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吉田 裕太(立正大)捕手 182/84 右/右 





                      「捕手としても成長」





日大三高時代から、強肩・強打の捕手として目立つ存在だった。立正大に進んでも、自慢の打撃で早くから頭角を現す。春までに、東都二部中心の実績ながら14本塁打を放ち、2年秋には二部で首位打者を獲得。大学球界を代表捕手として、全日本合宿に呼ばれるようになる。3年秋・4年春と打撃では低迷。しかし今秋の最終チェックでは、捕手としての成長を強く実感させられた。恐らくそれは、社会人時代・名捕手として鳴らした 坂田 精ニ郎(シダックス)捕手が、監督に就任したことが大きかったのではないのだろうか。

(ディフェンス面)

 以前はミットをあまり示せなかったのですし、構えた時もどっしり感がなく的をつけにくい感じの構えでした。しかし今は、大きな体を小さく屈め、できるだけ的を大きく魅せようという意識が持て、投手にとってどうすれば投げやすいかを意識できるようになってきました。

 元々ミットを下げる癖もなく、打球への反応も素早かったのでワンバウンド処理などは下手ではありません。特にキャッチングに際立つものは感じませんが、特別悪い部分も見当たらず。以前はただ打つだけ、投げるだけというインテリジェンス・配慮・集中力などが感じられず、個人的には捕手としては評価しておりませんでした。しかし今は、その辺もだいぶ変わりつつあります。

 高校時代から地肩はA級だったものの、精度といった意味では物足りないものがありましたし、実際に二塁までの到達タイムが、2.0秒を切ることができない選手でした。しかし今は、あえてモーションを小さくして制球を重視で、捕ってからもコンパクトに素早く返球できるようになり、塁間を1.85秒前後で投げられるなどスローイングも実戦的になっています。スローイングに関しても、プロに混ぜても中の上~上位の能力を身につけつつあるのかと思います。特に力をセーブしても、しっかり送球できるあたりに、この選手の地肩の強さを感じます。

 今までリード面に知的さを感じられなかったのですが、先日見た試合では相手の裏をかくリードが冴えていました。投手本位のリードにして幅が出てきたという話でしたが、相手の裏もかくリードセンスもあるのがわかりました。ただこういったリードは、プロのような長いシーズンを想定すると、いつも使える術なのかは疑問が残ります。元々センスを感じなかった選手だけに、本質的な部分まで変っているのかには疑問は残ります。

 しかしプロでレギュラーを張る程の選手には見えませんが、ドラフトで捕手としてかかるぐらいの総合力は身につけつつあると、今回の観戦で評価します。



(打撃内容)

 この選手は、追い込まれるまでは思いっきり引っ張る打撃を重視します。そのため、レフトスタンドに驚くような一発を放つのでしょう。その一方で追い込まれてからは、センター方向を意識する打撃に切り替えることも出来ていました。ここ2シーズン打撃成績が低迷していましたが、ラストシーズンは打撃成績も期待できるのではないのでしょうか。

<構え> ☆☆☆

 両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップは平均的な高さに添えつつも、バットを立てます。腰はあまり据わりませんが、背筋を伸ばして構えます。全体のバランスとしては並ですが、両目で前を見据える姿勢は好いと思います。

<仕掛け> 早すぎる仕掛け

 投手の重心が下る前から足を引き上げておくなど「早すぎる仕掛け」を採用。アベレージ打者の傾向が強いようですが、実際には荒っぽい一発屋的なイメージがあります。

<足の運び> ☆☆☆

 長く足を引き上げているので、バランスを維持するのは難しいはず。一見いろいろな球に対応しようとしている仕掛けに見えますが、実際には真ん中~内角よりの球を巻き込もうと待っているフシがあります。

 追い込まれるまでは引っ張り重視なので、足元が地面から離れるのが早いです。しかし追い込まれてからは、足元のブレを抑えセンター方向を意識した打撃に変わります。そのためセンターから、右方向への打撃もでき単なるプルヒッターではありません。

<リストワーク> ☆☆☆

 あらかじめグリップを「トップ」のところに添え、速い球に立ち後れないようにしています。バットの振り出しも悪くなく、バットの先端が下がらないようにしながらヘッドを走らせ、最後までしっかり振りぬきます。

