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三木 亮(上武大)遊撃 175/75 右/右 |
「引き出しが豊富」 昨年までは、注目の内野手ではあったものの、個人的にはあまり良さがわかりませんでした。しかし今年に入り、この選手が、大学・社会人で№.1の遊撃手ではないかと思うようになってきた。この選手の特徴を上げるとしたら、守備においても打撃にもおいても、非常に引き出しが豊富だということ。それを状況に合わせて実に上手く使い分けられる選手だということ。 守備面:☆☆☆☆ 最大の特徴は、打球への一歩目のスタートが速いこと。それでも昨年までは、目に見えてプレーにスピード感があるとか、グラブさ捌きが柔らかいとか、そういった天才的な印象はありません。この選手の守備で面白いのは、打球によって様々なプレーを瞬時に使い分けて、最適な処理を選択できる引き出しの多さにあります。またこの手の好守の遊撃手にしては、かなり肩が強いということ。安定感+深いところから魅せる守備もできる選手であり、プロで鍛えれば充分に遊撃手として勝負できる資質を持っているところにあります。将来的には、名手級と呼ばれるところまで到達できるかもしれません。 走塁面:☆☆☆☆ 右打者ながら、一塁までの塁間を4.2秒弱で走り抜けるの能力がありました。これは、左打者に換算すると3.95秒ぐらいに相当し、プロでも俊足と呼べる領域です。それでも昨年までは、それほど盗塁をバシバシして来るようなタイプではなかったのですが、今春のリーグ戦では8盗塁と破格の数字を残します。走塁への意識・意欲にも、今年は目の色が違ってきていることを意味します。プロでも、積極的な盗塁が期待できるのではないのでしょうか。 (打撃内容) 大学選手権の緒戦では、レフトオーバーのツーベースとレフトポール際への特大ファールのみで結果はイマイチ。しかし2回戦以降は、ことごとく勝負にかかわる場面で結果を残し、チームの優勝に大きく貢献しました。今年になり何が変わったかと言えば、打席での集中力。甘い球を逃さない「鋭さ」を身につけ、勝負どころでの無類の強さを発揮しました。 <構え> ☆☆☆☆ スクエアスタンスで両足を揃え、グリップの高さは平均的。腰の据わり具合・全体のバランスに優れていますが、両目で前を見据えるという意味では平均的でしょうか。それでも構えた時から、高い集中力が感じられます。 高校時代は、最初からグリップを捕手方向に引いていて、構えに力みが感じられました。その点はだいぶ改善され、リラックスした中にも適度な緊張感のある、理想的な構えになりつつあります。 <仕掛け> 早めの始動 投手の重心が下る時に動き出す「早めの仕掛け」を採用。これは、典型的なアベレージ打者が対応するスタイル。高校時代は「遅めの仕掛け」を採用し、ギリギリまで引きつけてから動き出すスタイルだったので、以前とは全然打ち出すタイミングを変えてきたのがわかります。 <足の運び> ☆☆☆☆ 早めに動き出し、足をまわしこんで踏み込みます。始動~着地までの「間」が取れるようになり、速球でも変化球でも合わせやすくなりました。また昨年まではベース側に踏み出していたのを真っ直ぐ踏み出すことで、内角でも外角でも幅広く対応しようとする意志が感じられます。 高校時代から大きく変わったのは、懐のスペースを確保し引っ張る打球が増えました。そのためツボにはまれば、スタンドインや外野の頭を超えるような長打が目立ちます。また外角が捌けなくなったのかと思ったのですが、追い込まれたらセンターから右方向への意識も持てており、どの方向にも打球を飛ばせることもわかりました。特に打席によってバットの長さを変えてみたりと、いろいろ創意工夫して打席に入ります。一見引っ張り専門の荒っぽい打撃が目立つように見えますが、けしてそんな単純な打者ではありません。 <リストワーク> ☆☆☆ 高校時代は、あらかじめ捕手方向にグリップを添えて振り出していました。しかしリストワークが固くなるのを防ぐために、自然体へと変えています。ただその弊害か、バットを引くのが遅れ、打撃の準備である「トップ」を作るのが遅れがちになってしまっているのが気になります。この辺が、一定レベル以上の球速・キレのある投手に、少し立ち遅れる要因だと考えられます。 また以前は、上からミートポイントまで最短距離でロスなく振りぬくコンパクトなスイング。しかし今年は、バットを寝せてミートポイントまでは少し遠回りにバットが出てきます。その代わりにスイングの孤が大きく、バットのしなりを生かしたスイングに。