆☆

 足の上げ下げはあるのですが、それほど目線は大きく動いていません。腰の逃げは早いものの、ある程度のところで開きは我慢。軸足は地面から真っ直ぐ伸びており、軸が大きく崩れないので、安定した打撃が出来るのかもしれません。

(打撃のまとめ)

 特に見ていて、何が凄いとか技術的に図抜けているといった感じは致しません。それでも明大戦でも2本のヒットを放ったように、ある程度のレベルの相手でも結果を残せて観せるところはさすが。リーグ戦の成績も確かであり、これを絶対視は出来ませんが、アマチュアの捕手としては打力も一定レベルはあると評価して好いのではないのでしょうか。





(最後に)

 プレーに細やかさが感じられず、全身でボールを受け止めるような何が何でもの貪欲さは見えてきません。確かに地肩は素晴らしいし、捕手としてリーダーシップが高いのは買えますが。

 また即プロで通用するとは思いませんが、プロの捕手に必要な最低限の打力はあるように思います。そういった意味では指名されるのは当然かと思いますが、個人的には好みではなく高い評価は出来ないというのが本音なところ。

 プロの捕手として、正捕手まで昇り詰められるかと言われると現時点では疑問であり、プレースタイルを一から見直して行かなければならないのではないのでしょうか。そういった意味では、時間はそれなりにかかるものと考えます。スケールは大きい選手だけに、上手く導ければ面白いとは思うのですが・・・。


蔵の評価:


(2013年 神宮大会)