13dy-17


 
amanatu.com







 嶺井 博希(亜細亜大)捕手 175/85 右/両






                    「打撃が大幅に成長」





大学全日本でも正捕手を務めた選手で、沖縄尚学時代からディフェンスには定評がありました。しかし打撃には物足りないものがあり、春先までは社会人タイプの好捕手とのイメージがありました。しかし春・秋のリーグ戦ではいずれも3割台を記録し、大学選手権や国際試合でも3割を越えるアベレージを残します。ドラフト後に行われた明治神宮大会では、チームの勝利に絡む場面での活躍が目立ち、チーム日本一への最大の功労者と評価できる内容。打撃でアピールできるようになってきたことが、最終学年での高い評価につながりました。

(ディフェンス面)

 175/85 というガッチリした体格で、いかにも捕手らしい豆タンク体型。重心を深く沈め、体を小さく屈めてどっしりと構えます。投手にとっては的をつけやすく、審判からも低めの球筋が見やすい周りに配慮できる捕手だというのがわかります。

 また捕手らしくリーダーシップもあり、投手は安心して任せられる人間性も魅力。投手にミットを示し、そのグラブをそれほど下げないので、低めの球への対応も素早い。特にワンバウンドするような球に対し、ミットを下から出せるなどキャッチング技術にも優れます。ボールを押し返すような力強いキャッチングではないのですが、際どいコースに決まった時にもミットが全くブレないので、審判からは信頼されるタイプ。

 リードは結構ムラっ気があって内角重視だった下級生時代に比べると、今は非常にオーソドックスになり、必要に応じて内角を使うスタイルに変わりつつあります。かなりそのリードを見ていると、アマ離れしたえげつないリードして来るので、面白い感性の持ち主かと思います。

 驚くほどの強肩ではありませんが、捕ってから素早く返球できるので到達タイムは、1.85~1.90秒台前半とかなりのものがあります。ただイニング間でのスローイングは余裕を持っているので、ランナーが滑り込んで来るところに正確に集められるのですが、実戦になると直ぐに投げようという意識が強くなり、制球を乱すことも少なくありません。ピタッとハマった時のスローイングは素晴らしいものの、実戦になると精度が劣ることが今後の課題でしょうか。それでもプロに混ぜれば、中~中の上レベルには位置づけられると思います。

 物凄くポテンシャルが高い捕手というよりは、大きな欠点がなくソツのないタイプ。プロの正捕手まで昇り詰められるかは微妙ですが、2番手・3番手あたりで長く生き残って行ける選手ではないのでしょうか。ディフェンス面に関しては、大学NO.1の捕手であることは間違いありません。

(打撃内容)

 バットが内から出てこないのが気になりますが、外の球に対してはキッチリ叩くことが出来ています。特に神宮大会では、圧倒的な勝負強さを魅せました。

<構え> ☆☆☆

 両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップは高めに添えます。腰は深く据わりどっしり感を感じさせ、両目で前を見据える姿勢も好い。ただあまりにベタッと重心を沈めた構えなので、体重移動に乏しく柔軟性に欠けるだろうなというのは、構えた時から感じます。実際見ていても、そういったタイプかと。

<仕掛け> 遅めの仕掛け

 投手の重心が沈みきって、前に移動する段階で始動する「遅めの仕掛け」を採用。ボールをできるだけ引きつけてから叩く、典型的な長距離打者の仕掛けです。しかし実際は、けしてそういった打者ではありません。どちらかというと、勝負強さを売りにする「中距離ヒッター」もしくは「ポイントゲッター」そういった打者ではないのでしょうか。

<足の運び> ☆☆☆

 始動~着地までの「間」がないので、あらかじめ狙い球を絞って叩く、点の打撃をしてきます。捕手ならではの鋭い読みで、上手く狙い球を絞りこむことができるかもしれません。

 足のカカトをその場で上げ下げするだけの打ち方なので、無駄は極力省ける反面、体重が前に乗って行かずプロレベルの投手相手に通用するのか?という不安は残ります。しかしこれでも結果を残しているので、まずではプロで通用するのか試してからでも構わないでしょう。