 特にボールを捉えるセンスは感じませんが、スイング軌道に癖がなく潔いスイングをします。スイングの孤が大きいとかフォロースルーを活かすタイプではないので、上手く巻き込めた時に長打が生まれるタイプなのでしょう。スイングの速さと体幹の「強さ」で、長打を放つタイプ。

<軸> ☆☆☆☆

 足の上げ下げは静かなので、それほど上下に目が動きません。体の「開き」も我慢でき、軸足も地面から真っ直ぐ伸びて安定。軸を起点に、綺麗に回転出来ています。

(打撃のまとめ)

 もっと荒っぽい打撃をするのかと思ったら、スイングに癖はなく状況に応じた打撃を使い分けることが出来ていました。ボールを捉えるセンスにはやや粗さを感じますが、打球の強さ・スイングの潔さには観るべきものがあります。確実性はなくても、意外性の一発を秘める、そんな捕手らしい打撃は期待できそう。

(最後に)

 捕手としての成長を感じ、打撃にも復調の兆しが見えてきました。そういった意味では、攻守のバランスも取れ指名を意識できる選手になってきています。

 本質的に捕手としてのインテリジェンス・配慮・集中力があるのかには、まだまだ疑問が残ります。しかし大学からドラフトに指名されるだけの力は、今や備えつつあるのではないのでしょうか。下位指名になるかもしれませんが、本会議での指名を期待してみたいと思います。


蔵の評価:



(2013年・秋季リーグ戦)




 








吉田 裕太(立正大)捕手 182/84 右/右 (日大三出身) 
 
(どんな選手?)

 日大三伝統の強肩捕手です。高校生としては、A級のスローイングの持ち主であり、打っても4番を担うなど、強肩・強打を売りにする、チームの要的存在です。

(ディフェンス面)

 ミットを示すのが遅いですし、それほど構え時のどっしり感もなく、投手としては、あまり投げやすい捕手ではないのかな?と言う印象を受けました。ただミットを出すのが遅い分、ミットが下がることもないので、ワンバウンド処理など低めへの対応に立ち後れることもないですし、打球への反応なども悪くありません。キャッチングなどに特に光るものは感じなかったのですが、身体でボールを止めに行く姿勢は好感が持てます。徳島北戦では、一度スローイングの機会がありましたが、捕ってから素早かったものの制球を乱し、自慢のスローイングをアピールするには至りませんでした。そのタイムも2.15秒前後と、イマイチでした。地肩の強さを、実戦で表せないタイプなのか?それとも単に制球を乱しただけなのか?は微妙なのですが、春季大会で観た印象だと後者だと思います。この辺は、もう少し試合を観て、確認して行きたいポイントです。

(打撃内容)

 思いっきりの良いのが魅力です。ヘッドスピードも力強く高速で、基準を上回るものがあります。スクエアスタンスで構え、足を回し込むタイプなので、ボールを捉えるまでの「間」があり、幅広い打撃が期待出来ます。現に西東京大会では、打率.500厘を記録するなど打力はある選手です。特に徳島北戦では、外角の高めのカーブをレフトライナーで飛ばしたあたりは、彼の典型的な打球なのではないのでしょうか。

 ただ捕手としては、基準レベルの打力はある選手だと思いますが、上のレベルを意識すると、ミートポイントでボールを射貫くセンスはもう一つであり、ボールを見極める選球眼もどうなのかな?と言う印象を受けました。特に2打席見逃しの三振をきしていたように、ボールの絞り込みには不安を残す内容でした。現状は、スイング自体は上のレベルでも力負けすることのないスイングだなと言うことで、課題は対応力にありそうです。

(今後は)

 捕手としての型・センスと言う意味では、個人的にあまり評価しません。ただ地肩もありますし、打力もある程度ある選手です。気持ちも強そうなプレースタイルからも、前向きに壁を打破して行ける逞しさは感じる選手ですね。

 大学などに進んで、野球を続けて行ける素材だと思います。今はまだまだですが、どんどん上手くなって欲しい選手の1人です。少し長い目で、その成長を見守ってみたいと思いました。

(2009年・夏)