更にフォロースルーを生かし、ボールを遠くに運べるようになりました。 下半身の使い方には幅が出てきた一方で、上半身の動きは無駄をなくすよりも、強く・遠くにボールを飛ばす強打者のスイングに大きく様変わりしています。 <軸> ☆☆☆☆ 足の上げ下げはありますが、目線は大きく動きません。体の開きも我慢できていますし、軸を起点に綺麗に回転できています。 (打撃のまとめ) 打撃に関しては、以前とまるで別人のように打撃フォームを変えてきています。そのことで、プロ仕様の「強い」スイングを身につけてきました。多少荒っぽくなったことで、対応力には課題を残します。しかしその辺も、様々な引き出しを使いこなすことで、上手く結果を残すことが出来ています。この選手一見淡白な選手に見えますが、ただでは転ばない、しぶとさがあります。 (最後に) 守備・走塁に関しては、充分プロでやって行ける選手。打撃はプロの球に対応するのに少し時間がかかりそうですが、創意工夫ができる選手なので、いずれその壁も乗り越えられそう。けして非力で対応できない選手というわけではないので、経験を積むことで問題を解決できるでしょう。 特に今年になり、野球への眼の色が変わってきました。いずれは、「チームのショートストップに収まる」そんな予感を強く実感させてくれる選手。感性に優れた天才型ではなく、努力と創意工夫で道を切り開いて行ける努力型の典型。天才の集まりのプロの世界で、彼のような選手がどのような活躍を魅せるのか、個人的には大変興味があります。 蔵の評価:☆☆☆ (2013年 大学選手権) |
三木 亮(遊学館)遊撃 175/75 右/右 |
元々はチェックするつもりはなかったのですが、「野球小僧」に掲載されていた選手なので、チェックし直してみた選手です。昨夏の大会では、2番・遊撃手として出場しておりました。 最大の売りは、一歩目の判断力に優れた遊撃守備にあります。ただそれ以外のキャッチング・フットワーク・スローイング・地肩などは、A級の素材には見えませんでした。また一塁までの塁間を、送りバント時に4.2秒弱(左打者換算で3.9秒ぐらいに相当)で走りますが、これはあらかじめ走りだしているので、0.3秒ぐらい速いものとして、左打者換算でも4.2秒前後と云うのが、彼の脚力だと思われます。これは、プロの基準レベルぐらいの脚力はありますが、けして足を売りに出来る程ではありません。また普段は、塁間を緩めてしまう傾向もあり、それほどプレーに貪欲さを感じませんでした。 打撃の方は、スクエアスタンスでグリップの高さは平均的。あらかじめ捕手方向に、グリップを引きすぎていて、構えに力みが感じられます。腰の据わり・全体のバランスなどは良いですが、両目で前を見据える姿勢は並ぐらいでしょうか。全体的に、少し脆そうな印象を受けました。 始動は、投手の重心が下がりきって前に移動する段階、すなわち「遅めの仕掛け」を採用しております。これは、典型的なスラッガータイプが採用する仕掛けですが、ボールをギリギリまで見定めてから、あらゆる状況に対処する2番タイプにも適した仕掛けです。そういった意味では、彼のプレースタイルに合致しているものと思われます。 足を小さく浮かし、真っ直ぐからややベース側にインステップします。そのため真ん中~外角側の球を捌きたいと云う、彼の意志が感じられます。そのため少々内角の捌きは、窮屈になりがちです。インパクトの際にも、なんとか足下がブレないように踏ん張れておりますが、打てるポイントも限られていて、あまり幅の広い打撃は、期待出来ないようです。 あらかじめ捕手方向にグリップを引いているので、構え~打撃の準備段階であるトップ(バットを振り出す位置)までのグリップの移動は観られません。ただロスがないのですが、打撃全体に固さを残すと共に、グリップも内側に入りすぎて、ヘッドの出もイマイチです。 ただバットを上から降ろす意識があるので、意外にトップ~インパクトまでのスイング軌道にロスは感じません。ただスイングの弧が大きすぎて、スイングが波打ってしまっているので、インパクトが安定しない印象があります。 頭の位置・身体の開き・軸足などは安定しており、体軸は悪くありません。上半身の動きをシャープにし、下半身が耐えられるようなバランスの良いスイングを期待したいです。 遊撃守備に磨きをかけ、センスのあるプレーを期待したいです。ただもう少し打力をつけないと、大学などに進んでも、活躍は厳しいかなと思います。今後の成長に期待してみたいと思います。 (2008年・夏) |