 踏み込んだ足元は、インパクトの際にブレずに我慢出来ています。外の球や低めの球に対しても、開きを我慢して対処できるのではないかと思います。

<リストワーク> ☆☆☆

 少しバットを引くのが遅く、打撃の準備である「トップ」の形を作るのが遅れがち。一定レベル以上の球速・キレに対し、立ち遅れる危険性があります。

 バットの振り出しはスローで再生する限り、ミートポイントまでロスは感じませんし、バットの先端であるヘッドも下がることなくボールを捉えられているように見えます。しかし生で見ていると、バットが内から出てこない感じで、特に内角の捌きが窮屈に見えます。内角に投げていれば、まず大丈夫といった印象は受けます。

<軸> ☆☆☆☆

 足の上げ下げが小さいので、目線は殆ど動きません。体の開きも我慢出来ていますし、軸足も地面から真っ直ぐ伸びて綺麗に回転出来ています。動作が小さいぶん軸は安定し、調子の波も少ないのではないのでしょうか。外の球には思いっきり引っぱたけるので、ボールは飛んで行きます。

(打撃のまとめ)

 体重移動の不十分だったり、内からバットが出てこないスイング軌道などをみると、やはり打撃は少し時間がかかるのでは。しかし大学レベルでは目立つ活躍できるようになってきた打撃をみると、ドラフト候補の捕手に求められるレベルには到達したと判断します。

 特に非凡なミートセンスがあるとか、天性の長打力があるとかそういったものは感じられず、読みの良さから来る潔いスイングが、この選手の最大の持ち味。打つ方に関しては、プロ仕様になるのには数年かかるものと思います。本人が壁に当たった時に、いかに自分の殻を破って行けるだけの、柔軟性・発想力・センスがあるのかが求められます。

(最後に)

 捕手としては、一年目から一軍に置いておけるだけの力量はありますし、ファームならば正捕手として経験を積ませることも可能でしょう。チームには、高城や黒羽根という有望捕手もいますが、彼らと一年目から渡り合えるだけの力量があると言えるでしょう。特にディフェンス面では彼ら以上かもしれないし、そのぐらい大人びたプレーができる選手であり、そのエゲツないプレーっぷりはプロ顔負け。伸び盛りの若手捕手達への競争相手としては、またとない人材でしょう。この一年で、大学からプロに行けるだけの力量を身につけた選手であり、現状に満足せずに資質を伸ばせる野球への姿勢は、高く評価すべきポイントではないのでしょうか。


蔵の評価:☆☆


(2013年 明治神宮大会)



 








 全くノーマークの選手だったのですが、捕ってから素早いスローイングが目を惹き、チェックを入れて見ました。打っては7番打者ですが、来年の沖縄尚学の中心選手になるであろう選手です。

 少し腰を落とし過ぎの構えなので、フットワークなどの動作がワンテンポ遅れるのではないかと云う印象を受けました。実際小柄のセンス型捕手ながら、それほどフットワークを生かしたプレースタイルでは無いように思えます。

 ただ投手にしっかりミットの存在を意識させつつ、ミットを動かさないキャッチングに心がけているので、投手としては的を絞りやすく投げやすい捕手だと思います。キャッチング・フットワークには、それほど目が行きませんでしたが、塁間1.85~後半で到達するスローイングは、今プロに混ぜても一線級の領域にあります。

 捕ってからスローイングまでの一連の動作に破綻がありませんし、ランナーの滑り込んで来るところにコントロール出来るところは素晴らしいと思います。高校生としては、全国でもトップランクの捕手に数えられるはずです。

 問題は、打撃の方にありそうです。スクエアスタンスで構え、チョンとステップする際にシンクロしてタイミングを計る、沖縄尚学特有のタイミングのはかり方して来ます。そしてベース側にインステップして来ます。

 この選手の場合、動作が忙しめなところは、それほど気になりません。それは、チョンとステップする段階が比較的早く、スイングの本格的な始動が、けして遅くなりすぎてはいないように思えるからです。ただしステップしたあとの体重移動が殆ど出来ていないので、どうしてもボールを点でしか捉えられず、打てる球は限られる印象は受けます。新チーム結成以来・打率.412厘をと一応の数字は残しているものの、公式戦では.293厘と数字を落としているのは、相手投手のレベルが上がると、充分に対応仕切れていないからではないのでしょうか。

 ディフェンス力に関しては、来年ドラフト候補として注目して見る価値がありそうな程の選手です。あとは、現時点では全くプロを意識出来るレベルとは言い難い打撃技術の向上と、身体がもう一回り・二回り大きくなって来ると好いですね。ぜひ彼のスローイングに関しては、これからも注目して頂きたいと思います。

(2008年・センバツ)